「シンセ界のHONDA MONKEY」KORG volca

トラックメイクを始めてから意識するようになったけどKORGってブランドは大好きです。
ここで紹介するvolcaシリーズや個性的かつ超使えるiPadアプリなど、
「小遣いで買える程度の機材やソフト」のクオリティと遊び心に好感が持てますよね。

もちろんKORG製品の全てを気に入っているわけでもなく、
買ったはいいけど期待外れでヤフオクに流してしまった物もあります。
個人的にはKORGのVAシンセは好みの音ではなかったかも。あとカオスパッドも何か違う。
またツマミもツマミフェチが満足できる質感ではなく
廉価機なら許せるけど高級機も似たようなツマミなのがチト残念。
volcaやmonotronの細軸ツマミは設計上仕方のないものだけど、
やっぱり回しづらいですね(但し対策部材はアリ)。

KORGのコンパクトな廉価機に共通して言える強力なメリットが電池駆動であるって事。
扱う機材が増えれば増えるほど電源の確保に悩んでしまうので
電池駆動が出来るってのはすごく有難いんですよ。
また「マニュアル無しでも結構なレベルまで直感で使える」のも大事。
ELEKTRONなんてファイル構造から勉強させられますからね。

またKORG廉価機は全体的にS/N比が良くないっす。
ハイファイな音を求める人にはクソ機材にしか思えないでしょう。
しかしローファイ上等!のクラブミュージックなら
このノイズも味として受け入れられるんじゃないでしょうか。
ボクもデジタル機材のノイズは許せないけど、アナログのノイズは嫌いじゃないです。

◯KORGオススメ機材

1,volca keys

モジュラーシンセもBlofeldも持ってはいるけど、
もっと気楽にサクっと音の出せるガジェットが欲しくてvolca keysを中古で見つけて即買い。

音の印象は「いい意味でチープ」れっきとしたアナログシンセの音しかも3音ポリ。
ミキサーに直に繋ぐと他社のリズムマシンに音量で負けてしまうんですが、
何かしらのエフェクターをかますと化ける化ける。
10万円以上のアナログシンセを喰える音になりますよ。この化け具合は流石アナログ。
VAやソフトシンセに比べて効果がてきめんに出るので
エフェクトでの音創りを楽しめるのがコイツの特徴ですね。
volcaシリーズでは上モノ担当というポジションですが、低い音もかなりイイ味してます。

内蔵のディレイもクラシカルな出音で使い勝手が良く(ツマミ以外はw)、
アナログディレイというよりテープエコーに近い印象があります。

個人的に残念だと思ったポイントは、
シリーズ中コイツだけステップシーケンサーが無く
リアルタイムでの打ち込みを記憶させていくタイプのシーケンス。
マトモな演奏が苦手(むしろ出来ないし覚える気もない)なボクには痛いところ。

ハードシンセの入門機としてもお勧めだし、
ソフト音源主体で制作している人がチョットだけアナログ感が欲しいって時にも
絶大な効果を発揮できるかと。
安いソフトシンセと同じくらいの値段だしね。

2,monotron delay
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飛び道具の玩具が欲しくなり3000円で購入。
音はvolcakeysと比べて「更にチープ」。そりゃ3000円なんだからそんなモン。
ノイズまみれです。でもそれでいいんです。
80年代前半のダンスホールレゲエではこういうノイズだらけの効果音が飛び交ってましたし。
そういうチープ&レトロな音が欲しい時に最適。要は使いどころですよね。

ちなみにコイツKORGが回路図を公開しているようで、
電子工作マニアの人達が改造して楽しんでいます。
そういう人には最高の玩具かもしれません。

3,SQ-1
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本命はOCTATRACKだけどモジュラーシンセ用にサブのシーケンサーとして購入。
対抗機種にDOEPFERやArtruiaがありますが、一番安いし電池駆動はこれだけ!

そしてvolca keysとの相性が良すぎて病み付き必至です。
volcaやmonotronと違って物理キー(ゴム製だけど)なのも好感触。
volca系のシーケンスでお馴染み「アクティブ・ステップ・モード」もコイツなら本気出せます。

しかしコイツの本領を発揮できるのはモジュラーシンセや古いシンセのCV/GATE方式。
8ステップx2系統で音程はもちろん、モジュラーシンセなら
工夫次第でフィルターやらアンプやら他のパラメーターもシーケンスできます。
いろんなモジュールのCV入力にブッ挿して遊べます。

「MIDI IN端子が無いのでハードONLY環境で同期のスレーブになれない」という弱点も、
・CV CLOCK出力のあるモジュール(ピッツバーグMIDI2/MIDI3などなど色々)を使う
・volcaをMIDI to SYNCコンバーターとして使う
などの対策でどうにかなります。

※アクティブ・ステップ
GATE ONにしたステップ「だけ」を辿っていくシーケンスで、
演奏中にポチポチOFFにしていくとフレーズが徐々にミニマルになっていくんで超気持ちいいっす。
(下の動画の1:00くらいから)

