ハウスのハウスたる所以

身近な友人やネット上での狭い範疇の所見ではありますが、
DTMに興味を持ったりハードシンセで遊んだりする層って、
ほぼほぼテクノ出身、テクノに大きく影響を受けた人です。

対して自分はハウス出身。
選ぶ曲や作る音に関してはハウスでもテクノでもどっちでもいい、
と思うようにはなりましたが、
その奥のほうにある「気質」には厳然たる違いを感じます。

ハウスとテクノの音の違いをザックリ言ってしまうと、
ルーツは同じ電子楽器を使った音楽だけど
テクノは無機質な方面、ハウスは有機的な部分を残しています。
後は適当に調べといて。

ところで最近になっておや?と気が付いた事がありまして、
テクノのルーツである「デトロイト・テクノ」の気質は
現代日本のテクノ・アーティストやテクノDJにも
しっかり受け継がれているように思えますが、
ハウスってそれが無いんですよ。なんででしょ?
それどころか「ハウスミュージック」という名前が一般層に知れ渡っていない。
音楽に興味の無い人達でも「テクノ」と言えばパフュームやYMOを連想するでしょうが、
ハウスはそういうキーパーソンもいないよね。

だからと言ってボク個人的には、
「これは由々しき問題だ!ハウスで市民権を!」なんて騒ぎたい訳じゃありません。
そういうのは他の人にお任せして、
アンダーグラウンド・カルチャーとしての気質を守りたいと思っています。

あ、大事なのは気質であって史実ではないので、
間違った事も言いますしウソもつきます。
そのデタラメなところも含めてのハウスです。
史実やデータが大事だって人はご自身でおググり下さい。

◯シカゴから東京までハウスミュージックの30年

・普及した電子楽器を使った最初のジャンル
ミュージシャンの練習に使う補助的なものでしかなかった電子楽器を、
主役に持ち上げたのがシカゴハウス/デトロイトテクノの始まりです。

「コレありゃ楽器できなくても音楽作れるんだぜ!?」
「マジかよ!じゃプレス屋そそのかしてレーベル作んべ!」
「サンプラーって機械あっから他の奴の曲パクれっぞ!」
「一発当ててオンナはべらそうぜ!」

こんなノリがウッカリ流行っちゃったのがシカゴハウス。
デトロイトの方々はもっと真面目で音楽に対して真摯だったようですが、
ハウスの方はカネとチンコが原動力です。

・DIY精神に富みカオスな市場だった

この頃の曲に多用されていた「Jack」という言葉はパクるという隠語だったようで、
当時最新鋭の革命的機材だったサンプラーに
他人の曲のフレーズを取り込むのが常套手段だったそうです。
それどころか無名の新人の曲を売る為に有名DJの名前に変えてプレスしたり、
レコードプレス工場では材料をケチってタイヤや靴底などのゴムを混ぜてたようです。

その変なゴムの混ざったレコードを一度見せて貰った事がありますが、
そんなんが現代日本でプレミアついちゃうのもおかしな話ですよね。

・ゲイカルチャーに育てられた

そうして出来たハウスを受け入れたのは、
自分達だけの音楽だった筈のディスコ・ミュージックを大衆に奪われたゲイの人達。
てゆうかハウスDJの始祖はだいたいゲイ。
今の日本では信じられないくらいに差別されていたゲイの人達が、
文字通りアングラなコミュニティでハウスの精神性を確立していきました。

なんで愛や恋を歌った曲はもちろんのこと、
もっと露骨にセックスを表現した曲が沢山あります。
快楽主義故にドラッグを称賛したり、
逆に経験者の説得力をもってドラッグを否定したテーマも。

・セックスと密接に結びつく

自分の主観ではありますが、
「ハウス・ミュージック=セックス・ミュージック」という認識は
1990年代後半〜2000年代前半の日本でもしっかり受け継がれていました。
この当時にクラブ遊びをしていた世代は、近年の日本では最も性的に奔放だった世代。
今のクラブは「ナンパをする為のハコ」と「音を楽しむ為のハコ」と分かれてますが、
当時はまだ曖昧でした。曖昧が故に「音もナンパも両方楽しめる」、
ある意味正しい夜遊びが出来ていたんだと思います。

更に若い世代がいわゆる草食化をしたのも、
先輩世代の奔放過ぎるセックス観についていけなくなった反動かもしれないですね。
ネットとITだけが原因ではないと思います。

