【初心者】マシンライブ向けMIDI規格の利用法

やろうやろうとはずっと思っていた初心者向けの記事、
不定期ですがツラツラ書いていきます。
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今回はMIDIについてのお話です。

○この記事の対象

DAW含めた電子楽器をひとつお持ちで「そろそろ二つ目欲しいなぁ」なんて方に丁度良い話です。
或いは二つ以上のマシンを買っちゃったけど、どうやって繋げるのコレ?って人。
複数の機材を連携させてどんな事が出来るかをお話ししていきます。

◯MIDI規格の概要

MIDIとは電子楽器の演奏情報などのデータに関する規格で、
メーカーの違う電子楽器やコンピュータが互いにやり取りできるよう40年前に制定されました。
一般的に「MIDIケーブル」と呼ばれるケーブルやUSB、最近ではBlueToothなどでも通信が出来ます。

MIDI以前はどうしていたかと言うとモジュラーシンセでお馴染みCV/GATE信号や、
TR=808やTB-303で使われているような「DIN24」または「DIN48」などがありました。

○時代によって変わるMIDIのニュアンス

1981年に制定された規格なので、古くから電子音楽家にとって大事な存在でありました。
「MIDI」という言葉は分野や世代によって微妙に違うニュアンスとなっているようで、
何も知らずにググるとかえって混乱します。

・単純な音符情報だと思っている人(MIDIファイルのこと)
・SC-88proみたいな古いDTM音源だと思っている人(MIDI音源のこと)
・USB接続の鍵盤を「ミディ!ミディ!」と端折って言い張る人(MIDI鍵盤って言えよ)
・ただのテンポ同期だとしか思ってない人(MIDIクロックだろ)
・DTM黎明期に流行した打ち込み文化(MIDI打ち込み文化)
・悪のJASRAC帝国に対抗すべく結成されたレジスタンス組織(知らんがな)
・CV/GATEを崇拝するモジュラーシンセ狂信者にとって倒すべき悪魔(統合失調症だろ)

まぁ別に間違いでは無いんですけど、
どうして彼らは「MIDIなんちゃら」と正しく表記するのを嫌がるんでしょうか?
そして全員が全員なぜか独善的な断定口調なので、
「オレの言うMIDIが正しいんだ!」「オマエのはMIDIじゃねぇ」
「真実のMIDIを教えてやる!」「左舷9時方向!MIDIビーム発射!」
とか言い出しかねない雰囲気なのです。

まぁこの手の面倒臭い連中はスルーするとして、
MIDI打ち込み文化とJASRACのMIDI狩りについては
インターネット黎明期の個人ブログで読み応えのある話を楽しめます。

それだけMIDI規格が僕たちにとって大きな影響を与えてきた、という事でヨシとしましょう。
当記事で重要なMIDIとは、シーケンス、テンポ、コントロール。
それらの信号と接続を中心にお話していきます。

 

◯MIDIの端子/ケーブルの種類

・DIN-MIDI

最も歴史の長い端子で、尚かつ一番シェアの大きなものです。
写真のような「DIN5端子」を使っていますが、実際に配線に使っているのは3つです。
ハードシンセの話題でMIDIと言うと普通はコレを指します。
信号が一方通行なので二つの機器で相互にやり取りするには二本のケーブルが必要です。

INは入り口OUTは出口。THRUはINから入った信号をそのまま流すものです。

・TRS-MIDI

線自体はDIN-MIDIと同じですが、端子の小型化を意図して3.5mmのステレオミニプラグを使っています。
DIN5端子の要らん所を端折って出来ました。そこらで売っているステレオAUXケーブルで代用できます。
DIN-MIDIとの変換アダプタなどもありますが、
メーカーによって接続方法が違うので専用の変換アダプタが必要です。
「TRS-MIDI-A」「TRS-MIDI-B」の二種類あり、規格が違うと動作しません。
これは規格が制定される前にメーカーが作ってしまったので、メーカーによって違うのです。
KORGはAタイプ、ArturiaはBだったかな?
その後Aタイプに統一されたので、今後発売される製品はAだと覚えておけばよいでしょう。
しかし問題は既に流通しているBタイプの機種。将来これらの機種を買う時には注意しましょう。

