音質語る前に試しておきたい電気の話

トラックメイカーやDJのみならず音楽が好きな人ならイイ音で聴きたいって思いますよね。
ADAMやGENELECのスピーカーとかRMEのインターフェイス憧れますよねー。
ゆくゆくはNEVEやUREIが欲しい、なんて気持ちもよく分かります。
音質はもちろん曲作りのモチベーションも激しく上がるでしょうしね。
そこまでいかなくても5〜10万円クラスの音響機材を導入しようって方は珍しくないだろうし、
作り手じゃなくても音楽が好きな人なら決して高い買い物ではないとも思います。

だーけーどー、
年末年始にかけてお金も入った事だし憧れのスピーカーをポチるぜー!
って前にチョット待って下さい。
アンプやスピーカー、アナログシンセの実力を出し切れる環境は整ってますか?
部屋の構造から理想的な配置が出来ないのは仕方ないとしても、
けっこう見落としがちなのが電気です。
特に僕らの扱う電子音楽にとっての電気とは料理における水のようなもので、
電気が綺麗なほど美味しい音楽になるって言っても過言ではありません。
ボク自身エンジニアなど専門的な職業に就いている訳ではありませんが、
本業が大工って事もあり電気配線を調査する事もしょっちゅうあり、
また本職のエンジニアやピュアオーディオマニアからアドバイスを貰って環境を作っています。

◯音楽にとっての良い電気

さて音楽にとっての良い電気とはなんでしょう?
乱暴に言ってしまえば100Vを下回らない電圧で、かつノイズの少ない電気です。
ではそのノイズの発生源とは?
エアコンや冷蔵庫、電子レンジ、パソコンなどの他の家電です。
ザックリ過ぎるけどそんな認識で十分だと思います。

要はこれ等の家電とオーディオと電気の経路を出来るだけ分断してやればいいんです。
この「出来るだけ」ってのがミソで、
出費ゼロでやる方法から話題の「マイ電柱」まで色々と方法があります。
その中でも小難しい話は抜きにして、低予算で自分が実際に試して効果のあった方法を紹介します。

◯家の電気経路を確認しよう

どんな家にも必ずブレーカーを集めた「分電盤」があります。


左側のが「親ブレーカー」右側に並んでいるのが「子ブレーカー」です。
真ん中のは気にしなくていいです。
各世帯に送られた電気は親から子ブレーカーに分けられて、
各々の部屋のコンセントに送られています。

写真の分電盤を例に挙げるとですね、
10個の子ブレーカーから各部屋のコンセントに分配されています。
そこでこの子ブレーカーに1から10までの番号を振って、
家中のコンセントにAからZまでの番号を振ります。

適当な照明器具を用意して、
コンセントに挿して点灯させた状態で子ブレーカーを一つずつ落としていきます。
するとどのコンセントがどの子ブレーカーに繋がっているか分かりますよね。
これを全てのコンセントで確認します。
コレ内装工事業者が工事の最初にやる仕事だったりします。

コンセントの経路がわかったら、
ノイズの発生し易いエアコンや冷蔵庫などとオーディオに使いたいコンセントとを、
子ブレーカー単位で分けてやればいいんです。
理屈の上では親ブレーカーを通してノイズが伝わってしまうんですが、
子ブレーカーで分けるだけでも確実に効果がありますよ。

◯ついでに電圧と極性も確認しよう

ホームセンターや電気街でテスターを買いましょう。
デジタル式の安物で十分です。1000円で買えます。

家庭用の電気は交流100Vと決まっていますが、
分電盤からの距離や壁の中の配線次第でけっこう誤差があります。
低いよりは高い方がいいです。プラマイ3Vくらいは仕方のない事ですが、
酷い時は90Vを下回るコンセントもあったりするので注意しましょう。

コンセントってどっち向きに挿しても電気は通りますが、
実は極性があります。よく見ると穴の長さが少し違っていて、
長い方はN、短い方はLと表記されています。
プラグを挿す時に向きを確認して挿すだけでノイズ防止になりますよ。

◯こだわるなら電気工事やってもらおう

電気屋さんに来てもらって子ブレーカーとコンセントを組み替えたり、
ブレーカー自体を増設しちゃうってのもアリです。
ただし上記の方法で配線経路を確認してからでないと、
意味のない工事になったりボられる事もあるんで要注意。

それからホームセンターに行くと電気部材が色々と売っていて、
ちょっと調べれば自分で全部出来ちゃったりしますが、
電気工事士の資格をもってないとダメなので素人は触っちゃいけません。
分電盤の中ぶたは開けちゃダメだよ?
子ブレーカーとFケーブル合わせて2〜3000円で済むけどダメだよ?
親ブレーカー切っとけば感電の心配無いけどダメだかんね?

