楽曲製作のジレンマを解決するワークフロー

DTMでの曲作りって非常に挫折率が高く、
楽曲提供する場を持ちづらいアマチュアだとナカナカの苦行とも言えますよね。
投資した金額と時間に対して見合った満足感が得られれば幸せなんでしょうが。

ボクDJ15年、本職は大工兼デザイナーで写真も好きなので、
いわゆるクリエイティブワーク全般が得意な方だと自負していますが、
それでもこの楽曲制作って奴は悩みっ放し凹みっ放しですよ。
最初の一曲目作るまでがホント辛かったなーw

クリエイティブワークで課題や問題につまづいた時は
原因を細かく分析して理論で割りきってしまうのが解決の近道なので、
自分なりのワークフローを作って工程ごとに分けてしまえば、
自分がどこが得意でどこが苦手なのかわかります。
その上で一つずつ苦手分野を解決していけば多量の作品を生み出す事ができるんじゃないでしょうか。
(と、自分に言い聞かせたいw)
楽曲制作の壁にぶつかっている人の参考にでもなれば幸いです。

1.テーマやコンセプト
企画書や設計図、レシピにあたる部分ですね。
どんな曲が作りたいのかビジョンがハッキリしている程その後の工程が楽になります。
全く新しい物を産み出そう!なんて考えずにパクれる物はどんどんパクってしまいましょう。
いわゆるクリエイティブ・ワークを生業にしている人達はココが得意(好き)な人でして、
そういうのが苦手な人は自問自答を繰り返してテーマを捻り出す事に慣れるようにしましょう。

・誰に聴かせたいか
・どんなDJに回して貰いたいか
・どういうハコで映える曲なのか
・どんな曲の後にプレイすれば映えるんだろうか?
・その曲の後にどんな曲をプレイすれば良い流れになるんだろう?

などなど「これから出来上がるであろう曲」そのものを想定するよりも、
他の人や場所、前後に似合う曲など周囲から固めていった方が楽に考える事ができます。
初心者DJに教える選曲のコツの一つに
「相性の良い3曲を1セットと決めてしまい、セットの組み合わせでストーリーを構築する」
という考え方があります。
その3曲の「真ん中の曲」を想定するとイメージも湧きやすい筈です。

2.曲のタイトルはキャッチコピー
何となくのイメージが浮かんだら曲名を考えてみましょう。
人によっては曲名は曲が出来た後で考えるという意見もありますが、
イメージを具現化し易くする為には先に考えてしまった方が良いかと思います。
ボクは極端な場合、曲名どころかアートワークも先に作ってしまう事があります。
音楽そのものよりも先に外堀を固めてイメージを絞り込んでいく、という考え方です。

3.素材とお手本を集める
料理をする材料を買う為にスーパーの店内をうろつく行為に似ています。
スーパーの商品に魅力的な物が無ければ八百屋さんや肉屋さんなど専門店に出向いたり、
値段が高すぎて手を出しづらいなら安売りの代替品や別の店を周ってみるのもアリ。

世の中(ネット)には既に一生かかっても聴ききれない数の音楽が氾濫し、
著作権フリーの素材もゴロゴロ転がっています。
心情的にサンプリング素材に抵抗があって全部自分で作らなきゃ気が済まない人も、
お手本として色々集めておく方が良いでしょう。
テーマにそぐわない物でも琴線に触れる音ならとりあえずとっとくのがお勧め。

4.集めた素材を振り分けて並べてみる
今度は料理ではなく服を選ぶ行為に例えてみましょう。
気に入ったシャツもパンツも一度に二着は着られないので、
デートに行く為の服なのか、仕事に行く為の服なのか、
TPO(工程1で決めたテーマ)に合わせたコーディネートが必要です。
鏡(DAW)の前でアレコレ着替えて悩む女の子になったつもりでトコトン吟味しましょう。

