ネット時代のアンダーグラウンド・ミュージック
1980年代に誰でも手の届く値段になった電子楽器によって、
ハウス、テクノ、ヒップホップ、ダンスホールレゲエが爆発的に普及しましたが、
IT革命以降の2000年代から現代にかけては
クラブどころか大衆音楽文化(と業界)全体が激変しているように思えます。
もちろん今だって激変の真っ只中ですから
誰もが行く末を読み切れないでいる状況じゃないでしょうか。
IT革命を経てDJとクラブ音楽に関わる【いい意味で変わった点だけ】を挙げると、
・Youtubeで古今東西の音楽がサクっと試聴できる。
・DAWの普及で音楽制作が今まで以上に容易になった。
・SNSの普及でクリエイター同士の交流が盛んになった。
・データ配信のお陰で自作の曲を市場に出すハードルが低くなった。
つまりアタクシ共のようなDJに毛の生えた程度の輩が
業界激変のドサクサに紛れて全世界デビュー!とかアッサリできちゃうわけです。
日本のDTM市場は初音ミク旋風が吹き荒れているようですが、
ここで世界中のゲットーに目を向けてみると面白い現象が見つかります。
もう音楽コンテンツではデッカく稼げないと見切りをつけたのか何なのか、
楽曲どころか市販品にも劣らないクオリティのサンプル素材、
DAWからソフト音源までフリーでバラ撒いちゃったりしてます。
ネットさえあれば貧富問わず学ぶ機会を均等に与えられる「知の共有」の時代。
そのかわり知識と情報の価値がダダ下がり。
「知ってる」ってだけじゃ一文にもならず食いっぱぐれちゃいますよね。
こんな流れが主流になったらこの先どうなるんでしょう?
音楽でメシ食ってる人達が絶滅しちゃうんじゃないかと心配になる反面、
「やれやれ!ブッ壊しちまえ!」と火事場の野次馬みたいな高揚感もあります。
・・・訂正します。野次馬ではありません。
ボク等は火事場泥棒の売曲奴ですごめんなさい。
ここで近年IT革命を経た後に盛り上がってきている、
ゲットー生まれの新しいムーブメント「ベース・ミュージック」を紹介します。
ジャンルとして認知されているのか発展途上なのか微妙な所ですが、
若い世代に特有の悪ノリと既得権益への反抗心は熱いものを感じます。
・ダブステップ
ロンドン発祥の新ジャンル。
2STEPやBreakBeats、Drum’n’Bassから進化したもの。
ワブルベースと細切れのサンプルが特徴。
‘Scary Monsters and Nice Sprites’ by Skrillex VJ Mix HD
Night Vision / Distance
・トラップ
アメリカ南部のヒップホップのサブジャンル。
TR-808のキックを長く伸ばしたものをサブベースとして流用し、
80年代のシカゴハウスにも通じるスネアロールや
ダブステップ特有のワブルベースなども取り込む。
Core / RL Grime
Trap Shit v17 / UZ
・ムーンバートン
レゲトンのリズムにエレクトロハウスの上モノを乗せたらウケちゃった!
みたいなノリでワシントンのDJ・Dave Nadaが提唱するムーブメント。
Moombahton / Dave Nada
Boy Oh Boy / Diplo & GTA
ベース・ミュージックに共通して言える事は、
その名の通り低音がモリモリで相応のサウンドシステムじゃないと
魅力を伝えきれないこと(家にいないでクラブに来いって事か?)、
チンピラ臭い音で好みがハッキリ分かれるって所でしょうかね。
個人的にはTRAPが好み。HIPHOPは全然聴いてこなかったのに、
荒削りでチープ&ファットなノリにハマってます。
他にもキテるジャンルは色々あるようですが、どれもネット時代らしく
今までのセオリーを無視して他ジャンルを雑食的に取り込んだ結果、
ジャンルとしての線引は曖昧になっちゃってる感じがします。