シンセサイザーのヤバい道

どこの業界にも黒光りしたオーラを放つド変態はいるものですが、
僕らのフィールドも修羅の道に一歩踏み入れてしまうと元の世界には戻れない危うさがあります。
カネに糸目をつけないって程度ならまだ可愛いもので、
他のレジャーだったり家庭や恋愛だったり仕事だったり、
人生における様々な幸福を犠牲にしてでも欲しい音を追求する魑魅魍魎の世界です。
音楽系ではミュージシャン、DJ、ピュアオーディオなどなどそれぞれに独特の癖がありますが、
こちらシンセサイザー界隈は理系的な意味でヤバい人が多いようですね。
キーワードは「差別化」と「人柱的実験精神」でしょうか。
自分がハマったり観てきたりした「シンセサイザーのヤバい道」を紹介します。

◯シンセサイザーにハマる人達

文化の成り立ちからしてDQN気質のあるDJや、
自己顕示欲の爆発暴発が多いバンドマン、
オカルトめいたピュアオーディオ層とは違い、
圧倒的に理系な人達が多いようです。
学歴の高低は別にしても理工系の学校出身者ばかり。
独身率と収入はやや高め、プライドとオタク気質が非常に強いのが特徴。
女っ気は無いけど絶望的にモテないってほどでもなく卑屈さは感じず。
職種はIT系が異常なほど多い。オレから観ると9割くらいそうじゃね?って思う。
職場では真面目なタイプなので案外安定した家庭を築いてる人も。

ジャンプやマガジンよりサンデー派が7割
SFやロボットアニメに目がないのが9割
アニメ美少女が好きなのは5割
喫煙率と酒乱率は1割未満
SNSは圧倒的にTwitter

◯モノシンセ・シンドローム

シンセサイザーの最もシンプルな形式であるアナログ・モノシンセ。
メロディアスとは言い難いブーとかビーみたいな音しか出せない筈なのに、
世界中のあらゆるメーカーから様々な機種がリリースされてます。
それらのブーとかビーとかの違いに気がついてしまったらイエローカード。

だいたい最初はKORGのmonotribeやmonotron、volcaあたりを
なんか可愛いからって理由でオモチャ的に買うんですが、
自宅ではなくクラブやスタジオで本気の音を聴いてしまったらもう大変。
値段はともかくサイズ的に手頃な事もあってモノシンセだけを何台も買い漁る羽目になります。

3000円で買えるmonotronから50万じゃ利かないMOOGまで、
みんなブーとかビーとかしか言わない筈なのにね。

 

◯KORG萌え

monotribeやmonotron、volca、はたまたカオスパッドやカオシレーターなど、
ガジェット色の強いKORG製品を「可愛い!」と錯覚してしまう軽度の疾病。
30代後半以上のオッサンに何故か芽生える乙女心を絶妙にくすぐるKORGあざとい。
ここにヤられる奴は絶対ガキの頃ビックリマンシールとかSDガンダム集めてたぜ?
値段もサイズも手頃なのでうっかりフルコンプリートした挙句に
各機材に◯◯子とか名前をつけてペットのように可愛がります。
特に害は無いけど気持ち悪いから家族にはバレないようにしててね。

ちなみにこのKORG萌えを悪化させるとTeenageEngineeringに手を出し、
萌え要素がねじれてレトロ方面に走るとMFBに手を出します。

◯ユーロラック・モジュラーシンセ

モノシンセ病をこじらせると大抵コッチの患者になります。
FAZZとかデンドロビウムが好きな人は要注意。

当ブログでも連載記事を書いていましたがかなりアクの強いシンセ沼です。
「実験音楽」というより「音楽実験」に最も適したシステムで、
ケース次第でどんなシステムでも構築出来る事が最大のメリット。

