モジュラーシンセとiPad
マシンライブや広義での電子楽器ライブにおいてモジュラーシンセ派が増えてきています。
そこで当ブログではモジュラーだけのシステムにこだわらず、
相方としてグルーブボックスを繋いで互いにフォローし合う機材構成を
以前の記事で取り上げましたが、今回はiPadとの連携を考えてみます。
○iPadを使うメリット/デメリット
モジュラーシンセを使う大きなメリットに「現場でのセッティングが楽」という点があります。
グルボ2.3台にエフェクター通してそれをミキサーでまとめて、、、なんて時代に戻れませんよねw
しかしモジュラーシンセだけでは「意外と出来ることが少ない」のも困りもの。
しゃーない何か足すか〜、って時に候補に入れてもらいたいiPad。
以前はiPadもアプリが往年の名機のビジュアルを模しただけで使いにくい物や、
CPUやメモリの限界でプレイ中に落ちるとか、インターフェイスとの相性問題とかで
どうしても玩具の域を超えられていない印象がありました。
しかしここ2,3年でCPU性能の向上と価格低下によって安定性が増し、
PC向けシンセの移植でもハードの模擬でもない
iPadでしか出来ないUIを取り入れるアプリが増えてきた事もあって、
今ならライブ向け機材としての選択肢に入れても良いだろうと思えます。
そのメリットを改めて挙げていきますとですね、
・ソフトが安い
iOSアプリの世界では2~3000円は高級アプリになってしまいますが、
ハードはもちろんPC用ソフトシンセと比べても非常に安い範疇です。
これならアレコレ試して使えますよね。
また元々iPadで音楽をしている人も多く、情報源も豊富だから導入のハードルも低い。
・タッチスクリーンを活かした独特なアプリが増えてきた
個人的なコダワリではありますが、電子楽器の良し悪しは音質よりもUIが重要だと思っています。
音質ですか?エフェクトでどうにかするのw
特にグルボでは「制約こそが創造力の源」といいつつも内心では歯痒い思いがついて回ると思います。
DAWベースのアプリに加えグルボの設計思想を取り入れたアプリもあり、
はたまたそういう既存の電子楽器の概念を端から無視したような天才的発想のアプリも選り取り見取りです。
・スペースに対しての機能性能が格段に良い
モジュラーシンセをやっていると同じ機能でも2HP違うから買い換える、とか
14HP以上のモジュールは金額以上に覚悟がいる、とか、
Space Per Performance略してスペパ!に頭を抱える事が多くなる筈です。
そうじゃなくてもライブ現場で一人が並べられる機材の量には限界があり、
操作性を殺さずに小さな機材を選ぶかが非常に重要なポインツですよね。
となるとIPadなんてチートレベルでしょ。
コレ一枚にシーケンサーどころかDAWまでスッポリ収まるんだし。
・今はプラグインもあるよ。
今ではAUv3という規格がありプラグインも開発されています。
驚いたのがミックスダウン向けエフェクト郡のFabFilterまでiPad版がある事ですね。
全部入りバンドルで14000円とiOSアプリにしてはかなり高額ですが、
グラフィカルなUIがPCよりiOSに向いているような気がしますね。
・アプリ間の同期は割と簡単
iPadアプリはMIDIクロックを出せるものと出せないものがあるんですが、
アプリ同士で同期する方法は2,3あります。
Ableton Link、Audio Bus2/3、InterAppAudio(これは廃止だっけ?)
