脱初心者向けDTM環境の刷新
しばらくの間シンセやドラムマシンを弄っては売り千切っては投げしていましたが、
そろそろ新しい曲作りを始めたいと思い制作環境を刷新しました。
右上のサンクラを聴いて貰えばお分かりの通り、
けっこう耳に痛いよねオレの曲。色々と雑だし。
ええ分かってます。分かってて晒してるんです。
スピーカー、ヘッドフォンなどの再生環境、
オーディオインターフェイスやアウトボードなど
音質に関わる機材について今までの経験をアレコレまとまめした。
◯遠回りするくらいならカネ注ぎ込め
稀にヘッドフォンだけでイカす曲を作れるような天才秀才もいますが、
僕ら凡人はそれなりにカネかけた方がいいです。
必要な機材が買えずにアレコレ悩んで長い期間を無駄にするよりは、
目的のハッキリしてる物なら躊躇なく買っちゃいましょう。
特にある程度の歳をとるとカネより時間の方が遥かに大事です。
◯とはいえ身の丈に合ったランクじゃないと
自分の作りたい曲に向いている機材はどんなものなのか、
案外安物の方が味があっていいのかもしれないし、
ドーンと高級品を買っても有難みが分からない場合も多いです。
初めて扱う機材、使いこなしてない用途は捨て値で購入できる物を、
分かってきたら徐々にいい物に買い換えています。
◯「いい音」「好きな音」「正しい音」はニュアンスが違う
・いい音と悪い音
クラブのサウンドシステムや鑑賞用途のスピーカー、イヤフォンは、
「いい」「悪い」で表現される事が多いですよね。
設備や体調、心理状態など様々な要素が重なって良し悪しが決まります。
「いい音」とは嫌いでない曲かつ好きな音かつ正しい(適切な)音。
ボクはハイレゾでアイドルソングを聴いても殺意しか湧きませんが、
カセットデッキで聞くヒップホップDJのミックスは素直に感服します。
・好きな音と嫌いな音
シンセやエフェクターなど音作りの機材は
音質の優劣よりも、主観的な味が優先されます。
ソフトシンセのツルツルした音よりもノイズの多いvolcaの音の方が好きですし、
TB-3は琴線に触れないけどTB-303は鳥肌が立ちます。
TR-909やMPC60のビットレートはビックリするほど低いし、
製品としてのスペックが低い方が好まれる事も珍しくありません。
ここはもう作り手のクリエイティビティ次第で無限大の組み合わせが可能ですから、
自分がどんな音が好きなのかトコトン追求しましょう。
・正しい音と間違った音
しかしモニター・スピーカーやヘッドフォン、オーディオインターフェイスなど、
制作に関わる再生機器は正誤の判断ができます。数字と理屈で割り切れる価値観です。
(NEVEやUREIに手と耳が届く方々は別ですが)
部屋に合わせて出来るだけフラットで無味無臭な物を選ぶべきで、
でないと好きな音を適切に伝えられなくなります。
現行機種、定番機種、手堅く無難な選択をした方が後々助かります。
これ等3つの価値観を混同させずに体得した上で、
初めて注ぎ込んだ投資が活きてくるもんですよ。
◯mp3/320kbpsとWAV16bit/44/1KHzの違いが分かる?
DJ用の配信フォーマットとして最も多いのがこの二つ。
PCDJを初めた頃は違いが全然分からなかったのでずっとmp3でプレイをしていますが、
音にこだわった箱で諸条件が揃うと「あれ何か違うな」と気付く事が稀にあります。
恐らくはDTMを初めてから多少なりとも耳が肥えてきたからでしょう。
しかしミックスダウンやマスタリングをするなら
「ちゃんと聴き分けられなきゃダメ」という言説もありまして、
かなり厳しい意見ですがこれを目標として耳と設備を整えていきたいですね。
こちら面白いサイトを見つけました。
同じ音源で128kbps、320kbps、WAVが並んでいて、
その中からWAVファイルを当てるクイズです。
http://www.npr.org/sections/therecord/2015/06/02/411473508/how-well-can-you-hear-audio-quality
このクイズもそれなりの再生環境でないと違いが判別できないと思います。
◯どこまで自分でやる?