◯ノイズを消そう

上記の方法でオーディオ専用コンセントを設定出来ればいいんですが、
普通の家庭ではそうもいかない事が多々あります。
そこでノイズを消す機材や部材を紹介します。

・パワーコンディショナー

オーディオ機器用の電源です。ってかコレ一発で大抵の問題は解決します。
自分が使っているのはTASCAMのAV-P25R。1万円チョイで買いました。
http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/178446/
自宅が築40年のボロマンションって事もありコイツを使っただけで格段に音が良くなりました。
寝ていた音が立つ、というか輪郭がクッキリしたというか、、
パソコンの起動音「ポ〜ン♪」からして違うんです!マジでマジでw

・フェライトコア

パソコンなどデジタル家電の電源ケーブルに付いているコレです。
ホームセンターや電気街で1個100円くらいで買えます。

これもノイズ除去に効果があるんですが、
オーディオ機器に使うとノイズが減る代わりに音が痩せてしまうケースが多いんですよ。
なのでコレはオーディオ機器以外のノイズ出しそうな家電に片っ端から付けちゃいます。

・現場用電源タップ

マシンライブなど電源タップを持ち歩く必要がある方なら、
ノイズフィルタ付きの電源タップFURMAN SS-6Bがお勧めです。
http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/39113/
ケーブルが無駄に長くてクソ硬いんだけど、そこだけ交換しちゃえばかなり便利。

◯ACアダプタを見直そう

モニタースピーカーやアンプなどは100Vのケーブルを直結するタイプがほとんどですが、

安価なミキサーやシンセサイザー、オーディオインターフェイスなどは
設計上の問題からACアダプタを使っている事が多いです。

このACアダプタ実ぁそれ自体がノイズの発生源でして、
電子楽器やエフェクター用の物はだいぶ改善されていますが、
たまに「アダプタ変えたら音が変わったよオイ」という機材もあります。
そこで色々とお試し頂けるようにACアダプタ交換のルールを説明します。

・電圧と電流
電圧は「ボルト(V)」電流は「アンペア(A)」です。
電圧は9Vなら9V、12Vなら12Vと同じものを使わなくてはいけません。
電流に関しては機材側の指定する電流よりも大きければOKです。小さいのはダメ。

・AC/ACとAC/DC

ACは交流、DCは直流です。
AC/ACとは交流の電気を受けて電圧を調整した上で交流のまま機材に電気を送ります。
AC/DCは交流の電気を受けて直流の電気(電池と同じ)に変換してから機材に電気を送ります。
ほとんどは「AC/DCアダプタ」ですが、たまにAC/ACを使う機材があるので注意してください。

・プラグの形状

挿してみればわかるんですが中の直径が何種類かあります。
この手の機材はほとんど「内径2.1mm」を使っています。

・センタープラス/センターマイナス

これが一番間違え易いんですが、
プラグ内の中がマイナスの物とプラスの物とがあります。

ギターエフェクター用はほとんどがセンターマイナス。
シンセサイザーはセンタープラスが多いので、必ず確認しましょう。

・トランス電源とスイッチング電源

100Vの電気を9Vなり12Vなりに電圧を下げるのがアダプタの役割ですが、
その下げ方がふた種類あって古い物や大きな物は「トランス電源」
現在流通しているほとんどの物は「スイッチング電源」といいます。
音質的に有利なのはトランスの方。デカくてゴツいです。

ただし、

ピュアオーディオ的価値観では当然トランス型の物が好まれますが、
シンセやエフェクターなどはスイッチング電源のノイズも音作りの重要な素材だったりします。
元々スイッチング電源を使ったアナログのドラムマシンの為に同じ規格のトランス電源を試してみたら、
ノイズが減り綺麗になった代わりに張りの無い痩せた音になってしまいました。

同じ発想でフェライトコアをACアダプタに付けても音痩せしちゃってダメでした。

◯ケーブルを見直そう

PCDJに多いんですが、
MIDIコンに付属してるショボいケーブルをそのまま使ってる人、けっこう残念です。
またオーディオインターフェイス内蔵のMIDIコンは
製造コスト面からD/Aコンバーターがショボくて音がプアなケースがあり、
単体のインターフェイスを使うだけで格段に音が変わる場合があります。

オヤイデ製USBケーブル(1万円)を使ってる癖にオーディオケーブルはショボい奴も居たなw

ケーブルごとの改善効果の順番は、
オーディオケーブル>電源ケーブル>USBケーブル
って所だと思います。USBは全然わかんないよオレ。

PCDJの現場用なら1mあたり3000円〜5000円くらいの物で十分過ぎる効果が得られます。

おすすめのショップはコチラ。
http://procable.jp/products/Belden8412.html
ここでBELDEN8412のRCAケーブル(3000円チョイ)作って貰うのが良いかと。
ピュアオーディオ界では極論暴論で有名なショップですが、
ケーブルに限っては良質な物をエラく良心的な価格設定で売っています。
ボクも自作するまでは色々と買っていました。
オーディオに凝る人ならレビューやコラムも一見の価値アリです。
ほんと暴論尽くしなんで鵜呑みにしちゃいけないと思いますがw