・日本におけるハウスとアングラの断絶

そうは言っても「ハウスは好きだけどナンパはウザいから死ね」と思っている層も少なからずいて、
彼等はNYディープハウスに傾倒していきました。

2000年代半ばあたりには
NYディープハウスを日本人好みに漂白した通称「乙女ハウス」をメディアが推すようになり、
アングラ感やセックスへの連想を排除した綺麗なハウスが流行しました。
これは多分「性に奔放だった世代」に対する反動もあってか、それまでのハウスを一掃、
クラブに興味のない一般層の女性にも好まれるようになりましたが、
音楽的な色気の無さから結局はチャラついたチンコ野郎の合言葉に成り下がりました。
思うところは色々ありますが一言で言うなら「ざまぁみろ」です。

・現代東京のアングラクラブシーンにおけるハウスの扱い

その後のIT革命からくるネットの普及などで、
不良がカッコいいとされる時代からオタクの時代になり、
テクノの精神は生き残れたけどハウスの気質はタブー扱いされるようになっちゃった、
というのがボクの勝手な想像です。

そうして90年代黄金時代の曲を懐メロとしてプレイする残念なオッサンてのが、
現代日本のアマチュアハウスDJの一般的な現状じゃないでしょうか。

いやいや好きですよ。その頃の歌物。
でもクラシックとして扱うにはまだ早いし、
思い出に引きこもるのはまだ早いでしょうよ。

それに中途半端にキャッチーで古い曲を有難がってヘビースピンしてると、
どうしてもダサさを拭えなくなってカッペハウス認定されますよ。
ウイスキーとかワインみたいにもう少し樽で寝かせといて下さい。

◯ハウスミュージックの気質を再定義する

ジョニー・ロットンの言葉を借りるなら「HOUSE IS DEAD」となるんでしょうが、
ハウスはロックより下世話でロックほど面倒臭くないなので
何度でもデッチ上げる事が可能です。
つまり俺がハウスで何でもジャックします。あとファックしたいです。

ハウス・ミュージックの始祖フランキー・ナックルズが、
「ハウスはディスコにおけるパンク」と言ってました。
この頃の経緯を紐解くとほんと反骨精神に満ちた音楽なのが分かります。
対して実験精神を抽出する方向に向かったのがテクノでしょうか?

パンクと言えば忘れちゃいけないのがDIY精神。
「あるものは使おう。ないものは作ろう。」
というCADソフトメーカーのキャッチコピーが正にそれ。
誰も認めてくれないのなら、自分でフィールドを作ってしまえばいいんです。

それからセックス、というか性衝動を創作に取り入れましょう。
パートナーの居る方は相手の了解を得た上であらゆる変態プレイに挑戦してみましょう。
男も女も男同士でも、人生一度は快楽に溺れる経験をしましょう。
その経験があると無いとじゃその後の感性と好奇心に大きく差がでます。

大きなパーティのオーガナイズをしていたボクの古い友人が、
「なんかセックスしてぇ!って言うよりファックしてぇ!って言った方がハウスらしくていいよね!」
と言っていたのが今になって心に沁みわたります。
ソイツはYELLOWのフロアで立ち小便をして出入り禁止になりました。

ノンケにはなかなか理解出来ないゲイのトンガったセンスを盗むのもアリです。
修行と称して新宿2丁目のクラブでプレイをさせて貰った事もあります。
そのまんまケツを差し出す羽目になったヤツも何人かいます。
アナルセックスも結構ですが度を超えると30歳でオムツ人生になるので気をつけましょう。
誰でも40歳になると括約筋が衰えて「屁ぇこいたら実も出た」なんて経験をします。

それを覚悟の上で、
「このオムツこそがオレのフロンティア・スピリッツの勲章だ!」
というなら止めません。

パンクス的反骨精神とDIY精神、インチキ臭さと性衝動。
こういうのを根底に感じられる電子音楽をハウスと定義しましょう。

でもコンドームはつけましょうね。遊びのセックスで中出しはよくないです。
あとJACKと言って人の曲をパクるのは今の時代すぐバレます。
この2点だけは諦めましょう。

◯まとめ

ハウスのハウスらしさを一生懸命思い出したら、
チンコマンコとケツの話ばっかになってしまいました。
でもだいたい合ってます。それがハウスです。
ハウスには毒がなくてはいけません。
ここで言う毒とは公で敬遠されるような人間臭さ。
多少の音楽技術があれば、その毒を音で表現する事も可能でしょう。
ボクはまだ無理ですが。

いつでもどこでも時代の徒花になるのがハウスの宿命かもしれませんが、
そういう儚い美しさって日本人好きでしょ。

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