KORG drumlogueレビュー

「オレは!もう!ユーロラックひと筋で行くぞ!」とイキがって巨大ケース買ったものの、
ラックの構成で悩みに悩んで現実逃避がしたくなり、
drumlogueが爆安だという噂に釣られてサクっと買ってしましました。

本当に衝動買いです。
登場時の初値が7万円台半ばくらいだったのが、
24年7月の今では43000円前後で購入できます。

近年の音楽機材全体が値上がりしてる状況において有難い話ですよね。

◯イマイチ人気がない残念マシンなのか。

KORG渾身のドラムマシンという事で発表当初に界隈が湧き上がったのをよく覚えていますが、
他メーカーのライバル機種に比べてパっとしないのか、操作性に難アリと思われたのか、
現場で見かける事はほとんど無かったんですよね。
現代のドラムマシン(グルーブボックス)は音が良いのは当たり前、
他に際立った個性が無いとライバルに太刀打ちできない模様。
アナログ/デジタルのハイブリッドマシンです!と言われても「だからどうした?」と切り捨てられます。
logueSDK?プログラミングできるパソコン大先生でないと扱えないの?
ほんとう、analogRYTM Mk1の時代に出ていたら値段の手頃さも相まってかなり戦えたんじゃないでしょうか?

パっと見で個性が感じられないんですよね。

◯前フリ・全てのグルボはELEKTRONを目指せ

自分がグルボメインでやっていた頃もユーロラックに移行した現在も、
ELEKTRON製品こそがドラムマシン/グルーブボックスのデファクトスタンダードにすべき、だと思ってます。
(べき!とか言うとRoland派のSHIN◯Aさんに怒られそうだけど)
高級機も廉価機も操作性を徹底的に考え抜いたラインナップ。
ELEKTRONに無い機能と言えばSEQTRAKやCIRCUITのような
トラック別パターン選択くらいなんじゃないでしょうか。
あとはスケールクオンタイズくらいか。
そのくらい沢山の機能をアクセスし易くデザインしてるのがELEKTRONです。

ライブ派も自宅制作派も違うメーカーの物を複数台同時使用するのが当たり前の時代なんですから、
変に個性を出そうとせず周り(のメーカー)に合わせた仕様になってくれれば、
極端な話ギターや他の生楽器のように普及するんじゃないの?と思います。

余談ですが、その辺を上手く突いてるのがSONICWAREのグルボ群。
製造コスト削減の為なんでしょうが全ての筐体を同一にし、色とソフトウェアで差別化をしています。
これにより一機種の操作を覚えてしまえばシリーズの他機種もさわれるんじゃないでしょうかね。
Lo-Fiサンプラーやアンビエント・ドローンマシンなど個性的な展開で今後も期待できます。
しかも安い。この手の音楽に興味を持った人の入口として最適だと思います。

 

◯デザイン

logue系に通じる黒基調のシックなデザインはオッサンは共感できますね。
(ただ楽器屋さんで展示されてても目立たないんじゃないかな?)
素材の質感もかなり高いんですよYAMAHAさん。ねぇYAMAHAさん。
トリガーキーの押し心地もジャストですよmodel:cyclesさん。
サイズ感は絶妙!volcaよりもだいぶ大きくなりましたが、それでも小ぶりなサイズ。A4くらいです。
肥大化したanalogRYTMしかりTR-8Sしかり、こういうサイズのを待ってたんだ!
ウッドのサイドパネルをこしらえたり、それなりに高級感もあります。

ただ黒すぎてライブ現場では視認性が悪いんじゃなかろうか、とも思えます。
もう少し見やすいデザインでも良かったような気もします。
ミニマルなデザインにしたい気持ちは分かるけどね。

◯入出力


・L/RのメインOUTにアサイン可能な4つのパラ出し用出力とヘッドフォンOUT
・3.5mmTRSの外部入力
・DIN MIDI IN/OUT
・SYNC IN/OUT
・USB A/B
・ACアダプタ入力

となっております。
6つの出力はPAミキサーに繋いでDUBプレイも余裕ですしDAWに取り込むにも便利。
KORG得意のSYNC入出力はモジュラーシンセとも同期可能ですし有難い。
そしてUSB-Aですよ!A!ここもっと褒めるべきなんですよ!
巷にあふれる「パソコンでしか使えないMIDIコン」が何でも使えちゃうんです!
しかも!DIN MIDI使うMIDIコンと違ってコントローラー側には電源いらないんですよ!