SQ-1裏ワザ
いろんなメーカーの古いシンセに対応できるように、
CV出力の電圧レンジを4段階に変えられるんですが、何故かMIDI出力にも反映されます。
この特徴を応用すると、演奏中に電圧レンジを変えてフレーズに展開を作る事も可能です。
(下の動画の2:30〜2:40)

シーケンサーはELEKTRONを始めx0xb0xやTB-3、BEATSTEPなど色々触りましたが、
リアルタイムで展開を作っていくシーケンサーではこれが一番使い易いです。
ライブのお供に大活躍。ほんとハードシンセを持ってる人全てに使ってもらいたいアイテムです。
願わくば大きな筐体で余裕のある操作ができる上位機種を出して欲しいところですがねぇ。

4,volca beats
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ANALOG RYTMもあるんだけど手軽さが恋しくてvolca beatsを購入。

まずキックがヤベぇ。あとロータムも好き。
そりゃANALOG RYTMでも同じような808系の音出せるけどさ、
そこに至るまで色んなパラメータを弄ってかなくちゃならない。
しかしvolcaはツマミ一発でBOOOOM!!!「808ロングディケイ・キック」が再現できますぜ。

スネアの評判が悪く改造例まで出回ってるんですが、
ピッチを最高にすれば聴けなくはないスネアです。
改造も楽しみなんでいつか挑戦してレビューします。

クラップやシンバルなどPCM音源の方はノイズが多くて使いづらいけれど、
慣れたら慣れたで「このノイズいいかも!」なんて洗脳されちゃいます。
そのうち「ノイズが乗ってないと嫌」とか言い出しかねないです。

5.volca bass / sample
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これらは購入を見送りしていて楽器屋で自前のヘッドフォンで聴きながらの感想ですが、
どちらも「いい意味で下品な音」が出ます。
bassはモデルになったTB-303とは程遠いけれど
「303とは違うアシッドベースマシン」という捉え方をすればすごく面白いです。
アシッドにはTB-3とどっちがいい?と訊かれればコッチをお勧めします。
(操作性は向こうの方が格段に使い易いけどね)
sampleはローファイ志向が最も強くガサガサでパンチのある音が出ます。
コレにディレイがついてればポン出し機に最高なんだけどなぁ。

◯プレイ動画

Volca beatsのプリセットパターンの上にSQ-1のシーケンスでvolca keysを鳴らしています。
1,2分くらいのミニマルテクノっぽい演奏で済ませるつもりが、
途中からうっかりトランスっぽいリードになっちゃって本気でラリってしまい
電話がかかってきて目が覚めるまで8分も撮っちゃいました。
Mackieのミキサーでまとめているだけで外部エフェクターは使っていません。
beatsのロータムやキックもヤバいでしょ。

◯ケース別お勧め機材

・DJプレイにプラスアルファの音が欲しい
volca sampleかbeatsでしょう。
何気ない四つ打ちのトラックでもRAW HOUSE風になります。
旧世代のMPCを意識したsampleでオールドスクール・ヒップホップを演奏するのもアリかも。
またレゲエやアンビエント系のDJならmonotron系が飛び道具に最高。

・DAW制作でソフトシンセと違う質感の音が欲しい
keysかbassが良いかと思います。
演奏が苦手でステップシーケンスが必須ならbass、外部シーケンスで鳴らすならkeys。
bassのアシッドベースはソフトシンセでは出せない荒さが魅力。
Keysの内蔵ディレイを通したリードも独特の味があって素敵ですよ。

・シンセの音作りを勉強したい
keysのパラメータがシンセの基本に則ったレイアウトに近いです。
オシレーター、フィルター、LFO、EGと並んでますんで、
コイツを使い倒せばMOOGだってMS-20だって怖くはありません。

・ミニマル〜トランス的なラリった上モノを演奏したい
これはもう上の動画をご覧のとおりkeys + SQ-1でしょう。
DAW上での意図したシーケンスじゃ作りづらい偶発的なフレーズをサクサク作れます。
volca系では綺麗な音を出せるkeysですが、他のシンセに比べれば十分に荒っぽい。

KORG製品全体の印象は「駄菓子のような懐かしさのする音」な気がします。
特にアナログシンセではこの駄菓子感こそが
オールド・スクールのクラブミュージック(特にテクノ)によくハマるのかと。

比較対象に挙げられるRolandのAIRAシリーズは名機を産んだプライドからなのか、
真面目にやりすぎて面白みが無いように思えます。
YAMAHAに至っては更に堅苦しく、
「あくまでも楽器は楽器らしく。音楽を分かっている人しか使えない」印象。
ボクはミュージシャンではなくDJ崩れと自負しているので、
「演奏家の為の立派な楽器」よりも「音の出る玩具」の方に魅力を感じます。

ELEKTRONやモジュラーシンセの後にこんなの買っちゃって、
「オマエ普通は逆だろ」とツッコミを喰らいそうですが、
マシンミュージックの楽しさを改めて認識できるKORG製品はベテランにもお勧めできます。

シンプル、チープ、小回り抜群。
この楽しさを他のプロダクトに例えるとですね、
コンパクトながらバイクの楽しさをリアルに感じられるスーパーカブや派生車のモンキー/ゴリラ/ダックスetc,
KORG volcaにはこれらの名車と同じタマシイを感じます。



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