俺のミュージック・イーゼル

モジュラーシンセユーザーが何を考えてどんな音楽を奏でたいか、
そのシステムを組むに至った理由やそれでどんなフィールドで演奏に臨むのか
そういうのって気になりませんか?
気になるからこそまずは自分からって事で自分語り込みで紹介します。

ブログで自分語り始めると精神衛生的に末期だと思っていますが、
ブログや動画でなくても皆さんなりのシンセ観をどこかで語って頂けると嬉しいです。

Buchla-Tiptop200シリーズの発売をきっかけに西海岸式シンセに興味が湧き、
モジュラーシンセのモジュラーらしさとは何だろう?と考えながらシステムを組み立てています。

アタシ若い頃はバイクが大好きで何十台も乗り継いでいたんですが、
最も気に入ってたのが名車ヤマハのSR。
時代にそぐわない空冷単気筒エンジンが物凄く好きで通算4台は乗りましたね。
その頃から「機械はシンプルな方が美しい」
という哲学に則ったプロダクトにソソられる性癖を持っていました。
ちなみに初めて買ったクルマはフォルクスワーゲンのTYPE3ノッチバック、やはり空冷ですw

やはりエンジンは空冷に限りますよ!ポルシェは乗れないだろうけどさ。
必然的にデザインもクラシカルな意匠になりがちなんですが、
そこには然程のこだわりは無いものの、やはり好きです。

さてさて興味がクルマ/バイクから音楽/電子楽器に移った現在でもその性癖は相変わらずらしく、
そんな欲望を存分に満たせるモジュラーシンセに手を出したのは必然だったのかもしれません。
自作のケースにツマミとトグルスイッチだけで構成されたモジュールを組み込んで
自分だけの電子楽器を作っていくのは完成まで
数年、数十万円かかったとしても人生に潤いを与えてくれるものです。
楽器を持つ者なら曲を作って多くの人の前で演奏するのがセオリーなんでしょうが、
こと電子楽器になると必ずしもそうとは限らない、
他者ではなく自分の為だけに演奏するという価値観をおそわったのも、
やはりモジュラーシンセからでした。

元々はハウスのDJだったのがDTM、グルーブボックスを通ってモジュラーシンセに辿り着いた訳で、
そこに追従する形でハウス/テクノ以前の電子音楽やドローン、アンビエントなども聴くようになりました。
純粋に音楽好きな方とは違って機材が先、音楽は後なんですよね。
車やバイクも移動する楽しみよりも所有する喜びを優先してしまっていたのかもしれませんね。

◯コンセプト

西海岸シンセの雄、ブックラの中でもセミモジュラーシンセと言える「MusicEasel」をモデルにしています。
比較的シンプルなプロダクトでありつつも、しっかり個性の際立つ「ブックラらしさ」がある音、
しかもユーロラックでイーゼルをモデルにしたシステムを組んでいる人が非常に多く
ユーロラック自体が西海岸式シンセをモチーフに作っているものが多いので手本にし易いのが理由ですね。
とはいえMusicEasel触った事ないんですけどねぇ。
なんで当初は「Buchla200シリーズで揃えよう!」とか「MusicEaselレプリカ作るぞ!」なんて意気込んで
ましたが、そこはなんとなくな程度に押さえて自分が使いやすいオリジナリティも加味して良いんじゃない?
と思うようになりました。

◯システム詳細


(左:いまこんな。右:いずれこんな。)

まだ入手できていないモジュールもある為に7割くらいの完成度といったところなんですが、
コンセプト的にはシンプル&クラシカルなインターフェイスでごく単純な、
それでいて存在感のある音が出るようなシステムです。
現代の音楽はもちろん、モジュラーシンセのトレンドからしても古臭い音しか出せませんが、
自分の音楽的嗜好よりも機械的嗜好を優先させた結果こんなシステムになりつつあります。

・マスタークロック
Centrevillage CLKM

国産モジュールを製造販売しているガレージメーカーCentrevillageの製品です。
メーカー立ち上げ以前から知り合いだった為に親近感もありますが、
痒い所に手が届くような実用的モジュールを多数リリースしています。
https://centrevillage.net/
これはわずか2HPの中にBPM表示が可能かつMIDIとの同期が出来るモジュールです。
BPM表示できるモジュールって案外少ないものでして他にはPamela’sWorkoutくらい。

