マシンライブの仕込み方【機材編】

毎月第1水曜から第1日曜に変更した[マシンライブ・ワークショップ@西麻布bullet’s]では
レギュラーメンバーも3人から7人に増えてワイワイやってます。
みんな目的も出身も違うので機材選びが凄く個性的。
畑は違えど各々の分野でそれなりの経験を積んできた人達ですから、
機材選びにもレッキとしたコダワリがあって非常に面白いんですよ。

レギュラー陣の機材を触らせて貰ったり自分でアレコレ買ったり売ったりしていくうちに
色々と機材ごとメーカーごとの癖を感じ取れるようになってきたんでまとめてみます。
これから機材を揃えたい、或いは今の構成に足りないモノはなんだろか?
って方の参考になれば幸いです。

◯機材選びのセンス

・高ければイイって訳でもなく高い機材は逆にドツボにハマる
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電子楽器に限らずオーディオでもクルマでもバイクでもカメラでも、
男同士のマウンティングで「持ち物のスペックを競い合う」という不毛な争いをよく見かけます。
不毛ではあるけど男の性なので否定はしませんが(むしろよく参戦するし)、
電子楽器の場合は高い機材ほど使いこなすのが難しいというジレンマがあります。

ELEKTRON、特にOCTATRACKの習得にはホント苦労してますし、
DaveSmithは自分にとっちゃ鬼門です。音はムチャクチャいいんだけどね。
自身の方向性が定まる前の段階ではAIRAシリーズやvolcaシリーズなど、
もっと安くて簡単な機材を買って現場で経験を積んだ方が余程いいです。

・・・そう3年前の自分に言い聞かせたいです。はい。

・スペック至上主義に陥るなかれ

多機能である事と高性能である事は必ずしも一致せず、むしろ反比例するケースが多いです。
沢山の機能を持った機材でも、個々の機能にアクセスするのが
面倒な物では使いこなすのも難しいですよね。
自分が大事だと思っているのはUI。
マニュアルを見なくてもソコソコ遊べるマシンの方がいいです。
使いこなしていくとより深い階層にアクセス出来る物ならベストです。

このあたりELEKTRONはよぉく考えられていて、
パッと障れてあそべるけど使い込んでいくうちに深みにハマれる稀有な機材です。
※但しOCTATRACKは除く。ありゃ初見殺しだ。

DaveSmithはチョット気難しい印象がありますね。
TETRAのシーケンサは全く使う気になれません。
音はホント極上なんだけど。使いこなしてる人はスゲェと思います。

WaldolfBlofeldなんかは少ないツマミで最初戸惑うけど、
慣れてしまえば超多機能で面白いです。また買おうかな。

MFBのドラムマシンも最初は厄介。割り切ったUIです。

◯電子楽器の各機能を理解する

自分もそうですがDAWからこの分野に入ると各々の機能が把握し辛いんですよね。
最初はシンセとサンプラーの区別つかなかったし。
けどココを把握していないと自分がナニを買えばいいのか分からない筈です。

・シンセサイザー
堅苦しく言うと電気信号を音声に変えて演奏する楽器の総称。
ホントに電気を使うのがアナログシンセ。

コンピュータで処理するのがデジタルシンセ。
SFX60mkii_Gear Orphanage

デジタルでアナログシンセを再現したのがVAシンセ。
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生楽器の音をデータとして取り込んでるのがPCMシンセ。
XV-5050

・サンプラー
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録音した音を演奏向けに加工したりする奴。
ダンスミュージック史における革命的機材。
PCMシンセも概念としては一緒だけど、サンプラーは自分で録音出来る。

・シーケンサー
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自動演奏機。シンセやサンプラーに備わっているのがほとんどだけど、
稀に専用機もあるよ。DAWのピアノロールもシーケンサーの一種。

・ドラムマシン
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ドラムに特化したシンセ/サンプラーにシーケンス機能をつけた物。
大抵のマシンライブではコレ無ければ始まらない。

