マシンライブの動画撮影【一眼導入編】

前回の記事から自分自身もスマホ以外のカメラを導入しようとシコタマ調べてまして、
現在のカメラ事情を色々と掴めてきたのでまたまたお話します。
もう一度クギ刺しておきますが、
あくまでも「電子楽器ライブの演奏動画を撮る」ことがメインなので、
一般用途でのカメラに求められるスペックをバサバサ切り捨てた話になります。
ネコ撮りたいとか女の子撮りたいとかクルマのレース撮りたいとかは他所で調べて下さいね。

○前提条件

一人で演奏撮影編集までこなす「ワンオペ」か演奏者と撮影者が一人ずつの「サシ撮り」を想定しています。
三脚を使った定点撮影を基本として、別のカットを撮る場合は演奏そのものが終わってから。
音楽自体はPCMレコーダーで録音、後に編集ソフトで合わせYoutubeに投稿。
撮影場所は基本屋内だけど、将来的に屋外撮影が出来るような装備を揃える。
あと何十万も出すならカメラよりもブックラ買うわボケと豪語するような人ね。

・・・とします。
お金持ちならともかく、貧乏人はここまで割り切らないと安く買うことが出来ません。

○そもそもスマホとどう違うの?

一眼レフ/ミラーレス一眼の、要はレンズが交換できるカメラは
スマホとはナニが違うのかと申しますと「作品としての映像を作り易い」ことに尽きます。

単純な動画性能とか成果物のクオリティなんかはスマホで十分なんですよ。
動画撮影に特化したFilmicProというアプリ使えば10万以下のカメラなんぞ消し飛びます。
しかし操作性演出力モチベーション諸々スペックに現れない部分で、
見る人の琴線に触れるような作品が作りやすいのです。これは写真でも映像でも同じですね。
スマホだってアイデアと編集次第で作れなくはないけどイチから覚えるのは大変です。
未経験者が「フリーのDAWとソフト、フリー素材だけで曲を作る」ことを考えたら一目瞭然でしょう。

○ちなみにコンデジは、、、

ハッキリ言ってお勧め出来ません。
写真用途では自分も大好きなジャンルなんですよ。
GRGXLX100持ってたし、名機FUJI X70を買う寸前までいきました。
トチ狂ってX100イッたかもしれない。
しかし動画、特に演奏撮影に関してはダメダメのダメです。
みんな大好きRX100シリーズ、マイク端子ありません。
唯一付いてるモデルはレンズが暗いからダメ。
Vlogカメラとして人気のZV-1、iPhone11PROの方が画質良いです。

○ミラーレス一眼と一眼レフの違い

あんま気にしなくていいです。
ミラーレスの方が構造が単純で軽いって覚えておけばオッケーです。
写真だけの人なら一眼レフにこだわっても良いだろうけど、ここでは別にいいです。

○カメラと動画にまつわるスペック

カメラ選びの際に必要なスペックなどをザックリ紹介します。
詳しくは専門のサイトなどを参照して下さい。

・FPS(フレームレート)

動画ファイルは原理的にはパラパラ漫画と同じなんですけど、
用途や機材スペックによって「1秒間に何コマの静止画を使うか」が決められてきます。
一般的には24〜60fps。映画は24、TVドラマは30、など映像のジャンルによって変わってくるようです。
ジャンルによって大まかな差が出てくるBPMと同じニュアンスで良いんじゃないスかね。

・1080pとか4Kとか

その1コマの静止画の解像度でピクセル数が決まってきます。
当然ファイルの容量が重たく扱いにくいです。
最近は事あるごとに4K対応を謳っていますが、カメラだけでなく編集するパソコン、
映し出すモニタやエンドユーザーの再生環境まで4K対応していないと本領を発揮出来ないのは
「ハイレゾ」と同じですね。

またここで挙げる大抵のカメラには4K撮影の際に致命的な弱点があります。
4Kだとクロップされる=画角が狭くなるのです。
せっかく広角レンズを買っても数mm分使えないってのは残念な話。

