ELEKTRON analogFOURレビュー
一度売った同じ機材を買い直すなんてのは機材廃人ならよくある事。
しかし3台目購入を考えてるとなると重症です。皆さんはこんな風にならないようにしましょう。
さてさて過去に2度売却しつつもまた懲りずに借りてきたELEKTRON analogFOURです。
しかもmk1。もうメーカーで修理を受け付けてくれなくなってしまったらしいのですが、
Mk1のデザインが大好きだから仕方ありません。mk2よりコンパクトだしね。
「アナログって割には音が整いすぎなんだわ」
「ELEKTRONはデジタルの方が得意だよね」
「mk1のディスプレイ小さすぎ」
「これの音の良さは8割リバーブ。シンセは大した事ない」
などなど悪評も出尽くして出涸らしすら残ってませんが、
現在でも他のグルボに対して全然負けてないアドバンテージがあるので、
ここらでじっくりA4の魅力を見直してみたいと思います。
○ラインナップ内でのポジション
競合する機種と言えばSyntakt/Digitone/model:cyclesあたりでしょうか。
このリリースを考えるとELEKTRONはアナログよりデジタルの方が得意、と見受けられます。
パンチがあってキレが良く今どきの分かりやすい音ならFM系の上3機種、
そこまでモダンでないオーソドックスな音が欲しいならanalog FOURが良いでしょう。
○今でも十分現役なanalogFOURのアドバンテージ
・4系統のCV出力
もうこれ最強ですよ。
これほどモジュラーシンセとの連携を考えているグルボ、未だ他にありません。
ELEKTRONのお家芸パラメータロックもTRCもいたれりつくせりなLFOも。
CV信号で出力出来るんですよ!グルボからモジュラーに移った人にはこの凄さが分かる筈。
・外部入力&極上のリバーブ
A4のエフェクト、特にリバーブに関しては当時から評価が高く、
単体のエフェクターにも劣らない高品質なものとして評判でした。
それを別機材にも適用できるのが地味に嬉しいところ。
ここはやはりアナログモノシンセやモジュラーシンセと組ませていきたいですね。
・今んとこmk1もmk2もファームウェアに差は無い
Mk2の変更点が地味過ぎた(=完成度が高かった)ので、
ファームウェア、つまり内部機能的には差がない、のも良いところ。
ちなみにmk1とmk2の違いは外観デザインと、パラアウト、CV入力くらいです。
(音質も変わったとか変わらないとか言われてますがわかりません)
2012年に発売されたとので既に10年選手。
大きな機能変更も無く同じ物を造り続けているのはこの分野では珍しいでしょう。
まぁOCTATRACKもそうだけどね。
・今じゃMIDI出力もできるよ
しばらくのあいだ実装されていませんでしたが、
いつかのアップデートでMIDIを介して外部機材を操る事も可能になってます。
○ELEKTRONお家芸の数々とA4特有の必殺機能
・パラメータロック
トリガーを押しながらツマミを回すと、そのステップだけパラメータの変化が適用される機能。
ELEKTRONマシンは音程もこの機能を使って設定します。
音程を始め、あらゆるパラメータをステップごとに可変出来る機能。
全てのELEKTRON製品に備わっています。
似たような機能で、KORGから始まったと思われる
「ツマミの動きを録音する」モーションシーケンスという機能がありますが、
パラメータロックの方が落ち着いて設定出来るから好きです。
ちなみにELEKTRONでもモーションシーケンスできます。
・トリガーコンディション
トリガーしたステップをパーセンテージで発音する機能は最近どこのグルボでも備えていますが、
ELEKTRONマシンはそれに加えて「4周したら1回だけ発音する」とか出来ます。
この為16ステップでも64ステップでも、それより長いフレーズを感じさせる事が出来るんです。
ドラムを扱う時に凄く重宝する機能ですね。
・A4特有のサウンドロック
パラメータロックの要領でサウンド自体を変えてしまう「サウンドロック」という機能がありますが、
A4の場合は特に使いやすく特定のトリガーを押しながらLEVELツマミを回すと適用されます。
あらかじめサウンドプールに登録したサウンドのみ使えます。
これにより単一のトラック内に複数の音を仕込む事が可能です。
この為ライブ中でもサウンドロックを駆使してグッチャグチャなパターン作りが出来るんです。
「意外とドラムサウンドも得意」なA4だけど4トラックは少ない。そんな弱点を補うのに絶好の機能です。
・パターンリロード
これもELEKTRONは強力で、キーボードF+NOを押すだけで元のセーブ済みのパターンに戻ります。
あらかじめセーブしておくパターンをシンプルなものにしておいて、
ライブ中トリガーを増やしたりサウンドロックで音を変えていき、
ここぞ!というタイミングでパターンを元に戻す。これが気持ち良いんですよ。
・複雑怪奇LFO
正直言ってELEKTRONのLFOは難しいです。
特にA4mk1は画面が小さい事もあり使いづらいんですけど、
メチャクチャ細かく設定できるうえ、色んなところに適用できるので使いこなせば神機能。
それが一つのトラックに対して二つ付いてますから、かなり変チクリンな音を作れます。
効果音みたいなの作る時やドローンやる時の強力な味方です。
ついでに言うと、A4の場合CV出力専用トラックにもこの強烈なLFOがあります。
・グルボのオマケには勿体ない高品質エフェクト
グルボのオマケにあるリバーブなんてツマミが一つだけで、
それでもあるだけ有り難いものなんですけど、
A4のリバーブ(ディレイも)はパラメータが多い!
プリディレイもロー/ハイパスフィルターも付いてます。
さすがにシマーやグラニュラーなど目新しい機能はありませんが、
オーソドックスで質の高いリバーブとなっています。
ちなみにディレイにはディレイタイムとフィードバックの他に、
ピンポン、フィルター、オーバードライブ、リバーブ送り量などなど多機能です。
○ELEKTRONのファイル構造
慣れていない人には鬼門とも言える独特なファイル構造。
とりあえず大事なのは、「サウンド」と「キット」が別だという事ですね。
個々の音色をサウンド、それらを4つ(とFX&CVトラック)まとめたものをキットと呼びます。
これ慣れてしまえば凄く便利なんですけどね。面倒だけど。
○まぁ、音作りはパソコンでやろう
ELKTRON純正エディタOverBridgeを使う事で、
音色のあらゆる管理がパソコンの大きなディスプレイで行えます。
これがあるからこそ本体の小さなディスプレイが許せるってもんです。
○mk1とmk2の違い
パラアウト、CV出力に加えCV入力。
外観デザイン、サイズ(重さはそんなに変わらない)
と、大した差はありません。予算とデザインの好みで選んでも良いでしょう。
音質はどうだろう?両方持ってる人なら違いを感じるかも、って言われてるくらい。
ちなみにmk1の中古相場は6−8万円ほど。
同価格帯の最新機種と比べてみるのも良いかと思います。
○まとめ
10年前の機材ではあるけど完成度が高く現役として役立つ1台です。
3回目の購入に踏み切りそうです(どうだかな?)。