シーケンサーの選び方2017

マシンライブ機材の構築に欠かせないシーケンサー選び。
「最高の一台」なんてモノがあるはずもなく、色々試してベターなモデルを探すしかありません。
前記事「シーケンサーの選び方」から1年間の迷走レポートをまとめてみました。

シーケンサーとは自動演奏機。
DAWのピアノロールにあたる部分と言えば分かりやすいでしょう。
またマシンライブでは音源一体型のいわゆるグルーブボックスが主流ですが、
一歩踏み込んで個性的な音を扱いたい時は単体の音源モジュールが必須になります。
そこで必要になってくるのが単体のシーケンサー。
メーカーごとに様々な操作方法があって、音源以上に個性に差の出る機材であります。

またグルーブボックスの中でもMIDI OUTを通して外部音源を鳴らせるモデルもあります。
使い慣れた操作感で音源モジュールの優れた音源を演奏するのも魅力的ですよね。

◯ステップシーケンサーの打ち込み方法

・ツマミ型
SQ-1のように各ステップごとにあるツマミで音程を決めるタイプ。
即興性に優れてます。

・トリガー型
Roland TB-3のようにステップを指定して鍵盤などで音程を決めるタイプ。
ほとんどのグルーブボックス.シーケンサーがこの方法です。
打ち込んだフレーズをパターンとして登録出来るので、仕込み重視のプレイに最適です。
ELEKTRONのようにステップ指定後にツマミで音程を替えるタイプもあります。

概ねこの二つのどちらかを基本としつつ、
即興性や仕込み性を強化する機能をつけています。

◯スペックの読み方

・トラック数
DAWのトラックと同じ概念です。
一度に何種類の音を鳴らせるかって事です。
そりゃまぁ多い方がイイに越したことはないけど、
注意したいのはトラック数と操作性は反比例する事。
自宅やスタジオなどでの制作ならともかく、ライブではテンパります。

・ステップ数
一つのパターンの中で分割出来る時間軸の数です。
単純に小節数として捉えても
ツマミ型ステップシーケンサーでは1小節8ステップの物もあるし、
旧型のELECTRIBE EMX/ESXは8小節128ステップまでいけます。

ほとんどのモデルは1小節16ステップ4小節64ステップかと。
トラックごとにステップ数を変更できるモデルは便利ですね。

・MIDIクロックスレーブ
MIDI IN端子を介して外部機器のクロックを受ける機能。
これが無い、あるいはUSB MIDIのみ対応なんて機材はかなり不便です。
SQ-1ならvolcaシリーズをMIDItoSYNCコンバータとして使うとか、
BEATSTEPであればiConnectMIDIなどのDIN MIDI to USB MIDIコンバータを使うとか、
機材を一つ増やさなくてはいけません。
やはりスレーブ対応してくれた方が有難いです。

・CV/GATE対応
モジュラーシンセや古いアナログシンセでお馴染みMIDI以前の演奏信号です。
特にモジュラーシンセでは音程だけでなくほぼ全てのパラメータをCV信号で制御できるので、
(フィルターのカットオフでもLFOのスピードでも)
多トラックのCV/GATEシーケンサーがあると強烈なフレーズ作りが可能です。

ELEKTRONのパラメータロックやKORGのモーションシーケンスと同じ事ですが、
自由度は格段に高いです。

・SYNC CLOCK IN/OUT
KORGのvolcaやmonotribeでお馴染みSYNC CLOCKですが、
モジュラーシンセの同期に使われるクロックパルス信号と同じ物です。
これもあると便利。KORGのアナログ好きな方やモジュラー/セミモジュラー使う人なら是非。

・和音対応
一つのステップで複数の発音が出来る機能。
もちろん和音対応の音源が必要ですが、これが出来るだけでより音楽らしい(?)演奏が可能。
DAWや旧来のQYシリーズなどでは当たり前の機能ですが、
ハードのステップシーケンサーでは対応する機種が多くはありません。

◯シーケンサー専用機

・KORG SQ-1

http://www.korg.com/jp/products/dj/sq_1/
新品10000くらい、中古で6000くらい
打ち込み:ツマミ型
出力:MIDI、CV/GATE、SYNC OUT
入力:USB MIDI、SYNC IN
ステップxトラック:16x1or8x2
パターン:無し

