国産モジュラーシンセ・メーカーの数々
世界経済の事はよくわかりませんが、近頃の円安には困ったもんですねぇ。
もちろん海外製品がほとんどであるモジュラーシンセ業界はモロに打撃を喰らっている事だと思います。
しかし「ほとんど」って事は少なからず国内メーカーも存在していまして、
円安にも半導体不足にも耐え忍びながらもシタタカに活動をしています。
今回はそんなメイドインジャパンのモジュラーメーカー/ビルダーを紹介していきます。
◯メーカー、といっても
面識のある方ない方問わず、ほとんどが個人のビルダーです。だいたい一人でやっている筈。
もちろんメーカーと名乗るくらいだからただ作るだけではなく、
商品開発、販売促進、品質保証その他諸々の業務を責任を持ってこなしている方々です。
あんまり言って良い事じゃないかもしれないけど、
だいたい別に本業をやっています。そりゃモジュラーだけで食っていけねぇだろ。
儲からない副業と解っていてこんな事してるんだからアタマ下がりますよ。
動機はシンプルに「好きだから」なんでしょうねぇ。。
◯国産モジュールのメリット
・日本人モジュラーユーザーのニーズにフィット
当たり前ですけどね。
そもそも海外発の文化なんだからそんな当たり前の事すら理解されてないのですよ。
ユーロラック界は。
「HEY!お前らジャップはKORGかRolandでも鳴らしてろHAHAHAHA!!!」と言わんばかりです。
金の無いジャップ。シンセあんまわかってないジャップ。英語わからんジャップ。
「ものづくり」だなんて過去の栄光でしかない哀れなファッキンジャップ。
そんなんだからネトウヨならずとも国産製品に非常に親近感が湧くのです。
勝手な推測ではありますが、
海外モジュラーユーザーは自宅にゴッつい箱(というか棚)にシステムを組む傾向が多く、
日本人は持ち歩くか自宅利用でも比較的小型の箱を好むように思えます。
Youtube観てるだけの判断ですけど住宅事情や車の普及率に関係してくるんでしょうかね。
そんな事情を反映してるのか知らんけど、
日本製モジュールは何かと芸が細かく、限りあるスペースを最大限に有効活用していたり、
他の海外メーカーじゃ絶対売り物にしないよ!なんてグッズもあります。
・円安なら買いやすいよね
軒並み値上がりし続けている海外製品に比べて手頃な価格で購入出来るのが一番の強み、
いやぁ、そんなに円が安くなかった頃でも格安ではありましたがね。
たぶん、それが本来の適正価格なんじゃないでしょうか。
・故障対応/品質が安心
故障対応つっても自分が買った国産モジュール壊れた事ありませんけどね。
万が一の事があっても日本人が日本語で対応してくれる有難み。
アタシ等そういう世界でしのいでいますから。
自分の例を挙げるとアメリカのメーカーに送ったVARIGATEは音信不通、
こないだJUNOで買ったmeloDICERは購入1,2周間でブっ壊れ死亡、医者も匙を投げました。
こればかりはメーカーに送った方が良かったかもな。英語できないけど。
・マニュアルが分かり易い
当たり前ですけど凄く有り難いんですよ。
どこぞの英文を機械翻訳したものより、日本語ネイティブが書いた説明は本当に肌に馴染む。
この心強さと安心感と言ったらもう!
