OCTATRACK Tips1「OCTATRACKを買う前に」

マシンライブの中核になる機能を全て備えた万能サンプラーELEKTRON OCTATRACK
あまりの多機能っぷりとマニュアルの難解さで挫折率が非常に高いモンスターマシンです。
唯一無二のコンセプトに憧れモンスターマシンを使いこなそうと挑戦する人も少なからず、
しかし習得が難解ゆえに比較的きれいな状態でヤフオクに流れてくるのをよく見かけます。

ネット全盛のこの時代、機種名をググればそれなりのユーザーレビューが出てくる筈ですが、
コイツは日本語での情報源が少なく買う前に調べてもいまいちピンとこないかと思います。
OCTAのTipsと言えば膨大な記事数で人気のブログ【OCTATRACK日誌】がありまして、
その記事を編集した電子書籍も発売されています(もちろん買いました)。
また2ちゃんねるのELEKTRONスレも事実上「日本語フォーラム」として機能していて、
オフ会を通じて4,5人のユーザーと交流しています。

ボク自身も1年前に購入したのは良いけれど、ほとんど放置したままw
しかしコイツの底力に気が付いてしまったので売るに売れず
自身の勉強を兼ねてレビューを書いていこうと思います。

細かい操作説明などは先のOctatrack日誌を購入して頂くとして(マジ必須)、
こちらでは実体験レポートや他機材との連携が中心になるかと思います。
少々の偏りはご容赦くださいまし。

◯OCTATRACKの機能概略

肩書上はサンプラーという事になりますが、そんなん氷山の一角です。
逆に従来のサンプラーと同じ用途を期待して購入するとあまりの複雑さに辟易としちゃうかも。
導入を検討している方は「サンプラー」ではなく「ハードウェアDAW」ぐらいに
考えて受け止めると良いかと思います。
PCレス環境でトラック制作やライブをやりたい人には最強の機材です。

1.サンプラー
肩書通りOCTAのメインの機能はサンプラー(だと思う)。
デッキ等からリアルタイムでサンプリングして加工もお手の物。
実は使った事ないんだけど。

2,シーケンサー
RolandTR系のステップシーケンサーを発展させた方式をとっています。
任意のステップをトリガーさせ、各々の音程や他パラメーターを調整していくのが基本。
トラック数はオーディオx8、MIDIx8。
現行ハードウェアでこれだけのトラックを制御できる機材はほとんど無い筈です。

3.ミキサー
外部入力がモノラル4系統ありオーディオトラックに割り当てる事が出来ます。
調整したいトラックを選択して音量調整、
またミキサー画面を出せば各トラックをボタン一つでMUTEできます。

4.エフェクター
オーディオトラックそれぞれに、又はオーディオトラックのうち一つをマスターとして、
各々にエフェクトをかける事ができます。種類も豊富で非常に自由度が高い印象。

5.シンセサイザー
オシレーターにあたる機能はありませんが、フィルター、アンプ、LFOを備えているので
シンプルな波形をサンプルとして取り込む事でウェーブテーブルシンセとしても機能します。

◯具体的な使用例

プレイクビーツ制作やドラム・マシンとして利用する方法はもちろん、
CFカードに既存の曲を取り込んでおけばDJデッキ兼ミキサーにもなります。
8台までのハードシンセ(や外部音源)にシーケンスを送り、
出音をOCTAでまとめてエフェクトをかける事も出来ます。
どんな音を取り込んでもハードウェア特有のパンチの効いた音質になるので、
ソフトシンセや市販サンプルはもちろん、iOSアプリの音を取り込むのも面白いです。
個人的には安物シンセやiPadアプリの音の化けっぷりにハマってます。

また楽器プレイヤーの方にも人気があるようで、
自身の演奏をリアルタイムに取り込んでゴニョゴニョしている方もいるようですね。
OCTAと自前の楽器があればソロでライブもできるしね。

◯自分にとって必要な機能を絞る

上に挙げた5つの機能、特に1,2,3が欲しい機能ならば購入(挑戦?)する価値アリです。
もし「サンプラー」「シーケンサー」だけで十分なら、
AKAI MPCやKORG elektribeなども比較対象に入れてみるといいですよ。
また「ミキサー」機能は副次的な意味合いが強く、素のままでは直感的操作は出来ません。

ボクはMPCやMaschineのようなパッド物のシーケンサーに馴染めず、
TRタイプのステップシーケンサーが好みなのでELEKTRON製品を重宝しています。
またサンプリングを駆使する制作スタイルではないので、
サンプルの編集はDAWに任せてしまっています。

現時点での目標はマシンライブの中核として
シーケンス、ミキシング、エフェクト、サンプルプレイをOTで行おうとしています。

◯音質の印象

とにかくゴツい音です。理系マッチョ的なキャラクタ。
非力なシンセもショボいサンプルもOCTAを通すだけでハード&ワイルドに変貌します。

◯エレクトロン語辞典:「マシン」

ELEKTRON製品は一つの機種に複数のサウンドエンジンが内蔵されていて、
それを「マシン」と呼んでいます。事前に把握しておくと使い道を想定し易いですよ。
OCTATRACKのマシンは5種類。

・Flex
サンプラーらしいサンプラー機能。
内蔵メモリ(標準では64MB)に記憶され、サンプルのエディットもOCTA内で可能です。

・Static
こちらはCFカード内のサンプルを扱うマシンで、大容量のデータもプレイできます。
エディット機能はFlexに比べて制限があります。

・Thru
外部入力を扱うミキサー的マシンです。
2ステレオ又は4モノの入力を各トラックに自由に割り当てる事ができます。

・Neigbour
トラックを縦列にするマシンで一つ上のトラックの音をそのまま
OCTATRACKでは一つのトラックに2つのエフェクトを使用できますが、
更に2つ以上のエフェクトを適用したい時にはこのNeigbourマシンを使います。
・PickUp
プレイ中の音を即興で取り込みループサンプルとして扱うマシン。
・・・何のことやらw

ボクが主に使っているのはDAWのオーディオトラック的なポジションのStaticマシンと、
MIDIトラックでシーケンスを送った外部音源の音を取り込むThruマシンです。

今のところはサンプルの各調整はDAWで行なっているのでFlexマシンは必要なく、
エフェクトの為にトラックを一つ消費するのも勿体無い気がするのでNeigbourの出番はなし、
PickUpに至ってはマニュアルを読んでもサッパリ理解できませぬ。

◯OCTATRACKは人を選ぶ機材

WEBでの情報や楽器屋で触る程度じゃ自分に向いたマシンなのか
どうか判断できないかと思います。
「なんとなくカッコいいから」で買える値段ではないですし、
何度も言うけど挫折率もダントツのトップクラス。
直感操作を求める人と、複雑な階層操作が苦手な人は辞めといた方がいいです。

しかしこれほどの機能を1台にバランス良く凝縮した機種は他にありません。
10数年後には名機として扱われると思います。

 

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