世界最小ユーロラック・ドラムマシンMagerit METROレビュー
半年か1年くらい前にその存在は知っていたのですが今までスルーしていたモジュールで、
今回人柱覚悟で購入してみましたMagerit METROドラムマシン。
そもそも自分はこういう省スペースな割に多機能な機材が苦手でして、
絶対に使いづらいだろう、操作大変だろう、とは思っていましたが、
しかししかしその多機能に惚れてしまい購入に至った訳です。
概要を説明すると、
わずか13HPに6トラック、シーケンサー、エフェクターまで付いたデジタルドラムマシンモジュール。
LXRも裸足で逃げ出すスペックです。
しかもこのMageritというスペインのメーカー、
それまで聞いた事ない位に微妙でマイナーなメーカーです。
https://magerit.es/?lang=en
他にはVCO、VCF、VCAなど基本的なモジュ−ルをリリースしており、
WEBサイトが(モジュラーメーカーにしては)やたらと豪華、説明が丁寧なのも気になります。
○自分の思惑
84HP x2段の箱にドラムとベースを突っ込んだ「俺のグルーブボックス」を制作中。
一応は2021(笑)モデルとして完成しましたが不満が残る部分もあり、
2023モデルとして改良をしていく算段です。
モジュラーでドラムマシンを作るとなるとスペースとの戦いになってしまう為、
このドラムマシンモジュールに一抹の期待を寄せてみました。
2021モデルの不満点は、
AFTER LATER AUDIOのAlan(かの有名なチューリングマシンの小型版)でランダムシーケンスを、
ドラムはADDAC 104(8HPでパーカッション4種類の音出せる)を鳴らしていましたが、
キットとして買ったADDAC104がハンダ付けの失敗で調子が悪く、
加えてAlanから吐き出すランダムトリガーがつまらない事でした。
完成品買えばマトモな音なんか?と思ってもわざわざ同じ物買う気にはなりませんしね。
○購入前に調べた特徴
まずこの少ない操作子でシーケンスはしたくないですよねぇ。
一応外部シーケンサーでも鳴らせるんですけど、
ジャックが足りないので6トラック中3つまでしかトリガー出来ません。
また出力がLとRのステレオ仕様で、各音色はパンで振れるので2系統まではパラ出しできるけど、
6トラックあるんだから何とかしろよ!と思ってしまいます。
その他の機能は、11種類の音色テンプレート(ELEKTRONで言うマシンか?)、
細かく調整出来る音色パラメータ、センド量を個別に決められるディレイ/リバーブ。
内部/外部クロック対応、3系統のトリガー入力、3系統のCV入力、
ステップシーケンサーとユークリッドシーケンサー、もちろん決めた設定はセーブ可能。
などなどいたれりつくせりなんですよぉ。
特に嬉しいのはエフェクト。
モジュラーのドラム作りで凄く悩みどころなんですけど、
ドラム個別にエフェクトをかけるとなるとセンド/リターン付きのミキサーはやたら値段が高く、
音源の数だけエフェクターを積む方がマシになってしまいます。
(WMDのパフォーマンスミキサーが12,3万円しかも会社潰れた)
(erica synthsのpico DSPを大量に買うしかない。現状3つ持ってるけど)
こうなるとエフェクト自体を諦めるしかなかったのですが、
コイツにはバッチリ入ってるのでココを一番に期待してました。
○お値段と購入方法
https://magerit.es/modules/metro/?lang=en
メーカーのWEBサイトからしか購入できないようで、PayPal決済をオススメします。
価格は260ユーロ。日本までの送料は22ユーロ。10月10日現在で約38000円でした。
○個人輸入の注意点
個人輸入で海外から品物を買うと上記とは別途で輸入関税と消費税を徴収されます。
今までは届けてくれる配達員さんに直接払うか、後で振り込み用紙を郵送してくるかだったのですが、
今回というか最近はオンライン決済をして承認されないと荷物が届かないシステムになっていました。
自分はこのメールを見落としていて到着予定日まで気が付きませんで、
それで予定日は自宅で待っていたものの結局遅れてしまいました。
知らなかった皆さんご注意を。メールはちゃんと読みましょう。
○システム概要
画面の上3つのボタンでモード切り替え、右の大きなエンコーダーで各種操作、
サブエンコーダーは各機能に割り当て可能、となっています。
○シーケンサーが鬼門なのでは?
