【イベント連動】エンベロープおさらい【パチモ】
現在高円寺のマッチングモヲルという喫茶店で
月イチくらいのペースでモジュラーシンセのパーティをやっておりまして、
ライブではなくワークショップ形式のコンセプトで続けております。
そこで「シンセサイズの各機能に焦点を当てて製品比較や応用例を挙げていこう」
なんてアイデアを頂きまして、
開催前にテーマに沿ったブログ記事をUPしていこうと思ってます。
パッチングモヲル@マッチングモヲル
不定期・だいたい月イチの日曜か祝日に開催。次は6/9だよ。
(余談ですがフライヤーは「アールヌーヴォー・モジュラー美人図」をテーマに毎回AIに描いて貰ってます)
栄えある第一回目は「エンベロープ」。
モジュラーユーザーであれば必ず1つ以上は持っていて、
割と応用が効く部品である事は皆さん知っての通り。
おさらいを兼ねて深堀りしていきましょう。
◯エンベロープジェネレーターとファンクションジェネレーター、ナニが違うの?
「エンベロープジェネレーター」は聞き慣れてるだろうけど、
モジュラーやると初めて耳にするであろう「ファンクションジェネレーター」という言葉。
これ西海岸シンセの祖ブックラさんが勝手に付けた名前が
モジュラー界で広まっていったもので厳密な定義はありません。
他にも「スロープジェネレーター」とか「ランプジェネレーター」とか
色んな呼び名があったりしますが全部同じ用途です。
ファンクションジェネレーターと、はエンベロープとLFOを兼ねた機能で、
二つ以上の出力があり互いに影響し合えるもの。
と、アタシは解釈しておりますので当記事では一緒に考えてしまいます。
このエンベロープ(含むF/G)は思い通りのCV曲線を作り出す
モジュラーシンセの中ではかなり重要な機能でして、
下手すりゃオシレーターやフィルターよりも重く捉えられていますし、
MakeNoiseのMathsに至っては(基本的には)音出ない癖に
「キング・オブ・モジュール」なんて言われている始末。
様々なメーカーから多数のモジュールが発売されています。
過去記事:ファンクションジェネレーター
過去記事:MakeNoise Mathsレビュー
◯ADSRとAD。そしてRise/Fall
一般的なシンセのエンベロープはADSRと4つのセクションに分かれて調整していきますが、
モジュラーシンセではAttackとDecayしか無い物のほうが一般的です。
この理由はわかりませんが、たぶん作る人も鳴らす人も面倒くさいからでしょう!知らんわw
そしてモジュラーシンセ特有の養護に「Rise/Fall」がありますが、
ライズ=登る、フォール=落ちる、という事で、
要はAttackとDecayと同じって解釈で問題ありません。
厳密には違うらしいけどシンセ用語としては問題ないです。
厳密じゃないと気が済まない人は勝手に調べてな。おら知らん。
もちろんADSR形式のモジュールもありますよ。
そっちの方が好みだという人も安心してください。
実際には観たこと無いけどな。
◯なぜモジュラーシンセ特有の用語が存在するのか
こんな風にエンベロープ関連だけでなく、
モジュラーシンセにはモジュラーシンセ界でしか通用しない用語が結構あります。
これは何故かと言うと、
ユーロラックモジュラーシンセが大きく影響を受けている西海岸シンセサイズ、
その開祖とも言うべきブックラさんが格好つけていたからです。
現代でいうところの厨二病的なアレです。生暖かい目で観てやりましょう。
過去記事:西海岸シンセサイズへの旅
◯オシロスコープを入手しよう
描かれるCV曲線を可視化するにはオシロスコープ。
モジュラーシンセには必須レベルの測定機です。
以前はガチ勢用の物か玩具みたいな奴しか無かったんですが、
KORGが丁度シンセ用途にバッチリな機種を用意してくれています。
最大4CHまでの測定できますし他にもシンセ用途に合わせた機能があります。
◯メーカーや製品ごとのスペック比べ方
ClockFaceはじめモジュラーショップの製品ページや、
ModularGridでも丁度「Envelope Generator」という項目があります。
「スロープジェネレーター」「ランプジェネレーター」などなど色んな呼称がありますが、
だいたいエンベロープの別名なので惑わされないようにしてください。
・チャンネル数
2ch〜4chが一般的。
多い方が良いように思えますが操作性と自身の許せるスペースを考慮して選びましょう。
・LFOとしても使えるかどうか
純粋なエンベロープとして使いたいのか、
LFOとしても使えるタイプが良いのか。
当然、後者の方が便利です。
・電圧範囲
ここに意外と盲点となる落とし穴があります。
通常の最大電圧は5Vだけど、8Vまで上がるタイプの物をあります。
特にMakeNoiseのローパスゲート(OptomixやDXG)は
入力する電圧が8Vまで上がらないと、
フィルターが開き切らずに眠たい音になってしまいます。
(これを知らずにOptomix音ショボ!って売り払ったのがアタシです)
VCA側の入力電圧をチェックしてそれに見合った物を選んでください。
(青かBootleg#1、緑かPeaks。ちなみにBootlegも8Vまで上げられます)
・ツマミ(フェーダー)を回した時のレスポンス
これは実際に触って観ないとわかりませんが、結構違います。
幾つも触って自分の手で確かめてください。
◯当記事で扱うファンクションジェネレーターとラック内容
国産モジュラーメーカーからピックアップしました。
円安な今は凄く安く感じますね。価格は24年5月現在のもの。
肝心のエンベロープジェネレーター
https://clockfacemodular.com/products/sdkc-instruments-bootleg-1
ヘリカルで一躍スターダムに乗り出した国産モジュールメーカー。
