モジュラーシンセの選び方

前回の記事からだいぶ日が経っていますが、モジュラーシンセもちゃんと続けてますよ。
最初のセットを組んでから半年が経ちましたが、未だ納得のいくユニットにならないw
アレコレとモジュールを変えながら理想のシンセを組み上げていく所に魅力があるんですが、
もしかしてコレ「永遠に完成する事の無い無間地獄」なのか?と気が付きつつあります。。。

そうは言っても理想のシンセを組み上げる楽しみは他には代えられないものでして、
ビンテージシンセに手を出すよりは(幾らか)安心なんじゃないでしょうか。
モジュラーシンセに興味を持たれる方も徐々に増えているようなので、
初心者目線で今までの体験を元にシステムの組み方を紹介します。

●プランニング

◯ハコを選ぼう
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モジュールの幅は「HP」という単位(1HP=5.08mm}で揃っていまして、
一般的に売っているケースでは48HPから84HP、または84×2段などなどあります。
最近ではRolandからもリリース予定だったり、定番のPittsburghも品薄状態が解消されてきたようで、
選択肢が広がりつつあります。
結構単純な作りなので自作してしまう強者も珍しくありませんが、
電源とネジを留めるレールが意外と高額なので最初は電源付きケースを買った方がいいです。

◯用途を考える
モジュラーを組んで何処までやりたいのかをハッキリさせておくとブレずに済みます。
やはり魅力的なのはモジュラーならではのベースの音でしょうか?
ボクはまずベースから始めてリードなど上モノも同時に出せるようなシステムを構築中。
更にドラムも、となると必然的に結構なスペースが必要になったりします。
またLowPassGateやSample&Holdなどモジュラーシンセならではの音作りが出来るモジュールもありますが、
現時点では勉強中なのでここでは割愛します。

◯モジュラーシンセ組立のシュミレーション 

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モジュラーシンセのデザインに超ベンリなModulerGridというサイトがありまして、
世界中に出回っている恐らく全てのモジュール情報と
何種類でも作れるバーチャルラックで自分だけのオリジナルラックを仮想で組み立てられます。

◯モジュール購入先

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東京でモジュールを店頭販売している主なショップでは、
原宿のFive Gと神田小川町の宮地楽器Wurlysがお勧めです。
またWEB通販限定でClockFaceというお店があります。
このサイトではモジュラー用語集まで載っているので勉強させてもらってます。
ボクはほぼ全てのモジュールを宮地楽器で購入してまして、
「音でない!何とかして!」とパッチの繋ぎ方から
各モジュールの用途まで根掘り葉掘り教わっています。

◯メーカーで選ぶなら
Doepfer_A-100
ユーロラックの提唱元であるDoepferや、次いで種類が豊富なPittsburgh
この2社なら単一ブランドで全てのモジュールを揃える事もできるし、比較的入手し易いようです。
また入手の難易度がやや上がるけどアメリカ西海岸のMakeNoiseも絶大な人気。

とはいえ一つのブランドで統一するより
色々なメーカーのモジュールを組み合わせる方が個性的でいいですよね。

◯レアなモジュールをお探しなら

英語が分からなくてもGoogle先生とPaypalを使えばメーカーから直接輸入する事も可能。
個人的に気になってるのはバルト三国はラトビアという国のEricaSynthとスペインのBEFACO

電子工作が得意な方なら組み立てキットを購入するのもアリ。
イギリスのThonkというWEBショップでキットを購入できます。
完成品の半額で買えたり、キットでしか売ってないブランドもあります。

ボクもオーディオケーブルのハンダ付けくらいしか経験ないけれど、
キット販売のみの気になるモジュールがあるんで近々挑戦予定です。

◯シーケンスをどうするか
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最初の悩みどころはシーケンスですね。
PCから行なうのか、別体型のシーケンサーを用意するのか、
はたまたシーケンサーもモジュラーの中に組み込むのか、
それによって必要なスペースが大きく変わってきます。