ACアダプタはKORG共通のKA350。9Vで端子はEIAJ4という規格です。
個人的には万国共通の5.5/2.1mmの方が良いけど、
電圧違いの物を間違えて挿さないように、とKORGの良心と受け止めておきます。

◯ツマミ

左側に音色パラメータのツマミ15個、ディスプレイ下にクリック付きのロータリーエンコーダー4個。
これらの操作感は上々で申し分ないんですが、
上段のミキサーツマミと右上にあるテンポツマミ。これは酷い。
特にテンポ設定はメチャクチャやりづらいです。ピッタリ120に設定、とか難易度高いです。

しかしここは少し大きい「1900H」タイプのツマミがくっつきます。
https://www.sengoku.co.jp/mod/sgk_cart/detail.php?code=EEHD-4KUC
(リンク先は黒だけど各色選べます)
一般的に入手し易いものなんでオススメ。
ちょっと文字隠れちゃうけど操作感爆上がりっす。

たぶんですけど「軸径6.35mm、ネジ止めタイプ」なら上手く付けられると思います。
軸径6mmのはダメでした。MakeNoiseもTallTrimmerも使えません。
ただ樹脂製の軸に強くネジ留めすると軸が割れちゃう恐れがあります。気をつけて。

 

◯ボタンのフォントが細くて見づらい

ここもデザイン性優先の弊害でしょうが、
文字が光るボタン格好いいけど、そのフォントがダメ。
小さくて細い文字なので判別しづらいです。
自宅ならともかくライブハウスやクラブで一瞬の判断が出来ないのは残念。
老眼の増えてきたクラブ世代にこのフォントは拷問です。

◯パターンと音色は別々に管理

高級機では当たり前な機能ですが、これを備えているのは有難い。
「プログラム」と「キット」に分けて前者がパターン、後者が音色群です(だと思います)。
Drumlogueにはvolca drumと同じく、
「パターン(シーケンスプログラム)」と「ドラムキット(音色セット)」を別々に管理出来ます。
同じドラムキットで別パターンを作るのは勿論、同一パターンで違うドラムキットを適用したりできます。
専用のボタンも用意されているので迷う事はないですね。

◯音色の設定

アナログ4、デジタル7、3つのマルチ音源から11のパート(トラックごとの音色)を選び、
一つのドラムキットとして登録できます、
また外部入力にもゲイン設定や内部エフェクトをかける事も可能です。

まぁ純粋なアナログドラムに慣れた身としては多すぎて腹いっぱい!

音質や音色は現代のドラムマシンとしては十分。
色んなキットを試聴してみると音色の多彩さに驚きます。
単一のドラムマシンでここまで 振り幅が大きいのは良いですね。

 

◯シーケンサーの機種特有機能

・グルーブ・タイプ
KORGだけにある機能で、Electribe2などのグルボ/アプリに備わってる機能ですが、
ベロシティを良い感じに調整してパーカッション特有のグルーブを作り出す機能です。
コンガやボンゴ、カウベルなどのシュミレーションが出来ます。
ドラムマシンでありながら人間的な、有機的なリズムを組みやすいです。
テクノな人は興味ないだろうけど、それ以外の音楽をやりたい人には有難い機能。

・PROB.とALTER.
これはELEKTRONで言うところのTRC(トリガーコンディション)で、
「何%の確率でトリガーする」「◯回に1回トリガーする」を決められる神機能。
これにより実ステップ数よりも長く感じさせるパターンが出来ますね。

・アクセントとラチェット
アクセントの設定はもちろん、「ダダダダッ!」と連打するラチェット機能、
さらには「RAMP(ランプ)」と言って連打の強さにも変化を付けられます。
このRAMP「気が利くなぁ」と思います。

◯エフェクト

エフェクトはそれぞれ数タイプあるディレイとリバーブを各トラックごとに適用量を決められ、
それとは別にマスターにもコンプレッサーやフィルター、パライコなど4種類のエフェクトを当てられます。

できればLo-Fi系のサチュレーションも付けて欲しかったな。

◯MIDIコン接続

操作性が悪いと酷評を受けているdrumlogueですが、
外部のMIDIコンを繋げて操作を割り当てれば操作感も向上するはず。
USB-A端子が使えるのでDAW用に販売されているMIDIコンも使えます。
ただ条件があって、コントローラー側で番号を割り当てできる機種に限ります。

ちょうど同じKORGのnanoKEY studioとnenoKONTROL studioを所有しているので試してみます。

まずKORGのサイトへ行き専用エディタ「KORG KONTROL Editor」をダウンロードします。
https://www.korg.com/jp/support/download/product/0/551/#software
(ソフトウェア欄の一番下)

次いでdrumlogueマニュアルの最後、MIDIインプリメンテーション・チャートを参照して、
使いたい機能を割り振ります。

結構たいへんな作業だけど、専用MIDIコン作ったら百人力だよ!