靴(ドラム)パンツ(ベース)シャツや上着(上モノ)アクセサリ(効果音)などなど
お洒落な人は大抵タンス(フォルダ)の中の整理もキッチリしてるもので、
「あ!あの服どこだっけ?」という一瞬のインスピレーションを形にし易くする為にも、
フォルダの整理は必要です。

DAW上でとりあえず1〜4小節くらい使いたい音を全部詰め込みつつも、
延々と繰り返しても聴いてられるループを作りましょう。
繰り返し聴いてる内に催眠効果で頭がボケーと気持ち良くなってきたらループ完成。
途中で飽きてしまうようなら作り直した方がいいですねw

5.曲の展開は引き算で考える
使いたい音を詰め込んだ「全部入りのループ」を最も盛り上がる部分と仮定し、
リズムだけのパート、ベースを抜いたパート、上モノだけ抜いたパート、
などなど何パターンでも作ってみて下さい。
それを時間軸に合わせて適当に並べていくと、なんだか曲っぽくなってきます。

この工程が苦手な人(自分も苦手)は、
お手本にしたい曲をDAWの一番上のトラックに配置して、
小節ごとの展開をチェックしながら構成をパクってしまうといいです。
「何小節目かでイントロが終わって、そこから何小節でブレイクが来て、、」とか。

6,もう一度素材を作りなおす
曲らしい物が出来上がってくると、
工程4で選んだ音に違和感を感じる物が出てくる事があります。
ビジョンの絞り込みが進んでいる証拠ですね。
また「選んだ音(サンプリング素材)」ではなく
「シンセで作った音や自分で演奏した音」を使いたいパートなどもあるでしょう。
そういう物をこの時点で差し替えてしまいましょう。

7.効果音やエフェクトで仕上げる
出来た料理に調味料をくわえる工程ですね。
エフェクトの用途には大きく分けて2種類あり、
本来の用途である「音の補正と微調整」の他に積極的に別の音に変えてしまう事もできます。
ここで使うエフェクトは後者の用途で、
展開の代わるポイントごとに何かしらの捻りを加えると面白くなってきます。
また声ネタなどの効果音もこの時点で入れてみましょう。

8.ミックスダウン
ミックスダウン作業は「作った料理を弁当箱に詰め込む作業」によく例えられます。
弁当箱の大きさ(音量)は0dbと決まっているので、
ご飯とオカズと付け合わせを上手く盛り込めるようにしましょう。
(マスタリング時の余裕を考えて実作業では-3〜-5dbに抑えておきます)

EQで不要な帯域を削ったり強調したり、
コンプレッサーで音の粒を揃えたりギューっと詰め込んだりします。
またコンプとを上手く使うと音を後ろに引っ込めたり前に出す事も可能。
周りの音から浮いてるように聴こえるパートはリバーブで馴染ませてみましょう。

9.マスタリング
マスタリングはハッキリ言って専門家の領域なので、
最初のうちは深く考えなくても良いかと思います。
工程1で決めたテーマに沿ったシチュエーションを意識しながら、
マスタリング用プラグインのプリセットで勉強していくのが一番手っ取り早いです。

10.試聴
使い慣れているモニター環境とは違う所で
作った曲がどういう風に聴こえるのかチェックしましょう。
DJならクラブでかけてしまうのが一番。

とまぁ1から10まで製作のワークフローを挙げてみました。
「納得行かなかったら前の工程まで戻る」べきか「納得行かなくても次の工程へ進む」か、
要所要所での判断がすごく大事です。どっちが正しいとも言えませんが、
初心者のうちはどんどん進めてワークフロー全体を体得する方を優先しましょう。

また各工程で得意な作業もあれば苦手な部分もあります。
ボクは「苦手な部分は道具の力で解決」と割りきってまして、
特にエフェクトなんかは便利でズルいソフトを使ってしまいます。

女性でなくとも「産みの苦しみ」と「産みの喜び」を味わえるのがクリエイターの幸福。
ってデザイン学校の先生が言ってました。
そんな境地に至らなくても迷走を楽しめるくらいの太い神経を身につけたいものですね。

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