モジュラーシンセはMIDIの代わりに「CV/GATE」という古い規格で色々な制御を行います。
音程(CV)や音のON/OFF(GATE)だけでなくフィルターの開き具合からエフェクトの適用量まで、
様々なパラメーターをCV/GATEで制御できる事が無限の音創りの要因です。

CLOCKはテンポを司る信号で、短いパルス波でBPMを制御しています。
KORGのvolcaシリーズやSQ-1の「SYNC信号」もこのCLOCK信号の事でして、
MIDIに頼らずとも同期が行えます。

◯おすすめシーケンサー
MIDIアウトが付いているのは当然で、出来ればCV/GATE出力も出来る物の方が良いです。
これにより音程以外の様々な要素を制御できるようになります。
ボクはOCTATRACKとKORGのSQ-1を使っていますが、SQ-1は安いし一個持ってるだけで色々できます。
鍵盤ならAKAIのMIDIキーボードはCV/GATEも出せるようですね。
またELEKTRONのAnalogFourもCV/GATE出力ができるようです。

普通のMIDIシーケンサーなら意外と有能なのがRolandのTB-3。
ステップシーケンサーとしてはもちろん、キーボードとしても使い易いです。

●最低限の構成から考える
前述したシーケンサーとMIDI to CVコンバーターが決まったら、
シンセの基本構成であるモジュールを揃えます。
ついでに今まで所有した事のあるモジュールのレビューを挙げていきます。

まずは必需品から紹介。

◯MIDI to CVコンバーター
PCやシーケンサー、鍵盤からのMIDI信号をCV/GATEに変換するモジュール。
CV/GATEでのシーケンスのみで考えている人もとりあえずは一つあると役に立ちます。

・Doepfer A-190-3

https://www.modulargrid.net/e/doepfer-a-190-3
最初に購入したUSB端子付きのコンバーター。
グライド調整ツマミも付いてます。
が、実際使ってみるとPCでシーケンスしないんで辞めちゃいました。

・Pittsburgh MIDI2

https://www.modulargrid.net/e/pittsburgh-modular-midi2
これは二つのMIDIチャンネルを別々のCV信号に変換できます。
CV/GATE双方に別々の信号を送るか、同じ信号を送るかトグルスイッチで選択可能。
尚且つCLOCK信号を送れるので
別のシーケンサーモジュールやKORG-SQ-1やvolcaにも同期信号を送れます。

◯オシレーター(VCO)
素材となる音を作り出すVCOは各メーカーから様々な物が出ていますが、
まずは基本となる数種類の波形を選べる物が良いでしょう。
大抵のVCOモジュールはジャックの差し替えで波形を選ぶタイプが一般的ですが、
たまに出力ジャックは一つでミキサー機能が備わっている物もあります。
後者はより細かい音作りが可能です(ミキサーモジュールがあれば同じ事ですが)。
またモノによってはLFOを兼ねた物や、
FM音源などアナログ以外のオシレーターも存在します。

・BlueLantern Transistor Pyramid Core VCO

https://www.modulargrid.net/e/blue-lantern-modules-transistor-pyramid-core-vco
何よりデザイン重視で最初に購入。
LFOとしても利用可能で7種類の波形とを出せる多機能VCO。
実は未だに使い道が分からない謎のジャックがあったりもします。
しかしデカ過ぎるので現在は二軍落ち。

・BlueLantern Simple VCO
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https://www.modulargrid.net/e/blue-lantern-modules-simple-vco
サブのオシレーターとして購入しました。
が、上段以外のツマミが細くて回しづらい事この上ないのでヤフオク流し。

・Befaco EVEN
スクリーンショット 2015-11-24 18.48.13

https://www.modulargrid.net/e/befaco-even-vco-
六本木で開催していたモジュラーシンセフェスにて怪しい外人から購入。
スペインのメーカーらしくキットと完成品と両方発売していますが、日本では流通していません。
低音から高音まで伸びやかな発振で、
オクターブごとの切り替えなのでプレイ中にガチャガチャ回してます。
現時点では最も気に入ってるオシレーターです。もう一個ほしい。

