セミモジュラー天国へのいざない【3】

モジュラーシンセにあんまり偏見持たずに先っちょだけ挿れてみようよ!
セミモジュラーを基準にすれば楽チンだよ!という当連載も第3弾。
今回は一見地味なんだけど、これぞモジュラーシンセの醍醐味と言っても過言ではない、
クロックとモジュレーションに関するモジュールの紹介です。
前記事で紹介したようなセミモジュラーシンセにこれらのモジュールを加えると
表現力が格段にアップするシロモノ。屁理屈だらけですが頑張って勉強してみましょう。

○クロック系モジュール3種

平たく言ってしまえばBPMを司る信号です。
MIDIクロックとは違いモジュラーシンセではアナログのパルス波を「1小節に○回」送っています。
グルーブボックスやDAWでの同期ではBPM120なら繋いだ機材は全て120になるのが通常ですけど、
モジュラーシンセでは「メインは120だけどこのモジュールだけは60で、そっちは30で」という事が可能です。
ELEKTRONでも事前に設定すれば出来る事なんだけど、モジュラーではフィジカルに操作が出来るのが強み。
モジュールによってはプレイ中でもツマミひとつで変幻自在なのです。
それを担うモジュールの名称が以下の二つ。

「クロックディバイダー」
こちらは分周器。入力したクロックを1/2だったり1/4だったりに変換します。
「クロックマルチプライヤー」
ディバイダーとは逆に倍に加算しているのがマルチプライヤー。

それぞれ単体のモジュールとして作られているのが多いのですが、
分割も倍増も両方できる物もあります。
まとめて「クロックモジュレーター」とも言うようですね。

そして要注意事項なのがマスタークロック。
ユーロラックのシーケンサーは外部からのクロックを受けて初めて動く物が一般的。
自走できるシーケンサーの方が珍しいかもしれません。
なのでクロックのマスターとして機能するモジュール「クロックジェネレーター」があります。

・リセット信号
MIDIと違ってクロック信号は精度が良くないので酷い時は同期がだんだんズレてしまいます。
そこで小節の頭に一回だけ別の信号を送ってやれば大きくズレる事はありませんよね。
これをリセット信号と言って専用に設けられたジャックがある物もあります。

これらが備わっているモジュールを駆使すれば、
「ブレイク時に4つ打ちのキックを1拍目だけにする」
「スイッチひとつでスネアロール」
「ベースやリードのBPMだけ半分にする」
なんてプレイだってツマミ一つで出来たりしちゃうんですよ。
ジャック次第でどうとでも出来る自由度の高さがあります。
グルボで同じ事をやりたいとなると気の遠くなるような仕込み作業が必要ですよね。。

○クロック系でお勧め(された)モジュール
ええと、まだ買ってません。パイセンがたに根掘り葉掘り訊いて回って調べてみただけです。
けど色々な所で見かけるので間違いのない選択かと思いますよ。
この3種はどれもマスタークロックとしても使える上にディバイダー/マルチプライヤーとしての機能も備えています。
単純なドラムシーケンサーとして使われる例も珍しくないようです。

・MAKE NOISE TEMPI

https://www.modulargrid.net/e/make-noise-tempi
通常のクロックモジュレーションとは別に、
タップしたタイミングでクロックを吐いてくれるHUMANモードというのがありまして、
より有機的なクロックを産み出せます。この時のクオンタイズも微調整が可能な模様。

・Pamela’s NEW WORKOUT

https://www.modulargrid.net/e/alm-busy-circuits-alm017-pamela-s-new-workout
この分野では珍しい数字によるBPM表示が出来て、
クロック信号だけでなく様々な波形のCVも吐けます。つまりLFOにもなるって事!
別売のエキスパンダーを使えばMIDIクロックも出力可能です。

・4ms QCD

https://www.modulargrid.net/e/4ms-company-qcd-quad-clock-distributor
上二つとの大きな差は「わかりやすさ」でしょうね。
4つの出力をそれぞれツマミで制御するタイプのモジュレーターです。
フィジカルに操作をしたい方には一番良いかもしれません。

○CVモジュレーション

モジュレーションと言えばLFOやEG。
LFOの自由度で言えばELEKTRONマシンですが、流石にシーケンスにモジュレーションはかけられません。
ベロシティをサイン波やランダムノイズで揺らすとか、音程自体を揺らしちゃうとか、
もうプレイヤー本人ですら把握出来ない奇っ怪なフレーズがいとも簡単に出来ます。

ここで注意したいのが「バイポーラー」と「ユニポーラー」。
モジュレーションの信号も単純な電圧を持った電気には変わりないんですが、
「マイナス5Vからプラス5Vまで」なのと「プラス0Vから5V(や〜10V)まで」なのとあります。
前者がバイポーラー、後者がユニポーラーといって信号を受ける側の用途によって使い分ける必要があるんです。
例えばベロシティ。サイン波で揺らそうとしても、マイナス側に振れると音が出ません。
ゼロから5Vの間で揺れてもらう必要がありますよね。
逆にマイナス側にも振りたいパラメーターに対してユニポーラーのモジュレーションをかけても効果は半減です。
単純に考えればLFOはバイポーラー、EGはユニポーラーなの?と思ってしまいがちですが、
そうとも限らないのがモジュラーシンセの深い沼。選択可能な物もありますし、
LFO兼EG兼オシレーター兼シーケンサーみたいな謎モジュールもあって理解が追いつきません。。

またLFOに関してはクロック入力を備えていてBPMに連動させられる物と出来ない物があります。

○CVモジュレーション系おすすめ(された)モジュール

・Erica Synths Black Joystick controller

https://www.modulargrid.net/e/erica-synths-black-joystick-controller
こちらはモジュレーターではなくコントローラーですが、
ゲーム好きにはタマらないジョイスティックでCVを出力できる物です。

・Erica Synths Black OCTASOURCE

https://www.modulargrid.net/e/erica-synths-black-octasource
8つの出力を持ったLFOで、上の大きなツマミ一つでスピードを調整できます。
バイポーラー/ユニポーラーどちらも選択可能、クロック連動アリと、
LFO選びに迷った時には間違いのない機種です。

・Hikari Instruments SINE

https://www.modulargrid.net/e/hikari-instruments-sine
単純にサイン波だけを出すオシレーターですが、LFOとしても使えます。
こういうシンプルな物は長く重宝できそうです。

・Xaoc Devices Batumi

https://www.modulargrid.net/e/xaoc-devices-batumi
10HPと比較的小型の高性能クアッド(4系統)LFO。
バイポーラー専用なようですが、
ericaのOCTASOURCEと違って独立した4系統LFOです。

・Xaoc Devices Zadar

https://www.modulargrid.net/e/xaoc-devices-zadar
肩書はEGですがLFOにもオシレーターにもなる万能CVモジュレーター。
数百ある波形を選んで1サイクルの時間(0.1ミリ秒〜30分!)を設定します。
しかもそれが4つもあるもんだから、
例えば2つをオシレーターとして使い2つをモジュレーションとして使う事で
「全自動ドローンシンセ」にもなりそうな雰囲気。

○まとめ


例えばこんな風に、
60HPのケースにクロック/モジュレーション系モジュールだけをまとめて
セミモジュラーシンセと組み合わせるのも楽しいと思います。
実際に触ってみた物が少ない為にイマイチ説得力のないレビューでしたが、
モジュラーシンセには必要不可欠なモジュールであり、
セミモジュラーの可能性を格段に拡げる機能でもあります。
気になる方はお店で実際に触らせて貰いましょう!

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