などなど細かい内容については他のサイトに任せるとして、
まぁ大抵の音楽アプリは何とかなると思って大丈夫です。
対してデメリットを挙げると、
・コンセプトはスマートなのに接続がスマートじゃない
これが一番アタマにきます。ジョブズの美学が云々とまでは言いませんが、
iPadで音楽をやろうとするとアレコレと細かい周辺機器が必要になり、
ケーブルだらけになってしまうんです。
モジュラーとiPadをケーブル一本で繋いでセッティング完了!みたいなスマートさが欲しいですよね。
(あるにはあるので後ほど紹介しますが、、が。)
・音はやはりソフトシンセ
ソフトシンセ特有のノペーとした音質が苦手な方も多いかと思います。
対策は色々とありますがいまはアプリ間で噛ませるエフェクターアプリもありますし、
自分の場合はモジュラー内で軽く歪ませてます。
・手が離せなくなるアプリも多い
DAWというより楽器に近い設計のアプリではタッチでの操作が楽しいんですけど、
勝手には動いてくれません。ここではあくまでもサブ機としての運用なんで、
手を離していても自動で動いてくれなきゃ困るんですよね。
○予算別接続方法
・梅コース Matable Instruments CVPalとそのクローンモデル
コスト ★★★★★
音質 ★★
スマートさ★★★★
比較的安価なUSB MIDI to CVで同期信号を、オーディオはイヤホンジャックから取り出し
プリアンプ系モジュールでラインレベルからモジュラーレベルまで引き上げます。
イヤホンジャックの付いているiPadでしか使えない、iPad側がマスター限定という制約がありますが、
最も安価に済む方法です。
CV Palはオリジナルが4HP、クローンモデルには2HPの物もあります。
自分もとりあえずこの方式を採用しています。
出力するMIDIチャンネルによって変換するCV/GATE信号が変わるんですが、
ここでトラブル発生。
どういう訳かわかりませんがクロックを出力してくれない。
仕方ないのでgadgetのTaipeiを使いMIDIノートをドラムのトリガーとして出力するモードを利用、
これをクロック信号として利用しました。
・竹コース 普通のオーディオインターフェイス
コスト ★★★★★
音質 ★★★★★
スマートさ★★
これはグルボ連携と同じくモジュラー内にMIDI to CV(DIN MIDIの方)、
iPadには通常のオーディオインターフェイスを使う方法です。
これなら音質はイヤホンよりすっと良いですし、
構成次第でモジュラー側をクロックマスターにする事もできます。
荷物が増えるのがイラっときますがねw
今は生産中止になってしまったKORG plugKEY。
MIDI INとAUDIO OUTだけの割り切った作りですが、コンパクトでiOSに給電もできるし重宝します。
どうせならiPadに録音もしたいしクロックマスターとスレーブとで選択出来るようにしたい、
という方はやはり普通のオーディオI/Fを買うしかありません。
最近の機種ならだいたいiOSにも対応していますが、
USBクラスコンプアイラント対応か確認が必要です。
コスパ良さそうなのがUR22C。
電源供給専用のUSB端子が付いているので接続がスマートです。
DSPエフェクトもあるので音質調整も可能。
・松コース ExpertSleepers ES-8/ES-9
コスト ★
音質 ★★★★★
スマートさ★★★★★
iOSだけでなくDAWとの連携も視野にいれているなら是非ともおすすめ。
要はユーロラック対応のMIDI to CV兼オーディオi/Fです。
これがあればモジュラーとiPadをケーブル一本で接続完了!
やっぱりこうでなくっちゃ!
共にたくさんの入出力(オーディオでもCVでもOK!)を備え、
更にES-9はラインアウトとヘッドフォンアウトも備えているようです。
詳しいスペックは解説が分からないからご自身で勉強してちょうだい。
ただし難点もあります。
高い!
ES-8で56000円、ES-9だと72000円。
深い!
ES-8は50mm、ES-9は52mm。
自分の持っているハコには入らないんです(泣)
なんか、こう入出力4つくらいでいいから安くてコンパクトなのをどっかから出して欲しいですね。。
○まとめ
だいぶ長ったらしくなってしまったので本日はここまで。
新しいジャンルに挑戦してみたいとか、もっと斬新な演奏は出来ないのか?とか、
比較的低リスクで実験できるのもiOS+モジュラーの利点だと思います。
今はPROでもAirでもない無印モデルなら4万円で購入できます(しかもイヤホンジャックがある)。
モジュラー、グルボ、DAW、iOS、鍵盤、
これからの電子楽器は機材ジャンルへのコダワリなんか捨てちゃった方が何かとお得ですよ。
他人の言うことなんぞ話半分に聞き流して、
自分にとって最高のシステムは自分で決めるしかないのです。