DFAM強化計画
有機的で独特なシーケンサーとMOOG伝統の音とで、
変態モノシンセファンの心をガッツリとキャッチしているMOOG DFAMですが、
他機種との連携がスマートにいかないのが悩みどころですよね。
モジュラーユーザーからすれば60HPと巨大なスペースの為にためらってしまう事が多く、
グルボユーザーからするとMIDIが無いので同期が面倒。
どちらかと言えばグルボユーザーに近い立ち位置の自分にしても悩ましい問題でした。
○DFAMの同期方法「クロックパルス」とは
シンセを使う人にはお馴染みのパルス波。平たく言えば「ブツッ」という音です。
MIDI規格以前の電子楽器はこの「ブッブッブッブッ・・・」という音で複数の機材の同期をしていました。
KORGからリリースされているmonotribe用のiOSアプリもこの音を等間隔で発信するものです。
そしてDFAMは「ブツッ」1回で1ステップ進みます。
なのでサンプラーにこの「ブツッ」って音を入れて16ステップの好きな場所にトリガーすれば、
かなり変則的なシーケンスが出来るんじゃないでしょうかね(試してはいないけど)。
○クロックパルスの速さはメーカーごとに違う
クロックのスピードは「4分音符あたりのパルス波の数」で決まります(単位:ppqまたはppqn)。
速さというより分解能(細かさ)と言った方が良いかもしれません。
DIN SYNC24は24ppqだったりvolcaシリーズは2ppqなどなどメーカーによってバラつきがあります。
DFAMの[ADV/CLOCK]入力は単純に1パルスごとに1ステップ進む仕様でして、
例えばELEKTRONマシンからDIN SYNC出力を使ってDFAMを同期させようとすると、
超スピードになって使い物になりません(MIDIケーブル切断して試しましたw)。
○DFAMとMIDI機器の接続方法アレコレ
・volcaシリーズ
MIDI IN端子のあるKORGのvolcaシリーズなら、
MIDIからクロックパルスに変換する事が出来ますが
KORGの仕様により「volcaの2ステップに対してDFAMの1ステップ」の同期しか出来ません。
volcaの1小節とDFAMの1小節が重なるので分かりやすいと言えば分かりやすいんですが、
あまり面白みはありません。
・Doepfer MSY2
http://fukusan.com/products/doepfer/msy2/
DIN SYNC24という旧TRシリーズなどRolandの古い規格への変換が主用途ですが、
ついでにクロックパルスも吐けるようになっています。
裏側のDIPスイッチを使ってパルス分解能を設定する事が出来ます。
どちらも1万円チョイの投資でMIDI機器からDFAMに同期をさせる事が出来ますが、
わざわざ同期の為に別の機材(と電源)を用意するってのがスマートじゃない。
なんてワガママな理由で躊躇していました。
・ELEKTRON analogシリーズ
A4/AR共に柔軟なパルス波出力が可能です。
好きな場所に自由にトリガー出来るので、
そのトリガー通りにステップが進んでくれるので面白いですよ。
TRC機能と組み合わせれば奇抜なシーケンスも可能です。
・Future Retro Swynx
http://fukusan.com/products/future_retro/swynx/
ちょっと値は張るけど楽しそうな奴です。気になる気になる。
スタンドアロンのクロックディバイダーとして使えそうな雰囲気(分からんけど)。
左のツマミで分解能、右のツマミでスイングを調整するようです。
○ユーロラック化してクロックモジュレーターを使う
ここまではスタンドアロンとして同期する方法を紹介しましたが、
面倒だけどユーロラック化をして同期関連系のモジュールを足してしまうのが一番良いと思います。
欲しい機能はまず「MIDI to Clock」そして「クロックモジュレーター」があると表現の幅がグンと拡がります。
クロックモジュレーターとはモジュラーシンセでは重要度の高い機能で、
半分、1/4、1/8・・・とクロックを分割(クロックディバイダー)したり、
倍速(クロックマルチプライヤー)にしたりする物です。
これらを上手く使えばDIN SYNCだろうとKORG CLOCKだろうと
任意のスピードでシーケンスさせる事が出来ますよね。
クロックモジュレーターは大きく分けて
・複数のアウトプットがあるもの
・アウトプットは単独だけどツマミやスイッチで調節出来るもの
とがあります。
前者はクロック以外のパラメータも制御した時に、
後者は演奏中にクロックを変更したい時に便利です。
