ファンクション・ジェネレーター
モジュラーシンセのモジュールの中に「ファンクション・ジェネレーター」という、
普通のシンセ用語としては聞き慣れないものがあります。
直訳すると「関数発生器」といって余計に混乱しますが、モジュラーシンセの世界でのそれは
「LFOとEGを兼ねたもの。出来れば2,3,4系統と出力があって互いに影響し合えるもの」
という認識でOKだと思います。
これ以上適切な解説があればTwitterで教えて下さい。
具体的な用途としては、変テコなCV信号を生み出し様々なパラメーターを変調させるのに利用するもので、
使いどころは無尽蔵にありモジュラーシンセを楽しむ上で重要な役割を担います。
◯追補・ファンクションジェネレーターの始まり
初めてFunctionGeneratorという言葉が生まれたのは、
Buchlaのモジュラーシンセ(ユーロラックじゃないよ)200シリーズの281からだそうです。
関数生成機という直訳の名称からも伺える通り、電子工学的ネーミングセンスを好んでいた事からの命名なのでは?という話を聞きました。
この元来Buchlaの商品名だったものがユーロラックムーブメントの中で一般化していったものだと思われます。
◯ファンクション・ジェネレーターの基本的概念
エンベロープジェネレーターは一般的にADSRと4つのセクションがありますが、
ファンクションジェネレーターではAttackとDeceyしか無いのがほとんどです。あるいはRiseとFall。
厳密には違うものらしいけどAttack=Rise、Decay=Fallという認識で問題ないかと思います。
そのエンベロープをどのタイミングで発動させるか。
ゲート信号やトリガー信号を入れたタイミングで一回だけ発生させるEG的な使い方と、
入力信号の有無に関わらず周期的に繰り返すLFO的な使い方が選べるのがファンクションジェネレーターの基本です。
更にはAとDそれぞれにCV入力が出来るものや複数のCV信号をミキシング出来るものなど、
機種によって様々な生成方法があります。
◯代表的なファンクション・ジェネレーター
・MakeNoise MATHS
何より筆頭に挙げるべきなのはMakeNoiseのMATHSでしょう。
世界一売れたモジュールとも言われ、持っていない人は少ないかもしれません。
実は自分触った経験が無いんですけど、機能の取捨選択が絶妙で一度使ったら手放せないモジュールだと評判も高いです。
・BEFACO RAMPAGE
MATHSと迷ってコチラを選んだ偏屈者です。
Riseとfallがスライダーになっているのがことのほか便利でして、パッと見わかりやすいのが良いんですよね。
・Intellijel Quadrax/Quadra
Quadraxを買ったけど使いにくいからモデルチェンジ前のQuadraに替えました。
普通に4系統あるADとして使うのも良いし、LFO利用も使いやすいです。
・Buchla-Tiptop 281t
元祖ファンクションジェネレーターの直系モデルとも言えるモデル。
上のQuadraを多機能化させたもの、と言っても差し支えないんですが、
基本設計はこちらの方がずっと古い筈です。
ADそれぞれにCV入力があって、またミキシングを出来るのがミソですね。
このBuchla-Tiptop200シリーズは一般的なユーロラックモジュールの中でも安く購入出来るのが良いですね。
◯Hikari Instruments Triple AD
ファンクションジェネレーターの欠点って訳じゃないけど、みんなデカいのが難点ですよね。
上で紹介したモジュールも20HP以上あるのが普通で規模の小さいシステムに組み込むのはチト悩みます。
そんな矢先に見つけたのがHikari InstrumentsのTriple AD。わずか8HPの中に3系統の出力があります。
(マニュアルはこちら)
http://hikari-instruments.com/manual/TripleADManual.pdf
簡単に機能を紹介すると、
横向きスライダー(しかも出力信号に合わせてLEDが光る)で視認性抜群。
トリガー入力はCh1に入力すると自動的に2、3にも1に入れたトリガーが適用される。
A-D間の時間はRANGEスイッチで3段階から選択できる。
ファンクションジェネレーターとしては凄くシンプルなものですが、
シンプルな故に重宝しているモジュールです。
そして安い。
円高&半導体不足で海外メーカーのモジュールが価格高騰している現在ですが、
Hikari Instrumentsは日本のメーカーなので少なくとも為替相場に直接影響受けていません。
そんなんだから相対的に安く感じてしまうんですけど20900円(11月現在)はそれにしても安いですよ。
◯ファンクション・ジェネレーターの使い途
使い途なんてそれこそ千差万別なんでしょうが、自分の用途を例として紹介します。
TripleADの3つのチャンネルのうち2つをBuchla258tオシレーターに適用しています。
このうちの一つにオシレーターを音程の変わらないドローン音として使っている為、
FMインプットと波形変化に長いレンジでのLFOを使っています。
もう一つのChはシーケンサーの挙動を狂わせて有機的なテンポを作り出す為に使っています。
他にもエフェクター(mimeophone)の各パラメーターに使ってみたり、
素直にADエンベロープとして使ったりと、自分のシンプルなシステムですら使いどころがたくさんあるので
いずれ二つ目のTripleADを買うかもしれません。
◯まとめ
シンセの世界におけるファンクションジェネレーターとは、
要はあらゆるモジュールに備わっているCV入力に入力する為の信号を生成する為のモジュールですね。
そのために使い途は無尽蔵で、人によっても(自分のような)シンプルなものを好む人や、
多機能型、多チャンネル型と選択肢がたくさんあります。
箱のスペースが許す限りたくさんのCV生成ソースが欲しいところです。