・エフェクター

音を電気的に加工する機材の総称。
DJ用やギターエフェクターを流用するのが一般的。

・ミキサー

各楽器の音を混ぜたりエフェクターに送ったりします。
PAミキサーが一般的だけど、DJミキサーを使う人もいます。
最終的な音の出口だからココがショボいと全ての音がショボくなります。

◯専用機と複合機を使い分ける

シンセ、ドラム、サンプラー、シーケンサー、ミキサー、エフェクターなどなど、
それぞれの機能に特化した専用機材と、
それらの機能をいくつかまとめた複合機とがあります。

餅は餅屋と云いますし音質や性能、マニアックの度合いで言えば専用機に軍配が上がりますが、
サイズや予算の制約でそうも言ってられません。

そこで「一台で何でもできるやで」と謳っている複数の機能をまとめた複合機が色々あります。
ですがこの「何でも」ってのがミソでして、一台に複数の機能を詰め込むと大抵無理があります。
例えば音階つけてリードやベースもイケると謳うドラムマシンが色々ありますが、
得てして使いづらいのでオマケ程度の認識に留めておきましょう。
究極の複合機と言えばやはりDAW、或いはモジュラーシンセ。
どちらもホントに「一台で完結」できます。
モジュラーの場合はお金すっごいかかるけどー。

・オススメだったり周りで評価の高い複合機

OCTATRACK

確かこれサンプラーらしいんですがシーケンサー、ミキサー、エフェクターが高性能。
未だサンプリングした事ないッス。
オシレーター以外のシンセサイズ機能もだいたい揃ってます。
PCレスセットの中核にバッチリ。

KORG electribe/novation CIRCUIT

ドラムとシンセ、シーケンサーの複合機としてバランスが良いと評判です。
中古で2万円代〜と手に入れやすいので最初の一台にオススメです。

AnalogRYTM
ドラムマシンとしての機能が主ですが、サンプラーとしても使えるし、
音階をつけるシーケンス機能もよく考えられています。

・オススメだったり周りで評価の高い専用機

KORG SQ-1
1万円で買えるお得なステップシーケンサーですが、
コレを超える機種はなかなか見つけられません。
4台壊して更に2台買いましたよ。

AIRA TR-8
デザインがアレだけどUIが秀逸でスッゲェ使いやすいです。
持ち歩き用途ではなく自宅での制作に使っています。
このおかげでパソコンの中のドラム音源ぜんぶ要らなくなったわ。
オプションの606/707/727音源も一緒にどうぞ。

JOMOX Mbass11
泣く子も黙るキック専用音源。サブベースとしても使えます。
とにかく重低音を手っ取り早く使いたい人に。
ベース・ミュージック系ならマストアイテムではないでしょうか。

◯シーケンスのユーザーインターフェイス

シーケンサー(自動演奏機能)の方法にも何種類かありますが、
ユーザーインターフェイスを考える上で一番重要な所です。
ザックリ言うと1小節を16のステップに分けて、
そのステップごとに「音を出すか出さないか」「音階をどうするか」
「強さはどれぐらいか」をプログラムしていきます。
機材によって2-4小節以上の長さだったり64ステップまでイケたりします。

後は事前にキチンとプログラムする必要がある物や、
普通の楽器のように即興で演奏し易い物など、
メーカーや機種によって千差万別です。

・鍵盤
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楽器経験があったり鍵盤に抵抗の無い方ならコレが一番「音楽的」な打ち込みや演奏ができます。
鍵盤のあるシンセで「シーケンサー付き」とあれば即興演奏にも打ち込みにも対応します。

・TR方式ステップシーケンサー
roland_tr909

この手の電子楽器では一番ポピュラーな方式で、
大抵機材の下段に「トリガーキー」と言われる16個のボタンが並んでいます。
音を出したいステップのキーをONにして、
当該ステップのパラメーター(音階など)を変えたりする事もできます。

・ツマミ式ステップシーケンサー
sq-1-640x480

KORGのSQ-1のようなステップごとのトリガーキーと共にツマミが付いている物です。
これでステップごとの音階を自在に操る事が可能です。
TR式よりも即興演奏に強いですね。

