DFAM強化計画(筐体編)

前回はDFAMと相性の良い同期関連のモジュールを選ぶ所まで紹介しましたが、
今度はユーロラック筐体の選定編です。もちろんMother32にも応用できますよ。
両方とも重厚感のあるケースで机の上にデンとおいておくには良いんですが、
持ち歩くとなると嵩張って邪魔ですよね。

○ユーロラック導入の際の基礎知識
世界中で様々なモジュールが発売されていますが、
必ずチェックする必要があるのが横幅、深さ、電源です。

・横幅
ユーロラック規格では横幅を「HP」という単位で表します。1HP=5.08mmです。
DFAM/M32は60HP。ひとつのモジュールとして考えるとかなり大きな部類です。
よく流通している84HPのケースですと、24HP分のモジュールを追加できるって訳です。

・深さ
深さはmm単位で表記されています。
箱の深さに収まるモジュールを選んでいけば問題ありませんが、
箱の底に電源ユニットが収まっている場合はその厚みを引いた深さのモジュールしか入りません。

Mother32/DFAM共に深さは26mm。
モジュールとして考えるとかなり浅いんですよ。

・電源
たいていの場合はユーロラック専用の電源ユニットが必要です。
ケースに内蔵されている物もあれば、電源ユニット単体で売っている物もあります。
一般的には15VDCのACアダプタから+12V,-12V,+5Vの3種類の電気を取り出します。
モジュールによって3種類全部の電気が必要だったり、
+12Vだけで良かったりとまちまちです。

○市販のケースでオススメなモデル
DFAMのサイズである60HPから100HP前後の国内で購入し易い物を紹介します。
モジュラーシンセのケースとしては比較的初心者向けのサイズなので、
中古で良ければヤフオクなりメルカリなりにかなり出回っています。

・4ms pod60

https://4mscompany.com/p.php?p=892&c=9

なんのモジュールも足さないけどコンパクトにしたい人にベストな筐体。
電源付きと電源無しとで1万円くらい差がありますが、
工作に自信のある方なら電源無しを購入して、
上部に元々内蔵されている電源/アウトプット端子の基盤を内蔵してしまうのは如何でしょう?
実物を見たこと無いけど多分できます。たぶん。

・Arturia RackBrute 3U
https://arturia.jp/products/item/rackbrute-3u/
アルミ削り出し材による頑丈なケース。

・PittsburghModuler Cell90
https://pittsburghmodular.com/cell-90-desktop-case
昔使ってました。鉄製でちょっと重たいけど良いケースですよ。

・HIKARI Instruments/98HP CASE
http://hikari-ins.shop-pro.jp/?pid=96285944
他のケースより若干浅め、横幅広めのスマートなケースです。

○お金無いから筐体を作ってしまおう

アタクシ元大工&家具建具屋で現在は金属加工業に従事していますが、
それらの経験を存分に活かした超絶手抜き筐体自作ノウハウを編み出しました。
簡単に言ってしまえば、ホームセンターで「細工材」を切断して貰って木の箱を組み、
見える部分だけ金属板を貼ってしまうんです。

ホームセンターに行くと大抵「細工材」という細めにカットされた木材のコーナーがあります。

今回はアガチス(桂)材の10mm厚を選びました。

底板の幅は128.5mmマイナス20mm(板厚2枚分)で約109mmとなります。
前板/背板はちょうど45mm幅のアガチスがあったのでそのまま使います。
長さはDFAMとMIDI2CLOCKで66HP=約335mm。
※1mm未満は切り上げて気持ち大きく作りましょうね。

それらをコの字型に組んでみます。
木工用ボンドと釘or細い木ネジを併用してガッチリ組みましょう。

木ネジを入れる際には、あらかじめ細いドリル(この場合1mm径)で下穴をあけておきましょう。
でないとネジ留めの最後に割れちゃいます。
どうせ隠れるので見た目は気にしなくて良いけど、寸法が狂うと面倒です。

