ケーブルDIYのススメ

ハード機材を揃えていくと地味に厄介な出費になるのがケーブル。
大抵の方はカナレのギターシールドあたりを1000-1500円くらいで購入しているんではないでしょうか。
始めのうちそれでいいんですが、長さや端子の形などで使っているうちに不満が出てくる事だと思います。

そこでハードシンセを使う人達全てにお勧めしたいのが自作。
電子工作やハンダ付けの経験が無い人でもコスパ的にすっごく重宝するスキルですよ。

◯ケーブル自作のメリット

・長さが自由自在

市販のモノは大抵1mから、あとは3mとか5mとかチト大雑把過ぎますよね。
自作が出来るようになれば短くまとめようと長くしようと自由自在。
自分の場合は機材間のケーブルを60cm、エフェクター用を30cm、
ミキサーからの出力を3mにしています。

・色も端子も選び放題

標準的なフォン端子(TS/TRS)でもDJ/オーディオ機器で一般的なRCAでも、
もちろんキャノン(XLR)でも選び放題。L字もあるでよ。
構成が変わった時だって少し切って別の端子に付け替えるのなんて朝飯前。
また凄く重宝するのが色を選べる事。自分の場合は全て赤で統一しているんで、
暗い現場でのセッティングや片付けで助かっています。パクられる事もないしね。

・壊れても修理できる

ケーブルって意外とヤワで端子付近の部分で断線が起こったりする事がよくあります。
自作の方法を覚えておけば接触の悪いケーブルもゴミにならずに済みます。

・ワンランク上の材料を使える。

フォンケーブルを買う場合、カナレのが1300/1mくらいでしょうか。
自分が使っているモガミ2534とアンフェノールの端子を足しても1000円切ります。
材料のランク的には1段2段は上の物。作る手間を惜しまなければ地味なグレードアップが出来るんです。

◯はんだ付け未経験の方でも大丈夫。

かくいう自分も電子工作の経験は無かったし学校ではんだ付けを習った記憶もありません。
イチから道具を揃えると約1万円ほどの出費になりますが、そんなんすぐに元取れますよ。
作業時間も最初は手こずるかとは思うけど慣れれば1時間で5,6本くらい余裕です。

◯道具の選び方

以前の連載「x0xb0x制作記」でも電子工作の道具を紹介しましたが、
ケーブル作りに限定するならもっと安い物でも大丈夫。

・ハンダごて&こて台

30W~40Wくらいの物がちょうど良いすね。
1000円で買えます。ブランドも白光かgootなら大丈夫でしょう。
将来ちゃんとした工作をしたいなら温度調節機能が付いた物を選びましょう。
4000円くらいで買えます。

あとこて台は必須な。

・ハンダ

ハンダは結構重要です。使いにくいハンダはストレス溜まります。
太さも色々ありますが自分は0.6mmと細めの物を好んで使ってます。

オーディオ自作系で定番は日本アルミットの紫の奴。

音がイイとか謳ってますが話半分に受け取りましょう。
それより作業性がイイんで使ってます。

・カッターナイフ

別に100均のでも何でもいいんですが、
結構な頻度で使う物なんで力の入れやすい大きな刃の物を買いましょう。

ホームセンターに行くと「黒刃」という替刃が売ってまして、
これ普通の刃よりも鋭くて切れ味イイんですよ。

・ニッパー

100mmサイズの物があればOK。
百均のは避けた方が無難、ホームセンターで500円程度の物で大丈夫です。

・ラジオペンチ

コッチは大活躍するんで先の細い物と普通の物と2種類用意しましょう。

・ケーブルストリッパー

ケーブルの皮むき専用工具。
これはチョット値が張りますが必須アイテム。
コツを掴めばニッパーでも出来ますが、コチラの方がストレスフリー。
2000円でイライラせずに済むので買いです。

・スケール/金尺/定規

何でもいいです測れりゃいいです。
スケールは3m~5.5mくらい、テープ幅が広い方が使いやすいですよ。

・アルミのヒートクリップ

本来の用途とは微妙にズレてますが必須アイテムです。
先の曲がった奴、まっすぐな奴と2,3個ずつくらい用意しましょう。

小さな万力なんかもあると便利。

・ベニヤ板

テーブルや机を痛めないための作業台として使います。
30cm四方もあれば十分じゃないかな?

・テスター

導通が確認できればオッケーなんで安物で十分。
導通した時にピーって音が鳴る奴が便利。
イイ奴は本格的な工作を始める時に買いましょう。

またケーブル専用の導通チェッカーなんてのも売ってます。
非常に便利なので大量に作るなら買っといて損ねぇっす。

◯材料屋さん


自分は秋葉原ラジオ会館2Fのトモカ電気で購入しています。
お店が広くて選びやすいので便利。
(トモカ電気・WEBSHOP)
http://tomoca-shop.jp/shopbrand/062/Y/

音質に凝りたい方ならオヤイデ電気の店員サンに根掘り葉掘り聴くのもいいですね。
https://oyaide.com/catalog/

秋葉原まで行ってらんない人はサウンドハウスでどうぞ。
ちゃんと切り売りコーナーありますよ。
https://www.soundhouse.co.jp/category/middle/11

◯作ってみよう!