・パッド型シーケンサー
akai_mpc2000xlf

AKAIのサンプラーMPCシリーズやNI MASCHINEのような16個のパッドが並んでいる物です。
パッド式は未経験なんで何とも言えないんですが、
いわゆる「指ドラム」といったドラム系の即興演奏に特に強い印象がありますね。

このあたりを分別した上でひと通り触ってみて、直感で操作出来そうな方式を選ぶといいでしょう。

◯パソコンを使うか否か

予算ウンヌンは別にして、PCを中心に据えるかハード機材のみで行くかは悩みどころ。

・DAWの利点
低予算、省スペース、圧倒的な情報量。一台でも完結できるスマートさ。
楽曲制作に直結するワークフロー。

・DAWの欠点
バグやフリーズ、OSとの相性問題。音が平坦。パフォーマンス性が低い。

・ハードの利点
PCには出せない音の荒さとリアル感(特にアナログシンセ)、
デザインやビジュアルを含めたパフォーマンス性の高さ(MIDIコンの比じゃない)。

・ハードの欠点
重い。高い。ウザい。セッティングが大変。モテない。
どちらも一長一短ですが、最初はDAWのみか、DAWとハードの併用が良いかと思います。
じゃあDAWでやってるけどハードの最初の一台目はナニがいいのか?って言うと、

・パソコンじゃ絶対出せない音出す機材

アナログドラムマシン全般

クラブ音楽のキモでもあるドラムマシン、
特にアナログ音源の物は独特の荒さと音の太さ、シーケンスの揺れなどからして
DAWより迫力のある音が簡単に出せます。

アシッドベースシンセ

自分がハード機材にハマったキッカケでもあるんですが、
アシッドベースもソフトじゃ再現出来ません。
元祖のTB-303とは言わないまでも、TT-303やx0xb0xなど、
アナログ音源、専用シーケンサー、専用フィルターを備えている機種でないと、
あの狂った音は出せないんですよ。

MOOGのフィルター
Moogerfooger_MF-101_Low Pass Filter_1

だれもが憧れるMOOGのローパスフィルター。
モデリングソフトは色々あるけど、やっぱり本物は一味も二味も違います。

自分がいままで経験してきた中で露骨に違いが分かるのは以上の3つ。
ソレ以外のVAシンセやPCMシンセはDAWでも似たような音は出せるんじゃないでしょうか。
要はDAWと併用するハードならアナログモノシンセかドラムマシンがベターって事ですね。

◯音源以外の副機材

・エフェクター
パフォーマンス的に扱う目的がほとんどだと思いますが、
本来の目的である音の補正って意味でも使える機材はあります。
コンプレッサーがあると音質を自在に買えられますしね。
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・ミキサー
原則的にアウトプットはステレオ1chにしなくてはいけないので、
複数の機材をまとめるミキサーは必須です。
PCを使う方なら多入力タイプのオーディオI/Fがいいでしょう。
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どちらにしろ音質を司る重要機材なので、あんまり手を抜いちゃいけないですよ。
DJミキサー、PAミキサー共に安物はせっかくのシンセの音を殺しちゃいます。

・ケーブル
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オーディオケーブル、電源ケーブル、MIDIケーブル色々必要ですが、
音質がイイ!と謳っている高級ケーブルよりも柔らかくて扱いやすいモノをオススメします。
というか大量に必要になってくるのでハンダごて買って自作しちゃいましょう!
それなりのグレードのケーブルが1/3くらいの予算で作れますよ。
あと色を選べるってのが画期的に便利。暗いハコでの結線作業も捗るし、
「細かい所まで拘る俺カッケー!」って気分に浸れます。

個人的にオススメなのがモガミ2534。
カナレやベルデンより柔らかいです。
秋葉原トモカ電気で各色切り売りしています。

・電源
とりあえず電源タップを用意しておきましょう。
電源もいいモノを使うと音質が良くなりますが、
そもそもACアダプタを使う機材はアダプタ自体がノイズ源なんで、
あんまり効果はないです。
あとフェライトコアを使うとノイズが減る代わりに音が痩せる場合もあるんで要注意。
ACアダプタを使わないタイプの機材なら多少は気を使った方がいいかも。

