DIYモジュラーシンセのはじめかた【買付編】

モジュラーシンセのキットの販売形態は様々ありまして、
全ての部品がセットになって販売している「FULL KIT」は然程多くないのが現状です。
もちろん最初はこのFULL KITから始めたほうが無難なんですが、
そうでない部品買付のやり方なんかを紹介していきます。

○モジュラーキットの販売形態いろいろ

・FULL DIY  KIT(FULL KIT)


基板、パネルに加えて実装部品全てが入ったキット。
当然これが一番ラクです。選択肢があるならこのフルキットを選びましょう。
初心者向けのキットに多く、大抵の場合後述するBuild Guiedがサイトにあります。

・PCB+Panel Set


基板とパネルだけの販売で、これが最も多い販売形態だと思います。
売る側も個人でやっていたりするのでイチイチ部品集めて袋詰めするのも大変ですしね。

・PCBのみ

たまにあります。パネルも自分で作るか何とかしろって放任主義な売り方。
パネルをどこかで入手出来れば良いですが、手を出さない方が無難です。

○キットを買う前にチェックする所

・Bulid Guiedがあるか


実装(電子部品のハンダ付け等を含めた組立を実装と呼びます)説明書です。
Build documentationと表記される場合もありますね。
だいたい写真付きで「最初は○○からつけて、次に□□をつけて、ここで電圧測って~」といった具合で
順番通りに教えてくれます。親切なメーカーならありますが、そうでない所も多いので覚悟しましょう。

・BOMがあるか

まぁコレが無いと話が始まりません部品表のことです。
BuledGuiedが無い場合はこのBOMを頼りに実装をしていきます。

・MOUSER LINKがあるか


BOMと共にMOUSER(世界トップシェアの電子部品卸サイト)のリンクがあるかどうか確認しましょう。
これがあればモジュールを作る部品の全て(orほとんど)を一発で購入する事が出来ます。
無い場合は一つ一つ検索して揃えなきゃならないので骨が折れます。
この表を下に辿っていくと部品代の合計が書いてあります。

○各種WEBサービスあれこれ

アカウントの作り方や細かい使い方は省略しますが、
ここに挙げるサイトはほぼ全てアカウントを作っておいた方が良いです。

・PayPal

https://www.paypal.com/jp/

クレジットカードの代理決済サービスです。
海外でショッピングをする時にクレカ番号を入力しなくても支払いが出来ます。
世界中のほとんどのサイトがこのPayPal決済に対応しているのでアカウントを作っておきましょう。
クレカ番号を直接入力するのは結構危険ですよ。

・MOUSER


https://www.mouser.jp/

世界トップシェアの電子部品の代理店です。
大抵のモジュールキットにここの部品リストが備わっています。

・Digikey

https://www.digikey.jp/

MOUSERと同じ電子部品代理店です。
MOUSERで見つけられなかった部品を探すのに役立ちます。
あとこちらは全国のマルツで受け取りが可能です。

・Thonk

https://www.thonk.co.uk/

イギリスのモジュラーシンセキット専門の販売店です。
FULL KITとして打っている物が多く初心者向けのサイトです。
またポットやジャックなどの汎用部品はMOUSERではなくコッチで買うように指示される場合があります。

・SynthRotek


https://store.synthrotek.com/

モジュールメーカーでもありDIYパーツショップでもあります。
Thonkで購入出来なかった時はこちらをあたってみましょう。

・Pusherman

https://pushermanproductions.com/

こちらはやや難易度の高い中級者向けのキットが多いです。
Mutable系モジュールなどもこちらで販売しています。

・Reverb

https://reverb.com/

ワールドワイドな楽器の個人売買サイト。シンセ関連も非常に多く流通しています。
自社のサイトを持つまでに至らない個人ビルダーの製作したキットやパネルなど、
レアなパーツも販売しています。
また難易度の高いキットを製作した物を完成品として販売している人もいます。

・tindle


https://www.tindie.com/

こちらはReverbよりも更にマニアックなDIY系電子工作製品の販売サイトです。
ユーロラックを始めDIYシンセのキットや完成品、部品などが売られています。

・Github


https://github.com/

IT系エンジニアにはお馴染みらしいソフトウェア開発の為のプラットフォーム。
特にデジタル系モジュールでは、モジュラーキットを組む為の各種データやBOMなどを
ここに登録して自由に閲覧できるようになっています。
アカウントを作らなくても閲覧やDLは可能ですが、
突っ込んだ使い方をしたい場合はあると便利かもしれません。

・Planet Express


https://planetexpress.com/

アメリカとイギリスに倉庫を持つ輸入代行業者です。
日本への発送を設定していないショップから品物を購入したい時に利用します。
サイトは日本語対応していて業界では安い価格設定という事で1,2回利用しました。
15ドルのモジュラー用パネルを日本までの送料、手数料全て込みで30ドルで購入出来ました。

