novation CIRCUITレビュー

発売当初はイマイチ話題に上がらなかったけど、
ここ1,2週間ほどtwitterのシンセクラスタの間で何故か絶賛され出したCIRCUIT。
ちょうどVAシンセを買おうと思っていた所なので、
動画を観たり楽器屋で触ってみてサクっと買ってしまいました。

今までマニアックで変態性の高いプロダクトにしか興味が湧かなかったのですが、
そのせいで満足に習熟出来ないのは本末転倒だと反省してた所なんですよ。

簡単にスペックを挙げると、

・VAポリシンセx2とドラムx4
・外部音源も制御できるシーケンサー
・ファームウェアのVerUPでサンプルも使える
・ACアダプタ/電池駆動/スピーカーもあるよ
・新品でも40000~46000円と割と安い価格帯

同じ価格帯の対抗機種としてはKORGのelectribeあたりでしょうか。

上っ面だけでの比較だと、

electribe
・16トラックらしい
・何だかんだ言っても機能は充実してる
・PCレスでひと通りの事ができる
・良くも悪くもKORGらしい癖のある音
・パッドがヘボい

CIRCUIT
・シンセx2、ドラム(サンプル)x2の6トラック
・現場でのプレイに割り切った印象
・音作りはPCエディタが必要、ってか色んな設定にPC必須。
・ソフトシンセに近い優等生な音
・ディスプレイが無い

自分の場合は以前ブっ壊したblofeldと迷っていたんですが、
もちろん純粋なシンセサイザーとしての性能はblofeldの方が格段に上。
しかしシーケンサーが付いているのと、
革新的とも言えそうなワークフローに期待をしてCIRCUITを選んでみました。

◯デザイン

Circuit-large

大ヒットしたMIDIコン[LaunchPad]に似た良くも悪くも今どきのデザインで、
パッドがキラキラうるせぇっス。
この手のMASCHINEとかAnalogRYTMとかの光るパッドって、
電子楽器系では最新の流行りなUIなんですがどうも玩具っぽくて少々苦手でした。

上手い!と思えたのがツマミの下のインジゲータ。
ツマミを右に回すと徐々に明るく、左に回すと暗くなっていきます。
シンプルだけどホント分かり易い。

◯デモソングとプリセットの音

とりあえずデモソングをひと通り聴いてみて遊んでみましたが、
デザイン通りのキラキラした音や綺麗で細い音が得意なようです。
言い方は悪いけど「良く出来たソフトシンセ」という印象です。
YoutubeにUPされている動画もそんな感じ。
minilougeのようなミニマルテクノが好きな方にはバッチリでしょう。
あと音圧が高いのか何なのか、
ボリュームを絞っていても他機材よりも大きく聴こえます。

◯シーケンサー

結論から言うと今まで触ってきたシーケンサーの中で最も秀逸。
とにかく触って下さい!

シンセパートの場合、
8×4列のパッドのうち上2段がキーボード、下2段がステップ。
下段のステップキー(トリガーキー)を押しながら
上段のパッドで音階を決めます。
ポリシンセなので1ステップあたり6音までイケるんですが、
6音までならシーケンスを走らせながらキーボードで演奏する事も可能。
更にはキーもスケールも設定可能。
適当にパッドを押してもちゃんと音楽っぽいフレーズになります!

音階と同じようにベロシティ、ゲート(音の長さ)もステップごとに設定出来ます。

更に「Nudge(ナッジ)」でステップをずらしたり、
「Length(レングス)」で1小節あたりのステップ数を変えたり出来ます。
レングスは各楽器ごとに別々に設定できます。
これらは機能的にはOCTATRACKでも同じ事が出来ますが、
32個の光るパッドを備えたコッチの方が遥かに分かり易く操作性が高いです。

右側3つの青いボタンPattern/Mixer/FXも直感で分かる操作性。
このあたりはKORG gadgetを意識しているんでしょうか、
メチャクチャ操作し易いです。

ノート入力を始めとしたシーケンサーに関しては革命的ワークフロー。
自分のように楽器が出来ない人ほどこの有難みを強く感じるかと思います。

※外部音源を鳴らす場合

FullSizeRender 3

Synth1がMIDIチャンネル1、
Synth2がMIDIチャンネル2、
DrumはMIDIチャンネル10です。
チャンネルの変更は出来なさそう。

シンセパートは6和音までいけるんで、
ポリシンセをお持ちの方ならシーケンサーとしてだけでもお買い得。
写真のようにモノシンセ2つじゃチトもったいないです。

※打ち込みが面倒な人の為の手抜きフレーズ入力

FullSizeRender 6

・ネットに転がってたり市販で売ってるMIDIフレーズを集めます。
・DAWからCIRCUITを演奏できるように設定します。
・AbeltonやBITWIGなら適当にファイル並べてアレコレお試しできます。
・DAWでは1小節のループで再生するように設定します。
・CIRCUITの録音ボタンを押してDAWをスタートさせます。

これでちょー簡単にMIDI譜をCIRCUITに流し込む事が可能です。
これOCTATRACKの時には色々悩んだ挙句に結局出来なかったんですよ。

◯パラメータ

最上段の8つのツマミで各種パラメータを変えられるんですが、
さすがにアナログシンセ程の可変幅ではないようで、
フィルターの効きなんかもチトもの足りない。
パッチごとに8つのパラメータの割り当てが変わってしまうのも少々混乱します。