素材集めや音作り、楽曲構成までは自分でやるのが当然ですが、
ミックスダウンとマスタリング作業をどうするか、は意見が分かれます。
クラブ系のトラックメイカーは自分で最後までやってしまう人がほとんど。
マスタリング作業も音作りの一貫として捉えているからではないでしょうか。
だからと言ってミックス以降の作業を人にやって貰うのが邪道、ってわけじゃなく、
勉強を兼ねてプロのエンジニアに頼んでみるのも良い経験だと思います。
◯導入例
今までは初心者向けの機材でやってきました。
KompleteAudio6、YAMAHA MSP3、ATH-M50と、
リーズナブルながら安心して使える機材として人にも薦められる物です。
DAW:StudioOne3
StudioOneの2と3の違いはイマイチわかりません。
「音がいい」と評判ですが、それより軽さが気に入って使っています。
前述した表現を使うなら「正しい」けど「好きにはなりきれない」音かなぁ。
I/F:TASCAM US20x20
http://rudeloops.jp/wp/archives/1077
インターフェイスはTASCAMのフラッグシップ!
フラッグシップとはいえ5万円で買えるんですがね。
RMEとかMOTUに比べれば可愛いものです。
このTASCAMコスパ超いいです。
録音した音はRolandSuperUAより良かったな(再生では敵わないけど)。
・YAMAHA HS7導入
机に置けるサイズで、なるべくデカくて安いのがいい!
という事でヤフオクで35000円で入手しました。
新品でも根気よく探せば4万チョイで購入可能です。
音は当たり前ですが超フラット。無味無臭。
MSP3で足りなかった低音もこれだけデカけりゃ十分に鳴ります。
というより低音が強すぎてかなりビビりました。
難点は低音が背中から出るので本来なら壁との距離をとらなければいけないんですが、
背中の調整スイッチである程度は調整が効きます。
早速繋げて試聴したところ、
見える。
見えるんですよ低音が。
今までイマイチ分からなかったエフェクトの効き具合も、
キックとベースの境目も。808と909のキックを重ねても区別つきます。
さっきのmp3/320kbpsとwav16/44.1MHzのクイズなんですが、
このスピーカーのお陰で6問中5問まで正解できました。
かなり感動です。
ああいうのは本職の人じゃないと分からないんだろなって諦めていたんですが、
ある程度まではゼニの力でどうにかなるもんなんですね。
そりゃま解像ガーとか定位ガーとか言い出したらキリないんですが、
ソッチの沼にはハマりたくないのでここ等で手を打っておきましょう。
・アウトボード/ラックエフェクター
ソフトシンセONLYの人でも何かしらのアウトボードを持ってるといいですよ。
DAW内の音をオーディオI/F介して一旦外に出し(アナログ化)、
再度それを録音する作業をやってみて下さい。面倒だけどね。
ソフトにありがちなノペーとした音に倍音を足す事が可能です。
どんなオーディオ機器にでもある些細な歪み成分を付加する事によって
この倍音が生まれます。
これは以前に習っていたトラックメイクセミナーで教わった知恵で、
オーディオI/FのINとOUTをケーブルで直結するだけでも十分に効果が得られます。
サチュレーターのVSTプラグインなんかも色々売っていますが、
まどろっこしい事考えずに一旦外に出しちゃった方がいいです。
今まで聞いた話で面白いアウトボード利用は、
カセットMTRを通してテープコンプレッサー効果を足す、
普通のカセットテープで再録音、
オーディオ用の真空管プリアンプを通す、
ビンテージ物のDJミキサーを通す、
などなど、皆さん色々と試行錯誤をしているようです。
そんな変態的用途で古い機材を漁るのも楽しいんですが、
正当な用途として使えるアウトボードでオススメはコンプレッサーですね。
PCプラグインのコンプって使い方がイマイチ掴みにくいじゃないですか。
なのでコンプの学習用途も兼ねて導入してみるといいですよ。
FMR AUDIO RNC 1773 / RNLA7239
小さくて安くて高性能、と謳われているFMR AUDIOのコンプレッサーです。
1773は原音に忠実なタイプ、7239はビンテージコンプのような味付けになります。
自分は7239の方を中古で入手。コンパクトなので重宝します。
DRAWMER LX20
90年代初頭のポップスで多用されていた定番コンプレッサーだそうで、
「あの頃のハウスの音が欲しいならコイツだ!」というアドバイスを鵜呑みにして購入。
タマ数は少ないけど5000~10000円で購入できます。見かけたら即買いましょう!