一度手を出すとミキサーもエフェクトも
全てユーロラックに収めなければ気が済まなくなり、
そこまで行くと何故か選民思想が強くなる面倒な輩もいます。

中にはケース内の空いたスペースをブランクパネルで埋めるのは邪道!とかいう人も居て、
「ケースの隙間は心の隙間」とワケのわからない迷言を残していった事もあります。
今でこそワケわからんと言えますが当時は迷言ではなく名言に聞こえてたからヤバい。

数十万からの投資額と年単位での経験が必要で、
苦労の分だけプライドが高くなるのは致し方ないところ。
とはいえ出てくる音はブーとかビーとかに加えてブモォォん!程度です。
あと何故かリズムを嫌う人が多いのも特徴。

はたまた電子楽器の枠を超えて「おもしろ電子実験機材」に走る人達も珍しくなく、
煙吹いたりレーザーをシーケンスさせたりを出したりな人も稀にいます。
あと理科の実験してる人とか大人のオモチャをCVで動かしてる人もいたよ!

当ブログを読んでモジュラー始めた方がいらっしゃるようで有難い限りなんですが、
思う所あって全て処分してしまいましたゴメンナサイ。
手放したとはいえ数十万の投資がガッチリ活きているのは記事読んでくれる方にはお分かりでしょう。

辞めた理由ですか?

「ケーブルが邪魔でツマミを回しづらいから」

です!

オレやっぱりアレックスとかヘイズルTR-1くらいが丁度いいわー。

 

◯個人輸入癖

よくある廃人化のキッカケになる悪癖。
日本では流通されていないレアな海外製品をくまなく探し人柱と化す行為。
この一線を超えてしまうとそれまで躊躇していたタブーを屁とも思わなくなる。
英語が読めずにGoogle翻訳だけで購入手続きをしたりマニュアルと格闘する猛者も多数。

あんまり頻度が高いと税関でブツを止められて申し開きに出向く羽目になったり、
ebayでお金払ったのに品物送ってこない詐欺に遭ったりするので要注意。

 

◯自作/改造厨

これはガンダムというよりボトムズの世界ですね!
DIY文化が定着した海外ではユーロラックのキットやスタンドアロンシンセ、
ドラムマシンのキット販売品がよくあります。
ボクもユーロラックから始めデジタルドラムマシンLXRやx0xb0xを作りました。
もちろん完成品よりコスパもレア度も高い物で、改造に関する経験を得られるのもメリット。

自作にハマる人はツマミ回すよりもネジ回す方が多くなり、
既成品を分解する行為に性的興奮を覚える変態です。
症状が酷くなるとハンダの焼ける匂いでトリップしたり回路図でオナニーをしたり、
機材集めから機材を作る機材集めにシフトします。

自分スか?
モジュラー辞めたのもコッチの自作方面へステータス全振りする為で、
近々より廃人度の高いプロダクトを作る予定です。

 

◯ELEKTRON依存症

ELEKTRONの小賢しいマーケティングの罠にズブズブとハマり、
リリースされている全部の機種を網羅しないと気が済まなくなる病気。
出音は(値段の割には)大したことないんだけど、
シーケンサーとパターン管理、PCエディットなどの機能性
なんかでダントツのバランスを保っているんだよね。

ちなみにアタクシ、
MD買って売ってA4買って売ってAR買って売ってOT買って記事書いて売って、
OverBridgeがリリースされたらARまた買ってA4もまた買ってと、
覚醒剤のような依存具合から立ち直れませんが、
DigitaktとOTmk2のデザインが好みから外れてきたので回復の兆しが見えてきました。

 

◯秘密結社DaveSmith教団

MOOGと並ぶ名門メーカーDaveSmith。正にシンセ界のポルシェ。アメリカだけど。
ここのシンセに手を出すと出音の良さに病みつきになり他メーカーを排除してしまう傾向があるようです。
名機Prophetを筆頭に、デジアナハイブリッドシンセEvolverとか現行最高峰ドラムマシンTEMPESTとか、
買うのも大変、使いこなすのも大変、なのに苦行を辞められないって人が結構いますよね。
まぁ使ってるだけで称賛の眼差し。
出音は本当に素晴らしいもので、ライブな筈なのに完成された曲のような錯覚を覚えます。

