ELEKTRONの選び方

現代版グルーブボックスの最高峰として名高いELEKTRONマシン、
ナカナカな価格設定の割には普及率も高くTwitterでもYouTubeでもよく見かけますよね。
「マシンライブワークショップ」のレギュラー陣も全員2台or3台は持っています。
操作感やファイル構成が独特で他社製品に慣れた人にはとっつきにくい所もありますが、
シーケンサーを中心に本当に秀逸な作りをしています。

◯ラインナップ

主な製品は生産完了品も含めて6種類。
どれも一長一短で強烈な個性があります。

・MACHINEDRUM(略称MD)

ELEKTRONの名を知らしめたデジタル・ドラムマシン。
KORGの初代エレクトライブER-1の超強化版といった趣き。
Mk1とMk2ではサイズ(厚み)や音質が違います。
UWではサンプル取り込みも可能(かなり面倒だけど)。
生産完了品だけど中古で6〜7万円程度で流通してます。
RYTMよりも豊富なシンセエンジンや16トラックあったりするので、
今でもRYTMを採らずコッチを愛用してる人は珍しくないです。

ただし808や909的なアナログライクな音は苦手なようで、
それで敬遠してしまう人も。
逆に「ザ・ゴリゴリテクノ」をやりたい人にはうってつけです。

・MONOMACHINE(MM)

MDの次に出たド変態デジタルシンセ。YouTubeに上がっている動画でも
硬派なテクノからエレクトロニカ、チップチューンまで活躍してますね。

これ最近になって知人がら譲ってもらったんですが音作りの幅が凄く広い。
VA、FM、8bit、ウェーブテーブル、ボイスシンセなどなど
「シンセサイズ沼」にドップリ浸かる事ができます。
実際に触ってみるとド変態どころかフッツーの音も余裕でイケますよ。
まだまだ使いこなせてないけど、
SIDで作る極悪ベースとVAで作る煙たいオルガンがお気に入り。

シーケンサーが現行ELEKTRONと比べると便利機能が足りずもどかしい思いをしますが、
純粋な音源として使っても十分に活躍します。
というかパンチが強すぎて他の機材が霞む程のジャジャ馬マシン。

・OCTATRACK(OT/OCTA)

以前このブログでも連載をしていた万能サンプラー。
サンプラーと言いながらMIDIシーケンサー、ミキサー、マルチエフェクターなどなど
カオスな機能満載でユーザーの心を折り頭をフリーズさせる【サンプラー界の九龍城】。
プレイヤーによって使う機能が全然違うのでアドバイスのしようもない。

最近では競合機種もあるんだけどOCTAのアドバンテージは「他機材との連携」。
シーケンサーで他音源を鳴らしミキサーで取り込みエフェクトをかける、
なんてのを1台で出来るからライブでの省スペース化に最高なんですよね。
複数のハード機材のハブとして最高の機材です。

え?サンプリング?
やった事ないから分かりません!

一度手放したんだけどまた欲しいね。多分また買う。

・analogFOUR(A4)

元々デジタルマシンが得意なELEKTRONだけあって、
所謂MOOGのようなズ太いアナログらしさはありません。
繊細な高域を活かした音色が得意。あとリバーブはすごくイイ。

ノート入力のシーケンサーとしては現行製品で最高峰の使い易さと機能を備えてます。
これを越えるシーケンサーはナカナカ無い筈です。
ただ残念な事に外部音源をMIDIで鳴らす事は出来ません。
CV/GATEは2系統あるのでモジュラーシンセやアナログモノシンセにはバッチリ。

音の傾向も互いの弱点を補い合う形になるので、
MOOG MINITAURやMOTHER32などとコンビを組ませては如何でしょ?