材料は自分が一番気に入っている「モガミ2534」「アンフェノールのTSプラグ」を使って、
一番単純なモノラルのフォンケーブルを作ってみます。

モガミのは値段もソコソコ安く音質十分、何よりも柔らかいのがメリット。
アンフェノールは質感と値段、作業性の良さでバランスが取れています。

1.ケーブルの切断とプラグカバーの取り付け


適当な長さにニッパーでザクっと切ります。

あらかじめプラグカバーと絶縁用のビニールの筒をケーブルに通しておきます。


アンフェノールは別売りのブーツが各色売っているのでこの時につけておきます。

ケーブル作りに慣れる頃になると、この工程をウッカリ忘れてはんだ付けしてしまい、
後で気付いて最初からやり直し、なんて事が多々あります。ご注意を。

2.皮むき


外の皮膜は台の上にケーブルを置き、上からカッターを当てながらクルリと回して切れ込みを入れます。


完全に切れなくても指で引っ張れば切れてくれますよ。


皮膜のすぐ内側を回っているシールド線は一度ほぐしてからよじってやります。

中から青と白のケーブルが2本ずつ出てますんで、色ごとにまとめてよじってやります。
中央のナイロンのワイヤーはニッパーでカットしましょう。


芯線はワイヤーストリッパーで皮膜だけカットします。
ワイヤーストリッパーを買えない貧乏人はニッパーでコツを掴むまで頑張って下さい。


(写真では白い線もカットしちゃってます)

ちなみに露出させる長さなんですが、付けるプラグによってまちまちです。
端子の形と比べながら切ってやりましょう。
自分の場合皮膜を15~20mm、青白の線は3-5mm程度にしています。

3.配線

モガミ2534の場合はシールドと青、白の3種類の芯があります。
端子の両端で間違えなければ何でもイイっちゃイイんですが、
一般的には「シールド=グラウンド」「青=ホット」「白=コールド」と決まってるっぽいです。
あれ?青がコールドだったっけ?まぁいいや。自分が分かってればいいんです!

TS(モノラル)プラグの場合はシールドをグラウンドに、青白どちらか好きな方をホットにします。


TRS(ステレオ)の場合はホットとコールドで長さが変わってくる物もあるので要注意。
この時に皮膜を剥きすぎていると青と白の線がくっついてしまいショートします。

4.予備ハンダ

ここが大事な下準備。
端子とケーブルをくっつける前に、各々にあらかじめハンダを盛っておいてやります。
盛る、というよりはケーブルは「染み込ませる」端子には「塗る」といったニュアンスです。

予備ハンダが出来たら端子の位置に合わせて余分な線をカットしてやります。

5.仮固定


ケーブルのはんだ付けで最も重要な工程です。
ケーブル作りの上手い下手はココで決まると言っても過言ではありませぬ。

万力があればプラグを挟んでおきます。

端子とケーブルがしっかりくっつくように、
尚且つコテ先を当てる部分が露出するようにクリップで挟んでやります。

6.本固定


一応はんだ付けの基本を説明しますと、
コテ先を材料に当てる→材料が十分に熱くなったらハンダを差し込む、です。
コテのW数、コテ先の形、はんだの種類、ケーブルの種類、
そんな要素ではんだが溶けるタイミングが変わってきますので、
この順番とタイミングを身体で覚えておいて下さい。


よく「リズム感がー」とか言われますが、
年がら年中ドンドンチキチキ言ってる僕らなら問題ありません。
BPM120で4拍コテを当てて次の2拍ではんだ挿して、
3拍目ではんだ離す、コテそのまま、
はんだがちゃんと溶けたのを確認してコテ離す。みたいな。

ハンダを差し込むポイントはコテ先と材料との中間(でなんとなく材料寄り)。
コテ先だけに当ててもハンダが丸い玉になって材料に流れていかないです。

通常の電子部品では長時間コテを当てるわけにはいかないんですが、
ケーブルなら幾ら当てていても大丈夫(安ケーブルでない限り皮膜も溶けません)。
慌てる必要はないのでこの機会にじっくり覚えましょう。

7.プラグの取り付け


はんだ付けが上手くいったらプラグが差し込めるように
ラジオペンチでギューっと潰してやります。

潰さなくても大丈夫な場合は手で摘んでグリグリと動かします。
これではんだが取れてしまうようならやり直し。

8.導通確認


両方のプラグを付けたらテスターを使って各端子の導通を確認します。

この時に違う端子にも当てて絶縁も確認してください。

◯まとめ

1本できたら今まで使っていた物と聴き比べしてみるのもいいですね。
音質の傾向が好む好まないはさておき、意外と変わるもんですよ。
コスパ的には1mを10本くらい作れば道具代の元は取れます。
ホントお得だから挑戦してみて下さい。

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