マシンライブの動画撮影【カメラ選び編】

今回は久しぶりに動画撮影の話題です。
前回の記事を書いていた頃、いっぺん雑居ビルの屋上で撮影をしたんですけど、
準備不足と段取りの悪さから大失敗。演奏者にもゴメンナサイしてボツにしました。
今は再開に向けてじっくりゆっくりやってます。

○マシンライブの撮影に適したカメラ

スマホ以外のカメラが欲しくなったとき電子楽器の演奏を撮るというのをメインの目的として、
撮影シチュエーションを絞り込むと欲しい機能や逆に要らない機能が浮き彫りになってきます。

・3.5mm(2.5mm)外部マイク端子
・明るい広角レンズ
・コンパクトで機動力に優れている
・24fps/1080pの解像度、Log撮影での撮影
・5万円〜10万円で購入できる

このあたりが欲しい機能となります。詳細は後で説明します。
カメラは性能を突き詰めると50万でも100万でもかかってしまう青天井の泥沼ですけど、
僕らが普段買い漁っているグルーブボックスやモジュラーシンセの値段を基準にすると、
「カメラ本体と撮影用品込みで10万円」がキリの良い所じゃないでしょうか。
中古品はお勧めできないけど、どうしても欲しいカメラがある場合は
カメラ専門店で点検された中古を選びましょう。
シンセと違ってモーター駆動の可動部品が多いので、壊れやすくもあります。
東京でなら新宿マップカメラや中野フジヤカメラが良いです。

○他に必要なもの(同時購入推奨!)

・三脚とビデオ雲台

ケチってはいけません。アマゾンで数千円で買えるような物じゃダメですよ。
中古カメラ店で安く購入するのが良いと思います。
自分は10年前に国産メーカーvelbonの4,5万する三脚を
中野のフジヤカメラジャンク店で5000円でで買いました。
ずっと使ってます。

・PCMレコーダー

既に所有している事も多いでしょうがライン録音が出来れば何でも良いです。
新しく買う必要があるならお勧めはTASCAM DR-70D。
動画撮影向きのレコーダーで、4トラ、スレートトーン、ライン出力など
僕らの用途には絶好の機能が備わっていて、
僕らには余計なマイクが無いので2万半ばと安めです。

・照明

すぐに必要な物ではないけど、念頭に入れておきましょう。
「ミラーレス一眼」と「スマホ+照明」では後者の方が綺麗に撮る事ができ、
画作りの幅も拡がります。

○基本は演奏〜撮影〜編集まで一人でこなすワンオペで出来る事を想定しよう

これは各々の人脈事情にもよりますがワンオペで一通りこなす事を前提に装備を整えましょう。
どうせ、
やっていくうちに譲れないコダワリ()が出てきて全部自分でやらないと気が済まなくなります。
そもそもこういう音楽をやる人間はチームプレイが苦手です(笑)。

次に多いであろうケースが「撮影者と演奏者が別」。
撮影者はカメラを手に持って動きのあるカメラワークが可能になります。
もちろん訓練は必要ですけどね。

○ロケーションの可能性を狭めないようにしよう

ロケーションの選択肢の広さがクリエイティビティの源ですから、
スキルの上達に合わせてなるべく色んな場所で撮れるような装備を想定しましょう。

・自宅で撮る
・貸しスタジオで撮る
・クラブやDJバー、ライブハウスで撮る
・電源の無い屋外で撮る

だいたいこんな順番で難易度が上がっていきます。
最後の「電源の無い場所で撮る」が最も難易度も自由度も高い撮り方でしょう。
音楽機材も撮影機材もバッテリー駆動で揃えるのが最低条件ですし、
昼間なら太陽の角度を計算した時間との戦いでもあります。
しかしココに至ってこそ、記録映像を超える映像作品と言えるのではないでしょうか。
それなりの投資をするからにはこの域に至りたいものです。

○ジャンル別カメラの特徴

・スマホ


一番お手軽で上級者や本職の映像作家さんでも使用頻度がかなり高いのがスマホ。
自分もiPhone11と13をメインに使用しています。
特に13Proのカメラ性能が凄い。コンデジくらいなら余裕で喰えます。
ただしFilmicPROのような撮影専用のアプリを購入した方が良いです。
スマホ撮影の弱点は暗所。
ここを補う為に撮影用の三脚や照明機材を揃えると格段に画質が上がります。