○部品買付実践

ここでは実際に基板とパネル、部品を購入するまでの経緯を紹介します。
今回例に挙げるモジュールは、
渋谷CIRCUSで開催中のモジュラーイベント「Patching For Life」を母体とする
ショップ[P4L Store]で販売されているアイソレーターのキットを購入します。
現時点ではフルキット販売はされていませんが、
MOUSERリンクとBOM、何より日本語のビルドガイドがあるのが助かりますね。

インテリジェル1U版と通常のユーロラック3U版とがあります。
電源を用意してスタンドアロン版を作るのもアリですね。

1,基板とパネル


https://p4l.stores.jp/items/5f5221baee28e521f09ebb8d

こちらから購入します。

2,ビルドガイドの確認

https://note.com/re_303/n/ne75163051ca2

丁寧なガイドなので、この後予定している【組立編】で書くことがなさそうですw
逆に言えば海外のビルドガイドはここまで親切に教えてくれませんよ。覚悟の程を。

3.MOUSERからの部品の調達

ほとんどの部品をMOUSERから購入する事が出来ます。
基本的には業務用途のサイトなので初めての買い物は戸惑う事がありますが、
親切なヘルプページがあるので落ち着いていきましょう。
P4LアイソのBOMとMOUSERリストを比べると、
MOUSERへのリンクが貼ってある物がリストに入っているようです。
ビルドガイド内のMOUSERリンクをクリックすると、
既に部品リストがあるのでポチっと購入すれば良いんですが注意点が幾つかあります。

・在庫確認


リストをサラっと眺めていって、全ての部品が「今すぐ出荷」となっている事を確認して下さい。
取り寄せ品などですぐ出荷出来ない物は数週間~数ヶ月待たされる場合があります。
この場合代替部品を探す事になりますが抵抗やコンデンサなど
だいたいメーカー違いの同じ定数の部品を見つける事ができます。
当該部品の部品名をクリックするとその部品の詳細ページに移ります。
下の方へスクロールすると「仕様」という欄があり、
そこのチェックボックスを指定する形で定数やサイズ、耐電圧などで条件を絞っていくと、

「○○の類似部品があります」と表示されます。

ここをクリックすると条件内の部品が出てきますが、一桁くらいになるまで条件を絞りましょう。
ただしプロダクトによっては部品のメーカーが違うだけで音質が変わってしまう場合があるかもしれません。
音質にこだわったプロダクトの場合は注意しましょう。
どうしても同じメーカーでないと駄目な場合はMOUSERと同じ業者であるDigikeyを探してみましょう。
またコンデンサや抵抗などであれば秋葉原や大阪の電気街で扱っているかもしれません。
秋葉原の千石電商には何度か救われました。

・送料無料ラインは6000円

6000円を越えない場合は無条件で2000円の送料がかかるので、意地でも6000円を超えるようにしましょう。
ちなみにP4Lアイソの部品代は5700円。残りの300円分は適当なパーツの数を増やすなどして対策しましょう。
個人的にはALPSのポットは余分に買っといても後々使い途があるだろうな、とは思います。

4.MOUSERリストに無い部品調達

その他の部品は秋葉原の秋月電子やマルツで購入出来るようですが、
一つだけ厄介な部品があります。

それがジャック。

残念ながらMOUSERや日本の電子部品屋さんでは買えません。
海外のシンセDIYショップでしか扱ってないんですよ。
代表的なのはイギリスのモジュラーDIYショップThonkで、
この先も何かと世話になる筈なのでアカウントを作っておきましょう。

さてこのThonkでジャックを購入する場合ですが、
リンク先の一番上「Mono 3.5mm Audio Jack」を4個、Knurled NutsとWasherを最低数の50ずつ購入します。

ただほとんどのモジュラーキットでこのジャックを指定していますので、
今後も工作を続けて行くつもりであれば大量に購入しておいた方が良いです。
仮に余ってしまってもTwitterで募れば買い手が付きますよ。

ちなみにこのThonkでないと(ほぼ)買えない部品が他にもあります。

ALPHA 9mmPOT


https://www.thonk.co.uk/shop/alpha-9mm-pots-dshaft/

市販されている基板用9mmポットでは恐らく一番重い回し心地。
ALPSでも軽いな、と思った方にはオススメです。
本社は台湾にあるんですけどこのポットはThonkでしか購入できません。

ROGAN KNOB


https://www.thonk.co.uk/shop/make-noise-mutable-style-knobs/

MakeNoiseなどで採用されているツマミ。
この中の1P Small Pointというサイズが回し易さとコンパクトさのバランスが良く気に入ってます。

○まとめ

MOUSERはだいたい1週間、Thonkは2~3週間かかる場合があり、
現在はコロナ関連で出荷や営業が滞っている事もあります。
このあたりのタイムラグでもどかしい思いをしないよう、
例のジャックはまとめて購入する事をお勧めします。
あるいは友人同士で共同で購入するのも良いでしょう。

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