ELEKTRONのmodel:sample/cyclesのように機器内でAとBとで設定を変えられるものもあります。

・USB-MIDI

いわゆるDTMにはこちらの方がイメージ強いですよね。
パソコンやiPadなどで使われるUSB端子を利用したMIDI規格で、DIN-MIDIとの互換性はありません。
一般的に売られているMIDIキーボード、MIDIコントローラーはほとんどこのタイプです。
こちらは一方通行ではないのでケーブル一本で結線可能です。

たとえばELKTRONマシンにKORGの鍵盤やnovationのコントローラーを使いたい、となると
専用のコンバーターが必要となります。設定もやや面倒かも。

但しUSB規格の都合で「ホスト」と「ゲスト」がありゲスト同士で繋げても動作しません。
基本的にはコンピュータ(iPad含む)がホスト(A端子)、ドラムマシンやシンセなどはゲスト側(B端子)です。
つまりB-Bケーブルでドラムマシンにマウスを繋げてもウンともスンとも言わないのです。

稀にホストとしてMIDIコントローラーを繋げられる機種があるにはあります。
AKAI MPC LIVEや1010music BlueBoxなどが挙げられます。

◯MIDI信号の内訳

ここではMIDIがどういうメッセージを送っているのか、代表的な物を紹介します。

・スタート/ストップ

・クロック
テンポ情報です。

・チャンネル
1番から16番まであり、送り側の機器と受け側の機器でチャンネルを設定する事で互いを専用と設定できます。
これ以下の項目はMIDIチャンネルごとに分けられます。

ノート情報やCC情報は必ず頭にチャンネルが指定されていて、その機器に対してのみ信号が送られます。

「チャンネル1のノートC4を鳴らせ」「チャンネル2のCC45を値128まで上げろ」とかいった具合っす。

・トリガー/ノート
音声をどのように発するかの指示です。音符情報ですね。
DAWでお馴染みの市販MIDIファイルなんかはコレをファイル化した物を指します。

0から127までの128段階の信号をドレミなどの12音階(CからGまでのアレ)と、
オクターブの高さによって数字がつけられます。
C4のドとC5のドは1オクターブ違うってわけです。

音の長さも指示するんですけど、あんま意識しなくても大丈夫です。

・CC(コントロールチェンジ)
音声以外の機器制御信号です。
例えばトラックごとのボリュームやフィルターのカットオフなど多岐にわたります。
DAWや電子楽器だけでなく、PCDJソフトとDJコントローラーもこのCC番号で
ツマミやフェーダーに機能を割り当てます。

◯MIDIの利用方法

・クロック

一番身近なのがテンポの同期です。
ドラムマシンAとグルーブボックスBのテンポを合わせたい時、
どちらかを「クロックマスター」、もう一方を「クロックスレーブ」とします。
三台以上の場合は「マスター」と「スレーブ1」「スレーブ2」という風に繋いでいきます。
スタートやストップの情報も共有されるので、Aの再生を開始すれば同時にBも走り出してくれます。

MIDIとは直接関係ない話に脱線しますが、
モジュラーシンセや一部アナログシンセ、volcaシリーズはMIDI以前の規格でテンポ同期をしています。
KORGなら「SYNC信号」モジュラーなら「アナログクロック」と呼ばれています。
モジュラーユーザーの間では定説なんですけど、
Volcaは電池駆動できるMIDI to Clockコンバーターとして使えるのです。
しかも下手な専用品より精度が良い。
しかしスタート/ストップ情報は送る事ができません。タイミングを合わせて手動で行なうのが一般的です。

・ノート/トリガーのシーケンス

分かりやすいのがMIDIキーボードです。
音程、音のタイミングと長さ、音の強さをMIDI信号で送信します。
シーケンサーにも応用できるので気に入ったシーケンサーやピアノロールで別のシンセを鳴らす事も可能です。

・コントローラー

シンセやグルボのパラメーターを好きなツマミに割り当てたい時に、MIDIコントローラーが役に立ちます。
ただ現在市場にあるものはほとんどがUSB-MIDIなので、DIN-MIDIを備えているMIDIコンを探すか、
USB-MIDIとDIN-MIDIを変換出来るコンバーターが必要です。コントローラー用の電源も必要。

 

 