・analogRYTM(AR/RYTM)

現行ドラムマシンとしてほぼ最高のスペックを持っています。
(これに勝るのはTEMPESTくらいじゃね?あれ難しそうだけど)
ドラムシンセだけではチト頼りないところはあるけど、
同一の音色でサンプルを重ねられるので如何様でも補完ができます。

A4と同じく膨大な量のパッチをキット(パッチのセット)として保存できるので、
1台で何役もこなせます。
コイツを買ったお陰で(しかも2回)無駄な物欲をだいぶセーブ出来ていますよ!

あとパラアウトにするとエフェクト効かないけどメチャクチャ音良くなりますMk1。
それからBD/SDにアサイン出来るキック用のシンセがかな〜り優秀で、
ノート入力のコツさえ掴めばブットいベースラインなんぞ楽勝です。

・Digitakt(DT)

RYTMからドラムシンセ部分を除いてMIDIシーケンサーを足した小型機。
他機種より若干リーズナブルな事もあり結構売れているようです。
オーディオ出力も改善されているようでRYTMやOCTAよりも高域がクリアに聴こえますね。
筺体が小さい為に各種操作がひと手間増えているようですが、
それでも初めてのELEKTRONにはもってこいです。

◯よくある質問

・「ELEKTRONて音いいの?」

結構なお値段なんだから音良くて当たり前だろ!と言いたい所ですが、
誰に対してもイイ!と言い切れない所があります。
MD/MMはデジタル特化の荒々しさがあって個性が強烈。
analogシリーズはアナログと言っても所謂MOOG的なアナログらしい音はしません。
A4は得意なパートも狭く用途が限定されがち。
RYTMもシンセよりもサンプルに頼りがちになっちゃいます。

またA4/ARはパラアウトにすると音の分離が凄く良くなるので、
逆に考えればメインアウトの部分がネックになっている、とも見受けられます。
なので自分としては「音良くするには細かく作り込まないとダメ」と答えてますね。
例えばドラムマシンならEQやフィルターを駆使して各パートの不要な音域を削るとか、
キックだけパラアウトして分離を良くするとか、相応の工夫が必要です。

MDは短い期間しか使ってなかったのでうろ覚えですが、
最近導入したMMは音がいい、というよりは音が強い。
OCTAも癖はあるけどマッチョな音。
やはりアナログよりもデジタルの方が得意なメーカーなんじゃない?
なんて思ったりもします。
MD/MM共に買う気が無くても一度は体験してみた方が良いですよ。

ただDigitaktはanalogRYTMに比べて凄くクリアに聴こえたんで、
以降に発売されたAR/A4/OTのmk2は改善されてるかもしんないです。

・「mk1とmk2はどう違う?」

MD/MMはサイズ(厚さ)からして違うのと、微妙に音質が改善されてるようです。
mk2の方が薄いんだけど写真だと分からないので購入時は必ず確認しましょう。
OCTAは細かい部分のボタンが増えてワークフローが改善されています。
AR/A4は逆に巨大化&完全パラアウト化してます。音質も良くなってるとは言うけれど。

トリガーキーなどの押し心地の良さがELEKTRON製品の地味にハマるポイントですが、
世代によって微妙に柔らかくなってきてますね。
(MD/MMの銀筺体世代→OT/AR/A4の黒筺体→DT以降の灰筺体)

・「MIDIで外部音源を鳴らせる機種は?」

MIDIシーケンサーとして使えるのはMD、MM、OT、DTの4機種。
A4はCV/GATEならOKです。
外部入力端子も備わってはいますが機種によって音質/音量がまちまちです。
ARは使い物にならん。OT/A4は実用十分、MMはチョット質落ちる、DTはかなりイイとの事。

◯ELEKTRONの病みつきポイント

・パラメーターロック
ELEKTRONのお家芸。ここで紹介する全機種に備わっています。
ELEKTRONマシンでのノート入力は「トリガーを置いた後でノートを指定する方法」。
この方法で全てのパラメータをトリガーごとに変化させられるんです。
「キックの4拍目だけディレイをかける」「3拍目だけ違う音色のキックを入れる」
「ストリングス鳴ってる途中で音は変えずにフィルターかける」
なんて事もチョチョイのチョイなのです。