・Synthrotek DS-M
スクリーンショット 2015-11-24 18.50.51

https://www.modulargrid.net/e/synthrotek-ds-m
ドラム用オシレーターと謳っていますが、CVを受けられるので普通のオシレーターとしても利用可能。
ただし高い電圧を受けられないようで一定以上の高音は無理という半端なオシレーター。
3種類のノイズとLFOが付いているので変な音を出すには最適です。

◯フィルター(VCF)
音色を司るフィルターはVCO以上に千差万別。
これでシンセの個性を決定する、といっても過言ではない重要な部品です。
モジュラーシンセの場合はスペースの許す限り幾つでもフィルターを積めるのが面白い所。
オーソドックスな物と変態フィルターと両方積んだりすると一台で二倍美味しいですよ。

またLowPassGateといってモジュラーシンセ特有のVCA兼フィルターもありまして、
「内蔵されたLEDと光センサーで減衰を決める」というアナログかつローテクな構造らしく、
良い意味で不安定な独特の減衰をするようです。

・BlueLantern Big Twerp VCF
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https://www.modulargrid.net/e/blue-lantern-modules-big-twerp-vcf
多機能型VCA兼VCF。これもデザイン重視で最初に購入しました。
VCFはローパス/バンドパス選べます。
特徴は縦軸/横軸別々に調整できるレゾナンスとに矩形波を入力する事で低音を増強できるSQ IN端子。
効き方はややマイルドな減衰から超が付くほどピーキーまで可変幅が広いです。
レゾナンスつまみを12時より右に回すと耳が痛くて聴いてられないw

RCA端子にライン入出力が付いてますが何故か音が出ないので放置
使いこなすのが難しい困ったチャンですが、病み付き必至の変態フィルターです。

・Dave Smith DSM01 Curtis Filter
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https://www.modulargrid.net/e/dave-smith-modular-dsm01-curtis-filter
シンセの名門DaveSmithのモジュール。しかし2万円とかなり安いです。
コイツもVCAを兼ねています。8HPなので省スペース志向の方にもお勧め。
上のBigTwerpとは対照的にこちらは優等生的ローパスフィルター。
12dbと24dbが選択可能で24dbではレゾナンスによる自己発振が可能。
ただこの発振音は好みじゃないかもw
12dbにしている分には大人しけどちゃんと働いてくれるコです。

◯アンプ(VCA)
最終的なアウトプットを兼ねているモジュールが多く、
機能的には地味だけど音質を決定する部品です。
真空管付きの奴とかカッコいいよねー。

・Stereoscopic Duo VCA
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https://www.modulargrid.net/e/blue-lantern-modules-stereoscopic-duo-vca
これも最初に購入したけどかさ張るので辞めちゃいました。

必須ではないけど普通のアナログシンセには大抵備わってるもの。

◯エンベロープ・ジェネレーター
アンプやフィルターに適用して音の立ち上がりや減衰を調整する部品。
ライブ中にツマミをいじると音の表情が様変わりするので面白いですよ。
GATE信号を受けて各モジュールのGATE IN又はCV INに繋ぎます。
モジュラーシンセの場合だとアンプやフィルターのみならず色んな物にEGをかけられるので、
工夫次第で有り得ない音に遭遇できます。

・BlueLantern Simple ADSR
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https://www.modulargrid.net/e/blue-lantern-modules-simple-digital-adsr
シンプルと謳っているけどナカナカ多機能なEG。
GATE INから入った信号をそのまま受け流すTHRU端子一つと、
EGを適用したGATE信号を出力するOUT端子が3つもついてます。
ツマミは上からADSRと一番下はGATE TIME。
LINEAR/EXPOスイッチでかかり具合を選んだり、
LFOモードもついてます。

◯LFO
モジュレーションを行なうLFOも選び放題。
LFO機能付きのVCOも数多くあるのですが、
とうぜん単体のLFOの方がパラメータが豊富なので、
今までの音作りでLFOを多用する方は単体で用意するといいでしょう。