◯MIDIマッピングとMIDIインプリメンテーション・チャート

グルボやシンセなどのMIDI機器が、どういったMIDI信号を受けられるか、送れるかを表にしたものです。
大抵はマニュアルの最後の方に載ってます。
これを読めばその機材がどういう制御が出来てどういう制御を出来ないかが分かるんですよ。
真っ向から向き合わなければならないのがMIDIコントローラーでその機材を制御したい時。
このフェーダーなりツマミやボタンにチャンネルとCC番号を指定する設定作業をMIDIマッピングといいます。

ELEKTRONのmodel:cyclesで例を挙げると、
フェーダー型のMIDIコンでトラックボリュームを制御したいとき。
トラック1-6がそのままチャンネル1-6のなっているのがデフォルトですから、
そのフェーダーに対して「チャンネル○、CC85」と指定してやるんです。

なのでハードウェアのシンセ等に使えるMIDIコンの条件は
・DIN-MIDI又はTRS-MIDI OUTがある事
・独立した電源がある事
・MIDIマッピングの編集が出来る事
日本ではあまり流通してなく海外から直接購入する事になるケースがほとんどですけど。

○MIDI関連お役立ちアイテム

・iOSアプリMIDI TOOL BOX

https://mtb.artteknika.com/

iPhoneやiPadにMIDIインターフェイスを繋いで使うMIDI診断アプリです。
何かしらのMIDI関連のトラブルがあった時に、どういうメッセージが送られているか読み取れるので、
トラブル診断には必須アイテム。Sysexメッセージのやりとりも出来るよ。

・木下研究所・ABコンバーターちゃん

https://www.switch-science.com/catalog/6409/

TRS-MIDIのタイプAとタイプBを相互に変換してくれるアダプター。
キット販売だからはんだ付けできないとダメだよ。

・Lightning-USB-Bケーブル


https://amzn.to/3pn2ASD

中華製のパチモンなのでずっと使えるかは不安ですけど、
iPhone/iPadとUSB-B端子を備えたMIDI機器の接続ならコレ一本でOKです。

・One Control MIDI Hammer Cable


https://www.onecontrol.jp/products/one-control-midi-hanmmer-70
元々はエフェクターペダル用のMIDIケーブルで、端子の出っ張りを極力少なくした画期的なケーブルです。
最長で100cmのモデルしか無いけど、雑然とした機材スペースを少しでもスッキリさせたい方に。

・IK Multimedia iRig MIDI 2


https://amzn.to/3HXWe4h

こちらはDIN-MIDI端子のMIDIインターフェイス。
DIN-MIDI機器は不思議と安心感があります。他が不具合や面倒事が多いんでw

・novation Launchpad PRO mk3

https://kcmusic.jp/novationmusic/product/launchpad-pro-mk3/
国内で買える(たぶん唯一の)ハードウェア対応MIDIコントローラー。
TRS-MIDIを備えています。

・faderfox

http://www.faderfox.de/

ハードウェアシンセ、グルーブボックス、ドラムマシンにも対応した
独立電源/DIN-MIDI端子を備えたMIDIコントローラーを作っています。
ちょっと古臭く無骨なデザインがそそりますね。

・BEFACO VCMC

https://www.befaco.org/vcmc-2/

こちらはユーロラック型のMIDIコントローラー兼CV to MIDIコンバーターです。
MIDIコンとしては8つのフェーダーとボタンをマッピングが出来ます。
CV/GATE入力を備えていて、ユーロラックシーケンサーでMIDI音源を鳴らしたり、
LFOやファンクションジェネレーターCV信号を使ってMIDIモジュレーションも出来ます。

スタンドアロンでも利用出来るようにケース付きも販売しています。

・Michigan Synth Works XVI Desktop USB 16 Channel Fader Bank

https://michigansynthworks.com/products/xvi-desktop-usb-16-channel-fader-bank-with-cv-i2c-and-midi

16nというオープンソースのMIDIコントローラー。
TRS/USB MIDI出力とCV出力を備えているのでMIDI機器のみならずモジュラーシンセにも使えます。
Michigan SWではユーロラック仕様や半分の8フェーダーモデルも扱ってますよ。

・Retrokits

https://retrokits.com/
上級者向けMIDI関連アイテム専門メーカー。
なかでもDIN-TRSコンバーターが秀逸です。

 

 

○まとめ

こんな風にMIDI規格とは僕らの機材には切っても切れないもの。
一見無縁のように思われるエフェクターやモジュラーシンセにさえ活用されています。
上手く活用して制作やライブをスムーズなものにしていきましょう。

 

 

 

 

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