・アクションカメラ

GoPro的なのとかDJIのジンバルカメラとかね。
アウトドア系レジャーのお供として定評があり陰ドア派には無縁だと思われがちですけど、
スマホ以上に機動力が抜群。写真でも動画でも「サっと出してパっと撮る」ことは物凄い強み。
映像制作の初心者(自分含む)はこういうので数をこなすと良いです。
コンパクトなので普通のカメラでは置けないような位置から撮影する事もでき、
アイデア次第で凄く面白い絵が作れます。
撮影の上級者ほど「カメラの常識をくつがえす」と申しております。
このジャンルの分別は撮る前も撮った後も手軽にファイルが扱えるようなスマホ連携の機能。
あとバッテリーの持ちとか、まぁレビューが星のようにあるので参照してください。

・コンデジ

所有欲もそこそこ満たしてくれる。画質もスマホレベルより上。
自分も写真やってた頃は大好きなジャンルでした。3台くらい使い倒しましたよ。
ですが、
この「マシンライブの動画撮影用途」をメインに考えるとコスパが良くないです。
最新鋭のスマホにはカメラ性能が劣る場合もあります。
買うなら「外部マイク入力必須」「センサーサイズAPS-C以上」を基準に考えて下さい。
大人気のSONY RX100シリーズは残念ながら向いてません。
同じSONYのZV-1、使いやすそうではありますが最新のスマホ買った方がマシな暗所性能。
FUJIFILMのX70が写真機としては名機と言われてますけど、動画性能は誰も触れませんw

・ミラーレス一眼/一眼レフ

要はレンズ交換式なカメラ。
写真も動画も画質を最優先にしたい方は10万20万30万だしてこの辺いきましょう。
余談ですが女の子を魅力的に撮るようなポートレート撮影で戦えるのはコレ以上のクラス。

SONYのα6400がかなり売れているようですが、上位機種の外部マイク端子のある6600がベター。
カメラメーカーとしてはミノルタを吸収して参入したSONYですが、
元々ビデオカメラをやっていた為に動画が絡むと格段に強いメーカーです。

※訂正!
6400にもマイク端子あるようですね。
まぁこのブログ観て6400とか6600買うような人は居ないだろうから別にいいんだけどw

またバクチ覚悟で
「ひと昔前のミラーレス一眼」と「格安単焦点レンズ」を5~6万円で揃える手もあります。
Canon EOS M2やFUJIFILM X-E2はボディが3万円以下で買えて、
外部音声入力もあります。4K動画は無理ですが1080pはイケるそうです。

 

・家庭用ビデオカメラ

いわゆるハンディカムという製品ジャンル。
これは「既に持ってるなら使えば良いけど、わざわざ買う必要はない」です。中古でも。
なぜなら特化している機能がほとんどマシンライブ撮影に向いたものではないからです。
子供の運動会を撮るようなシチェーションを想定していて、広角よりも望遠に強く、
手ブレ補正も三脚使えば要らん機能だし、手持ち撮影をしたいならジンバルの方が有利だからですね。

○カメラのスペックの読み方

ここではジャンル問わず基本的なスペックの読み方を紹介します。
大事なのは3つ。
三脚で固定しての撮影が基本なのでAF性能とかは二の次でいいです。

・焦点距離/画角

画角とは撮れる写真や映像の広さや遠さを表します。それを数値で表したのが焦点距離。
よく「35mm換算18mm」とかありますがコレってどういう事か説明します。
デジカメの時代になってからセンサーサイズによって仮に同じレンズでも焦点距離が
変わってしまうようになり、一定の基準を設けなくてはなりませんでした。
そこで当時一般的だった35mm判フィルムカメラのサイズ(デジカメで言うフルサイズ)を基準として、
「このセンサーとレンズでならこのぐらいの画角で撮れますよー。」と表すようになりました。
数字が小さいほど(広角)広い画を、大きいほど遠い物を(望遠)撮る事ができます。

