【人柱日報】TR-606魔改造記pt1

TB303のお供として発売されていたドラムマシンTR-606。
名機TR-808の廉価版というポジションでありながら
808とはまた違う味のある音が30年経った今でも支持を集めています。

中古価格では3万~5万円程度とビンテージ物としてはリーズナブルな上、
回路構成が比較的シンプルな為に改造入門機としても人気の機種。
Youtubeなどでもトンデモない魔改造606をみかけたりします。

しかし、しかしですね、
詳しい改造レポートは全て海外のサイトでだいぶ古い物ばかり。
日本人のサイトでも改造例を色々と見かけますが、
詳細は全く不明なんですよね。

◯ご注意

当たり前だけど改造は自己責任でお願いします。
ブチ壊す覚悟で臨んで下さい。ボク今まで壊した総額10万円超えてます。
また自分の電子工作スキルは結構素人です。
ケーブル作りから始めて1年くらいで海外のキットを作れるようになった程度。
回路図?読めませんよ。これで勉強するんスよ。

◯回路図の入手

海外のサイトで606の回路図を手に入れる事が出来ます。

http://machines.hyperreal.org/manufacturers/Roland/TR-606/schematics/

ちゃんと読めるわけではないんですが、あると無いとじゃ大違い。
各部品の役割が分からなくても何となく構成は掴めます。

◯トリガースイッチの交換

FullSizeRender (1)

もう30年も経ってますから色々とガタがきて当然です。
押しても反応しない事がしばしば。
部品は今でも普通に生産していて購入できます。

アルプス電気タクトスイッチSKHCシリーズ(12mm角)
秋葉原の千石電商で購入。一個50円でした。
https://www.sengoku.co.jp/mod/sgk_cart/detail.php?code=EEHD-08BK

どっかの書き込みで
「アルプスよりオムロンの方が丈夫だよ!」とありましたが、
型番も分からないし店頭で探せませんでした。

金額:★★
労力:★★
効果:★★★★

まぁコレは改造というより修理ですよね。
でも操作時のストレスは激減します。

◯オペアンプ交換

FullSizeRender (3)

以前モジュラーシンセの製作時に味を占めたオペアンプ交換。
音質を司る要の部品ですからピュアオーディオ業界では定番の改造らしく、
至る所でソムリエばりのレビューを見かけます。
モジュラーシンセやエフェクターに内蔵されている安価なオペアンプを
チョットいい物に変えたらほんのり幸せになれました。

※注意
オペアンプを変更すると音質はもちろん音のキャラクタも変わります。
原音を重視したい方にはお勧めできません。

TR-606で使われているオペアンプは主に下の2種類。
どれも8本足の2回路入りってタイプで、
基本的には各音源に一つずつ配置されています。

JRC2904D
JRC4558DD(艶あり)

どうもこの「4558DD艶あり」ってヤツはビンテージ物らしくw
マニアが血眼になって探しているという代物らしいです。
知ったこっちゃありませんが。

これを取り外しオペアンプ用ソケット(通称下駄)を履かせ、
容易に交換できるようにします。

9271d201

準備したのは以下の二つ。秋月で買いました。

MUSES 8920D
OPA 2604AP

500円未満で購入出来るクラスの物で、
ネット上のレビューで「暖かい音(MUSES)」「冷たい音(OPA)」
と対照的に比喩される物を選んでみました。

・BassDrum(IC5/2904D)

FullSizeRender (2)

MUSES:ノイズ低減&中低域強調
OPA:更にノイズ低減&タイトに

OPAの方が上品な音がしますが力強さで勝るMUSESにしました。

・SnareDrum(IC10/4558DD)

MUSE/OPA共に高域が強調されて耳に痛いくらい。
試しにBDに使われていた2904Dを挿してみたら、
「シャン!」の中に「ポン!」という音が混ざり
可愛げのあるスネアになりました。

Tom(IC9/2904D)

キックとは逆にOPAの方が中低域が強調され、
ディケイが伸びたのかリバーブがかかったような音になります。

Cymbal(IC12/2904D)

ノーマルのシンバルの音が耳に痛くて苦手だったんですよ。
その痛い部分を抑えてくれるのがMUSESの方。

HiHat(IC15/4558DD)

ここで痛い部分をカットしてくれるのはOPAの方でしたね。
ノーマルより角が取れて聴きやすくなります。

OUTPUT(IC14/2904D)

FullSizeRender (5)

回路図のアウトプット端子に一番近いオペアンプにも2904が使われています。
OPAよりもMUSESの方が力強さを感じました。

恐らくは全体の音質を司る部分だと思うので、
ちょっと奮発してMUSES02(¥3500前後)を試してみます。
ついでに所有するプリアンプに付いてたOPA827も。

付け替えて試聴してみたところ、
心なしか音量が大きくなったかな?って程度でした。
正直言ってこの値段に見合う効果ではなかったかなぁ。
でもせっかく買った物だし付けとくかー。
という訳であんまりお勧めできませんw

ここまでやって分かったのは、
対照的だと言われる二つのオペアンプを試したけれど、
オーディオ系のレビューと反対の結果が出る場合もあるんですよね。
あと性能と金額、好みは必ずしも比例するわけじゃない。
ドラムマシンのみならずアナログシンセやエフェクターの場合は
複数のオペアンプを試してみる事をお勧めします。

けど場所によっては「オーバードライブ+ノイズゲート」を
噛ましたような効果が得られるのも確か。
労力は必要だけどコスパの高い改造です。

金額:★★
労力:★★★
効果:★★★★

◯電解コンデンサの交換

FullSizeRender (4)

かなり面倒だけどこれもノイズ低減に効果を実感しているので実行。
音質に関わりのなさそうなキーボード基板を除くメインとサブ基盤から、
一つずつ定数を調べてまとめて購入。

6.3V-100uF:6こ
6.3V-1000uF:1こ
16V-10uF:5こ
16V-47uF:14こ
50V-0.47uF:6こ
50V-1uF:20こ
50V-2.2uF:7こ

全部「オーディオグレード」と言われてる物で総額4000円くらいでした。
◯◯Vは耐久電圧。これは高い物に交換しても問題無いそうです。
◯◯uFは容量。原則的に同じ数字の物を選びます。
数はだいたいね。だいたいだよ。

分かってて始めたけどスーパー面倒臭い作業です。
調べるのに1時間、実作業に3,4時間ほどかかりました。
さて効果の程はと言いますと、
更にノイズが減り粒立ちが良くなったというか、
各音色の分離が良くなった印象を受けます。
苦労した甲斐があったー。

金額:★★
労力:★★★★★
効果:★★★★

◯まとめ

せっかくなんで動画にしました。
ヘッドフォン出力からカメラに直で挿しています。
ノイズが減って音の分離が良くなり各パートが際立つようになったと思います。

他にも魅力的な改造例は色々あるんですが、
ここまでの改造は難易度が低く基本に則った音質向上テク。
他のアナログシンセやエフェクターにも応用出来ます。
特に古くて安いモデルには効果テキメンです。

「魔」改造というにはチト物足りない所もありますが、
リスクも予算も格段に上がる改造を次回に色々と紹介します。

壊さないで済んだらね。

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