また器用さに自信のある方やハードシンセを多用する方なら、
断然自作をお勧めします。はんだごて等の道具代なんぞすぐに元が取れます。
自作のメリットは材料費の安さ、長さや色が選べる、断線しても自分で直せる、
などイイ事だらけです。
ただし自宅用ならともかく現場用途には硬いケーブルは不向きです。
(オヤイデのUSBケーブルとかBELDENの88760とか)
取り回しが大変でケーブルが外れ易いので致命的(実際やらかしました)。

USBならBelkinの物
http://procable.jp/products/usb.html
これがホントに音いいのかは分からないけどw
柔らかさではトップクラスという理由で愛用してます。

オーディオケーブルはモガミ2534。一般流通してる物で一番やわらかいです。
音質十分、値段も安くて色も選べてハンダ付けもし易い。
※ご注意
PCDJやマシンライブなどの現場では仕方ない場合もありますが、
電源ケーブルやACアダプタとオーディオケーブルは出来るだけ近づけないようにしましょう。
一緒に束ねるのはNG。露骨にジージー言います。

◯オカルトグッズに気をつけよう

ピュアオーディオ界では「音が良くなる」と謳って
ワケのわかんない物を高値で売りつける業者が多いのも事実です。
音が良くなるSDカードとか、音が良くなるUSBケーブルなんぞ可愛いもので、
「コンセント”プレート”19000円」とかスピーカーの間に置くパワーストーンとか、
新興宗教も真っ青な商売が成り立っています。

こんなんなら自宅にマイ電柱を建てたり発電所で音が違うとか言ってる方が
100倍は理にかなっています。

◯とはいえプラシーボも大事

Twitterで見られるアホな投稿ですが、

細かく解説するとPCDJのアウトプットにハードのフィルターを繋いでまして、
そのフィルター内部のオペアンプをJRC4558DDという80年代のレアチップに換装しました。
電解コンデンサ交換と相俟って解像度UPかつドンシャリ感が強くなってます。
こんな風に「古い音楽はその時代のシステムで鳴らすのが一番」とか、
科学的根拠は曖昧だけど気持ちがちょっとアガるくらいなら可愛いもんだと思います。
僕らの作る音は「原音」という概念が無くノイズも重要な素材である事から、
音質の定義も自由かつデタラメでいいんです。
TB-303やTR-808/909などの機材だって元祖ではあるけど「本物」と言う必要はありません。
だって当のRolandが既に同じ物を作れないんだからw

◯おまけTips「PCDJの音質向上」

インターフェースとDJミキサーの間にハードウェアのアウトボードやエフェクターをかますだけで、
デジタル臭さが消えます。プリアンプ、コンプレッサー、フィルターなどなど。
DTM的に言うならマスターに挿すエフェクターですよね。
原音を損なう ので歌物や生楽器を多用するDJには好まれなさそうですが、
トラック物主体のハウス/テクノやベース・ミュージックなどには絶大な効果です。

・VERMONA ACTION FILTER

DJ用フィルター。ヒュンヒュン言います。前述した通り改造してます。

・Strymon DECO


サチュレーター/テープエミュレーター。
何を通しても音が錆びます。
ソフトシンセがハードっぽくなるし、NU DISCOがRAW HOUSE風味になります。

・FMR AUDIO RNLA7239

コンプレッサー。
パンチのあるビンテージコンプを模擬したモデルで、
コンパクトながら音質も上々、値段も安いので一台持っておくと何かと活躍します。
安物ドラムマシンのキックもこれ通すと凶暴になります。
兄弟モデルにRNC1773という物もありますが、そちらは原音に忠実なタイプ。
DJ用途ならソッチの方が良いかもしれませんね。

・DRAWMER LX20

コンプレッサー。
90年代初頭のポップ音楽にはほとんど必ず使われていた、
なんて説もあるくらいの定番モデルだったようです。
RNLAより更にバッツーン!とした潰れ方をしますねー。
コンプの理屈を知らなくても「あの頃のハウスの音」が簡単につくれます。

◯まとめ

ボクが今まで一番印象に残っているオーディオ体験は、
「平面バッフル」と呼ばれる大きなベニヤ板にスピーカーユニットをつけただけのシステムで
聴かせて貰ったダブとレゲエ。リー・ペリーとかジミー・クリフとか持ってったんですが、
ディレイの残響音が雪崩のように襲ってきて思わず悲鳴をあげてしまった程でした。
あ、もちろんシラフです。キメてないっすよ。
この体験からしてドラッグに頼らずともトリップ出来ると確信を持っています。

いい音って何だろう?と考えると、大事なのは体験を重ねて耳を肥やす事だと思います。
音がいい、と言われるクラブで踊ってみたり、ピュア系のショップで自分の曲を試聴したり、
自作の曲を本職のエンジニアにマスタリングして貰ったり、
機材以外にも投資すべき物事は色々あると思います。

音楽のジャンルによって世界観が違うように、
音楽の聴き方も立場によっても価値観が様変わりします。
ピュアオーディオの価値観もエンジニアの価値観もアーティストの価値観も、
それぞれの美味しい所を上手く取り込んで自分の耳を肥やして下さい。

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