味付けという意味合いでは前述のRLNAを遥かに上回り、
何でもかんでもバッツーン!と派手な音にしてくれます。
原音忠実系のコンプとは対極の性格ですね。
特に気に入ったポイントが、
パラメーターの変化がメチャクチャ分かりやすい事。
今までプラグインのコンプが全然分からずにプリセットだけで済ませていたんですが、
スピーカーの刷新と相まって微調整もこなせそうです。
CDS DS-1
ハンドメイドDJミキサーの設計制作をしているCompactDiscoSoundsystem。
http://www.compact-disco-soundsystem.com/
UREIやBOZACを元に設計したmp3ですらアナログっぽく聞こえる魔法のDJミキサー。
NYハウスやダンスクラシック系のDJにジワジワと浸透しています。
DJバー神田Extraweltにて試聴も購入も出来ます。
これはその電源とプリアンプ部分だけのモデルです。
楽器用の機材ではないので味付けはほのかです。
BOSS SE-70
エフェクターに関してはまだまだ良し悪しの分別が出来ていないので、
格安のマルチをチョイスしました。
90年代のギタリストに絶大な人気を誇ったらしいハーフラックのマルチエフェクター。
同じシリーズに前身のSE-50、モデルチェンジ後のVF-1があり、
どれも5000~10000円で入手可能。
この3種類の中でSE-70の利点は歪み系エフェクトがアナログ回路だって事。
後発のVF-1はデジタルモデリングだそうで、音が細くなってしまうそうです。
またリバーブの評判もSE-70が一番良いと聞きます。
◯参考記事
【コラム】音 主に4つ打ちの低音の処理
https://onibabako.amebaownd.com/posts/121090
DJ/エンジニアであるDJ Oni氏のブログ記事。
教科書めいた無味無臭の指南ではなく実践と経験に裏付けされた説得力があります。
先日リリースした曲がbeatportチャートにてハウス5位総合20位まで
ランクインしているようで、正に結果の出せる実力派。
ミックスダウンやマスタリングも受け付けてくれるようで、
四つ打ち系なら相談してみては如何でしょう?
【セミナー】Watusiの私塾
http://www.coldfeet.net/watusijuku.html
日本を代表するプロデューサーCOLDFEET・Watusi氏によるトラックメイクセミナー。
週イチ2時間x4回で¥15000と知名度の割には良心的な価格設定かつ内容は濃密です。
不定期ながら数ヶ月おきに新規募集を受け付けています。
ボクは第一回目から参加していまして、
受講生の交流会的パーティのオーガナイズもやっています。
◯まとめ
音作りはハード、ミックスダウン以降はDAW、ってコンセプトです。
少し前にレコ屋で盛り上がってた「RAW HOUSE」を作りたいんですよ。
DJ的にもハードウェア特有の荒さが際立った曲を好んで使っています。
トラック作りも1年くらいブランクができてしまったけど、
今までよりずっとマシな音にしないと恥ずかしいですよね。