WMD PERFORMANCE MIXERレビュー
マシンライブ・プレイヤーにとって積年の悩みごとといえばミキサー。
ほとんどの人がPAミキサーを使ってはいるでしょうが、重い、機能が足りない、
音質が良くないetc.色々なジレンマを抱えていると思います。
今回紹介するミキサーはユーロラックタイプ、小型軽量で機能テンコ盛り。
しかしメーカーが潰れてしまっているので中古でしか入手できない上、
値段も高くPAミキサーに比べると4.5倍はするシロモノです。
しかしここまで小型高品質多機能なミキサーは古今東西この製品しかなく、
ユーロラック界でも比較的古い製品でありながらこれを超えるミキサーは未だ現れていません。
WMDはアメリカのペダル/ユーロラックメーカーで、
業界内でも高品質かつ個性の強い製品をリリースしていました。
やたらテンションの高い「ザ・アメリカの陽キャ」といった兄ちゃんの公式製品紹介動画を
観ていた人も少なくない筈です。残念ながら世界情勢の諸々の煽りを受けて倒産。
そこらの芸能人が亡くなるよりずっと衝撃的なニュースでしたねぇ。
「なんだよ!モジュラーなんかやらないから関係ねーよ!」というアナタ、
これはゲイン幅が広くライン入力にも対応しているんスよ。
別メーカーからリリースされている小型のユーロラックケースに入れれば
実質スタンドアロンのミキサーとして利用可能なんです。
〇機能概要
WMD PERFORMANCE MIXERの基本的なスペックを挙げていきます。
6モノ/2ステレオチャンネル
6つのモノラルチャンネルはそれぞれ2つの入力端子を備えていて、
トグルスイッチにて切り替えが可能です。AとB、そしてABと選択出来て、
ABはそれぞれの音を同時に出す事が出来ます。モノトラックで合計12の音源を挿しておける事となり
ABを使いこなせばより多くの音をまとめる事が可能です。
・選択式エフェクトセンド
2つのエフェクトセンド/リターンを持っていますが、
これもトグルスイッチによる切り替え式で1つのチャンネルに対して1つのエフェクターしか使えません。
普通に2系統なら嬉しかったんですけど、スペースの都合上SENDツマミを更に一列加えるのは
操作性が悪くなりそうなので、ここは仕方のない所でしょうね。
またリターン端子はモノラルなのも注意が必要です。
ステレオのエフェクターを使いたいならリターン端子ではなくステレオチャンネルに挿す必要があります。
また右上にもステレオのセンド/リターン端子があるのですが、
これはマスターエフェクト用でコンプやEQをかけて最終出力に戻す為のものです。
・VCAとPANのCV
入力ここはユーロラックならではの嬉しい機能。
各ChがVCAとして使えるようになっており、エンベロープを突っ込む事が出来ます。
PANのCV入力もあるのでココはLFOでも入れたいですね。
アンビエンティーなドローン音をLFOでオートパンにしたらフヒヒヒヒ。。
・PFL機能
DJミキサーで言う所の「CUE」が出来ます。というかそのまんまCUE表示ですね。
フェーダーを上げる前に予めどんな音が確認するのに超便利。
WMDは他にもDJプレイに準じた機能の製品を出していました。
もともとDJだったので「なんで小さいPAミキサーにはこの機能ないの?」と訝しんでいたくらいです。
そして「CUE/MIX」ノブ。これにより、「まだ出してない音」と「既に出ている音」を
同時に聞く事が出来るんです。
・30mmフェーダー
やはりミキサーはフェーダー式に限る!設計上の制約なのは分かるけど、
長すぎないフェーダーはDJライクなプレイに最適なんですよ。
そ~っと上げ下げする事も出来るし、スパっとカット&ブーストも出来る。
しかもLED内蔵で音が鳴ってさえいれば光ってくれるので、暗いブース内でも視認性バッチリ!
って、おい。WMDの中にDJいただろ絶対。。
インジゲーターチャンネルごとにあるインジゲーターはレベルメーターだけではありません。
緑がCUEで指定したトラックの表示、黄色だけレベルメーター、
赤はPAN、左右のどちらかに振ってあるかを示すLEDです。
この赤の使い途が凄く便利です。どのChがどっちに振ってるがひと目でわかる。
これは他の高級PAミキサーでも見ない機能ですね。
・ワイドなゲインでラインもモジュラーも
これがこのミキサーの便利極まりないところ。
普通ラインレベルとモジュラーレベルって音量の差が大きく、
それなりのPAミキサーでないと同時に出力する事が出来ないのですが、
ライン側のゲインを最大にしてモジュラー側のゲインを絞ってやれば、
違和感なくレベルを揃える事が出来ます。
・マスターエフェクトも挿せるよ
本体右上に2つずつあるSENDとRETUREN、
これはマスターに対してのエフェクトを挿入出来ます。
そしてコンプなりEQなりのエフェクトのかかった音を、
このミキサーのメインアウトから出力する事が出来ます。
コンプやEQをかけた後の音をヘッドフォンでモニタリング出来ますね。
〇オプション・エキスパンダー
本体だけでも入手困難ではありますが、一応エキスパンダーも紹介します。
一つはステレオChを二つ増やすもの、もう一つはミュートスイッチです。
スペースはそれなりに必要になりますが、どちらも便利なアイテムですね。
〇スタンドアロンで使いたい時は
モジュラーシステムに組み込むのではなく、単体で使いたい場合は、
小型のユーロラックケースを使う事をおすすめします。
PERFORMANCE MIXERのサイズですが本体だけなら40HP、深さは45mmです。
最も入手し易いケースは4msのPodsシリーズ。
型番に「X」とあるのが奥行きの深いモデルです。
さらにPoweredと表記しているものが電源内蔵ケースです。
https://clockfacemodular.com/collections/modular-case
(リンク先の上の方がPodsシリーズです)
ACアダプタは別売りなので、
・15Vセンタープラス
・1~2アンペア前後
・プラグ外径5,5mm内径2,1mm
のものを用意してください。
ミキサー本体だけならPods40Xというものがありますね。
もう少し広い箱を買ってエフェクトを入れるのもアリでしょう。写真はPods64X。
マルチバンドコンプと5バンドEQを入れてみました。(結局使わずにシステムに組んじゃったんだけど)
〇まとめ
機能が充実している上に小型軽量なミキサーは各メーカーともあまりリリースしていませんが、
これは最強の一角を担うモデルです。欲しいと思った方は目くじら立てて探す事をおすすめします。