・セカンダリークロック
4ms QCD

マスターから引っ張ってきたクロックを4つのツマミに割り当てた上で
それぞれ別々に分割/倍増できるモジュール。
これを2つのシーケンサーや任意のトリガー入力に割り当てています。
これもマスタークロックとして利用できますがタップテンポでBPMを決める為に
テンポも曖昧で、そこはやはりCLKMを使った方が便利です。

・プライマリーシーケンサー
Make Noise 0-CTRL

MusicEaselと同じタッチ式のシーケンサー兼コントローラー。まぁMusicEaselの鍵盤知らないんですけどね。
1ステージに3つあるCV出力を二つのオシレーターに振っています。
タッチ部分はディレイのフィードバックとディレイタイムを最大にする用途に使っています。
鍵盤としても使えなくはないので試行錯誤しましたが、自分に合わなかったのでこのやり方に落ち着きました。
本来はスタンドアロンで利用するものですが改造を加えてユーロラックに対応させています。
またツマミもデフォルトからイギリスThonkで売っているTALL TRIMMER TOPPERSを使っています。
https://www.thonk.co.uk/shop/tall-trimmer-toppers/
これ本当に使いやすいですよ。このThonkでしか売ってないから大量にまとめ買いしなきゃならんですけど。
6mmプラ軸ツマミに対応していて多少の加工をすればKORG系にも使えます。


・セカンダリーシーケンサー

ST Modular SHIKENSA

MusicEaselにも備わっている5ステップのシーケンサー。
奇数ステップのシーケンサーは聴いていて癖になります。
これのゲートON/OFFをトグルスイッチに改造したVer.を使ってます。
キット販売なんですけどビルダーに作ってもらいました。
またTripleADからLFOを引っ張ってきて挙動を狂わせています。
この為に演奏途中でコケるシーケンサーとなっていて、その人間臭さがまた愛おしいんですよ。

・オシレーター
Buchla-Tiptop 258t

シンプルでリーズナブル、それでいて基本性能は抜群に良いオシレーターモジュール。
ブックラのブランドが無かったとしても非常に良いモジュールで、2つ使っています。
ツマミでの可変域が凄く広い事(下はLFOレベルから始まる)、
アウトプットが二つあり音声出力と変調出力を同時に吐けるのもポイント。
Buchla-Tiptop200シリーズはコスト/パフォーマンスが非常に良いのも魅力的。
値段の高いモジュールこそが正義だ、とは限らないのを証明してくれる良プロダクトです。

使い途としては、デュアルオシレーターx2で4機のオシレーターを備えている事になり、
一つはSHIKENSAを使った如何にもモジュラーシンセ的な上ものフレーズ、
一つはTripleADを使った変調だらけのドローン、
一つは0-CTRLで奏でるレゲエ風なベース、
最後の一つは効果音的な使い方をしています。
これらを後述するミキサーで抜き挿ししながら展開を作っていく所望です。

・ファンクションジェネレーターとLFO
Hikari Instruments TripleAD
Hikari Instruments DUAL LFO

前の記事で紹介したTripleADと、同メーカーからリリースされているLFOを使いました。
しかし使いどころがイマイチ決められないのでTripleADを二つにするかもしれません。
LFOはもう少し研究が必要です。
こちらHikari Instrumentsも国産な事に加え高コスパなメーカー。
オーナーさんともたまに顔を合わせる機会がありお話伺っております。

・ローパスゲート
P4L Dual Passive LPG
MengQiMusic DPLPG

基本的にはどちらも同じ2HPのパッシブLPGです。
P4Lの方にはサウンドのキャラクタを変更できるトグルスイッチが備わっています。
https://drive.google.com/file/d/1Alb8jGC4XYXKGXkpcWYfAIhjSzzlI_Ha/view
P4L Storeも日本のガレージメーカー。
https://p4l-store.com/
アイソレーターが有名ですね。
現在アイソレーターを作っている所は世界中探しても少ないので、欲しい方は要チェックです。

