P4L RVS+KPGレビュー
以前から「モジュラーシンセの醍醐味はクロックとランダムだ」と先輩方に教わっておりまして、
クロックは4msのQCDを愛用してますが(3つ持ってるぞ)、
今回はランダムの方でシックリくる物を見つけました。
前記事「国産モジュラーシンセメーカー」で紹介したブランドP4L。
こちらの製品「RVS」と「KPG」を導入しかなり気に入っているので紹介します。
RVSは最初に完成品、次いでDIY KITを購入し、つい先日KPGも買い足しました。
この記事に加え過去記事「ランダムソースの選び方」も読むことをオススメします。
◯RVS(Random Voltage Source)
https://p4l-store.com/products/rvs-built-module
(黒パネルと白パネル両方付いてるのが優しいね)
RVSはその名の通りランダム電圧を色々出力するモジュール。
このジャンルだとMakeNoiseのWogglebugが有名ですよね。ナニが良いのかわかんなくてwすぐ売ったけどw
このRVSはそれよりも遥かに分かりやすく取っ付き易い。
デザイン的な問題だけかもしれませんがWogglebugよりも「ナニを入力してナニが出力されるか」が明快。
もちろん日本語のマニュアルが付いてる。これが本当に有難い。
できればネット上にもUPしていてくれればちょっとした確認が出来て嬉しいんだけどね。
この写真で白い丸で囲ってるジャックが出力、それ以外は入力です。
入力:クロック、シリアル、レート、スルー。
出力:3種類のノイズ、クロック、ランプ、ランダムゲート、3種類のランダムCV(S&H的なの)、
うち一つをスルーリミットしたもの。
早見表は下の通り。
・CLOCK INとCLOCK(OUT)
内蔵クロックで自走させる事も外部クロックに連動させる事もできますし、そのクロックを外部へ送る事も可能。
真ん中のトグルスイッチで外部/内部を決めて内部クロックの場合は右のツマミでクロックスピードを決めます。
・NOISE(LIGHT/DARK/WHITE)
一番上の3つのジャックがノイズアウトです。
使い勝手が良く綺麗なノイズを吐いてくれます。
もちろんフィルター通してもGOOD。
・SERIAL IN
「ランダム電圧生成のソースとなる外部電圧入力」と書いています。
通常はLIGHTのノイズがそのソースとなっていますが、
それを他の物へ変える事が出来るって事ですね。
例えばシーケンサーのCVを入力してやると、そのステップ数に応じた音が生成できます。
0-1VのCV電圧が好ましいとの事。
・RATEとその上のツマミ
「内部クロックレートのCV入力とアッテネーター」とあります。
ここに例えばLFOの出力を入れると、その電圧に応じてクロックが変わっていきます。
ただし内部クロック時のみ。外部クロックを使ってる時は影響しません。
・RAMP OUT
クロックに連動したランプ波出力。ランプ波=ノコギリ波です。
ここは外部クロックの有無に関係なく内部クロックに同期します。
つまりココだけは下のツマミで波形の間隔を変えられるのですよ(ここミソ)。
・RAMDOM
ランダムゲートです。
もちろんクロックに合わせた発音をしてくれます。
もちろんタイミングも長さもバラバラ。
単純だけど重要な役割を担ってくれています。
・A、A-B、B(CV OUT)
クロックに同期した3Bit~6Bitの階段状のランダム電圧出力。
要はサンプル&ホールド的な奴が出てきます。
6Bitで64段階の(64種類の高さ)電圧が出来るって事は、
マニュアルには無いけど3Bitなら8段階に絞れるって事ですかね。
で、それを背面のジャンパー操作で選択できます。
AとBとそれぞれ別の出力があって、A-BはAとBの差を出力します。
これで3種類のランダムCVが出来ている、となります。
・SLEW IN/SLEW OUT
スルーリミッターと言って、カクカクの階段状になっているCV信号の角を斜め(滑らか)にしてくれます。
その斜め具合は左のツマミで調整可能。また外部スルーリミッターの動作を反映させたい時はSLEW INに入力します。
とまぁ、こんな具合です。
マニュアルの内容を噛み砕いて書きましたが触って覚えた方が早いです。
◯RVSの用途例
・ランダムゲートとABのCV出力いずれかを使い、シーケンサーの代わりに使う。
RVSと音源の間にクオンタイザーを挟んでも良し。
自分はSLEW OUTを音程変化に使うのが好みで、発音してる途中で音程が変わり
ウネウネと気持ち悪いフレーズにしてくれます。
・ノイズをRVSからVCAやローパスゲートに繋ぎ、ランダムゲートでブツ切りにしてやりましょう。
AB OUTなどで変調させたフィルターを挟むと尚面白いですよ。
・別にオシレーターのV/OCTでなくとも、フィルターのカットオフやレゾナンスに適用したり、
エフェクターの何かしらのCV入力に入れたりも出来ますよね。
・そしてミソなのがRAMP OUT。外部クロックを使っている時、
ここだけはその影響を受けずにツマミに応じたクロックに連動します。
これを「同期したくない入力」に入れるってのはどうでしょう?