 

◯drumlogueのダメなところ

・ツマミのレイアウトがイマイチ

メイン音源を操る15個のツマミにスペースを取りすぎて、それ以外の部分がおざなりになってる気がします。
もう少し小さくして他の部分(ボタンなど)を増やしたり操作性向上できたんではなかろうか?

・SHIFT押しながらの二次操作が多くてダルい

ドラムマシンやグルボの操作は大きく分けて「仕込み」と「ライブ中」に分けられますが、
ライブ中にSHIFTボタンを押す必要がある動作、2つ以上のボタンを押す動作を要求するのは良くないです。
マシンライブではメーカーの違う複数の機材を扱うのが基本ですから、
機材単体の操作は片手で済ませられる事が大事ですよね。

・ミュート操作は特にクソ

右側にあるミュートボタン、最初のバージョンでは「MUTE押しながらパートキーを押す」動作で行うんですが、
要望が多かったのかファームウェアの上がったVer.では「ラッチ(ボタン押してからパートキー押す動作も追加されました。
モーメンタリとオルタネイトの違いですね。

が、ラッチを有効にするにはダブルクリックのように二回早押しをしなくてはなりません。
ムチャクチャ不便です。長押しとか早押しとか嫌いなんですよ。
「いや普通はラッチだろ!?」と言いたい所ですが、設定で「一回押しでラッチ」も出来るようにしてくれ。

・SHIFTボタンの位置

フォロワーさんに貰った意見ですけどムチャクチャ頷ける話。
SHIFTボタンは本体の左側に、もっと目立つように配置して欲しいです。
二次機能の操作って慣れない機能な上に文字を目で追って探さなきゃいけない事が多いので、
SHIFT自体は左手で、目的の機能を探すのに右手を使った方が良いです。
(自分は左利きだけどこう思える)

加えて言うなら、左のツマミ群と右のディスプレイ&ボタン、左右逆にすればもっと使いやすかったはずです。

・暗いと見えない

Logue寄りのデザインを踏襲したのか落ち着いた雰囲気ではありますが、
暗いクラブやライブハウスでは何にも見えません!
オレはまだ老眼じゃないけどド近眼だしな。
開発陣はクラブやライブハウスに行け!
(もっともSEQTRAKの黒は本体ごと見失うくらい酷いんだけど)

・電源ONしてから演奏可能になるまでの立ち上がり時間がイラっとする

初代プレステのロード時間みたいな気分。

◯あると便利なお役立ちグッズ

・1900Hツマミ
上でも紹介しましたが、上段のボリューム列のツマミとテンポのツマミがメチャ使いづらいです。

・USB-Cトリガーケーブル9VとEIAJ#4変換アダプタ
モバイルバッテリーで駆動したい時はこれ。

・etrokits/TRS-X Adapter

DIN-MIDIからTRS-MIDIに変換するアダプタ。
AとB両方に対応してます。
小さいから無くしやすいけど。

https://shop.miyaji.co.jp/SHOP/ka-r-061424-no03.html

◯まとめ

「KORG製品、発売直後はベータ版」これ今日の格言です。
昔SQ-64を買った時もそうなんですが、発売直後に買うKORG製品は操作性が最低ですw
その後のアップデートでかなりマシになったようなので、気になる製品があるならファームウェアのチェックをしましょう!

Drumlogue、初値から3万円引きと驚きの価格で売っていますがこの値段なら大いにアリです。
まぁ初値の7万円だとしてもそのクラスの価格帯なら十分オススメできますけどね。
ムチャクチャ不人気だからこその値段なんでしょうが、ちょっと可哀想な気もします。
これに凝りてKORGは本格的なドラムマシンをしばらく作らないかもしれませんね。

最近のドラムマシン/グルボのラインナップは廉価機と高級機の二極化が進んでウッカリ手を出しづらい状況ですけど、
本来ならこのdrumulogueくらいの中級機クラスが充実している事が健全な状況だと思います。

総論として「とりあえずドラムマシン欲しい、でも廉価版じゃちょっとなぁ」って人に薦められる機種。
人気の無さ評価の低さに比べれば凄く良いダークホースです。

 

 

 

 

 

 

 

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