皆さんがお持ちのスマホのカメラが「35mm換算で何mmか」確認しておくと、
焦点距離の感覚が掴めると思います。
アタシのiPhone13proは広角側から13mm、26mm、77mmだそうです。

だいたい狭い屋内撮影がほとんどですから、広角の方が良いですよ。
20mm〜28mmあたりを基準に考えましょう。
写真をやっていた時は、広角気味に取っといて後の編集でクロップ(切り抜き)をしてました。
手抜きですけど撮影時にはピントさえ合ってれば良いので深く考えずにバシバシ撮れるんですよ。

・F値

とりあえずレンズの明るさを示す数値だと思って貰ってOKです。
数字が小さいほど明るいレンズ=暗い場所に強い、となります。

・光学ズームと単焦点
スマホやアクションカメラの「電子ズーム」に比べて
実際のレンズが可動する「光学ズーム」は画質的に良いんですけど、
それとは別に高級コンデジやレンズ交換式のカメラでは
ズームの出来ない「単焦点レンズ」があります。
当然、ズームの方が便利ですけどガチな人は単焦点レンズを何本も使い分けてます。
それは画質的に圧倒的に有利だからです。
自分も以前は単焦点大好きマンでした。「味」が違うんですよ「味」が。
BOSSのRV-6とヴァルハラシマーリバーブくらい違います。
volca keysとARP ODYSSEYくらい違う。
いやPCMポリシンセとディスクリートアナログモノシンセくらい違う。
もういいやw

※「被写体深度」についてはスマホやアクションカメラではあんま意識しなくて良いので、
割愛します。興味があるなら適当におググり下さい。

・センサーサイズ

こちらは昔のカメラで言うフィルムの大きさですね。
デジカメのスペックって「画素数」とか「解像度」がよく強調されていますが、
このセンサーサイズの方が100倍大事です。
当然大きい方が偉いです。画質が綺麗になり、特に暗所に強い。
35mm判フィルムカメラと同じセンサーサイズを「フルサイズ」と呼んでいます。
ミラーレス一眼などで多いのがその下のAPS-C。
パナソニックとオリンパスが提唱する3/4(マイクロフォーサーズ)。
高級コンデジでよく使われるのが1.0型。
スマホやアクションカメラで多いのは1/1.7や1/2.3です。

一般的に「スマホより一眼レフやミラーレス一眼の方が画質が良い」とされるのは、
このセンサーサイズの差から言われています。

・外部マイク端子があるか否か

マシンライブ撮影に特有な条件です。
これはシンセから出た音をそのままカメラに取り込んでそれを使う、わけではありません。
編集時にカメラで撮った映像と、PCMレコーダーで録った音声のタイミングを合わせる為なんですよ。
その際の音質は全然気にしなくてOKです。
「スレートトーン」というタイミングを合わせる為の音声信号を受け取るのが目的です。
そしてこのスレートトーン、ドラムマシンのハイハットでも代用できます。

スピーカーのある現場でならカメラ内蔵スマホ内蔵のマイクでスレートトーンを受け取れば良いんですが、
(有線ならポケットサイズのスピーカーでも可)
屋外など大きな音が出せない現場や、自宅でも家族と同居していて音を出せない場合は、
やはり映像にも音声入力が出来る方がロケーション選びに自由度が増します。
スマホの場合はオーディオI/F、アクションカメラは大抵オプションで外部音声入力が出来ますが、
コンデジや一眼カメラとなると限られてきます。特に中古製品を狙っている方は注意してください。

※外部マイク端子の無いカメラ&スピーカーで音を出せない場合の編集方法

DAWと同じ要領で複数のトラックを並べて、
「手動」かつ「勘」で各トラックのタイミングを合わせるしかない、と思います。
一度撮影時のトラブルでサブカメラに音声が全く無い状態でアタマを合わせる作業をしましたが、
やっぱ面倒です。毎回はやりたくないなぁ、と思いました。
リズム主体の音楽は手の動きとリズムとをシビアに合わせないとダサいです。

○撮影時の録音について

スマホのチョイ撮りであれば安くて軽いI/Fで良いのですが、
やはり専用のPCMレコーダーを用意するのがベストです。
ハイエンドでなくてもライン録音が出来る物なら十分。
TASCAMやZOOMから1万円〜2万円くらいで出ています。

