アートワークの作り方

最近は個人レーベルとして一人で自作曲をリリースできる環境が整ってきて、
わざわざ音楽性の合うレーベルを探さなくてもBANDCAMPや
国内ディストリビューターからリリースする人が増えてますね。

しかし個人でリリースするにあたって地味な悩みどころなのがアートワーク。
デザインの教育を受けた人や本職の人なら造作もない作業ですが、
未経験だとちょっと高いハードルに感じてしまいますよね。

かくいう自分のレーベルRUDELOOPSもほとんどのアートワークを自分で作っていますが、
グラフィックデザインの経験は無いですしイラレも我流なので初歩的な機能しか使えません。
強いて言うならトラックメイクをやる前に一時期写真に凝っていた時期がありまして、
その経験が活きているところはあります。
そこでデザイン経験の無い人のためのワートワークの作り方を紹介します。

○下準備1:コンセプトを出来るだけクッキリさせる

レーベル名、アーティスト名、曲名など作品にちなんだネーミングをしていると思いますが、
そのネーミングから連想できるイメージを出来るだけ具現化(言語化)できるようにしましょう。
自分で作る時もプロに頼む時もこのイメージ(大げさに言えば世界観)を、
音楽に興味のない人にも伝えられるくらいにする必要があります。

例:RUDELOOPS

「RUDE」はレゲエ用語で言う所のチンピラ/不良。
リリースする曲はテクノ/ハウスがほとんどだけど、
ヒネリを加える為にレゲエ用語から拝借しました。
「ルー」ド「ルー」プスと発音で韻を踏んでいるのはラッパーの価値観ですよね。

これは発足当時の拠点が東京神田のDJバーであり、
クラブ文化のメインストリームである渋谷以西に対する軽いアンチテーゼもあり、
集まるメンツもDTMどころかパソコンと縁の無さそうなガラの悪い連中だった事もあります。

ロゴデザインは本職のデザイナーに制作を頼み、
許可を取って更に別のデザイナーに「リミックス」を頼みました。
まがりなりにも世界の市場を相手にするんですから、
和風なイメージを取り入れたく、かつ下町特有のRUDE感を演出するのに
花札の「鶴と松」をモチーフにしています。
(ちなみに所属アーティストは全員花札なんてやった事ないですw)

※デザイナーへの頼み方

アートワーク一枚ならともかく、長く使うであろうロゴマークはプロに頼んだ方がずっといいです。
出来れば同じような音楽を嗜んでいる人がベター。DTMもDTPも両方できる人は沢山いますよ。
直接の知り合いに居なければTwitterなどSNSで探すといいでしょう。
大事なのはプロでもアマでもちゃんとお金を払う事と契約内容を口約束ではなくメールで確認する事。
慣れている人ならロゴ一つあたりの金額とリテイクの上限や納期など提示してくれます。

金額はどうでしょう?交渉次第なんですが、
RUDELOOPSの場合は最初のデザイナーに3万円、リミックスを依頼したデザイナーに1万円払っています。
自分の出せる金額に見合った技量の持ち主を探すのが大事ですね。
作例を沢山残したい学生さんを探すのも良いと思いますよ。

○下準備2:センスを磨こう

DJやDTMと全く同じで、良いデザインをしたいなら沢山のデザインを目に焼き付けておく必要があります。
ここで言うセンスとは才能ではなく感性という意味ですよ。センスのある無しではなく良いか悪いか、です。
センスの良し悪しはインプットした量に比例しますし、
技量や歴史に関する知識を得る事によって体系的に磨かれていきます。

iTunesやbeatportで人のアートワークを沢山観るのも良いですが、
オススメはTumblrやPinterestといった画像系SNSを眺める事を日課にする事です。
自分の場合はTumbleで「お洒落インテリア写真の垢」「タイポグラフィの垢」
「格好いいフォントを集めた垢」「イカすバイクや車の写真垢」
「古い建築やデザインの垢」などをフォローし、
とどめにグラビアアイドルやエロ写真のアカウントをフォローしています。

するとTLを流し見するだけで「アールデコ建築の写真」とオッパイ、
「モダンな文字組のお手本」と女子高生のスカート、
「SF映画のロボット」とガーターベルト、「芸術的アニメ作品の一コマ」と昭和のエロ広告、
そういったものを右脳に焼き付ける事が出来ますよ!