◯エフェクト
ディレイ/リバーブを始め色んなエフェクターがモジュール化されています。
本物のバネを使ったスプリングリバーブも数社からリリースされていますし、
DSPマルチエフェクターもあります。
いつかモジュラーシンセの次にモジュラーエフェクターを組みたいなぁなんて。

・Synthrotek Echo
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https://www.modulargrid.net/e/synthrotek-echo
4HPのシンプルなエコー。
フィードバックを最大にすると「ブゥわぁぁ~ん!」と派手に発振。飛び道具に最適!
Synthrotecの4HPエフェクトシリーズは値段も手頃で重宝します。

以上のモジュールが揃っていれば普通のアナログシンセと同等の機能になりますが、
モジュラーシンセならではのパッチングを便利にするユーティリティ系モジュールも紹介します。

◯マルチプル
一つの信号を2つ以上に振り分けるモジュール。
ジャックの少ないモジュールには重宝します。

・Pittsburgh Multiple
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https://www.modulargrid.net/e/pittsburgh-modular-multiple

4×2のマルチプル。地味ですが便利です。

◯ミキサー系
オーディオ信号を混ぜるだけでなく、
オシレーターからの波形を混ぜたりするのにも使うので何かと役に立ちます。

・Pittsburgh OUTS
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https://www.modulargrid.net/e/pittsburgh-modular-outs-
VCAからの信号をステレオ出力できるモジュール。
ヘッドフォン端子もあり独立してボリューム調整できます。

・Malekko MIX4
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https://www.modulargrid.net/e/malekko-heavy-industry-mix-4
3HPとかなり細いのでオシレーターの波形を混ぜるのに使っています。
ただツマミも細すぎてチト使いづらい。

・Malekko MUTE4
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https://www.modulargrid.net/e/malekko-heavy-industry-mute-4
こちらはミュートスイッチ。
買ってみて気がついたのは音が消えている(ミュートON)ボタンが光ること。
逆だったらよかったのになー。

・Intellijel Triatt
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https://www.modulargrid.net/e/intellijel-triatt
こちらは3チャンネルだけどツマミの間隔に余裕があるので操作しやすいです。
頻繁にいじるならこのぐらいの大きさは欲しいですね。

・MakeNoise Rosie
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https://www.modulargrid.net/e/make-noise-rosie
ヤフオクで購入したアウトプット用モジュール。
一番上のツマミがクロスフェーダーになっていて、
フェードアウトした側の音が下段左のヘッドフォンアウトからCUEとして出力。
要はDJミキサーなんですよこれ。
更にはセンド/リターンもあるのでエフェクターを繋いだり、
3つ目のチャンネルとして使ったりもできます。
ただちょっとS/N比が悪いのか、コレに変えてからノイズが乗るようになりました。
まぁアナログシンセの場合はそんなノイズも魅力なんですがね。

◯現在のセット

持ち歩きも考えて90HPのケースで我慢しています。でないと更に散財しそう。。
ベースとリード、など二種類のフレーズを出せるようにVCO,VCF,VCA,EGを二つずつ備えています。
フレーズを一つに絞って各々のモジュールを重ねる事も可能。何処がどの音が混乱しますが。
シーケンサーはSQ-1又はOCTATRACK。
空いている8HPのスペースにナニを入れようか思案中ですが、
BEFACOのオシレーターをもう一つ積むか、LowPassGateにするかLFOにするか。。。

◯まとめ

モジュラーシンセの魅力を端的に言うと無限の組み合わせで作る無限の音作り。
箱庭から宇宙に拡がる神秘的な体験ができますよ。
出音に関して言えばそこらのアナログシンセより遥かにワルな音が出ます。
基本的に操作はピーキーで「同じ音は二度と出ない」と言っても大げさじゃないw
トヨタあたりの現行国産車と古い外国の旧車くらい違います。

具体的な組み方や基本的なパッチングは過去記事を参照して下さい。
また毎月第1水曜/第3木曜に西麻布bullet’sで開催しているワークショップにも、
ほぼ毎回持参しています。触ってみたい方はどうぞ気軽に遊びにいらして下さい。

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