さてここで問題発生。
ユーロラック規格はパネルと基盤の奥行きの差を前後5~8mmと設定しているようで、
10mm厚の板では基盤や部品と干渉してはみ出てしまうんですよ。

木材の都合の良いところは手で簡単に加工が出来る事。
こんな風に干渉する部分だけドリルや彫刻刀で削ってしまいます。
また電気を通さないから多少触っててもショートの心配も要りません。

どうせ見えない部分だから雑に削っちゃって構いませんよ。

アガチスは比較的柔らかい木材なので彫刻刀で簡単に彫る事ができます。

これでバッチリ。
どうしてもパネルの上端下端と木部をキッチリと揃えたかったんです。

次の金属板を貼る際に、パネルの厚さ2mmを足すと完成した時に木部が隠れてくれるからです。

金属板での背板と前板の加工です。

自分の場合は職場に転がってるゴミでどうにでもなりますが、
サイズを指定してカットしてもらう、チョコチョコと穴を開けるだけなら安くやってもらえますよ。

今の仕事に就く前はココで金属加工を頼んでいました。
手書きの図面を写真にして送るだけで見積もりをしてくれる個人にも優しい業者さんです。
板材のカット、曲げ、穴あけが可能。
http://www.bankin-koubou.com/index.html

他にもこんなところもあります。
興味があったら問い合わせてみて下さい。
https://www.itamage.com/

もし近所に金属加工をやっている町工場があるなら、
菓子折り一つで対応してくれる場合もあります。


図面なんてこれで十分です。

背板の方に電源ジャックとオーディオジャックの穴を開けます。

端子をくっつけた状態で木の方もくり抜きます。

木と金属の接着は「G17」と両面テープで十分出来ますが、
レトロな雰囲気を出したいので敢えてネジ穴を開けてネジ留めにします。

次は電源の接続。
ユーロラックではプラマイ12Vと物によって5Vも必要になるんですが、
DFAMはもちろんericaのMIDI to Clockもプラス12Vだけで動きます。
なので電源ジャックから両モジュールに12Vを分岐させるだけで良いのです。
(写真撮り忘れたけどモジュールの電源の向きには細心の注意を払って下さい)

最後にサイドウッド。
さっきと同じアガチス材を断面より少し大きく(プラス8~10mmくらい)カットして、
紙ヤスリで磨いて塗装しまう。木部塗装は如何にして乾燥時間を稼ぐかがキモ。
一度塗ったら一晩乾かして、ツルツルに磨いてからまた塗る、これを2,3回繰り返せば凄く綺麗になります。

塗料メーカーは「和信(ワシン)」がダントツでお勧め。写真は違うけど。
塗り易さと仕上がりのバランスが良いのです。どこのホームセンターにも売ってますよ。
ハケ塗りならワシンの油性ニスをうすめ液で1.5倍から2倍まで薄めて使います。
匂いなどの事情で水性を使う場合も「薄めて重ね塗り」が基本です。
原液のままだと塗料が固すぎてムラになりやすいので要注意。

こんな風に隠れる部分にビスを刺して上から吊るして塗ると楽チン。

塗装が出来たら細く茶色いネジでビス留め。
内部スペースに余裕があれば内側からL字金具で留める方法もあります。

そして完成〜。

ノーマルのDFAMより遥かに軽くスリムになりました!
MIDIスレーブにもなれるので他のグルボとの相性もバッチリ!

筐体制作にかかった費用

アガチス細工材(加工込み)¥1900
ステンレス材 ¥0(ちゃんと頼んでも1.2千円でおつりきます)
電源/オーディオジャック¥500
ネジ¥300

計 ¥2700

けっこう手間はかかるけど3000円未満で出来ちゃいますよ。
コスパはもちろん自分の設備にバッチリとハマる寸法で組めるのが大きなメリットです。

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