長いこと愛用しています。モジュラー使う人なら最初の一台にお勧め。
KORGお得意のアクティブステップを使ったトリッキーな演奏は病みつきになります。
ダメなポイントはC3以下のMIDIノートを吐けない、電池の減りが早い、
同期のスレーブに別コンバータが必要、など色々もどかしい所がありますが、
格安なので1台持っていて損はありません。

 

・DOEPFER DarkTime

http://www.fukusan.com/products/doepfer/dark_time.html
新品7万、中古で4万〜
打ち込み:ツマミ型
出力:MIDI、CV/GATE、SYNC OUT
入力;MIDI、SYNC IN
ステップxトラック:16x1or8x2
パターン:無し

購入を考えてお店でシコタマ触らせて貰いました。
スペック的にはSQ-1とさほど変わらないのに値段は激しく高いですよね。
ただ実際に触るとサイズや質感など含めて納得の品質です。
SQ-1が国産ライトウェイトスポーツカーなら、コチラはポルシェみたいなモン。

どうしても購入に踏み切れなかった理由が、
各ステップのトグルスイッチ。暗い現場では視認性も悪く、操作しづらそうです。

 

・ARTURIA BEATSTEP

https://arturia.jp/products/item/beatstep/
新品1万くらい
打ち込み:ツマミ型
出力:MIDI、CV/GATE
入力;USB MIDI、SYNC IN
ステップxトラック:16×1
パターン:16

小さすぎるSQ-1、高すぎるDarkTimeに比べて手頃な値段と抜群の操作性です。
しかし問題はTEMPOの数値表示も無いし同期のスレーブに選択肢が無い事。

KENTONのコンバータでもあれば絶好の一台かも。

 

・ARTURIA BEATSTEP PRO

http://arturia.jp/products/item/beatstep-pro-2/

新品3万弱
打ち込み:ツマミ型
出力:MIDI、CV/GATE、SYNC OUT
入力;DIN MIDI、USB MIDI、SYNC IN
ステップxトラック:16×2、ドラムx1
パターン:トラック毎16

BEATSTEPの問題点をことごとくクリアしてきた上位モデル。
ツマミとステップキーの配置が解りづらい事を除けばかなりの鉄板モデル。
大きなパッドが特徴なので指ドラムや鍵盤弾きの出来る方にもいいですね。
MIDI CC設定可能なMIDIコントローラーとしても同時に使えるので、
音源次第ではミキサー的に使ったりフィルターにアサインしたりと夢が拡がります。

問題は結構デカい事と、
前述の通りツマミが8×2列なのに対してステップキーが16×1列で操作時に混乱する事。

 

・SQUARP INSTRUMENTS Pylamid

http://squarp.net/
660ドル、船賃込で7万くらいだったか
打ち込み:トリガー型(ピアノロール)
出力:MIDI、CV/GATE、
入力;DIN MIDI、USB MIDI
ステップxトラック:64x64x4だっけか?バカなので数えられません。とにかく膨大。
和音:当たり前ぇよ。

現行の単体シーケンサーでは最強スペック
もうDAWのシーケンサー部分を無理矢理この筺体に収めた感じ。
とうぜん操作に癖が強く習得も困難です。
OCTATRACKより取っ付きづらい。

・Twisted Electrons Crazy 8



https://twisted-electrons.com/crazy8/

250ユーロ、船賃込で4万円

打ち込み:トリガー型
出力:MIDI、CV/GATE、SYNC OUT
入力;DIN MIDI、CV/GATE、SYNC IN
ステップxトラック:16×8
和音:4トラック対応

デジタルアシッドシンセACID 8でお馴染みフランスはTwisted Electronsの新製品。
コンパクトながら8トラック(うち4つが和音対応、4つがCV/GATE対応)と多機能です。
チュートリアル動画を観る限りではA4とOCTAのシーケンス部を足して2で割ったような感じ?
コレ注文したんですが、スペック的には音源を選ばないモデルでしょう。

◯外部音源を鳴らせるグルーブボックス

・ELEKTRONシリーズ

OCTATRACK、MONOMACHINE、DIGITAKTの3機種がMIDIで、
AnalogFour/KeysがCVのコントロールが出来ます。

この中で所有経験があるのはA4とOCTA。

OCTAは64ステップx8トラック和音対応ですが、
色々と操作が複雑なので心が折れます。
A4は64ステップ2トラック。
CV/GATEのみなので使える音源は限定されますが、
OCTAよりはずっと使い易いです。