なんでよほど余裕がない限りは1080p(フルHD)で十分でしょう。

・連続撮影時間

ビデオカメラと違ってミラーレス一眼や一眼レフには動画を連続して撮影できる時間に制限があります。
多くは発熱の問題で、以前は発熱を無視して撮り続けると熱暴走を起こして誤作動していたらしいです。
そうなる前にカメラ側で撮影を止めてしまう安全装置が働くのですが、
中古カメラを探す人は必ずチェックして下さい。
僕らの用途では15分使えれば良いとは思いますが中には5分とか7分なんて制限があるモデルもあります。

・外部電源での給電が可能か否か

モバイルバッテリーやUSB充電器で給電(充電しながら撮影できる機能)するケースが増えると思います。
充電はOKでも給電はダメ!とか給電するならメーカー指定のモバイルバッテリー使え!とか色々あります。
しっかりチェックしましょう。

・外部マイク端子

前の記事で何度も言っていますが、
既にカメラを持っている方はともかく、これから買う人は絶対条件として下さい。
PCMレコーダーとの連携が必須です。

・LOG撮影

後でパソコンを使って色を決める前提のファイル。これも出来るカメラと出来ないカメラがあります。
写真でおなじみRAWファイルもありますが、流石にファイルサイズが膨大なので軽く圧縮したのがコレです。
このLOG撮影を使って出来た動画ファイルはかなり自由に色の調整ができるそうです。
(マスタリングみたいなもんですよきっと)
また全体の色合いを定めたプリセット「LUT」というものがあり、フリーでも有料でも様々な物があります。
例えば「ホラー映画風」とか「レトロ風」とか、このLUTを当てて色を決めることが可能です。

・外部モニタ出力

HDMIモニターやiPad、パソコンなどを有線or無線で繋いでモニタリング出来る機能。
細かい部分を確認しながら撮影できるのは助かりますね。

 

○動画/写真のベクトルを決める三大パラメーター

写真でも動画でも下の三つの値を被写体や環境、撮影者の好みによって変えていきます。
まぁシンセみたいなモンだとザックリ把握しときゃ大丈夫です。

・絞り/F値

センサーに送り込む光の量を決める値。
ある意味レンズの性能(明るさ)を表します。
スマホでは固定となっていますが一眼系のカメラでは調節可能です。
つまりシンセで言うところのフィルターですね。
小さい方が光を沢山取り込む(=明るくなる)ことが出来ますが、
「絞る(F値を上げる)」ことで得られる効果も多いです。
動画よりも写真の方が把握し易いのでカメラを購入したら試してみましょう。

・シャッタースピード

こちらはセンサーに光を送り込む時間。
エンベロープのディケイだと思ってOKです。
当然、時間が短ければ暗く、長ければ明るくなりますが、
動画に関しては「FPSの2倍」が良いそうです。
24fpsならば1/48の近似値で。30fpsなら1/60。

・ISO感度

ずばりそのままセンサーの感度です。
オタクの皆さんが大好きな「感度3千倍」って奴だと思って下さい。
「でもさでもさ、フツー感度高すぎるど痛いだけじゃん?」と思ったアナタ大正解。
痛すぎる刺激は「高感度ノイズ」として画に悪影響を及ぼします。ザラザラになるのよね。
もちろんその感度と痛み耐性も人によって、つまりカメラによって違います。

・AFかMFか

AF(オートフォーカス)が当たり前の時代ですが
手動でピントを合わせるMF(マニュアルフォーカス)も健在で、
本職の動画カメラマンや業務用ビデオカメラはMFがデフォらしいです。
例えば映画やドラマで複数の俳優を交互にピントを合わせるシーンなど、
AFでは判断できない職人的技能が要求されるから、と聞いたことがあります。

また「作品としての味わい」は古くて安いオールドレンズの方が出しやすい、との声もあります。
このため、基本AFでもMFの練習をしておいた方が良いかもしれませんね。

 

○レンズあれこれ

カメラとレンズは基本的に「マウントが共通」でないとくっつきません。
つまりメーカーを選んだ時点でそのマウント形式に縛られます。
そしてカメラを長く続けると「ボディは消耗品、レンズこそが資産」という考えになります。
そういう理由から、カメラメーカー信者がTwitterや5ちゃんねる、
価格.comを戦場に日々気持ち悪い戦いを繰り広げているのです。
DTM/シンセ系のマウント合戦なんて可愛いものです。