・Hexinverter/MUTANT BRAIN
http://www.hexinverter.net/mutant-brain
こいつは4つのCVと12のゲート/トリガーを自在に設定可能で、
一般的なノートトリガーだけでなく、
MIDI CCをCVに変換したり(例えばELEKTRONと相性バツグン)
12の出力でバラバラのクロックを吐かせたりと、
至れり尽くせりのMIDI to CVモジュールなんですよ。
以前モジュラー辞める!と売っ払った時にコイツと電源だけは手元に残しておきました。
・4ms QCD
https://4mscompany.com/qcd.php
入り浸、いやお世話になっているモジュラー屋さんオススメなのがコレ。
別途MIDI to Clockが必要にはなるけど、
ツマミで分割でも倍増でも自在に変えられる。しかも4系統。
DFAMだけでなく大掛かりなシステムを予定している人には良いんじゃないでしょか。
お得なキット販売もあるよ。
https://www.thonk.co.uk/shop/4ms-qcdx-kit/
今回は見送りするけどいずれ欲しくなりそう。
・erica synths/MIDI to Clock v2
https://www.ericasynths.lv/shop/eurorack-modules/by-series/basic-series/midi-clock-v2/
MIDI入力からクロックに変換するだけのモジュールですが、
クロックモジュレーターとしても機能するのでコレ一つで解決しちゃいます。
ppqも1,4,24まで対応。
しかも電源が+12Vだけで動くんでユーロラック用の電源を用意しなくても、
DFAMのDC入力から分岐させるだけでOKなんです。
今回は出来るだけシンプルに作りたいのもあって、
このericaのモジュールを購入しました。
○クロック以外のお勧めモジュール
比較的入手し易い84HPのケースを導入した場合、
24HP分を別モジュールに割り当てる事が出来ます。
モジュラーの音量とラインレベルの音量が大きく違う為に、
最終的にアウトプットモジュールを入れた方が便利ではありますが、
(ミキサー等と一緒に使う場合は無くても良いかもしんない)
それでも18−20HPは余るんじゃないでしょうか。
自分が思いつくDFAMにあったらいいなぁ、って機能と言えば、
クロックの他にはLFO、エフェクトあたりでしょうか。
あるいはシンセボイスモジュール(1台で完結しているモジュール)を入れてしまうとか、
シーケンサーモジュールを入れてまた違ったシーケンスを楽しむとか。。
何しろ種類が膨大なので何を選べば良いのか混乱しますが、
分かってくると妄想が膨らみますよね!
・erica synth pico シリーズ
https://www.ericasynths.lv/shop/eurorack-modules/by-series/pico-series/
わずか3HPで構成されるこのシリーズは少ないスペースを最大限有効活用するにはもってこい。
中でもマルチエフェクターのpicoDSPは非常に売れているそうです。
モジュラーエフェクトでは選択肢の少ないリバーブが備わっているのもポイント高いですね。
erica synthのモジュールはDFAMと同じ黒いパネルで統一されているので見た目にも相性が良いです。
・Mutable instruments
https://mutable-instruments.net/
恐らくは他では手に入らない(=モジュラーやらないと出せない)音、というのがMutable製品の印象です。
アンビエント系プレイヤーを中心に非常に綺麗な響きのモジュールを多数リリースしています。
これらのモジュールはやや大型のものが多いんですが、
実はこのMutableモジュールの内部仕様をオープンソースとして公開していまして、
それを参考に別のガレージメーカーが小型化して販売している物が少なくありません。
モジュラーシンセのメーカーはほとんどが個人運営のガレージメーカーなので、
プロダクトとしてのクオリティに難があったり癖が強すぎて使いづらい物もありますが、
上記2つの他にはDoepfer、Intellijel、Noise Engineeringあたりのブランドが信頼度も高く手堅い選択だと思います。
○まとめ
これらのモジュールと筐体とを購入するとDFAMがもう一つ買えてしまうんじゃないか?
ってくらいの金額になっちゃうかもしれませんが、値段相応の強化ができると思いますよ。
イチからモジュラーシンセを始めるよりはずっと優しいですしね。
DFAMユーザーの方は是非とも検討してみて下さい。