セミモジュラー天国へのいざない【1】
「2019年版モジュラーシンセのはじめかた」
海外はもとより日本でもユーロラック・モジュラーシンセが更に盛んになってきていますね。
以前はエリート意識の高い金持ちの道楽、的な扱いを受けてきましたが、
業界の努力と中古市場の盛り上がりなどから着々とユーザー数を伸ばし、
相対的にイヤな奴の声が小さくなってきたと感じています。
とは言えそれなりにお金のかかるものですし独特な知識も必要なのは変わりありません。
ちょっと前までは「84HPx2段から始めたらいいんじゃない?」というアドバイスがほとんどでしたが、
その箱を埋めるまでの金額と時間といった労力はやはり骨が折れるものです。
グルーブボックスみたいに買ってきたらポン!で音が出るわけじゃないですしね。
かくいう自分も2度の挫折を経てまた懲りずに手を出そうってんで周囲の失笑を買っておりますが、
それでもバカはバカなりに学習するものでして、
「揃えるの大変だから細切れにしてハードルを低くすりゃいいんじゃね?」
と考えついたのであります。
そこで提唱したいのが(いやまぁそんな偉そうな話じゃねぇんだけど)、
ラインナップが豊富になってきたセミモジュラーシンセを中心に据えたシステム。
またユーロラックの中でも1台で一通りの音が出る「SynthVoice」というカテゴリの
複合モジュールがあるんですが(これは次回紹介します)、
これを48とか60HPくらいの比較的小さな箱に収めてしまうんです。
例えばMother32やDFAMに一つだけユーティリティモジュールを足すとか、
シーケンサーとドラム音源を詰め込んだセミオーダー・ドラムマシンとか、
クロックとLFOを積んだモジュレーションシステムとか、
細かく組んでいけば導入から戦力になるまでの期間も短く済ませられます。
これらの細かいシステムをグルーブボックスを組み合わせたり、
ギター・エフェクターと組み合わせたりして少しずつ楽しむのは如何でしょう?
○アタクシ個人のケース
前記事の「DFAM強化計画」で嵩張る筐体をスリムにし、
MIDI to Clockモジュールを足したのが泥沼の始まり。
更には物々交換で入手したジャンクのDoepfer Dark Enegry & Dark Time。
DarkEnegryのLFO出力をDFAMに挿して遊んでみたり、
MIDI to Clockの分解能切り替えスイッチでシーケンスをいじったりするうちに
二度も懲りた筈のパッチングワールドにズブズブと沈んでいってしまった訳です。
ヤバいタノシイ!
セミモジュラーシンセが2台あるだけで面白さが3倍4倍になってきます。
○まずはセミモジュラーシンセのすすめ
ここで言うセミモジュラーシンセとはシンプルなアナログモノシンセを基本に、
オシレーターやフィルター、LFOなど各セクションの入出力端子がある物を指します。
またモジュラーシンセと違って単体でも音が出る、パッチングが必須ではない、
といった特徴を持っています。
これらの機種の利点は直感的操作で扱える事と、
パッチングによってある程度の拡張性がある事です。
○代表的な機種
比較的入手し易いモデルは以下のとおり。
・MOOG Mother32/DFAM
名門ブランドMOOGの廉価版としてラインナップされています。
Motherはオーソドックスなモノシンセとして見ても芳醇な音に酔う事ができますし、
クロック連動のLFOが凄く使いやすい。ノイズも綺麗。ー^
DFAMはレビューに書いた通り程よい変態度のドラム/ベースシンセです。
どちらも筐体を外すとユーロラックモジュールとして扱う事が出来るので、
これをベースにシステムを考えていくのが最も楽なように思えます。
・BEHRINGER MODEL D / NEUTRON
他社の名機を丸パクリする事で賛否両論あるベリンガーですが、
MODEL Dに関しては本当に良い出来なので非常に高い評価を得ています。
NEUTRONは未体験ですがうスペックからして何でも出来そうなイメージ。
この2台もユーロラック互換です。
・KORG MS-20シリーズ
忘れちゃいけない国産シンセの金字塔。初代はプレミアがついてますが、