自分が購入したのはTASCAM DR-70D。
ハンディタイプの物より嵩張るけど、4トラ同時録音、スレートトーン機能、
別のカメラにもスレートトーンを送る為のライン出力が備わっています。

またマルチカム撮影(複数のカメラで撮影する手法)では、
それぞれの映像ファイルのタイミングを合わせる為に全てのカメラでスレートトーンを録音します。
この時に「外部マイク端子」が付いているカメラだと、そこに直接スレート音を入れれば良いので、
例えば「屋外の撮影でスピーカーが使えない場合」でも外部に音を出さずに撮影する事も出来ます。
スマホ使う場合はスマホの数だけオーディオI/Fを用意しなければならずチト不便。
ここがスマホ撮影の一番の弱点です。画質云々よりも必要機材が増えてしまうのがダルい。

○カメラの固定にはカネかけろ。

カメラの固定に大事な三脚ですが、軽いスマホであってもしっかりした三脚を買いましょう。
安物はブレます。スマホでさえも。キックの音でブルンブルン揺れるのでキレてブン投げました。
中古品だって大丈夫です。安くて品質もそれなりに良いのは国産メーカー。
ベルボンやSLIKといったメーカーがよく知られていまして、
迷ったらこの2社のどちらかで間違いありません。アタシはベルボン派です。
そして三脚の高さですけど、一つはアイレベル(人間の目の高さ)より高い物を用意しましょう。
背の高い三脚ほど構図の自由度が格段に上がります。

・雲台

三脚の脚の部分の上についてるカメラを設置する箇所を「雲台」と呼び、
これ単体でも流通しています。
そしてガッチリねじで固定する写真用雲台と、
任意の方向だけ滑らかに動かす事が出来るビデオ用の雲台(上の写真の奴)があります。
とりあえずワンオペの段階では写真用雲台を使って、
撮影者と演奏者が別の場合にはビデオ用雲台を使うと良いと思います。

・俯瞰撮影

機材を真上から撮る事を俯瞰撮影と呼びます。
シンセを扱う手捌きを強調したい時や、操作をわかりやすく伝える為には、
俯瞰撮影が一番有効です。

これは三脚に対して延長用のアームを取り付け、その先っぽに写真用雲台を使います。
これも3000円くらいで買える「俯瞰撮影スタンド」みたいなのを買いましたが、
やはりブルンブルン揺れるので使い物になりませんでした。絶対に買うなよ!

お勧めはコレ。
たかが棒っきれに7000円とふざけた値段しますが、一度使うと戻れません。

○安カメラで高級カメラ喰らうには「照明」だ!

あらゆる映像クリエイター、写真家の方が口を揃えて言ってますが、
「20万のカメラ買うくらいなら10万のカメラと10万の照明買え!」との事です。
「ミラーレス一眼だけ」と「スマホ+照明」なら後者の方がより良い映像が撮れます。

特に屋内撮影が基本となる演奏動画では照明も予算にいれておきましょう。
普通の照明と撮影用の照明の違いは、
まず明るさが桁違いなこと、次いで色味の調整がし易いことです。
またアンブレラやソフトボックスを使って影をコントロールできます。
なんかプロっぽくて格好いいっす。

まだ自分もライティングの体験をした事が無いんですが、
(人物の写真撮影でレフ板くらいは使った事あるけど)
ここはバリバリ勉強したい所すね。

○まとめ

という訳でクソ高ぇカメラを買うと同時に録音、三脚、照明の三つを備えましょう。
せめて三脚は買ってな。1800mm以上のものと卓上のもの。
カメラ選びとは言いますが、三脚と照明、録音は連携して選ばないとダメっす。
大きく分けて「スマホ/アクションカメラ」と「コンデジ/一眼」では
揃えるべき周辺機器も様変わりします。

そして「どのように撮りたいか」というビジョンを出来るだけ鮮明に想像してみましょう。
カメラを買うのはそれからでも遅くはありません。
次回の記事ではこういう想定をし易いような考察を実例と共にしていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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