が、これら全てエディタで設定出来る模様。

◯エディタ/サンプル

FullSizeRender

・シンセエディタ
音作りと8つのツマミの機能割り当ては専用のエディタを使うんですが、
軽く弄ってみると第一印象がひっくり返ります。
まずビビったのが「どうせ優等生的サウンドしか出ないんだろ」と思っていたのに
かなーりエグくてワルな音やクラシカルな音も作る事ができそうな予感。

シンセサイザーとしての全ての機能にアクセスできるので、
複雑怪奇な音作りが出来そうです。
モノシンセでアップアップしてる自分にはちょっとハードル高いかも。
つーか面倒なので他人様の作ったパッチを頂こうと画策しましたが、
Novationのページでは
「FaceBookページにユーザーの投稿したパッチが色々あるよ!」
と言ってるのに見つける事が出来ませんでした。

そこでパッチ集でも売ってねぇかな?と検索したところありました!
http://www.lightfinger.net/#!shop/vhm6q
32個のパッチで15ドル。
とりあえず買っとくかー、とポチってみましたが、
1日遅れで届いたメールには、
「32個はまだ出来てないんだ1日待ってくれ。とりあえず5個だけ送るわ!」
とかヌカしやがってます。
まぁ気長に待ちますかねw

・サンプル

ドラムの代わりに最大60秒64個までのサンプルを入れる事もできます。
しかしサンプルのインポートがちょっと特殊で、
wavでもmp3でもいけるけど独自のフォーマットに変換されるみたい。
WEBアプリを使って行なうようですがChorome/Operaのみ対応なようです。

ちなみにCIRCUIT専用のサンプルキットも販売しています。
https://www.abitdeeper.com/collections/circuit-expansions
とりあえずハウスセットを買ってみたけど、
オールドスクールの香り漂うオッサン殺しマシンに早変わり!

※要注意
このWEBアプリではサンプルセットをまたいだコピペが出来ません。
なのでsyxファイルとして販売している上記のサンプル集は、
複数のセットを買って美味しいトコ取り、って事が不可能です。
上記のAbitDeeperというサイトでは元になったサンプル集が売っているので、
そちらを買ってWEBアプリでシコシコ割り当てしましょう。
ダブテクノ、シカゴハウスなどプリセットには無いシブ目のサンプルです。

※Drumトラックに仕込んだ上モノに音階をつける方法

・シーケンスを止める
・Volocity設定モードにする
・録音ボタンを押す
・該当するステップのパッドを押すと赤く光る
・ツマミ1or2でピッチを変えながらパッドを叩いて音程を調節
・終わったら録音ボタンを押して設定完了

マニュアルの46ページに書いてあるんですが、
シンセパートに音階をつけるよりチト面倒ですね。
なんか調子っぱずれなメロディになるんですが、
そこがまたオールドスクール感があっていいんですよ。

◯ココが惜しい

・サンプルエディタの入れ替えが面倒
CIRCUIT COMPONENTSというWEBアプリを使って
サンプルの割り当てをするんですが、
サンプルセットというsyxファイルにまとまっている為に
セットをまたいだコピーが出来ないんですよ。
wavファイルの時点でキッチリまとめないといけないようです。
(セット内の割り当てはGUIで簡単にできます)
やっぱりWEBアプリはダルいですね。
パッチやセッションの管理も含めた総合的なエディタがあればいいな。
有料でも喜んで買いますよ。

・マスターにかかるフィルタが地味
エディタでもいいんでレゾナンスを変更出来たらいいのに。
と思っていたらココのフィルターはアナログなようで無理っぽいです。
バラして抵抗入れ替えるとかいうレベルでしょうね。

・せっかくのシーケンサーが2パートしかない
即興演奏も打ち込みもMIDI譜流し込みもイケるシーケンサーって
国内で普通に入手出来る機材では他にありません。
超有能シーケンサーなもんだから色々と鳴らしたくなっちゃいます。

そうは言っても、
エディタやサンプル対応などVer.UPで機能強化をしているので、
ソフト的な問題は今後改善されるかもしれません。

◯こんな人におすすめ

・家でゴロゴロしながらフレーズのスケッチをしたい人
・小難しい設定抜きに簡単に演奏がしたい人
・機材にお金かけたくないから一台で済ませたい人
・iPad音楽アプリにハマったけど飽きちゃった人
・楽器が出来ない、覚える気もない人
・ポリシンセ用のシーケンサーが欲しい人
・手軽にminilougeごっこしたい人

◯おすすめできない人

・PCから離れてハード環境のみでやりたい人
音色のエディットにPCやWEB環境が必須です。
本体でのパラメータ操作は、
あくまでもパフォーマンス用と割りきってしまいましょう。

・既にDAWをライブセットに使っている人
ぶっちゃけ出音はソフトシンセに近いし、MIDIコンの方がいいです。

◯まとめ

「これ一台で何でも出来るやで」と謳う機材に散々だまされてきましたが、
コレは複合機として非常に高いバランスのとれた機材です。

シンセサイズをPCエディタのみに割り切ってしまう事で、
ワークフローがキッチリ整理されているポイントが素晴らしい。

電池駆動&スピーカー内蔵(もちヘッドフォン端子も)なんで、
ベッドからスタバまでiPadばりに色んな所で演奏できるのも楽しいですよ。

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