Arturia DrumBrute Impact レビュー

ドラムマシンを選ぶ際に着目したいポイントに音質や機能とは別に「操作感の良し悪し」があります。
多機能である事&コンパクトである事と操作性が良い事は(だいたい)反比例し、
用途が合わなければ数十万円する高級機を持ってても宝の持ち腐れになる事もしばしば。
ライブ用途と制作用途のどっちに重きを置くかによって大きく変わってくるので注意したいところです。

今回紹介するDrumBluteIMPACTはその操作感にこだわった機種。
シンプルなUIと従来機よりもずっとコンパクトで、
税込み4万円と値段も安くライブ用途にもってこいの機種です。

https://arturia.jp/products/item/drumbrute-impact/

○個人的な購入動機

現在ユーロラックでドラム音源を組んでいる最中で、それに使えるドラムシーケンサーを探していました。
尚かつ「分かりやすいドラムマシンが欲しい」とは前々から考えていて、
好印象だった従来機よりずっとコンパクトになったIMPACTを発表から即予約しました。

比較対象は同価格帯のTR-8とTR-08。
8の方がパフォーマンス性が高そうだけどあのチンドン屋みたいな電飾が許せないw
08はコンパクト過ぎて操作性が良くなさそうって事で見送りました。

○デザイン

横幅は旧ELEKTRONシリーズとほぼ同じ、奥行きは30cm程度とドラムマシンの中ではコンパクトな方です。
それでいてツマミやボタンの配列に余裕があり非常に操作しやすいシンプルなデザインになっています。
シフトキーによる二次操作も少なく(基本的にプレイ中は使わなくて済む)、
オーソドックスなドラムマシンを使える人ならマニュアルを読まなくてもある程度まで操作できるくらい簡単。

○拡張性


・同期方法
MIDI IN/OUTに加えClock IN/OUTやUSB MIDIもあるので様々な外部機器との同期が可能です。
MIDI OUTからはノートを出力する事が出来るので、ドラム音源のシーケンサーとしても利用できます。
またUSBケーブルでDAWとつなげる事でMIDIコントローラーとしても利用可能。

・パラアウト
全てではないけどキック、スネア、ハット、FMドラムの4種類はパラ出し可能です。

・PCとの連携
Arturiaのハード機器共通のコントロールソフト「MIDI CONTROLL CENTER」で、
PCでのパターン編集や各種MIDI設定が出来ます。

○シーケンサー

・ステップレコーディング
一般的な16のトリガーキーを備えています。
通常のトリガーは青く、アクセント付きの箇所は赤く光るので視認性がいいですね。

・リアルタイムレコーディング
最下段のパッドを使ってリアルタイムレコーディングも可能です。
クオンタイズのオン/オフも自在。

・スウィング/ランダム
どちらも全体にかけるかパートごとの個別にかけるか選択可能。
ランダム機能はツマミを右にひねる程にトリガーされる確率が上がる方式で、
自分の手癖に飽きた時やパフォーマンスのアクセントに使えます。

・ポリリズム
トラックごとのステップ数を自在に変える事ができます。

・ミュート/ソロ
ミュートモードとソロモードも独立したボタンがあるので1アクションでアクセス出来ます。
ミュートはトリガーミュート方式なのでディケイを伸ばした音でも自然な抜き差しが出来ます。

○音質

第一印象としてはクラシックなアナログ回路にありがちなフェイク感の強い音質です。
それをチープととるか味ととるかで好き嫌いが分かれそうですね。
volca beats、MFB TANZBARやTR-606に近いかなぁ。
各ドラムの音源はアクセントのオン/オフ、カラーモードのオン/オフとで4種類の基本サウンドがあり、
そこに対して各ツマミでパラメータを調整します。

・キック
凄くいい。太いし荒いし他の音に負けない。
パラメータの可変域も絶妙で808ライクなロングディケイキックも得意だし、
「カラーモード」でオーバードライブをかけると909的なキックの再現も可能。
ドゥオオオオ〜ンからゴンッ!ゴンッ!まで器用にこなせるんですよ。

・スネア
スネア1/スネア2と二つのチャンネルを使っています。
カラーモードを使うと1の方は胴鳴りが強くなり、2の方はクラップとしても使えます。

・ハット/シンバル
金物系はTR-606に近いノイズ感の強い音です。
音量が足りないせいか他の音より弱く感じるので、
古いシカゴハウスでよく聴くような「ザクザク刺さるハット」を再現するには工夫が必要ですね。

・タム
タムはハイとローの切り替え式。ツマミではピッチのみですがカラーモードでディケイを伸ばす事が出来ます。
このディケイを伸ばした状態でハイとローを組み合わせてベースの代わりにするのが良いかも。
タムのチャンネルだけスウィングを強めにするとファンキーなベースラインを作れます。

・カウベル
ここはパラメーター調整が出来ないんですが定番の808カウベルによく似た音です。
若干ピッチが高い気もしますが。

・FMドラム
個人的には使い所に悩んでますが、ハマれば美味しい音が出ます。
モーションシーケンス(ツマミの動きをレコーディングする機能)があれば良かったのにw

自宅モニターとヘッドフォンでの試聴とDJバーに持ち込んでの試聴をしましたが、
環境によってだいぶ印象が変わりますね。

・マスターディストーション
特筆すべきはマスターにかかる内蔵ディストーション。
ギター用ディストーションペダルにありがちな音痩せも無く、
ツマミを軽くひねるだけでかなりワルな音になります。

○他機材との相性

MIDIノートを吐けるのでVERMONA DRM-1や1JOMOXのラック音源、
ユーロラックのドラム音源などのシーケンサー用途として最適です。

またClockOUTのお陰でvolcaシリーズやSQ-1、セミモジュラーシンセとも組み合わせて使えます。
自分の場合はMother32のLFO RATEにクロック信号を送り、
LFOをBPM連動できるようにしています。

○こんな人におすすめ

・Lo-Fiな音が欲しい人に
・TR808系のオーソドックスな音に飽きた人のサブマシンに
・モジュラードラムやドラム音源のシーケンサーに

○まとめ

ザックリ他機種に例えると「スーパーvolca」あるいは「超使いやすいTANZBAR」ってとこ。
音のキャラクターを踏まえると決して万人向けではありませんが、
定番のTR系とは違う魅力のあるマシンですよ。
操作感の良さや分かり易さ、習得の容易さはTR-8に匹敵するくらい。
操作性拡張性は十分ですし、絶妙なサイズと価格設定でコスパ良好な機種です。

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