再開発されたminiや鍵盤の無いmoduleは現在も生産されています。
これでシンセサイズを覚えた!なんて方も少なくないようです。
ちなみにmini以外はパッチケーブルのジャックが6.3mmなので要注意。
・Malekko MANTHER
アメリカでモジュール/エフェクターのメーカーとして名を馳せているMalekko初のグルボ。
Rolandと共同でSYSTEM-500モジュールを開発した事でも有名です。
rolandのSH-101クローンモデルですが、セミモジュラーシンセ/シーケンサーとして利用できます。
・Make Noise 0-Coast
MOOGと並ぶシンセサイザーの巨匠Don Buchlaの西海岸式シンセサイズを受け継ぎ、
異色のモジュラーシンセメーカーとして有名なMakeNoiseのセミモジュラーシンセ。
斬新なパネルデザインも魅力的です。
筐体がほぼvolcaサイズとコンパクトなのも良いですね。
・Doepfer Dark Energy III
質実剛健を絵に描いたようなユーロラックの提唱元であるDoepferのセミモジュラーシンセ。
初代モデルを入手しましたが、M32よりもパラメーターの可変域が広く
フツーのベースやリードに加えかなーり変態的な音も簡単に作れます。
・Dreadbox NYX
ギリシャのガレージメーカーDreadboxも近年注目されています。
触った事ないんだけど内蔵のリバーブがイイ味出してくれるんですよ。
https://www.youtube.com/watch?v=EYOXZQMOP2c
※そうそう、KORG volca modulerも立派なセミモジュラーシンセではありますが、
パッチングの際の電圧が違う為に他機種と連携して使う事は出来ないようです。
○パッチケーブル
楽器屋さんに行けばモジュラー用としてパッチケーブルが売っていますが、
原則的に3.5mmミニプラグのモノラルであれば何でも使えます。
ちなみにステレオは避けておいた方が無難です。
ごく稀~にジャック内部の接点部が特殊でステレオプラグだと接触が悪い場合があります。
自分もステレオの細いケーブルを大量に購入していまして、
本当にたまに、なんですが接触不良で音が出ない!なんて事がありました。
やはり手堅く素直にモノラルケーブルで揃えましょう。
○パッチングの前に覚える事
・信号の種類
パッチケーブルを通る信号は-5Vから+5Vといった電気です。
信号というより単純な電気なのです。
試した事はないけど例えば電池を繋いでも何か反応がある筈です。
その内訳は大きく分けて3種類。
・CV
コントロール・ボルテージの略で、電圧の高さによって信号の値が決まります。
分かりやすい例は音程。「○○ボルトならC3の音、○○ボルトならF4の音」という風になります。
音程だけでなく様々なパラメータ(MIDIで言うところのCC)を制御する事ができるので、
例えばシーケンサーでフィルターの開き具合やLFOのかかり具合、
それにベロシティなんかをシーケンスする事も可能。
・GATE
こちらはゲート信号。
高さは関係なくON/OFFとONになっている時間の信号です。
鍵盤をどれぐらい長く押しているか、的な。
・CLOCK
ゲート信号の一種ですが、これはテンポをコントロールする信号です。
要はBPMの同期をする為の信号ですね。
他にもスタート/ストップを操るゲート信号や強制的にシーケンスの最初に戻すリセット信号もあり、
一応はMIDIと同じようにトランスポーズのコントロールも出来ます。
・入力と出力は別
これはMIDIと同じで基本的にOUTからINへの一方通行です。
○まとめ
この方法ですと音を出して楽しむまでのハードルがグンと下がりますし、
「やっぱりモジュラー向いてないかも。。。」
なーんて思った時にも引き返せる、という安心感があります。
また何もしなくても音は出てくれるので、
パッチングでドツボにハマる事も少ないと思います。
モジュラーシンセにちょっと惹かれるけど引いてしまっていた皆さん、
このあたりで軽く初めてみましょうよ。
いきなりフルモジュラーの沼へダイブするより遥かに安心安全ですよ!