マシンライブの仕込み方【芸風編】

マシンライブの芸風の6,7割は選んだ機材の組み合わせによって決定しちゃいます。
自分のプレイスタイルに明確なヴィジョンを持っているのが一番ではありますが、
実際に活動をするとそんなの机上の理想論でしかない事を思い知らされます。
新しいオモチャが手に入るとそれだけでベクトルがガラっと変わっちゃいますしね。

機材の選び方でプレイスタイルが決まってしまうのは仕方ないけれど、
逆にやりたいプレイスタイルから機材を選んでいくのはどうでしょう?

というより、
実はあんまりプレイスタイルって定まっていないんですよねーこの分野。
自由過ぎるからかえって選択に困る、という声も聞きます。
ウチのワークショップは特にフリーダムですよ!

こないだこのモジュラーシンセでバチバチバチって稲妻だしてたもん。
ほんと焦ったわw

◯ミュージシャンとして振る舞うか、DJとして振る舞うか

マシンライブを始めるにあたって大きく影響するのが
当人がそれまでに影響を受けた、或いは磨いてきた音楽活動。
その価値観は古来の生楽器文化かクラブ/DJ文化かの
どちらかに大きく影響を受けています。
どちらかの経験があれば分かり易いし、
そうでなくても自分の肌に合う価値観を選ぶのは難しくありません。

・生楽器の価値観

キーやスケールなどの基本的な音楽理論は体得する
一曲一曲と曲単位で精魂を込める
アクションでオーディエンスを引き寄せる
メロディやフレーズ重視

・DJの価値観

キーやスケールなどは完全に無視、BPMが至上
曲は演出の為の素材でしかない
場の空気を読んだ上で臨機応変に対応する
音色重視

文化として捉えるならこのマシンライブ、
DJと生楽器各々の文化がDTM技術によって融合したもの、とも言えます。
著名なオリジネイターの逸話は別として、
僕ら凡人にはそういう解釈でいいんじゃないでしょうかね。

文化が融合していると受け手にとっては面白いんですが、
担い手の立場に立つと何が正しいのか混乱しますよね。
そこで一度は融合している価値観を分けて考えてみる事をお勧めします。
芸人か職人か、アーティストかクリエイターか、
そういった意味を突き詰める経験をするとベクトルにブレが出にくいものです。

◯プレイ時間全てを1曲として捉えるか、1曲ずつプレイしていくか

一般的なライブのように自分の作った曲を何曲かプレイする、というスタイルと、
DJプレイのようにプレイ時間全てを1曲として捉える考え方とがあります。

前者は音にメリハリをつけやすく一般のリスナーにも伝わりやすいです。
後者はミニマルなトリップ感を演出し易いですね。
ライブイベント向きかクラブイベント向きか、という分け方も出来るだろうし、
器用な人なら箱やイベントごとに志向を変えられるのかもしれません。

◯即興率とバリエーションは反比例する

前記事でお話した「即興型」と「仕込み型」の機材の違い、
これはそのままプレイヤーの性質にも当てはまります。

・パターン登録やソング構築を一切しないインプロヴァイズ・スタイル

電子楽器を「純粋な楽器」として捉える考え方でもあり、
パターン作りは勿論、シンセサイズの工程でさえもライブとして見せる芸。
ただし忙しい割に手数音数の限界は低く、長時間のプレイではダレてしまう事も。

・フィルターやエフェクトのツマミ芸
・モジュラーシンセの即興パッチング
・シーケンサーのライブ打ち込み
・他プレイヤーとのセッション

Roland AIRAシリーズやKORG volcaシリーズなどが向いてます。
SQ-1やBEATSTEP、AKAI MPCの指ドラムもコッチですね。

・ガッチガチに構成を固めて望むコンストラクション・スタイル

電子楽器の「電子」に重点を置いたニュアンスでストーリーを構築する考え方。
DAWや多機能サンプラー、膨大なシンセパッチを駆使して
バラエティに富んだ設計ができる。
弱点はライブ感が弱い為にオーディエンスへのアプローチ力に欠けること。