・TRC(トリガーコンディション)
OCTA以降のモデルならトラックごとに長さを変えたり、
「◯回に1度だけ鳴らす」「◯%の確立で鳴らす」「特定のボタン押した時だけ鳴らす」
みたいな機能まであります。このお陰で最長4小節(64ステップ)にも関わらず
更に長い展開に感じさせるリズム/フレーズ作りが可能。

・マイクロタイミング
OT/AR/DTについている機能でトリガーのタイミングを自在にズラす事が可能。
シャッフルとは違いマニュアル操作で行う必要がありますが、
往年の名機のシーケンスの訛りなどを如何様にも再現出来るんですよ。
オールドスクールなハウス/ヒップホップなら必須の機能。

・オーバーブリッジ
A4/AR/DTにある純正のPCエディタ兼デジタル録り込みソフト。
特にエディタが秀逸で、パッチやサンプルの管理から大画面での音作りまでこなします。
これが無いとやってられません。

◯あんまり知られてない応用法

実際に使っている人なら分かるんですが、軽く触っただけじゃ気付けない利用法が色々とあります。

・多機能ミキサーとしてのOCTATRACK
OCTAには外部入力が4系統ありステレオx2でもモノx4でも自由にルーティングできます。
尚且つそれぞれに多彩なエフェクトをかけたり、
設定次第ではマスターコンプを設けて他の音との帳尻合わせが出来たりと、
ココだけでもお腹いっぱいな機能です。
単体のミキサーでここまで出来る物はナカナカ無いはず。

・ポリシンセとしてのA4/MM
4モノ/6モノのシンセトラックを持つこの2機種、
複数のトラックを使ってポリシンセモードとしても使えます。
A4はモノモードでの弱点を補い重厚な音も作れるようになり、
ただでさえパンチの強いMMは収集のつかないほどのインパクトに。

・ドラムシーケンサーとしてのMD/DT
ARは外部音源の操作を出来ないけどMD/DT/OTなら出来ます。
JOMOXなりVERMONAなりのドラム音源を鳴らすシーケンサーとしても強力。

・A4のリバーブ
かなり綺麗な響き方をしてくれます。そこらの単体リバーブより高性能。

・MMのチップチューン
MMに内蔵されているシンセエンジン[SID]がブリブリのビロビロです(意味不明)。
Youtubeに挙がっているMMを駆使したゲームサウンドのライブを観ると
笑っちゃうほどイイ味出してます。
ついでに言うと’80sダンスホール・レゲエとも相性がいいです。
誰もやらんだろうけど。

◯ELEKTRONを覚えるコツ

無理して全部の機能を使い倒そうとしない事です。
自分の場合OCTAではサンプリングをした事がなかったし、
RYTMでもシーンやパフォーマンスモードを使ってません。
MMに至ってはシーケンサー使わなくてもいいんじゃね?と思いつつある。
またOverBridge対応の機種では音作りをPC上でしかやらない、ってのもアリ。
たぶん完全にマスターしようとなると年単位での習得が必要ですね。
気長にやっていきましょう。

2ちゃんねるDTM板の「ELEKTRON総合スレッド」が事実上の日本語フォーラムになってます。
過去ログから読んでいくとなにかと感慨深いものですね。
余談ですが西麻布bullet’sで開催しているマシンライブ・ワークショップ、
実を言うとこのELEKTRON板のオフ会から始まったんですよ。
レギュラー陣は全員2,3台持っているので、ちょっと触ってみたいという方も歓迎ですよ。

◯まとめ

モジュラーシンセにハマるのを「沼」と例えるならエレクトロンは「覚醒剤」です。
1台買ったら最後、ドラムからベースから全てのパートを
ELEKTRONにしたくなる誘惑と闘い続けなくてはなりません。
それなりの値段するから躊躇している方も多いかと思いますが、
膨大な機能のお陰で長い目で見れば安上がりです。

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