FURMANの電源タップいいですよ。
http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/39113/

こだわったら泥沼にハマるので気をつけて下さいね。
沼の底から言っても説得力ありませんが。

◯梱包と運搬

色んな音が出せるようにアレコレ機材を揃えても、ハコまで持っていけなければ仕方ないです。
となると効率のいい機材構成をトコトン考え抜く必要がありますよね。
もちろんプレイ時に並べられるスペースだって制約があります。

なので欲しい機材がある時は他のスペックよりもサイズと重量に気を使いましょう。

・スタンド
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機材のセッティングにPCDJ用のスタンドを使ってる人をよく見かけます。
ウチのレギュラー陣ではreloopのスタンドが流行中。
http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/204605/
あとiPad用のスタンドも使えるかも。

・タグ
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ACケーブルの端子に機材の名前を書いたタグをつけておくと間違いを起こさずに済みます。
ホームセンターの電気資材コーナーに売ってますよ。

・クッションバッグ
100円ショップなどで売ってるバッグや、
パソコン用のクッションバッグが機材運搬時の保護に便利。
自分の場合ケーブル類を詰めたクッションバッグをカバンの底に入れてます。

・スーツケース/キャリーバッグ
沢山の機材を詰め込むカバンはスーツケースを使う人が圧倒的多数。
キャスター付いてるし電車でも苦にならないし。
最近はスーツケース対応のコインロッカーもありますしね。
ボクのはコレ。カリマーのキャリーバッグです。
http://www.karrimor.jp/products/detail.php?product_id=91
ちょっと高かったけど重宝してます。

・カメラ用のバッグも使える
電子楽器以上にハードな使い方が想定されるカメラ関連のバッグやアクセサリーもオススメです。
昔は野暮ったいデザインばっかだったけど最近はおサレなバッグが色々ありますよ。

◯機材構成例

ワークショップのレギュラー陣の機材構成を紹介します。

・テクノおじさんa.k.a.RYOHA
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モジュラーシンセ+TB-303+TR-606

モジュラーシンセの強みはケース次第でほとんど全ての機能を一台にブチ込める事。
90HPx4段の自作ラックにシーケンサーからシンセ、コンプ、ミキサーまで全て入っています。
しかもソレ担いでるし光るし煙も吹くし。。。

・gravizaava
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Analog Keys+NordLead3+MACHINEDRUM

キーボーディストなのでデカい鍵盤x2がメイン。
他にもOP-1があったりSTRYMONのエフェクター通したりと。
音をまとめるミキサーはMackieのMIX8。軽くて扱いやすいミキサーです。

・ryotakojima
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モジュラーシンセ+Tanzbar+LXR+OCTATRACK
アテクシはデジタル/アナログのドラムマシン2台とベース/リードの出せるモジュラーシンセ、
それをOCTATRACKのミキサー機能でまとめています。
しかし機材の多さと重さに辟易としてるので改善の余地アリ。

・kubota
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OCTATRACK+DSi TEMPEST
新レギュラーのDaveSmith使い。他にもTEMPESTやEvolverがあったりします。
DaveSmithはとっつきにくいけどハマる人は物凄い勢いでハマるようですね。
これらの音をOCTAでまとめています。

・kuriyura-mono
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Abelton Live+Abelton PUSH+AKAI APC40mk2+motu UltraLite
DAW完結に拘る洗練されたスタイル。
ソフトの深い部分まで知り尽くしてないとなかなかこうはいきませんよね。

◯まとめ

生楽器と違ってマシンライブの良し悪しは機材選びのセンスにけっこう依存します。
金額、性能、機能、サイズ、重さetc、
持ち運べる限界や操作出来る限界の中でみんな試行錯誤しています。
トコトン悩んで下さい。悩んでる時期が一番幸せなのかもしれません。

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