レンズは大きく分けて焦点距離が固定の「単焦点」と可変の「ズームレンズ」とがあります。
当然ズームレンズの方が便利だし動画では「ズーミング」という撮影中にズームするテクもありますが、
ズームレンズは大きく重たいんですよ。そして高い。あと暗い。
対して単焦点は被写体との距離を足で詰めたり離れたりしなきゃなりません。
しかし明るく安くシンプルです。

ズームレンズをひとつ持ち歩くか、単焦点を3,4本持ち歩くか。
撮影者の考え方によって千差万別です。

また焦点距離によって、浅く広く撮るのを「広角」狭く遠く撮るのを「望遠」、
中間を「標準レンズ」といいます。
注意しなくてはならない点がひとつ。
カメラ本体のセンサーサイズによって同じ焦点距離でも画角が変わってきます。
通常はレンズ名に明記されている数字は
「35mm版フィルムカメラ」「フルサイズセンサーカメラ」を基準にしていて、
センサーの小さいAPS-Cの場合は1.5倍、マイクロフォーサーズは2倍の数字を掛けなくてはいけません。
つまり同じ50mmでもフルサイズならそのまま標準レンズとして使えますが、
APS-Cでは75mmとなり「中望遠」というジャンルに変わってしまいます。

レンズの記事などに「35mm換算○○mm」と書いてあるのはそのためです。

・光学性能が低いレンズほど味わいがある?

スマホの写真加工アプリやSNSの写真加工ページなどに必ずある「レトロ調」という仕上げ。
レトロ調というのはいうなれば古いカメラ古いレンズで撮影したような質感に仕上げる事。
これってさ、フィルムカメラ時代の古いレンズを使えば割とスンナリ撮れちゃうそうです。
しかもシンセと違ってプレミア価格になる事があんまり無いから安い。1万円以下で古レンズ買えます。
その古レンズを最新のミラーレス機で動画を撮るのがちょっとしたブームになってるようで、
当然MFなんですが興味が湧いたら挑戦してみるのもオツですよ。

・だいたいのおすすめ

最初の一本としてお勧めしたいのが、
比較的狭い場所での屋内撮影や、クラブやライブハウスでの撮影を考慮すると、
焦点距離が35mm換算で24〜28mmくらい、F値は2.0以下の単焦点レンズが良いような気がします。
MFで良ければ1万円から買えます中国製のが。

カメラオタクが鉄板と薦めてくる「24-70mmF2.8通し」なんて高級なのは後々考えましょう。
彼らはカメラが好きなのであって写真や動画は二の次です。
この乖離具合は「シンセ好きか音楽好きか」よりも酷いので注意しましょう。

○いざとなったら省いちゃっても良い機能

一般的なカメラ用途には重視されるけど、
これらの機能が無い事で大幅に安くなるケースが多いんですよ。

・手ぶれ補正

完全に三脚利用なら手ぶれ補正機能はいりませんよね。
動画でなく写真でなら気合でなんとかなります。
昔のカメラは手ぶれ補正なんて無かったんだから。
それでも手持ち動画撮影したくなったらジンバル買いましょう!

・AF性能

カメラも被写体も激しい動きをしないので、
これも三脚前提カメラ固定であれば無視しても構いません。
むしろマニュアルフォーカスを楽しみましょう。

・4K

将来はスタンダードになるかもしれませんが、
今はまだまだフルHDが主流。
パソコンのパワーも必要だし、熱暴走もしやすいし、
別に要らないかもしんないですね。

・バリアングル液晶

要らん要らん。自撮りなんぞオンナ子供のやる事だ。
撮れ方確認したいならモニター買え!