自分ならツマミを左いっぱいに絞りディレイ関連の変調に使ったりします。
(ディレイがクロック同期するのがあまり好きではない為)
◯KPG(Kosmik Pluse Generator)
https://p4l-store.com/products/kpg-built-module
(こっちは一枚だけだよ。でも別売りで他の色も買えるよ)
KPGはランダムトリガー・ジェネレーター。
こちらはRVSと違って文字も無ければツマミもありません。何だか謎なモジュールですね。
こちらは自走しませんがクロック入力1、CV入力4、トリガー出力16を備えています。
基本的にドラムを鳴らす用途が主でありますが、工夫次第で色々な場所に使えます。
まず一番左上のジャックがクロック/ゲート入力。
クロックを入れると、トリガーのタイミングがより正確になります。
もちろんRVSのCLOCK OUTで大丈夫。
ちなみにゲートを入れたりして変チクリンなタイミングで鳴らすのもアリ。
クロック入力の真下3つと線で繋がった1つ。この4つはCV入力です。
残りは8つずつのグループに分かれたトリガー出力。それぞれ4色に色分けされている事を留意してください。
便宜上、CV入力はA〜Dと名付けます。
そしてこのCV入力、約1.2Vを境目に「Hi」か「Low」との電圧を感知します。
また上下8ずつのトリガー出力を「上グループ」「下グループ」とします。
◯CV入力の法則を読み解く
先にKPGを購入していた先輩方のTwitter投稿からヒントを貰いました。
(いや、むしろそのまんま清書しただけだw)
一応実践はしたものの、完璧に証明する機材を持ち合わせていないので、
あくまでも仮説とさせてください。
・仮説1
CV Aは同一グループの中で、かつ同じ色の中で移動する。
CV Bは同じ色同士で、上下のグループを移動する。
CV CとCV Dはその組み合わせで色移動をします。
・仮説2
高い電圧と低い電圧を分けて、それぞれABCDの入力にどう入れるか、でトリガーが出力されます。
これはABCDどの入力にHiまたはLowの電圧を入れればどこがトリガーするかを示した表です。
Lowは0Vでも良い、つまりパッチしてない状態でもOKです。
◯仮説からの実践
以上の仮説を踏まえてRVSとパッチングします。
・まずはRVSのA OUTとB OUTをKPGのA入力、B入力に入れるだけ
こうすると、上下グループの赤の4つだけトリガーします。
他の3色はトリガーしないので、4つしか音源を持ってない場合には丁度良いですね。
・更にWHITE(ノイズアウト)からC入力に入れる
すると赤に加え黄色も、8種類のトリガーをします。
・今度はWHITEからD入力に入れる
こっちでは赤と緑の8トリガーになります。
・C,D入力どちらにもノイズを入れる。
・ノイズアウトを一本外してRAMP OUTから繋ぐ
するとどうでしょう。
今度は緑を除く赤黃青がトリガーします。
RVSと組み合わせるだけでも、16あるトリガーを用途に合わせて絞ったり、
任意の色だけを鳴らす事も出来ます。
ほとんどの人が16個もドラムモジュールを使わないと思います。
せいぜい4〜8くらいでしょう。
なので色ごとにトリガーするドラム音源、または飛び道具などに分けると使いやすいと思います。
※注意
ここでは敢えてRVSをCVソースに使っているけど、別にCVならなんでも良いですからね。
LFO突っ込んでも良し、シーケンサーから繋いでも良し。
手持ちのモジュールでどういう反応をするのか試すのもまた一興です。
また左上のジャックには基本的にメインと同じクロックを入れてますが、
こちらも別にクロックじゃなくても良い、との事です。
ランダムゲート入れるとワケわかんなくなりますw
◯組み合わせが楽しい他メーカーモジュール
CVソースに
・ochd/ochd expander / DivKid
使い勝手の良いLFOと、専用エキスパンダーです。
エキスパンダーを加えるとなんだかよくわかんねぇCVをたくさん吐いてくれます。
これをCVソースとして使っても面白いですよ。
詳しい説明とご購入はクロックフェイスまで!
