KORG volca drumレビュー
volcaのレビューと言えば初代3機種の軽い記事を数年前に書いたっきりではありますが、
なんだかんだ言って大体の機種を体験してはいるんですよ。
そんな中でもvolca中、というより歴代KORGドラムマシン最強モデルである
volca drumの紹介をしていきます。
2年前の発売当初にはTwitterタイムラインを賑わせたのですが、
それ以降は特に話題に上がらずに影の薄い存在となってしまってますね。
確かに癖の強いマシンではあるけれど、もうちょっと評価されても良いと思うなー。
○スペック/概要
Volca drumは6トラック16ステップのデジタルドラムマシン。
初代ELECTRIBE・ER-1のコンセプトを受け継いだマシンと言っても良いでしょう。
DSPシンセエンジン?よくわからんけどきっと凄いんでしょう(鼻ホジ)。
強烈なのがこの出音。よくわからんけどホント凄いんです。
WMD CraterやMI Peaksといったモジュラーシンセのキックより強ぇキック出せます。
あのvolca kickよりもパンチがあります。
芯のある硬質なキックだからベースにも埋もれにくく現場で使い易いですしね。
○シンセ
端的に言うとメチャクチャ癖が強いです。6トラック全て同じシンセエンジンで
キックから金物まで作り出す万能ドラムシンセなんですけど、
その広い可変域をvolcaお得意のチッコいツマミで操作させるもんだから、
まぁ大変です。ピーキーで使い手を選びます。
音作りをザックリ説明すると、
まず「オシレーター」「モジュレーション」「エンベローブ」の組み合わせで大凡の音色を決めます。
これをvolca drumでは「レイヤー」と呼び各トラックに2つずつのレイヤーがあります。
そしてピッチや各レイヤーの音量、エフェクトに送るセンド量を設定、
更に細かくいじりたい時は、
「EDIT/STEP」キーをONにした上でFUNCキー+SELECT(PARAM)ツマミで
ビットリダクションやオーバードライブなどを設定できます。
前述したように一つのシンセエンジンでキックからハットから全ての音を出せるので、
例えば「6トラック全部キック」とか気狂い地味たキット(サウンドキット)も組めますよ。
そしてキモは真ん中の段のモジュレーションですね。
ディスプレイ上で波形を選び「MOD AMOUNT」と「MOD RATE」のツマミで調整しますが、
この効き具合がハンパねぇんスよ!
原音を完全に破壊して摩訶不思議なナゾナゾ音を作り放題です。
こうなるともうドラムマシンの域を超えた不思議音発生機と成り代わります。
モジュラーシンセと凄く相性良さげなのでモジュラーユーザーにもお勧めですね。
基本的な音作りのコツとしては、
作るトラック以外をミュート、レイヤーの片方をレベル0にし、
一つのレイヤーに絞って操作する事ですね。
例えばレイヤー1でメインの音を作り、レイヤー2は補助的な音にする、とか
優先度を決めると尚良いかも。
遠回りだけど、これしかない気がしますw
○エフェクト
「ウェーブガイド・レゾネーター」という聞き慣れないシステムですが、
平たく言えば生楽器の「響き」をモデリングした物理モデリングエフェクトです。
太鼓の響き「TUBE」と弦楽器の響き「STRINGS」と選択ができ、
従来の一般的なエフェクトとはひと味もふた味も違う効果が得られます。
・・・と言えば聞こえは良いですが、正直なところナニがどうなるのか理解出来ませんw
単体エフェクターならともかく、
ドラムマシンに内蔵するエフェクトとしては極端すぎるような気もします。おもろいけど。
どこがどうおもろいのか説明できないので身体で覚えてください!
また注意したい点がひとつ。
トラックは6つありますがエフェクトはひとつ。
各トラックにはエフェクトに送る量を決められるだけです。
マニュアル読まずに遊んでいた頃は各トラックにエフェクトがあるものかと勘違いして
収集つかなくなってしまい「ったく使いづれぇエフェクトだな!」と勝手にキレてました。
○シーケンス
収集のつかない音源にたいしてシーケンサーは有能&素直で使いやすい仕様になってます。
トラックを選択した上で「STEP/EDIT」モードにして、該当ステップのトリガーをONにするだけです。
またトリガー済のステップキーを押したまま「LEVEL/VALUE」ツマミを回すと
トリガーする確率をパーセンテージで決められます。
これにより16ステップしかないシーケンスでも多彩なパターンを作る事が可能です。
またKORGのお家芸でもあるシーケンス特殊操作も完備。
「モーションシーケンス」
ツマミの動きをシーケンスさせます。透明のツマミのパラメーターが対応。
「アクティブステップ」
トラック毎にステップ数を減らす事ができます。
KORGの他製品と違う所は「タッチパネルだからステップ減らしが直感的」。
指でツツーとなぞるだけでシーケンスに面白い変化を与えられるんです。
ここはvolcaならでは、ですね。
「ステップジャンプ」
1-16の好きなステップを再生出来ます。
慣れると手動ドラムロールや手動フィルインなど思いのまま。
まぁvolca drumの基本的な操作方法はYoutubeでシコタマ上がっているし、
日本人の方によるTipsもあるんでソチラで観た方が分かりやすいと思います。
○エディタやパッチ集もあるよ
WEBブラウザで使うエディタがあります。
それがコチラ。
https://synthmata.com/volca-drum/#
他にも数種類ありましたが、ココが一番使いやすいです。
またこの作者が作ったパッチ集も使えるので試してみると良いでしょう。
ちょっと下にスクロールするとパッチのリンクがあり、
セッティング済のエディタがあります。
使い方はMIDIインターフェイスのOUTをvolcaに繋ぎ、
一番上のsetupの欄でMIDIインターフェイスとMIDIチャンネルを選択します。
あとは各パラメーターを設定した上で、
setup右の「send patch」をクリックすればOK。
気に入ったらvolca本体でセーブするだけです。
○volca drumの使い途
小難しいドラムシンセは置いといて、
通常のドラムマシンとして利用するのも良いですが、
これほどの個性的なマシンですから変わった使い途を考えたくなります。
・実は音階もつけられるよ
ファームウェアVer1.14以降では音階表示と共にピッチのクオンタイズが出来ます。
この機能とモーションシーケンスを組み合わせてメロディを奏でる事も可能なんですよ!