 

◯ローランド・ビンテージ沼

TR-808や909、TB-303などのクソ古い機種がトンデモない高値で取引されているのは、
コレクターズ・アイテムであると同時に現代では再現出来ないロストテクノロジーでもあるからです。
他にもSH-101/202とかSystem100とか往年のRolandは名機の宝庫ですよね。
それはいいんだけど、こじらせるとオリジナル原理主義者と化して周りから煙たがられます。
あとお金幾らあっても足りないよ。

 

◯売買厨

買ってみたものの上手く使えないから売る、という行為を繰り返すうちに、
演奏スキルが上がらずにスペックの読み方だけが突出してハイレベルになってしまう病気。
買値-売値の差額を「レンタル料」くらいにしか捉えておらず、
市場に出回る全ての機材をカジらないと気が済まなくなる事も。

 

◯スペック至上主義

最近は勢力が弱まってきたものの、
DAW以前のPCM音源やFM音源が全盛だった時代には沢山いたようです。
同時発音数やプリセット音色の数が多ければ多い程エラい、という価値観で、
「数字」と「暗記」がマウンティングの武器だったようです。
このあたりの話を聞くと80年代オートバイブームのHY戦争を彷彿とさせられます。
メーカー同士が争うのはいいんだけど、
何故かユーザーが代弁者となって低スペックの相手を貶し合うのは解せませんわw

◯これらのビョーキの治癒方法

20代〜30代前半なら救いはありますが、35歳以上の方はもう手遅れです。
シンセを辞めて音楽を辞めれば一時的に症状が軽くなるかもしれませんが、
きっとカメラやクルマやピュアオーディオなど別の沼に飛び込む事になります。

どうせ死ぬまで治らないんだから、上手く付き合っていくしかありません。
かけた苦労に見合った対価を得られればいいんですよ。
そこに満足が出来ないからフラストレーションが溜まって余計に酷くなる。
対価ってのは別にプロやセミプロとしてお金を稼ごうって話じゃなくて、
自己顕示欲の理想的な消化が出来ればどんな形でもいいんです。

それには何よりも「内輪ノリで満足せずに別コミュニティに殴りこみをかける」事。
シンセ担いでDJイベントやライブハウスで
チェケラッチョ野郎やメンヘラバンギャをぶっ飛ばしましょう。

 

◯クリエイティブワークのコラボレイト効果

自分が主宰するイベントは第一日曜の「マシンライブ・ワークショップ」とは別に、
第三日曜に「DJxマシンライブxフォトグラフ」をテーマにしたパーティをやっています。

https://www.facebook.com/TumbleFishbullets/

写真を撮られるって事は演者/機材共にビジュアル的な個性も要求される事になり、
DJは女の子を中心にブッキングしているので、
比較的冷めたオーディエンスを相手にする必要があります。

マシンライブをシーンとして確立させるには、
パフォーマーとしてのエンタテイメント性を保てるかどうか。
これが自分の創るコミュニティの大きなテーマでもあります。

どちらも西麻布bullet’sで17-23時に開催中。FEEは¥1500/1Dです。

http://bul-lets.com/new/

 

◯まとめ

半分以上は自己紹介になってしまいましたが、
自分以上にヤバ目な方々も沢山います。
カタギの人達から見るとエクストリームな変態ばかりでしょうけど、
もう普通の音じゃ満足できない身体になってしまっているのは諦めましょう。

どうせハマった沼ならいっそ開き直って突っ走ってしまえば、
もしかすると新世界の幕開けが見えるかもしれません。

頭の痛い問題はこれらの症状が出ると満足に曲を作れなくなる事ですね!

おーだいーじに〜!

 

 

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