モジュラーシンセのイジり方

以前の記事にも挙げたTR-606の改造から色々と勉強しまして、
アナログシンセは一つ一つの部品や電気に音質が左右されやすい事を覚えました。
自作派ピュアオーディオの世界ではポピュラーな改造をアナログシンセに施す事によって、
音質の高い低いだけでなく音のキャラクタまで変えられる場合があります。

そこでシンセDIYにハマるキッカケになったモジュラーシンセに手を加えて、
色々と実験してみます。

◯ポイント

・シンセにとっての電気とは料理における水
電気を加工して音を作り出すアナログ・シンセサイザーは、
原料となる電気が綺麗なら綺麗な程よいって理屈ですよね。
レコーディング・スタジオやオーディオマニアのように数十万も使う必要はありませんが、
ポイントを抑えておけば千円単位の出費でも十分に効果を得られます。
しかし「水を綺麗にする浄水器=高性能高品質なオーディオ部品」に換装する事によって、
その機材が持っている味が損なわれる事は珍しくないです。
何か違うな?と思ったら躊躇なく元に戻す勇気も必要です。

・電解コンデンサを交換すると音が綺麗になる。
特に電源周辺のコンデンサをグレードの高い物に変えると効果テキメン。
ノイズが減り解像度が高くなり音の輪郭がクッキリします。
80年代~90年代のデジタルシンセは電源部とアナログ変換した後のコンデンサを
変えるだけで超絶クリアでイイ音になるそうです。YAMAHAのFMシンセとか。
いつかやってみたいですね。

・オペアンプを交換すると音のキャラが変わる。
オーディオ機器でのオペアンプ交換の違いは値段と性能が比例するようですが、
シンセサイザーの場合だとキャラクタから変わってしまう事がしばしば。
606で試した時は高級品ほど音がいい、というわけでもなく、
出したい音のキャラに合ったオペアンプをチョイスする楽しみがあります。

・しかしアナログシンセにとってはノイズも味。
ピュアオーディオの世界ではノイズは不倶戴天の敵として扱われますが、
原音という概念を無視していいシンセサイザーではノイズが
機種の重要なキャラ作りに役だっている事があります。
ボクの改造した606は解像度が上がって606らしさが無くなっちゃってます。
テープエコーのヒスノイズなんて我々の業界ではご褒美ですしね。

それを踏まえた上で敢えて自分にしか出せない音を追求したい方にだけ改造をお勧めします。
もっとも自分の場合はそんな高尚なコダワリじゃなくて単にバラして遊びたいだけなんですが。

◯実験編

・Pittsburgh Cell90(電源部)
オススメ度:★★★★

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Pittsburghのケース。ここに内蔵されている電源ユニットにも手を加えます。
9種類の電解コンデンサを全てオーディオグレードの物に交換。高さもギリギリセーフ。
予備ケースを持っているんでノーマルの電源とカスタム電源と聴き比べてみましたが、
解像度が高くなりましたね。
「音質を変えるには上流から」というのがオーディオの定説らしいんですが、
シンセにも当てはまるようです。

・Pittsburgh InOut / Outs
オススメ度:ダメ

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モジュラーシンセの最終的な出力を司るこの部分。音質的には結構重要な筈ですよね。
これまで使っていたのは[Outs]というヘッドフォン/ライン出力端子のモジュールでしたが、
Tanzbarとだけ併用する際にミキサーを持ち歩かなくてもいいようにインプット端子のある物にしました。

そこでオペアンプをTL074からLM49740へ交換し、
コンデンサをオーディオグレードの物に変えたんですが、
1500uFという物が見当たらず、すぐ上の2200uFにしたんですよ。
すると高音は綺麗になったんですが低音が全く聴こえなくなっちゃった。

という事は、コレはハイパス(かな?)フィルターの役目を持ってるんじゃないかと思えてきました。
そこでブレッドボードを使い1500uFを基準にプラマイ50%くらいの容量を試してみました。
しかし1200や1000では音が出ない。結局はノーマルの1500uFに戻しました。

そのうえ何度もハンダ付けのやり直しをした為か、Outsの方が音でなくなっちゃった。

・BEFACO even VCO
オススメ度:★

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二つ持っているうちの一つをTL072からMUSES8920へ交換。
両方聴き比べてみたものの、よぉく聴かなきゃ違いが分からない程度の差でした。

・RYO APERTURE
オススメ度:★

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TL072からMUSES8920、
TL074からLME49740に交換。
LMEの方は綺麗な音になるんだけどあからさまに音量が小さくなって却下。

・MusicThingModuler SPRING
オススメ度:お釈迦にしました。

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内蔵のリバーブユニットと外部のスプリングユニットを切り替える際に
イチイチ分解しなきゃならなかったんですが、
パネルにトグルスイッチを(無理やり)付けました。
スペースに余裕が無いのでかなり苦労してます。

しかし使っているうちにリバーブ音に変なノイズが入るようになり修復不可能に。。
スイッチ増設の為に干渉するオペアンプを強引につけたのが仇になったようです。

・Synthrotek ECHO
オススメ度:★★

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こちらも4回路のオペアンプだったんでLME49740に、
また電解コンデンサも多用されているのでオーディオグレードの物に交換。
例によってLMEはダメだったのでTL072に戻します。
コンデンサの方は効果アリ。

◯まとめ

・はんだミスで煙吹いてマジ焦った。
・勉強代としてモジュール二つ壊した。
・コンデンサ交換はそれなりに効果アリ。
・オペアンプの方はイマイチ、悪くなる場合もある。
・TL074からLME49740への変更は失敗。
・TL072からMUSES8920への変更はまぁまぁ。

ただ音の輪郭が以前よりもクッキリするようになったのは確かです。
結論としては「やってみたいから実験してみたけど人には薦めらんないなぁ」ってとこですね。

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