男なら合間合間にエロを挟むのが長続きさせるコツです!え?女?ごめん分かんないわー。
おれインテリアデザインの学校に行ってた頃からやってるから12,3年はほぼ毎日観てるなおっぱい。
自分の脳味噌を騙してしまうのがこの方法の狙いで、
ある程度の期間続けるとデザイン性の高い物を観るだけで興奮してきます。

○下準備3:写真を楽しもう

上記のような方法で沢山の良いデザイン作品を吸収した上で、自分でもアウトプットしてみましょう。
これはやっぱりインスタグラムがいいのかな?オレやってないけど。
別にちゃんとしたカメラを買う必要はありません。
シンセ沼より恐ろしいレンズ沼にハマるリスクが高いので気をつけましょう。

スペック的には今のスマホで本当に十分。
インスタグラムのように画角が正方形のモードで撮る事をオススメします。
ごく基本的な写真の撮り方をレクチャーしてくれる本を一冊くらい読んでみましょう。
自分で写真を撮る事で鍛えられるのが「構図」の感覚
構図を自由に操れるようになると、理屈じゃ伝えられない印象を伝える事ができるんですよ。

○実作業1:ソフトと素材を入手しよう

理想はAdobeのイラストレーター。
フォトショップでも出来ますがすでに慣れている人でなければイラレの方がいいです。
たまにセールやってるので15000円くらい/1年で買えます。
そんなカネかけらんないって人はイラレ系のフリーソフトを使って下さい。

それとは別に写真にエフェクトをかけるアプリがあるといいでしょう。
スマホアプリに多いんでこの作業までスマホでやってもいいんですが、
パソコン用のエフェクトアプリだと、
http://www.infinisys.co.jp/product/fxphotostudiopro/index.shtml(Macのみ)
https://snapseed.softonic.jp/(Mac/Win)
などがあります。
本格的なレタッチならフォトショップが必要ですが、
これらのエフェクトアプリの方が楽しく作業できます。

集める素材は写真やイラスト、フォントなど多岐にわたりますが、
必ず「著作権フリー」の物にしましょう。
音楽よりもウルサイ業界ですから気をつけて下さい。
アタシらカネにならなくても商用利用になりますよ。

例えばこんな所で色々と素材集めが出来ます。

http://photoshopvip.net/
https://www.dafont.com/
https://pixabay.com/
https://ja.pngtree.com/

○実作業2:ワークフローをテンプレ化しよう

心底デザインが好きな人でもない限り、地味な作業が辛く感じるものですよね。
なので一連の作業をマニュアル化してしまいます。

自分の場合だと

・素材集や自分で撮った写真を日頃からストックしておく
・エフェクトアプリで原型を留めないくらいにイジり倒す
・レーベルロゴや曲名を入れる枠をイラレのテンプレとして用意しておく
・フォントを選んで出来上がり

と、作業自体は10数分で終わってしまうようにしています。

ちなみにウチが契約しているディストリビューターの場合は
アートワークは「1500px四方」と決められています。
たぶん他所でも同じだと思うんで1500pxを基準に素材集めをしましょう。

それより小さい画像を引き伸ばすと粗くなってしまいますが、
エフェクトアプリで汚してしまったりします。
ちょうどディストーションで歪ませる要領ですね。

あと自分の場合は文字や枠の透明度を調節して
若干透かすようにしてます。
こうすると後ろの画像に馴染ませる事ができるんですよ。
はい。リバーブと同じですよね。

○実作業3:フォントで表情をつける

写真やイラストより重要なのがフォントです。
イラレにも大量のフォントがインストールされてますし、
フリーフォントも沢山転がってますから出来るだけストックしときましょう。

曲のイメージと画像のイメージとでバランスをとりつつ、
似合いそうなフォントを色々と試します。
テクノっぽいフォント、ハウスっぽいフォントなどなど
音楽のイメージに合った物を探すのは難しくないと思います。

○実作業4:レイアウトしよう

本職でDTPをやっている人は、
文字の間隔を手動で調整する「カーニング」という作業を必ずやっています。
また文字の大きさや配置などもデザイナーごとに経験と勘に基づいたルールがあります。
これは職人技なので理屈で説明できるものではないんですが、
触りくらいならググって勉強する事もできますし、
少しずつ意識すればそれなりに映えるレイアウトが出来るようになりますよ。

○まとめ

お気づきの方も多いとは思いますが、DTMとDTPって凄く似てるんですよ。
どちらも芸術家の領域に見えるけど実際は職人仕事でしょう。
こんなご時世ですから素人がタダで環境整えただけでもそれなりの物は作れちゃいます。
是非とも挑戦してみてください。

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