ただこれらのLPGは暫定的なもので、
いずれ発売されるであろうBuchla-Tiptop292tクアッドLPGに変える予定です。

・ミキサー
Bragi Modular Modi


4HP4chのスライダー式ミキサー。
この形、他に無いんですよ。まずスライダー式が珍しく
尚且つジャックが上についてるので、操作の邪魔にならない。
ほんとこんな単純なモジュールでも理想の形となると市場にはナカナカ出回らないので、
ミキサー問題は根が深いですよ。
合計三つ買いました。

・エフェクター
MakeNoise Mimeophone

MekeNoiseの高機能ディレイ。
ペダルエフェクター含めて色々なディレイを試してきましたが、かなり理想に近いディレイです。
これの特徴はツマミの可変域が広くペダルで言うプリセットを跨いでも音が途切れない事。
テープエコーからデジタルディレイまでシームレスに可変するのは感動的ですらあります。
ツマミ一つではあるものの独立したリバーブも装備、その他CVコントロール箇所が多く備わっています。


◯自作ケースとその他の構成部品

前職の金属加工業の時代に84HPx2段のトランク型ケースを作りました。
アルミの地肌を活かす為にサンドペーパーでの仕上げのみとしていますが、
思いの外耐久性も良く、傷が付いてもそれを味とみなせる無骨さを持っています。
ここも性癖ではあるんだけど、傷やサビにまみれたボロボロの金属って好きなんですよ。これは錆びないけど。
深さ45mmとかなり浅く作っていますが、
ケースとフレームを外せるような設計にしてメンテナンス性を担保してます。
そのぶん重たくなってしまっていますが仕方ない。


(この削り出し把手がミソ。掴むと痛いけど格好いいから)

パッチケーブルはAfterLatorAudioの金/黒を使っています。
下世話な高級感というかまんま下品というか、イヤらしくて好き。

アウトプットに使うケーブルもこんな雑なもの。
分岐ケーブルとパッチケーブルを組み合わせただけのヤッツケ仕様です。
昔は音質にこだわった良いケーブルなんかを使っていましたが、
モジュラーシンセに手を出してからはどうでも良くなった。
それなりの「強い音」が出せていればノイズも音楽を演出する大事な味です。

◯現時点での所感とコレ使ってやりたい音楽

結果論ではあるけどフィルターを持たない事でオシレーターの素の音を存分に味わえるシンセになりました。

システムを組んでみてつくづく思い知った事がありまして、
使いこなすまでに相応の練習が必要なんだな、とわかりました。
電子楽器の電子機器と楽器、どちらかと言えば楽器寄りの機材になってくれています。

音楽ジャンルとしては微妙にハッキリできていないけど、
このシステムでクラシックな電子音楽を、
更にその下にはリズムを組み合わせてライブが出来たら良いな、と思っています。
なんとかテクノとかなんとかハウスだとかはどうでも良いのです。
強いて言うならチャールズ・コーエンに代表される電子音楽と、
1960年代のレゲエ/ダブが好きなのでそこからエッセンスを抽出したリズムを組んでみたいものです。

◯まとめ

恐らく自分は一般的なモジュラーシンセユーザーの中では所得がかなり低い方だと思っています。
欲しいモジュール買う為に手持ちのモジュール一つ売るなんてザラな話で、
安いとされるモジュールを買うにも結構悩まなくてはなりません。
(しかも現在は病気で半年以上無職だったりしますw)

そんな貧乏人がモジュラーシンセなんて手ぇ出すなよ、と思われるかもしれませんが、
自分には財力の低さを補って余りある人脈があります。
このブログで名前を売り、リアルでも毎月イベントを催し、半年に一度は個人売買の交流会を開いていたり、
結局は20年のDJ時代に培った経験を活用して上手いことやり繰り出来ています。

また工業系の仕事とデザインの学校に通った経験(30歳越えてからだよ)から、
それらの体験を活かしてプロダクトデザインに落とし込む手法も学んでいる事も大きいですね。

純粋に音楽が好きかと訊かれれば自信をもってYESと答えられない面もあるけれど、
それなりに永く楽しめているのでヨシとしましょう。

 

 

 

 

 

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