祝アシッドハウス30周年!x0xb0x製作記【1】

本家Rolandを始めTB-303クローンは
今では色んなフォーマットでリリースされていますが、
アシッド感の最も強いアナログ回路を使ったモデルは、
日本でも代理店経由で購入できるACIDLAB BASSLINE
見た目もクローンだったけど大人の事情でデザイン変更をしちゃったCyclone Analogic TT-303
攻守最強、究極のアシッドマシンことAvalon Bassline
そしてこの連載で挙げるx0xb0xです。

◯x0xb0xとは

http://ladyada.net/make/x0xb0x/index.html
「設計仕様を公開するからお前ら勝手に作れや」というオープンソースプロジェクトで、
世界中で様々なショップからキットや完成品が販売されています。
他機種と比べた際のx0xb0xのアドバンテージは
元々キットとして販売されているので改造が容易な事ですね。
筐体もプラスチック製のスタンダートと高級感のあるアルミ筐体と選べます。

ちなみにx0xb0x産みの親であるLady ada、
電子工学界ではブッ飛んだ経歴の持ち主なようですね。
http://www.lifehacker.jp/2012/09/120919limorfried.html

日本で唯一のx0xb0xビルダーであるgizm0x shopでも、
スタンダードモデルから改造モデルまで制作販売しています。
http://gizm0x.handmade.jp/
更にはTB-303、TT-303の改造や他所で作ったx0xb0xの修理なども受け付けてくれるようで、
まさに日本のアシッドシンセ・マイスター。

もちろん自分の所有するモデルもgizm0xメイド。
アルミ筐体、電池駆動、TB-303と同じVCAチップ、2VCO化改造など、
かなーり手を加えられています。

◯個人的な思い入れ

自分にとってはハードシンセの最初の一台がx0xb0xでした。
DTMを初めて間もない頃に「アシッドハウス作ろう!」と
某ソフトシンセ版アシッドベースシンセを買ったんですよ。
TB-303とは似ても似つかない音に愕然としましてですね、
アシッドはハードに限る!と思い込みが暴走しましてですねー、
そういうタイミングでgizm0x製x0xb0xが売りに出ていたんでドキドキしながら買ってみました。

そこからドラムマシン、モジュラーシンセ、キット制作にハマり今に至る訳ですから、
この機材によって自分の道が開かれたと言っても大げさじゃないんですよ。
(その前に曲作れよってツッコミは言わないでね)

もちろんソフトシンセABL3やデジタルのTB-3/03でも良質なトラックを作る事は可能です。
自分自身実際にDJとして多用している曲はABL3で作られた物が多いようですし、
完成された曲ではアナログもデジタルもソフトも区別がつきません。

じゃあ何故アナログのハードにこだわるのかと言いますと、
ライブ用途である事と完成に至るまでのプロセスに拘りたいから
フィジカルな操作感は必要不可欠だって事です。
(プロセスにハマってっから曲が出来ねぇんだろってのは言わないでね)

数ある303クローンの中でも「手作り」なのはx0xb0xだけ。
またアシッド文化の根底にあるパンクス精神もx0xb0xが一番顕著ではないでしょうか。
設計仕様もOSもオープンソースですし、
その気になれば自分の手で最高のアシッドベースマシンを作れます。

◯実際の音ってどうなの?

アシッドベースシンセの価値観は、
モノシンセらしい音の太さ、カットオフの開き方、レゾナンスの尖り具合、
スライド/アクセントの暴れ具合など細かい要素で決定されます。
(テクノの人はフィルター、ハウスの人はスライドにこだわる傾向があります)

TT-303が出るまでは「最もTB-303に近い」と言われていた程で、
数あるアシッドベースシンセの中でもトップクラスの「らしい音」が出ます。
もっとも、TTは見た目からしてソックリなんでプラシーボ効果絶大ですけどね。
当ワークショップで両方聴き比べた時は「違うっちゃ違うけど甲乙付け難い」って結論に至りました。

個別の経年劣化が音に影響しているTB-303もそうですが、
x0xb0xも作る人によって全然音が違います。
自分の所有する1号機はコンデンサや抵抗など厳選された部品を使っているようで、
ノーマル(?)のx0xb0xよりも曇りの無いスッキリした音になっています。

◯自分で作ってみよう!

まだまだ初心者の域を抜けていない自分の電子工作スキル。
次のステップはやはり「アナログモノシンセのキット制作」という事で、
思い入れも馴染みもあるx0xb0xを作ってみる事にしました。
更には頼もしい事に、この記事を書くにあたって
gizm0x shopが監修にあたってくれる事になりました。
基本的な組み立て方はLadyada.netにも公開されていますが、
各々の部品がどういう役割を果たす物なのか把握できていないので、
このあたりを根掘り葉掘り伺いながら書いていこうと思います。

◯プランを立てよう

x0xb0xはある意味セミオーダーのシンセですから、
改造前提で部品を購入するのが良いかと思います。
一度完成させた後で部品を交換するよりもリスクも少なくて済みます。
本家Ladyadaのサイトにも簡単な改造の説明があるので参考にしてみて下さい。
http://ladyada.net/make/x0xb0x/mods.html