・ジャンルを跨いだリズムやフレーズの選択
・長尺のフレーズやサンプル
・自作曲の反映
・世界観の演出が伝わりやすい

DAWやシーケンサー単体機は当然ですが、
ELEKTRONやKORGの歴代ELECTRIBEがコレ出来ます。
100%どちらかに振り切ったプレイスタイルは珍しく、
大抵の場合は各々の比率を調整しながら機材を選んでいくと思います。

とりあえず最初の主機材と副機材の2台構成を考えるなら、
どちらかを仕込み向き、もう一方を即興向きの機材にするのが良いでしょう。
その上で自分の志向を確かめながら機材を増やしていきましょう。

◯音質の方向性


ハイファイ志向かローファイ志向かによって、
その人の言う「いい音」が真逆のベクトルを向いてしまいます。
端的に言うとMOOGのような太くて荒々しい音が好きか、
NordLeadとかVAシンセのようなキラキラした綺麗な音が好きか、ですかね。
太さも綺麗さも欲しい?なら60回ローン組んでプロフェットでも買って下さい。
あらゆるシンセはメーカーや機種ごとによっての個性があり、
その個性を活かすか、或いは弱点を補うかによって加えるべきエフェクトが見えてきます。

例えばキラキラ系最右翼グルーブボックスCIRCUIT、
これにStrymonのリバーブBlueSkyなんか通したらフロア一発昇天します。
「なんかモテそうな音」がするんですよCIRCUIT。
逆にグダグダシーケンスなTanzbarの揺れるタムにテープエコー通したら三途の川が見えました。

ベクトルの違うシンセを一緒に使うのは至難の技で、
自分にとっては水と油のように聞こえてしまいます。
それでも上手く使っている人も沢山いるもんです。
そういう動画なんかを見ると関心しちゃいますね。

◯構成例


自分の場合ですとOCTATRACKを核に据えていた頃は完全にコンスト派でした。
DAWで作ったループを仕込んでおいて、現場で選択する、というやり方。
PCDJのTRAKTORにあるSTEM機能をOCTAでやろうとしていたんですよ。
正直操作が大変なだけであんま面白くない。DJと変わらないし。

で、今現在はドラムだけは仕込み、
その上のベースやリード(シンセサイズ含む)を即興で出来るよう練習してます。

そう、自分はDJ崩れなので
「楽器を演奏する」ではなく「機械を運転する」という捉え方から始まってるんですよ。
ワークショップのレギュラー陣には現役のミュージシャンが2,3人居ます。
そこから影響を受けて自分の価値観を一度ぶっ壊そうっていう考え方です。

具体的にはanalogRYTMに様々な音楽ジャンルのパターンとサンプルを仕込んでおいて、
現場ではパターン選択と抜き差しくらいしかやりません。

2台ずつあるMINIBRUTEとSQ-1は両方いっぺんに音を出す事は控えて、
片方の音を出している時にもう一方はヘッドフォンで音とパターンを作っておき、
それを交互に出す、というDJ的なやり方です。
PFLのあるミキサーが必須ですが。

エフェクトに関しては、
RYTM→StrymonDECOでローファイ化してMINIBRUTEの音に合わせる
MINIBRUTE1→EHX ToneTatoo(ディレイ/ディストーション/コーラス)
MINIBRUTE2→MXR Echoplex Delay(テープエコー)
後はミキサー内蔵のリバーブを微調整してます。
課題はやはり「パターン登録の出来ないSQ-1」と「パッチ登録の出来ないMINIBRUTE」が
暴れん坊過ぎて収集つかない事ですね。ここは数をこなして慣れるしかありません。
これで少しずつ「楽器の演奏」って奴を把握していければ良いなーと思ってます。

◯まとめ

現場で実際にぶつかった問題や、先輩方からの血の通ったアドバイスをまとめてみました。
ネットで情報や動画を集めているだけだと見えにくいポイントだと思います。

機材を持って外に出掛けましょう!

photo:Dunsr
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