・ELECTRIBEシリーズ

予算は少ないけど多トラックシーケンサーが欲しい人なら候補に入れて良いかと。
自分はEMX(2万)とEM-1(貰った)を持っていました、
EMXは5トラックx128ステップと長尺にも対応できます。
EM-1は2トラックx64ステップと標準的ですが、
軽くてコンパクトなので持ち運びに適しています。

問題はステップ入力が面倒で、
DAWとか鍵盤を繋いでリアルタイムで弾いた方が手っ取り早い事。

・novation CIRCUIT

6和音まで対応なトラックが2×16ステップ。ドラムも4トラックあります。
MIDIチャンネルは1,2,10と固定ですが、
和音の打ち込み方法としては画期的なUIで非常に分かり易いです。

・Roland TB-3

1トラック16ステップのシーケンスしか出来ませんが、
タッチパネルの操作感と相俟って病みつきフレーズを延々と作れます。
これアシッドベース専用にするのは勿体無いかも。
今ならスゲェ安いしね。

◯音源から選ぶお勧めシーケンサー

・アナログモノシンセ

どれを選んでもいいのですが、やはり単トラックのツマミ型を一台お勧めします。
SQ-1かDarkTimeをデザインと予算で選ぶのが良いかと。

・モジュラーシンセ

CV/GATE対応が必須になります。
モノシンセ一つのシンプルなシステムならSQ-1一つでも十分ですが、
どうせアレコレ増えて巨大になっていくのでBEATSTEP PROでドラムまでカバーするのもいいでしょうね。
或いはSQ-1を複数台使ってフィルターやらLFOやら色々と制御するのも楽しそうです。

・PCM/VAシンセ

BlofeldやVirus、NordLeadなどのVA音源、一世代前のラック型PCM音源などは
マルチティンバーが売りですし、ここは多トラック和音対応のモデルがいいでしょうね。
PYLAMIDかDIGITACTか、ミキサーとエフェクターも兼ねたOCTAなら荷物がグンと減りますね。

◯過去に試してみて良かった&出来たらやってみたいコンビ

・SQ-1+PCMピアノ
まじミニマルでラリれます。これとキックだけでお腹いっぱいです。

・OCTATRACK+Waldorf Bloferd
ループもワンショットもイケる8トラサンプラー+8トラシーケンサーですから、
これとBloferdなどのVAシンセを組み合わせれば大抵のジャンルをカバー出来るんじゃないでしょうか。
しかもミキサーもエフェクターも内蔵ですから、この2台あれば他は要らないかもしんないです。
どちらも持ってましたが所有している時期がズレていた為に試せずじまい。

・AnalogFour+KORG monotribe
アナログって割には音の細いA4をカバーする意味で、
MOOGなどのモノシンセを組み合わせる人は多いですね。
その辺のCV/GATEにしか対応出来ないクラシカルなモノシンセを、
ELEKTRON十八番のパラメータロックでイジると斬新な発想でフレーズ作りが可能かと。

monotribeとの組み合わせで面白いのは、
CV/GATEとしては使わずにA4からパルス波をトリガーとして出力し、
それをmonotribeのSYNC INに繋げます。
そのパルス波をデタラメにトリガーしてやる事でmonotribeのシーケンスが色々とズレて面白いです。
volcaでも可能なのでA4お持ちの方は一度試してみてください。

・Crazy8+PCMシンセ
シンプルな操作感かつ8トラ和音までいけるCrazy8。届いたらPCMシンセをつないで遊んでみたいですね。
つーかコレが使えるようならA4要らなくなるかも。TETRAとかBloferdに替えようかな。

・BEATSTEP PRO+ラック音源色々
薄いけど表面積がクソデカいんで、ラック音源を2,3コ積んでその上に乗っけてプレイするってのは如何でしょ?

◯まとめ

最近はアナログシンセやモジュラーシンセの人気が高くシーンが盛り上がっていますが、
それに比べてシーケンサーの選択肢ってあんまり広くはないんですよね。
特にKORGやRolandの国内メーカーにもっと力を入れて欲しいもんです。
SQ-1PROとか出たら即買いますよ?

同じ音源でもシーケンサー次第で全然違うフレーズになるし、
古い音源だって斬新な発想で鳴らしたりも出来ます。

ドラムマシンやグルーブボックスに飽きてきたら、
単体音源と単体シーケンサーで新しいアイデアを模索するのは如何でしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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