・EDIT/STEPモードにして「QPI(ピッチクオンタイズ)」をONにします。
・FUNC+トリガー12番でモーションシーケンスをONにします。
・RECボタンを押してRECモードにした上で、当該ステップを押しながらPITCHツマミを回します。
こうなるとドラムマシンと言うよりはグルーブボックスの領域ですね。
ただし、
この作業メチャクチャやりづらいですw
頑張ってくださいw
・volca drumならぬvolca noise?
volca drumのオシレーター部にはノイズが搭載されていまして、
選択式ではあるけどLPHPBPと三種類のフィルターもついています。
これが各トラックに二つありますから、計12系統のノイズマシンとして使うのは如何でしょう?
正直なところ自分自身はノイズミュージックが苦手でこの分野の機材は経験が無いんですけど、
ドラムセットの一つにノイズを積極的に入れていきたい、とは思ってるんですよ。
・volca droneはどう?
軽く試してみたんですが、エンベローブの仕様がドラム向きな事から、
一定の音を鳴らしっ放しにするのは難しいようです。
アタックとリリースを255(最大)にし、16ステップ全てにトリガーを置いて、
あとはモジュレーションとエフェクトで上手いこと調整すればそれっぽい音にはなりますね。
○操作していて戸惑うポイント
・音源波形は3つじゃなくて5つあるよ
サイン波ノコギリ派ノイズと表示されますが、
ノイズはフィルターの種類によって3種類あります。
・トラック選択を間違えやすいよ
Volca drumの操作はなにはともあれトラックを選択する事から始まりますが、
タッチパネルのせいでよく間違えます。
気付かないうちに別トラックを選択してしまい「音が変わんねーよ?」とテンパる事もしばしば。
タッチパネルはこの点では一長一短ですね。しゃーないけどね。
・ディスプレイが手で隠れちゃう
基本的なシンセの形を決めるSELECT/PARAMツマミとディスプレイの
間隔が狭い(というより全部ツマミの間隔が狭い)ので、
かなり厄介です。ジブン手がデカいので余計に腹が立ちます。
○競合機種
同じvolcaシリーズならドラム系はbeatsとsample2の選択肢があります。
これらの区別はKORGのサイトでも見てもらうとして、
他メーカーの低価格帯ドラムマシンでの比較でならどうでしょう?
まぁ、volcaの1.5~2万円に対して他は4~5万しますけどね。
オーソドックスな音が欲しいならTR-6S、
アナログライク(VA含む)でクラシックなドラムならTR-06もいいですね。
実は06の方を買ったんですけど、今の自分の好みに合わなかったんで売っちゃいました。
クラシックなハウス/テクノをやるには凄く良いんですけどね06。
RolandのTR系現行マシンはクルマで言うならトヨタ。
手堅く万能で間違いのない選択なのは確かです。
最もコンセプトが近く吟味してほしいのがELEKTRON model:cycles。
6トラックのFMグルーブボックスであるm:cとvolca drumはよく似たマシンです。
「個性的なデジタルグルボorドラムマシンが欲しい」となると、
こちらは上位版と言っても過言ではありません。シンセサイズも簡単なほうだしね。
お値段volca2台分。volcaを二つ買うか、m:cを買うか。
まぁスペック的にはどう考えてもm:cの方が優れています。
m:cに対してのvolca drumの数少ないアドバンテージを挙げると、
・アナログクロック対応なのでモジュラーシンセと相性が良い
・アクティブステップ、ステップジャンプなどのシーケンスギミックが豊富
・volca drumの方が変な音を作れる
うーん、正直これぐらいでしょうかね。
自分はこの3点だけでvolcaを取りますがね。
パラメーターランダムなども含めてvolcaの方が偶然を楽しむ要素が多い気がしますね。
音作りの使い勝手が悪くて収集つかなくなる、ってのも偶然を楽しむって意味ではメリットでしょう。
予算があってカッチリキッチリ作りたい人ならm:c、
モジュラーシンセのように偶然性を取り入れたいならvolcaもアリ。
ドラムマシンとしての音質については、Volcaの方が個性的でトンガってます。
このトンガり具合は現行ドラムマシンの中でもトップクラスです。
○こんな人におすすめ
・頃合いの良いセカンドマシンが欲しい人
・変態ドラムが欲しい人
・埋もれないドラムが欲しい人
・OCTATRACKやDigitaktなどのサンプラーのサンプルソースとして
・モジュラーシンセのお供に
○まとめ/余談
KORGでは新しいフルサイズのドラムマシンを開発しているようですね。
アナログ/デジタルのハイブリッドでサードパーティのオシレーターも入る?
なんかスゲェ豪華スペックではあります。これはこれで楽しみではあるけれど、
このvolca drumをそのまま大きく使いやすくしたER-1サイズのマシンがあったらなー、
なんて思っちゃいます。プリセット登録もできるといいな。
たぶんマーケティングの問題だろうとは思うけど、やっぱりアナログじゃないと売れないのかな?
個人的にはドラムの好みがアナログから(現代の)デジタルになってきたので
現状ではコイツが一番シックリきます。
オーソドックスなドラムシンセに飽きてきたら挑戦してみると良いですよ。