ALA Benjolin v2レビュー

1,2年前に友人達の間で流行っていて、その時は斜に構えてスルーしたものの
今になって観たライブで俄然興味をそそられたBenjolin、
ふとした話で手持ちのモジュールと交換して入手しました。
「キン肉マン消しゴムを取り替えっこしようぜ!」みたいなノリですけどw

○Benjolinとは

オランダのシンセビルダーRob Hordijkによって設計されたDIYシンセでして、
この人自分のWEBサイトを持たずコンタクトはメールのみで受け付けるというナカナカの変人なようで、
「ベンジョリン」とは「バンジョー(アフリカ由来の弦楽器)」と「ヴァイオリン」を組み合わせた造語です。
これのどこが弦楽器やねん!というツッコミはしないでおきましょう。もちろん便所とは関係ありません。
元々は電子回路の学習を目的としたワークショップの為に用意したキットで、
一般向けには基板とパネルのみが流通していたようでした。

友人の間で流行っていたのもその基板を元に組み立てていた程度なので情報が限られているのも無理はないですね。

その後After Later Audioが承諾を得た上でユーロラック対応、
各セクションを使いやすくしたものをv2として製品化し、
現在も国内(beatsville)から入手できます。
https://beatsville.jp/products/benjolin-v2

○で、どんなシンセなの?

最初期の電子計算機が発する機械音を彷彿とさせるサウンド、と言えば聞こえは良いのですが、
電子楽器の条件を満たしてすらいないんじゃないか?と思える位には原始的な電子音の羅列を連ねるだけです。
一般の方が聴いたら絶対に楽器としては認識できないでしょう。

しかしモジュラーシンセや西海岸式シンセサイズに慣れた僕たちの耳には、
この音楽的でない音の羅列を「この音はクール!」と感じてしまいます。


○キモとなる「ラングラー回路」

モジュラーシンセの分類ではシンセボイズに当たるものでしょうかね。
Benjolinの主な構成はオシレーターx2、マルチモードフィルターと
「ラングラー」と呼ばれるランダマイザー(みたいなもん)によって構成されています。

このラングラー、シフトレジスタと言われる回路が元になっているそうで、
要はミニマムなメモリ、そのメモリに二つのオシレーターからの信号を受けて出力します。
シフトレジスタについての詳しい説明はコチラを参照してください。
https://note.com/tmnkj/n/n6192459b31b2

またラングラー回路で生成したCVは各オシレーターとフィルターにもフィードバックさせる事が可能で、
それによって更にカオスなフレーズを生み出します。

○組み合わせたいモジュール

・エキスパンダー

v2にはMusic Thing Modulaの有名なランダマイザー「Turing Machine(=ALA Alan)」の

エキスパンダーであるEnigmaとMarcomを利用できます。
ランダムトリガーとCVシーケンサーとなりますね。

https://beatsville.jp/products/enigma-alan-expander
https://beatsville.jp/products/morcom-alan-expander

これらによって更に別系統のCVシーケンスを増やしたり、ドラムシーケンスを組んだりも出来ます。
これも一緒に入手したんですがスペースの都合上試せていません。

ちなみに、なんですがTuring Machine(又はAfterLatorAudio ALAN)はベンジョリンのラングラー回路だけを
モジュール化したようなもの、なのかもしれませんね。

https://beatsville.jp/products/alan

・エフェクト

色々な動画を見る限りClouds系グラニュラーディレイとの相性が良いようですね。
自分はCloudsが苦手なのでÑoiseEngineering版Cloudsとも言えるMelotus Versioを使っています。

https://noiseengineering.us/products/melotus-versio


・EG&ローパスゲート

これもまだ試していないのですが、EGとローパスゲート又はVCAと組み合わせて
ブツ切りにできるようにする、って使い方もあるそうです。
まぁEGというよりファンクションジェネレーターを組ませたほうが良いですよね。

その「オレもベンジョ欲しい!」と思わされたライブのモジュラー構成。

64HP縛りのレギュレーションで組んでこい!との事で、
MathsとOptomixでベンジョ挟んだ後にClouds系MONSOONでエフェクトしてました。

○どんなプレイに適しているか

ノイズやドローン、クラシカルな電子音楽に最適ですが、工夫次第でIDMやテクノにも合わせられますよね。
主役を張らせて前衛的なプレイをするもよし、脇役の効果音に使ってもプレイに締まりが出る筈です。
これ意外と使い勝手の良い音だって事に気がつくと思いますよ。

○どんな人に向いているか

モジュラーシンセ初心者が「いかにもモジュラーらしい音が欲しい」という時に格好の一台かもしれません。
グルボで出せない音、DTM(DAW)で出せない音、自身の殻を破って新しい世界を開拓したい、
そんな人には是非とも触って欲しい一台です。45000円とモジュラーの中では入手し易い値段ですしね。

○まとめ・音楽と非音楽の境目

モジュラーシンセを楽しむ上でキモとなるのが音楽らしいフレーズ(例えば和音とかスケールとか)を奏でる事と、
一般的には雑音や効果音とカテゴライズされる音とを行ったり来たりするのが心地よいと思っています。
音楽らしい音楽をしたいだけなのであればグルボや鍵盤を使えば良いのです。
もちろんスタンドアロンでもノイズシンセやドローンシンセなどもありますが、
モジュラーならではの各モジュールの相互作用でカオティックな音を紡ぎ出すのが楽しいんですよね。

個人的な表現ですが、Benjolinは非音楽的なシンセサイズ入門に最適な一台です。
頑張れば音楽っぽい事も出来なくはないしなw(ただしv/octはサポートしてません)
v2からは外部クロックにも対応しているので他のリズムとも違和感なく合わせられますし、
案外気の利いた仕様になっているので安心して狂気の世界に首を突っ込めます。

 

 

 

 

 

 

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