さてさて「ぼくのかんがえた最強のアシッドベース」についてです。
アシッド「テクノ」には必須のディストーションとレゾナンスブースト、
1号機でやってもらった「ダブルVCO改造」は音が好みではないんで今回はパス。
恐らくはこの記事を読んでくれているテクノ畑出身の皆さんとは
求めるアシッド感が微妙に違うようなのでご了承下さいまし。
なんせアタクシ「ハードフロア」も「電気グルーヴ」もリスナーとして通った経験が無いものでして。

・コンセプト
アシッドハウスの価値観に則ってアナログモノシンセの粗さを強調。
音質に関わる基礎部分には高品質な物を利用した上で、
オペアンプやエフェクトで意図的にLoFi化。
電源やスイッチ、OSに関しては汎用性と安定度を重視し、
メンテナンス性の高いモデファイを行なう。

1.電源のDC化
標準のx0xb0xの電源はAC9Vを使用します。
コレ使えるACアダプタが「AC/AC」の物でないとダメなので結構不便です。
エフェクター用に市販されている「AC/DCアダプタ」や、
自作したパワーサプライで使えるようにする為に電源をDC化します。
ちなみにgizm0x shopではDC化に加えて単3×8本の電池駆動モデファイが出来ます。
今回は内部のスペースを確保したいので電池駆動はパス。

2.エフェクト
x0xb0xには専用の内蔵用ディレイやディストーションなどがキット販売されてますが、
電源をDC化する事によって市販のエフェクターを流用する事が可能(だと思うw)。
今回の制作では「リバーブ」と「オーバードライブ」を何とかして入れたいんですよ。
内部スペースにどこまで内蔵できるかがカギですね。
あとどうもgizm0x先生曰くエフェクター内蔵するとノイズが乗り易いようなのですが、
このあたりはブッツケ本番でやってみます。

3,VCAとオペアンプ
VCAチップはTB-303に使われていたけど現在製造していないBA662(今じゃ1万円します)と、
x0xb0xの標準仕様であるBA6110と聴き比べてみたりしましょう。
オペアンプは標準のAN6562からMUSESやOPAなどを試した事はあります。
MUSESもOPAも品の良い音になってしまい興ざめ。アシッドはそれじゃダメなんスよねw
最終的には80年代のレアチップJRC4552や2904が粗さと強さを両立した一番「らしい」音になりました。

4.コンデンサや抵抗
音質を左右する重要な部品であるコンデンサや抵抗は、gizm0x shop製と同じハイグレード品。
各部品の定数や必要な数量をイチから調べて買い付けるのは大変な労力なんですが、
ここはズルしてgizm0x氏に見繕って貰いましたー。

5.タクトスイッチ
x0xb0xの弱点であるタクトスイッチ。海外の安物を使っている為に壊れやすく押し心地も悪いです。
国産のスイッチに変えたくてもスイッチキャップの寸法が違い取り付ける事が出来ません。
しかし対策部品がありまして、
Rv0というショップで強化スイッチと専用スイッチキャップが販売されています。
https://rv0.be/

1号機に換装したらソフトな押し心地で上々の成果でした。
ここで売られているタクトスイッチは恐らくアルプス電気の物。
http://www.alps.com/prod/info/J/HTML/Tact/SnapIn/SKQE/SKQEACA010.html

値段はRv0で買っても国内で買っても大して変わらないです。

6,OS
OSというより厳密にはファームウェアですが、
x0xb0xはオープンソースなのでファームウェアを選ぶ事が出来ます。
が、ここは一番安定度が高くgizm0x shop推奨のsokkosにします。

7.激レア黒アルミ筐体

生産完了品なのか公式には販売していない黒のアルミ筐体。
gizm0x shopでは本来完成品にしか使わない予定だそうですが、
無理言って単品で譲って貰いました。

問題はどんな音が出るか、思った通りの音が出せるか、ですよね。
「アシッド的価値観」と一般的なオーディオ部品の価値観にズレがありまして、
あんまり高品質で綺麗な音になっても興ざめしちゃうんですよねw、
でも曇った音じゃ他の楽器に負けちゃうしで、いい塩梅の音を作れるかが難しいところ。

そこで考えた仮説が、
コンデンサや抵抗などの基礎的な部品は高品質な物を使った上で、
音の味付けに関わる部品でローファイ化してみたら?って。
例えばオールドスクールのヒップホップやチップチューンを
ハイレゾで聴いて悦に浸る、みたいな歪んだハイクオリティですがw
このあたりは連載の最後の方でチューニング編と銘打って研究してみますかね。

ちなみにgizm0x shopでは以下の改造を受け付けてくれるようです。
・アルミ筐体換装・2VCO化・電池駆動化・x0x-heat追加・ディストーション
・ディレイ・BA662換装・ベースブースト・レゾナンスブースト
・VCFオーバードライブ・VCO/VCFモジュレーション・エンベローブMOD3倍
他所で買ったx0xb0xやTT-303、TB-303の改造や修理も相談に乗ってくれるようですよ。

◯まとめ

技術的監修をgizm0x shopにお願いする事で、ちょっと真面目に取り組んでみます。
ホントに作ろうって人も作る気は無いけど欲しい人も、
既に持っている人も、より深い理解を促すきっかけになれば幸いです。

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