ZOOM L6レビュー(電子楽器)

発表と共に大きな反響があったZOOM L6ですが、
その頃はさほど興味が湧かずにスルーしていました。
同じ32bitフロートのR4を持っていましたし、ユーロラック内蔵可能と言っても最強のWMDミキサーがありますし。

しかし後で気がついたポイント「パラで録音できるよ」って所にガッツリ胸を捕まれ
品薄状態がつづいていましたが供給が安定するのを待って先日購入できました。

公式サイトで自ら「マシンライブ用」と謳っているのが誇らしいですね。

既にYoutubeなどでレビューが色々とありますが、映像業界、バンドマン、ゲーム配信者としてのレビューで、
当然ですがマシンライブ用途のレビューはありません。
(In Syncさんあたりにやってほしいんですがねw)
という訳で、マシンライブ/モジュラーシンセプレイヤーの観点で観たレビューしていきます。

 

◯公式スペック

・10チャンネルミキサー/レコーダー
・32bitフロート/48 kHzサンプリングのオーディオ録音
・各Ch3バンドEQ
・マスターコンプレッサー
・ChごとにSEND量を決められる内臓エフェクト
・4種類のサウンドパッド(ポン出し)
・TRS MIDI IN/OUT(Aタイプ)

などなど至れり尽くせりの機能で36900円。

◯注意点

・入力は1/2Chは+24 dBuだけど、3以降は+9 dBuだかんね。
モジュラーシンセを繋ぎたい時は要注意。必要に応じてアッテネーター噛ましてやりましょう。

・録音はマルチかマスターかの二択、プリフェーダーだよ。
マルチ録音の場合は各Chを個別にON/OFFはできないようです。
またプリフェーダー部分から録音しているようで、
ボリュームの上げ下げやトラックミュート等は反映されないようです。そりゃDAWでやりましょう。

 

◯個人的見解ーパフォーマンス向きのミキサーではない。

アタシはこれをメインのミキサーとしては捉えてなく、MTRとして購入しました。
「パフォーマンスミキサー」として使えたら良いなぁって思ってはいるけど期待してません。
パフォーマンスをしたいならやはりフェーダーと各操作子の間隔。
TASCAMのmodel12を以前所有してましたが
あのmodelシリーズこそ究極のパフォーマンスミキサー兼レコーダーでした。
まぁ12でもクッソ重くて(4.5kg)持ち歩く気にならんけど。

フェーダー式のMIDIコントローラーも持っていますが、
L6から電源供給できないので使えません。

 

◯音質-32フロート

良いです。この値段でなら十分過ぎるクオリティ。
ただし「32bitフロート/デュアルADコンバータ」と謳っているのはCh1と2だけです。
あと大入力突っ込むと普通に割れます。あまり過信しないよう注意しましょう。

iインジゲーターで赤を叩くと音が割れてきます。普通に。
他の3-6Chは普通の32bitフロートだけでして、最大入力も+9dbとモジュラーシンセのレベルにはチト不安。
ここに繋ぐ時はアッテネーター等で少し下げてやりましょう。

モジュラーをCh1/2に繋いでおくか、或いはキックを1又は2に繋いでおくのが良さげですね。
あとゲイン調整要らないよ!と言ってもやはりゲインつまみ欲しいですよ。
自分個人だと予めゲインで音量調整しておいてメインフェーダーは0かフルかに振ってしまうプレイスタイルなので、
これもエンコーダーを右いっぱいに回した時点でそれぞれが丁度よい音量でいて欲しかったっす。
まぁシンセやグルボの場合は大抵そっち側にもボリュームついてるだろうからそっちで調整ですね。

◯ミキサーとしての基本動作

6つのロータリーエンコーダーで様々なパラメーターを制御します。
本体中央の青く塗装してある部分のボタンでその機能を決めて各Chごとに値を設定します。

・3バンドEQ
・外部エフェクト用センド2系統。
・内蔵エフェクト用センド量
・パン

ときて最後にLEVELです。
この6つのエンコーダーの回し心地がすこぶる良いです。
ただミキシングをパフォーマンスと捉えているジャンル(ダブとか)にはあまり向いてないとも思います。
そもそも彼らはロータリーエンコーダーではなくフェーダー派ですしね。
即興で出来るプレイはミュートくらい。