・開発者とユーザーの距離が近い
TFoMやKFomなど大きなモジュラーイベントには必ず出展してますし、
毎日毎日Twitterで与太話で盛り上がっています。
「こんなモジュールが欲しい」とか「あんな機能が欲しい」なんてボヤきに近い要望も受け入れて貰いやすい。
・DIYキットもあるよ
ただでさえ良心的価格の完成品より更に1,2万円は安くなるDIYキット販売を積極的にやってる所が多いです。
DIYワークショップなども開いていたりするので、初めて自作にチャレンジする方は国産メーカーを頼るのが
良いと思います。
・SNSで開発風景も観られるよ。
当人達がアレコレ悩みながら製品を産み出す所をダイレクトに観ていられるのも一興。
フォローしていれば正規にリリースする前の先行販売も受ける事が出来るかもしれません。
◯国内メーカー紹介
自分の身近なところから、面識は無いけどお世話になるだろうな、って所を中心に紹介していきます。
事前にフォロワーさんに「国内メーカーとかビルダーってどんなんある?」と聞いたところ、
結構な数を挙げられて記事には書ききれないと判断しました。なのであくまでも個人的に代表的な、です。
・Centrevillage(せんとれビレッジ)
発足前からの知り合いでもあり、自分のモジュラーシステムでは一番多く使っているメーカー。
最初期から独自の哲学に則ったシーケンサーを開発しています。
ここのオススメはやはり「2HPシリーズ」。
2HPの中に地味だけど欠かせない便利モジュールを多数販売しています。
アタシがこのシリーズで購入し今でも重宝しているのが、
マスタークロックCLKMは、世界中探しても珍しいBPM表示とMIDIIN/OUT。2つ持ってます。
フィルター兼エンベロープ兼VCAのBF35。
ラインレベルとモジュラーレベルを行き来しヘッドフォンアウトにもなるAMP ATT。
クオンタイズとGATE to TRIGGERを合わせたSQT。
これらを愛用しています。
・P4L Store(Patching for life)
大箱クラブで行われているイベントPatching for lifeのブランド。
アイソレーターから始まった(んだっけ?)こちらも結構買ってます。
パッシブのローパスゲートにはかなり助けられました(他のが品薄だった時期でね)。
中でも私的大ヒット商品なのが、「RVS(Random Voltage Source)」という名のランダムソース。
ちょうどMakeNoiseのWogglebugにも似ているんですがコッチの方が取っつき易く使いやすい。
正規販売はもう少し先の話らしいけど先行販売品として2つ貰いました。
一個買ったらメチャメチャ気に入ってDIY KITを追加購入したんすよ。
もちろんビルドガイドも分かり易いよ。
主な表面実装部品は取り付け済(コンデンサ以外)だし初心者のDIYにもオススメです。
3種類のノイズ出力とランダムゲート、S&Hのようだけどある程度制御可能な階段状CVとスルーリミッター。
もう!これシーケンサー要らないじゃん!とマイブームになっています。
・Hikari Instruments
http://www.hikari-instruments.com/top.html
MONOSが大ヒットしたHikariさん。こちらはかなり有名ですね。
MONOSが売れに売れてMONOS御殿が建ったとか建たないとか噂が流れてます。
MONOSはスタンドアロンのシンセだけど、他は全てユーロラックなのですよ。
極めてハイセンスなデザインで鳴らさなくても飾っておきたい佇まい。
こちらではTripleADがかなり好きです。
3チャンネルのファンクションジェネレーター。
シンプルだけどしっかりとファンクションジェネレーターの機能をサポートしています。
スライダーの位置でアタックとディケイを決めるんだけど、
CV電圧に応じてフェーダーに備わったLEDが光るんですよ。ものすげぇ掴みやすいのです。
もちろんエンベロープとしてもLFOとしても使えるし、レンジを3段階に切り替えられます。
あとCh1にゲートなりトリガーなりを入力するとCh2にもCh3にも内部接続してくれる親切さ。
Hikari製品は良い意味で日本人的な親切さとハイセンスを両立させている稀有なメーカーですね。
・定吉楽器(Sdkc Instruments)
https://github.com/SdkcInstruments/
個人的には「突然出てきた」感のある定吉楽器。
(せまい)世の中にこんなスゲェのがまだいたんだ!?と思わされました。
アンビエント勢を中心に人気過ぎて入手困難なHelicalが有名ですよね。
もうね、理解できないのでWEBサイトから抜粋。
—
Helical は、16 ボイスのポリフォニック自己回帰アルゴリズム シンセサイザーです。
自己回帰合成/シーケンスにより、新しいフレーズを継続的に生成します。
16 のボイスはそれぞれ、シーケンサー、ウェーブテーブル オシレーター、
エンベロープ ジェネレーター、VCA で構成されています。
—
実際に人のを借りて触ったら「いやズルいわこれ」の一言w。
そりゃ欲しくなるわい。アンビエント解ってないけどコレ一つで終了じゃん?