そこのSergeのDSGを模したファンクションジェネレーターです。
現在流通してる分で生産停止らしいので、欲しい方は血眼になって探してください。
今回はコイツのレビューを兼ねて記事の中心にしていきます。
◯CV用語解説
・バイポーラ:プラスとマイナスの両方に振れるCV。
プラスだけの時はユニポーラといいます。
特にLFOを買う時はここに留意しましょう。選べる奴もあります。
(黄色が0Vとして、青がユニポーラ、緑がバイポーラ)
・アッテネーター
減衰器。普通のシンセには当たり前にあるLFOの振れ幅を小さくしたい時に必要です。
またオーディオ信号を小さくしたりする時なんかにも。沢山あって損はないです。
・インバーター
反転器。マイナスの電気をプラスに、プラスの電気をマイナスに反転させるものです。
アッテネーターとインバーターの機能を足したものをアッテヌバーターといいます。
・オフセット
CVに任意の電圧を加えたり引いたりするもの。
・スルーリミッター
・アッテヌバーター
MakeNoise製品なんかにはよくありますね。
アッテネーターとインバーターを足したもので、
減衰と反転を両方できます。
後述するJAMMING APO1のように単体モジュールとしても売っています。
◯CV観察実践
・トリガーとゲートの入力
BOOTLEG#1にはINとTRIGという二つの入力がありますが、
アンプやフィルターといった一般的なエンベロープ用途の時はTRIGに、
LFOなどのスルーリミッターとして使いたい時などはINに入れます。
シーケンサーから同じ信号をINとTRIGに入力した図。
上の青がTRIG、下の黄色がINで、
RISEツマミを右に回していくとIN入力の方はCVが消えていってしまいます。
IN側にはLFOなどある程度長い連続した信号を入れてやるようにしましょう。
・SpeedとCVコントロール
SPEEDに手動式CVを入れた時の影響。
緑のライン一番左が0Vで指で徐々に上げています。
それに連動して青のエンベロープの立ち上がり〜ゼロまでの時間が早くなっていってます。
まずツマミ。こりゃアッテヌバーターですね。
12時より左がマイナス右がプラスとあります。
このオシロだと左から右に時間軸が進みますので、
マイナスに回すとエンベロープ時間が短くなり
プラスに回すと長くなります。
隣のトグルスイッチはRISE,BOTH,FALLとあり
BOTHは両方、RISE/FALLはそれぞれにCVが影響するってことです。
・4つの出力
この4種類ある出力をどのように使っていけば良いでしょうか。
それでは実際にオシロスコープを使ってエンベロープを確認してみましょう。
DC(青):0Vから+5Vの普通のエンベロープ
AC(黃):-2.5Vから+2.5Vのバイポーラなエンベロープ
(この写真じゃちょっとわかりにくいけど、アンプに繋げると小さい音になります)
END(緑):黄色の反転バージョン
BP(ピンク):エンベロープかオフの時に立ち上がるゲート
もちろんこれらCYCLEスイッチをONにすればLFO化できます。
青は普通にアンプENV、黄色と緑はLFO化してバイポーラが必要な時に、
ピンクは別のENVに入力して青とピンクで互い違いに音を出したいときに、などなどあります。
・ACとBP出力
バイポーラで真逆に出力を出せるACとBPですが、
自分の用途としてはLFO化してX-PANやWMDミキサーのPAN入力に入れて、
二つの音を互い違いのオートパンを作る時に使ってます。
サイン波に近い波形が良いんですけどね。
あるいは、オシレーターからキックを作る時に本来は二つ以上のエンベロープが必要になりますが、
DC出力で音量、AC出力でピッチ、BP出力を別のアンプに繋ぎサイドチェインのトリガーとして使う事も出来、
ひとつのトリガーで賄う事が可能です。
・END出力
ピンクのEND出力を使って互い違いの音を出すCVを出してみましょう。
上のチャンネルのEND出力を下のチャンネルのTRIGに入力します。
1つのシーケンサーで2種類の音を出せる事になりますね。
「ブ〜ン・パン!ブ〜ン・パン!」みたいな合いの手を打つような発音ができます。
◯CVツールいろいろ
・JAAMMING APO1
(¥6000)
https://jamming.base.shop/items/85918298
CVアッテヌバーター(電圧反転+減衰器)とオフセットを兼ねたモジュールです。
・Centrevillage BiMix(¥8800)
https://centrevillage.net/products/11
こちらはCVミキサー+オフセットとして使えます。
・普通のアッテネーターは沢山持ってて損はない!
音量を小さくしたい時、LFOの振り幅を小さくしたい、何かと重宝します。
・WMD 4tten
フェーダー式のアッテネーターで、入力に何もない時は0~5Vの電圧を出力します。
エフェクトのCV入力に入れて飛び道具としてつかってます。
・Zlob MiniAtt
2chあって両方の信号を足したSUM出力もありますので、
簡易的なミキサーとしても使えます。
これらCVツールを使って好みの電圧を作っていくのもモジュラーシンセの醍醐味です。
◯SDKC Bootleg#1の調整方法
基板の裏に調整用のネジ付き可変抵抗が4つあり、上二つと下二つがそれぞれ上ch下chとなってます。
「V/OCT」と書いてある方がSPEED入力の調整(ただ正確なV/OCTのトラッキングは出来ないそう)、
もう一方が電圧調整ネジ。ここを精密ドライバーなんかで回してやれば4〜8Vまで変えられます。
ただし事前にオシロスコープを用意しましょう。
◯まとめ
ファンクションジェネレーターの記事から「もっと細かく解説すべきだったよな」と反省を込めて書き直した一面もあります。
是非とも深堀りの為に高円寺まで遊びにいらしてください。