あとエンコーダーのLED、これ見にくいです。

光が膨張しちゃうからどこまで光ってるのか把握しにくい。

これはボリューム含めて予め設定を決めておいて(シーンとして登録できる)、
ライブ本番ではほとんど触らないような人のプレイに向いています。

 

◯MIDI端子とUSB端子

USB-MIDIを扱えるデータ用C端子と、電源供給用のC端子、
TRS-MIDI端子(Aタイプ)はINとOUT二つあります。
外部MIDIコントローラーにも電源は別途必要なので実質使えません。

MIDI OUTはエディタを使ってTHRUにする事も出来ます。

ただ、エディタでMIDI THRUにした状態で
USB-MIDIにiPadを繋ぎTRS-MIDI OUTにS-1を繋いでもクロック同期はしてくれませんでした。
何故?これではiPad音楽アプリ使えません。

じゃあ何の為のMIDI機能なの?

声を大にして言いたいですよ。
せいぜい内蔵ディレイのテンポ同期にしか使えねぇじゃねぇか。

◯内蔵エフェクトは結構使える

各Chに空間系5種類、マスターにコンプレッサーを備えています。

中でもホールリバーブ、スプリングリバーブ、エコーを気に入ってます。
エフェクトの細かいパラメータはパソコン繋いでエディタから操作します。

S-1のエフェクトをオフにして試してみたけど、
モノによっては「S-1よりいいかも!」と思えます。

◯サウンドパッドわりとだめ

ちょっとした効果音を仕込んでおくのに便利なサウンドパッドは4種類の音を各ボタンにアサインできます。
しかもワンショット、ループ、トグルと3種類のトリガー方法を選ぶ事が出来るんですが、
LOOPモードにしても外部クロックに連動しません(おい)。
あと内蔵エフェクトかけられません。あんまり使い物にならないね。

◯マスターコンプは気をつけよう

これはL6に限らずどのセットにマスターコンプを入れた時に起こる現象ですが、
コンプレッサーは音量に対してかかり具合が変わってしまうので、
例えばキックを抜いた時に他の音量が不自然に上がってしまいます。
これがリミッターだとそうはならないのですが。

◯ダメなところ

・安っぽい。安いんだから当然なんだけど、全てのZOOM製品のデザインには貧乏臭さを感じてしまいます。
これガンメタじゃなくて真っ黒の方が良くね?シリーズ共通にしたかったから?いやいやシリーズ全体で色がダメ。
別に有名な人でなくても良いから、値段が少し上がっちゃっても構わないから、
デザイナー雇って下さい。そもそもZOOMのロゴもダサいからデザイナー雇ってください。
ZOOMの人が読んだら怒るだろうけどダサいものはダサい

ダセぇシールつけんな。

◯ユーロラックアダプターはまだ売ってないよ

冬に発売予定だという事ですが、42〜45HPくらいありそうです。
荷物を極力減らしたいので購入予定ではいますが、
電源はどこから取るんだろう?
メーカー側で用意してくれなくても5VUSB-Cコネクタを作っちゃいますがね。

◯おすすめしたい人

・ライブ本番であまりミキサー触らない人
・トラックごとに録音したい人
・お金ない人

お金を持ってて体力のある若い方はmodel12買いましょう。

◯まとめ

安いだけあってそれなりの理由が機能面でも露出してしまいますね。
気が付きにくい部分なので邪推をすれば上手く隠しているな、といった印象です(褒めてます)。
けどクロック周りはアプデで何とかして下さい。
「マシンライブ向け」と謳っている割にクロックが弱いのは許せません。

もともと録音機器はDR-100mk3やUS20x20などTASCAM派だったのですが、
ZOOM製品は安かろう悪かろうと勝手に決めつけていましたが、R4やL6を使ってみて考えを改めるようになりました。
コスパが良いのはもちろん、キャッチーな機能の大盤振る舞いな所が気に入りました。
これでモジュラーシンセでの屋外撮影録音でもミックスダウンが出来るようになります。
ただ正直なところ「売れまくって品薄状態が何ヶ月も続いている」ってそれほどのモンかぁ?
と思ってしまいます。

デメリットを把握した上での購入ならアリですけどね。

 

 

 

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