そして自分が購入したのはデュアル スロープ ジェネレーター。
気になってたところ生産中止の噂を聞き慌てて購入。
要はMATH的なファンクションジェネレーターの仲間でしょう。
ほぼMATHSに匹敵せんと言わんばかりの機能を12HPに詰め込んだ良モジュールです。
MATHSの真ん中ツマミに準じた機能は無いものの、1/4Chの機能は網羅してます。
ややピーキー気味なMATHSよりもマイルドで扱いやすい曲線を描いてくれます。
・moddict
https://moddict.stores.jp/
ABS樹脂削り出し(!)のカラフルなモジュラーケース、極細プラグのパッチケーブルなど、
モジュールの他にも便利なアイデア商品を展開しています。
ブティックペダルのブランド「TDC-You」と共同開発した高音質EQも定評アリ。
「あったまイイなぁ!」と思わされたのが二つ。
ケーブルを束ねてまとめられるCC1/CC2。これすっごく便利!
それからパネルの上に後付できるパッシブマルチプルAID Multi。
AIDはシリーズ展開していくそうですよ。フェーダー付きアッテネーターとか。
銀と黒のリバーシブルなパネルとか、他所じゃなかなか売ってない白のパッチケーブルとか、
日本人モジュラーユーザーの立場を考え抜いた(いやぁ他もそうだけどココは特にね)商品展開です。
・電氣美術研究會
信州は松本を拠点とする、主にユーロラックのパーツを扱うショップです。
「神は細部に宿る」の言葉で有名な建築家、
モジュラー界のミース・ファン・デル・ローエと言わんばかりの着眼点。
モジュールに電気を送るのに太い線材にカスタムされた電源ケーブル。
NoiseEngineeringのモジュールにも使われているようなアルマイト処理のツマミ。しかも色が色々!
これまたアルマイトでカラフルに仕上がったジャックナット。
わりと珍しい白パッチケーブルは業界最安値なようです。
細けぇ。。
また、音楽用の組込みプラットフォームElectro-Smith Daisy Seedの最初期から正規代理店だったようです。
あれっすよ。NoiseEngineeringのVersioシリーズにも使ってるアレ。自作派ハードコア勢にもガッツリ対応。
オリジナルキャラクターの電猫もモジュラーユーザーに多い猫バカに大好評。
もしかしたらこれだけで食っていけてるんじゃないか?
自身のシステムを隅々までこだわりたい方にはうってつけのショップです。
・JAMMING
比較的新しいメーカーで、
6HPのサチュレーション付きフィルターやサイドチェイン機能付きステレオミキサーなどを販売しています。
フィルター買いました。
DIYキットの販売にも力を入れていて、
またDIYワークショップと称して電子工作初心者の為のイベントも開いています。
コンセプトを”ライブパフォーマンスに特化した省スペース低コストなDIYモジュラーシンセ” とし、
実際安いwwおいおいおい。もうちょっと儲けろやww
現在開発中の4in4outマトリクスミキサーも年内には発売そるようです。
また、キャラクターブランド「OSC兄弟」ともコラボレイトしており、
https://oscbrothers.stores.jp/
オリジナルデザインのブランクパネルなんかも販売しています。
◯国内メーカー/ビルダーから購入する時の注意点
同じ日本のメーカーとは言え、ヨドバシカメラで家電を買うのとはワケが違います。
日本だけでなく海外もそうですが、
大抵は「個人が一人で副業としてやっている。そして全然儲からない」事を留意してください。
製品に関する質問や相談アフターケアに至るまで、家電量販店並みのサービスを期待してはいけません。
みんなアンタ達みたいに普通に働いて、その後余暇の時間でシコシコはんだ付けしてるのです。
その上、作った物をホイホイ売るだけでなく製品開発/販促活動/品質管理までこなした上で
自身の音楽活動やら役所への申請までやっています。
接する時はお客様ヅラせずに、シーンを担う先輩として接しましょう。
◯まとめ
メーカーとまでは至らないものの、メルカリやヤフオクで自作品を販売している方々も数多くいますが、
ここでは紹介し切れないので割愛しました。
こういった方々の努力がシーンを引っ張っているのは間違いないでしょう。
こんな苦労しなくてももっと楽に儲かる仕事いっぱいあんじゃんよw
一時期自分もモジュラーケースを制作/販売していたのでその苦労は身に沁みる程わかりますが、
ただただ尊敬の念しかありませんよ。