○メーカー別のイメージと傾向

日本には歴史の長いカメラメーカーがたくさんあるけど、
メーカー別でお勧めするのは「ビデオカメラも生産しているメーカー」です。
友人に党員が多いニコンやアタシが大好きなリコー/ペンタックスは除外w
メーカーの考え方として「ついでに動画も出来る写真機」か「動画と写真が撮れるカメラ」とで
ノウハウに差があるようです。

・SONY

手堅くお勧めできるのはソニーです。
業務用や家庭用ビデオカメラのノウハウを積み上げつつミノルタからαブランドを買い取り、
現在ではトップクラスの人気を誇っています。
フルサイズのα7シリーズも初代モデルは良い感じに安くなっていますし、
APS-Cのα6000番台は初心者からベテランまで支持を得ています。
シンセメーカーに例えるとELEKTRON。
値段は張るけど高品質高機能なところがそっくり。
困りどころはレンズが高いのよね。

・Canon

シンセメーカーには例えられないけどクルマで言うトヨタです。
Canonのカメラは歴史も長く動画性能の向上にも余念がありません。
SONYと同じように手堅く薦められますが、
こちらのアドバンテージは長い歴史と写真機時代からのレンズラインナップ。
って事は中古レンズの入手が楽なんですよね。
サードパーティのレンズメーカーも多く参入しており、健全にレンズ沼に浸れます。

・Panasonic

センサーサイズがやや小さい「マイクロフォーサーズ」規格を使っていますが、
業務用/家庭用ビデオカメラのノウハウを惜しみなく注いでいるのがパナのカメラ。
GH4/GH5あたりはコスパが高くYoutuberに大人気だそうです。
こちらはRolandAIRAシリーズに似たコンセプト/ユーザー層ですね。

・FUJIFILM

現在動画機は作っていませんが(大昔にはあったそうな)、
元々がフィルムメーカーだけあって色に対するこだわりが非常に強く、
色彩表現に関しては他のメーカーより10年進んでいる、と言われるほど。
(ただしAF性能はFUJIが10年遅れているともw)
またレンズの光学性能が良く「FUJIの10万円レンズ=SONYの30万円レンズ」なんだってw

シンセに例えるならDFAMやDarkEnegeyのようなアナログモノシンセ、
或いはLYRA8のようなアンビエント特化マシンです。

○適当にピックアップした中古オススメ機種

中古市場でボディの価格が5~6万円前後の機種が、
演奏動画をメインにしつつ写真や他の撮影も楽しめる美味しい価格帯に思えます。
一世代二世代古い機種なので割り切らなければならないポイントもありますが、
これらボディに安めのレンズから始めるのが良いんじゃないでしょうか。

・SONY α7(初代)

フルサイズ機と言うと高級機のイメージが強いんですが、α7の初代は中古で6万円〜とビックリしました。
手ぶれ補正ついてません。4K撮れません。でもセンサーサイズがデカいってのは大正義なのです。
ELEKTRON初代A4/ARくらいの立ち位置です。

・SONY α6300

APS-Cクラスではベストセラー6400の1世代前、6300あたりが値ごろになってきました。
コンパクトに収めたいならコチラですね。Digitakt/Digitoneあたりかな。

・FUJIFILM X-E3

ミラーレス機の中ではかなりコンパクトなE3。後継機種E4が出たこともあってどんどん値段が落ちてます。
クラシカルなデザインがお好みの方にはイチ押しなカメラです。
微妙な点は4K10分HD15分といった時間制限と、LOG撮影が出来ないこと。

・FUJIFILM X-T2

こちらはフジの一眼レフ(風)スタイル。
軍艦部のダイヤルが非常にアナログライクでいわゆる「モードダイヤル」がなく、
代わりにシャッタースピード/ISO感度/露出補正となっています。
これにレンズ側の絞りを加えて先程話した「三大パラメーター」が分かりやすい。
写真や動画を基礎から学ぶには最適なカメラです。
E3と同じ録画時間制限はあるものの、LOG撮影は出来ます。


○まとめ

カメラとレンズの「性能/機能」と「芸術性/官能性」は相反するケースが多いのが面白いところ。
報道カメラマンが欲しいカメラと風景写真の写真家が必要なカメラは全然違いますよね。
記録映像として正確無比な描写を求める人もいれば、作品と称してピンぼけ写真を量産する芸術家もいます。
興味のある方々が音楽と同じように自由に楽しんで表現活動が出来たら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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