https://clockfacemodular.com/products/instruo-divkid-ochd-expander
・4ms QCD他クロックディバイダー
TEMPIでもPamelaでも良いし、シンプルなクックディバイダーでも構いません。
要はメインのクロックとは他に「更に遅いクロック」を出力できるもの。
それを利用すれば、数小節ごとにトリガーグループを変更したり出来ます。
クロックディバイダーを使うと正確に数小節(数拍)単位で色の出方を変えてくれるので、
変チクリンなCV入れてワケ分かんないのがイヤ!って人にオススメです。
ランダムゲート適用先に
・makenoise Mimeophone他ディレイ系エフェクター
mimeophoneでは下部にあるボタン、
それをトリガーする事で「一瞬だけ逆再生」「一瞬だけHOLDする」とか面白く、
かつヤリ過ぎない程度にエフェクト効果に変化をもたらせます。
このように「たまに変な挙動をするエフェクト」と言えばディレイ系が豊富です。
・MakeNoise Maths他ファンクションジェネレーター
たまに出てくるトリガー(正確には短めのゲートなんだけどね)を、
思い通りの長さに伸ばしたい時はファンクションジェネレーター。
もちろん普通にオシレーター〜アンプに繋いでも良いし、
上で説明したディレイの特殊効果の時間を調節するのにも良いでしょう。
実は自分MATHSは手放してしまっていてコンパクトな定吉楽器BOOTLEG#1を使ってますが、
KPGを使っていくうちに「ああ!MATHSの真ん中の機能が欲しい!」と悶えてしまっています。
どうやらMakeNoiseでは「MATHSからENV抜いた奴」的な新作が発表されましたが、
「BOOTLEG+コレでMATHSになるのかね?」と気になってます。
ちょっと様子見です。
◯RVSとKPGどっち先に買う?
海外製モジュールに比べればかなり手頃な価格なんで両方揃えるのが一番ですけど、
どちらか1つ、となるとアタシはRVSの方をオススメします。
RVSは単体でも充分活用しどころが沢山ありますが、
KPGの方は入力するCVソースをアレコレ欲しくなりますw
◯RVSとKPG、こんな人にオススメ
・Wogglebugの字が読めない人にはRVS
・モジュラーシンセ初心者で初めてランダムソースに興味を持った方にはRVS
・オシレーターの演奏のみならずフィルターやエフェクトにも変調を加えたい人ならRVS
・自身の手癖から脱却したい人はクロックディバイダー+KPG+ファンクションジェネレーター
・音数増やしすぎて首が回らない人にはRVS+KPG
・カオスな演奏を楽しみたい変態にはRVS+KPG
◯まとめ
異様と言える位な円安で海外製品に手を出しにくくなってる最近のご時世ですが、
国産メーカーの割安感が余計に浮き彫りに感じてしましますね。
それが良いのか悪いのかは分からんけど、今こそ国産モジュール!なのは間違いないです。
RVSとKPGはモジュラー初心者にも上級者にも薦められるランダムソース。
これでカオスな演奏の入り口とする事を強くお勧めします。