ローパスゲート

西海岸式シンセサイズの特徴を機能別に紹介する連載(?)記事。
ファンクションジェネレータに続き今回はローパスゲートを掘っていきましょう。

◯ローパスゲートとは

ローパスゲートとはフィルターとアンプが合わさったような機能で、
ブックラを始めとしてユーロラックモジュラーシンセでも多数発売されています。
逆にスタンドアロンのシンセではこれを採用している物は少なく、
モジュラーユーザーでない方にはピンとこない言葉でもあります。
ローパスゲートを採用したグルボとかあったら面白いのにね。

最も代表的な音は元祖であるブックラの292を使った「ブックラ・ボンゴ」と呼ばれる音で、
打楽器にも似た減衰をする為に東海岸シンセでは再現出来ない音を作ってくれます。

◯ツマミ付きとツマミ無し、パッシブのもあるよ。

回路的な違いは説明出来ないのですが、
普通のフィルターにも似たツマミのあるタイプと、ジャックのみで構成されている物があります。
また2HPでパッシブ(電源要らず)の物も流通しており、気軽に試したい方にはもってこいです。
ツマミ付きのタイプはVCAで言う音量とローパスフィルターで言う音の明暗が連動しており、
音の大きさと明るさが比例しています。
これをEGなどで動かすと普通のローパスフィルターとはまた違う音質になってくれます。

ローパスゲートを気軽に楽しみたい、スペースの空きに余裕がないという方には2HPのパッシブタイプ、
ガッツリやりたい方にはアクティブタイプをお勧めします。まぁ3HPのpicoLPGってのもありますけどね。

◯バクトロール

この写真の基板裏についてる黒くて四角いのがバクトロールです。
ローパスゲートには要となる部品に「バクトロール」という物が使われていて、
LEDと光センサー的な奴を組み合わせて打楽器に似た有機的な減衰を再現するものです。
ちなみに電子工学界隈では「フォトカプラ」と呼んでいて、
原理や回路を調べたい人はこちらで検索すると勉強になります。
https://engineer-education.com/photocoupler/

LEDの明るさに応じて音量を制御するため、
通常の回路よりも徐々に光(=音量)が失われていくのが特徴で、
音が消える時の減衰の仕方が特徴的なんですよ。
この減衰の仕方がローパスゲートの音の最も個性的な部分です。

◯微妙に注意点

デメリットという程でもないんですけど、
大抵の場合ツマミが一つしかないですから音色の変化をオシレーターに頼るしかありません。
シンプルなオシレーター+ローパスゲートだとあまり音色の変化を楽しめません(体験済み)。
多機能オシレーター(いわゆるコンプレックス・オシレーターなど)が欲しくなります。
すると結局は値段も高くつき大きなスペースも必要になります。
つまり結果的に西海岸系シンセを組む事になりますので、そのつもりが無い人は留意しておきましょう。

もうひとつは流通量が少ないこと。最もメジャーなMakeNoiseのOptomixやLxDは
生産が止まっており中古市場でもプレミアが付いてしまっています。

また人づてに聞いた話なので本当かどうか定かではないんですけど、
バクトロールは個体差が大きくYoutubeなどで観るものと実物では音が違う場合もあるそうです。

◯国内で買えそうなローパスゲートリスト

・MakeNoise Optomix

たぶんこれが最も売れていたローパスゲートで、所有している方も少なくないとは思いますが、
現在では生産していないようで中古市場でもなかなか出回りません。
ゲートの入力は5Vではなく8Vが望ましいと言われている事にご注意を(5Vでも大丈夫だけどね)。

・MakeNoise LxD

こちらも生産中止したもので4HPと省スペース、2chの上下で特性が違うので別の音になるのが特徴。

・Erica synths pico LPG

PicoシリーズにもLPGはあります。動画を観る限りでは理想的な分かりやすい減衰をしているので、
1chだけでいいからとりあえずLPGを試したいという方には良いでしょう。

・MengQi DPLPG

これは2HPパッシブタイプの物の中では最も入手し易いと思います。

DPLPG (Dual Passive LPG)

https://beatsville.jp/products/dplpg-dual-passive-lpg

・Tiptop Buchla 292t

まだ未発売ですがハンドメイドのバクトロールを採用したクアッドLPG。
天下のブックラ様が監修しているのでスペースが許す方には最高のLPGではないでしょうか。

・Tokyo Tape Music Center Tokyo Gate

国内で偉くマニアックな商品展開をしているTokyo Tape Music Center。
こちらのLPGもブックラ100シリーズ(200だったかな?忘れた)の回路を元に製作したもの。
もう「トーキョー!」のネーミングだけで格好いい。

 

◯聴き比べ動画おすすめチャンネル

色々なモジュールを同条件で比べている便利な動画チャンネルですが、
何故かローパスゲートの動画がやたら沢山あります。

まぁ紹介記事を書いといてナンですけど、これは聞かずに判別出来ないです。
これらの動画を参考に至高の減衰を探し当ててみましょう。

 

◯まとめ

自分はモジュラーシンセはじめたての頃(東も西も知らない頃)、
「VCFとVCAが一緒になってるならスペース稼げるじゃん!予算も低くできるし!」
という理由だけでローパスゲートを購入し、ツマラン思いをした記憶があります。
そういうアホな事例を増やさない為にも互いの機能は把握してから購入しましょうね。

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