大きなロータリーエンコーダーひとつでシーケンサーを操作するようですが、
ダルいだろ絶対と思ってしまいます。ステップSEQだけでなくユークリッドSEQまで付いてる癖に。
しかし外部から操作できるのは3つまでなので、残りの3つは使わないor頑張って内部シーケンスする、
というロクでもない選択肢しかありません。
・ステップシーケンス
デカいエンコーダーでトリガーのON/OFF、押しながら回すとトラックの移動。
下の黒いエンコーダーでBPM基準にした倍速や分割、ステップ数、トリガーミュートなどが出来ます。
・ユークリッドシーケンス
デカいエンコーダーでトラックの選択とミュート、
下の黒いエンコーダーでステップ数やテンポ、ローテーションの変更など出来ます。
そして、どちらのシーケンサーもメチャクチャつかいにくいですw
ここは期待してはいけません。
3トラックは外部シーケンサーからトリガーして、
残り3トラックはユークリッドで適当にガチャガチャやってるのが関の山でしょうね〜。
○音色は贅沢
キック、スネア、タム、ハット、クラップ、ストリングスまであり
トラックごとに自由に割り振りできるので音色に関しては満足出来ます。
また音色作りはプレイ中にいじる必要は無いので多少面倒くさくても我慢できます。
しかも自分の場合はキックとハットに関しては別のモジュールを使う為、
このモジュールは「賑やかし要員」のつもり。デジタルでしか作れない変な音を中心に作りたいと思ってます。
そうなるとCV入力に突っ込むLFO欲しくなりますね。流石に内蔵してないけど。
CV入力と言えば、これ好きな箇所に割り当てる事が出来る上、
LFO等がなくてもツマミで調節する事も出来ます。
肝心の音質については申し分ありません。
ストリングスやクラップが面白い音を作れますし、
キックはMutableInstrumentsのPeaksのキックには敵わないものの、十分な低音を出してくれます。
パラメーターを根気よく調整すれば更に良くなることでしょう。
○エフェクトシステム
残念ながら音色個別にセンド量を指定する事は出来ず、
最終的なミックスアウトにかかる物となります。
またECHO(1)やREVERB(5)といった数字がありますが、別にエフェクトの種類を示している訳ではなく、
それぞれ1種類のみです。
しかしエコー、リバーブ共にパラメータをツマミで調節出来て、
DRY/WETの比率を変えたりも出来ますね。
○惜しいポイント
・足りない入出力
前にも言ったとおりトリガー入力が3つまで、音声出力が2つしかないのは大いに不満です。
これだけ多機能ならもう少し大きくなっても良いから6トリガー6出力欲しい所ですよ。
これは本当に勿体ない。
・外部から操作する為のMIDI入力
なぁんて、あったらいいのになぁ。と思います。
最近は少ないながらもユーロラックのMIDIコントローラーが出ているので、
それらと組み合わせて操作性を向上させるって手段が採れたらよかったのにねぇ。
・使いにくいシーケンサー
音色の設定はともかく、エンコーダーひとつでシーケンスするのはけっこうキツいですw
買う前から分かっちゃいたけど使ってみるとやはり腹が立ちます。
○まとめ
色々不満はあるけど自分の用途にはコレがジャストな気がします。
内蔵シーケンサーに慣れた人ならコレと電源だけで小型でレアなドラムマシンとして使えるかも。
人様にお勧めできるか?と言われれば微妙なところ。
仕様を把握した上で用途に合うならベターなチョイスです。