YAMAHA SEQTRAKレビュー

ずっとモジュラーシンセの話題ばかりでしたが、久々にこれは欲しい!と思えるグルボが登場しました。
YAMAHAのSEQTRAK。安い、軽量、コンパクト、音色いっぱいと
モジュラーシンセとは対照的な性格と機能で両立させるにはジャストなんじゃないでしょうか。
偶然今日入手したので半日触った上でのレビューです。


◯全然在庫ないらしいけど

購入資金が確保できた時にはどこのWEBショップにも置いてなく、次の入荷は3,4ヶ月待ちだという噂もありました。
そんなんだからアテにしてなくて「展示品でも触りに行こうかな」なノリで銀座のヤマハ総本山に行ってみたんですよ。
そしたらたまたま黒なら在庫あるよ!と聞いて食いついちゃいました。
ヤマハがグルボ系の商品を出すなんてホント珍しいもんだから、会社自体の規模のデカさを忘れてましたよね。
という訳でどうしても欲しい方はヤマハディーラー(ディーラーじゃない)へ足を運んでみましょう。

◯黒/灰と白/オレンジどっちがいい?

自分自身は汚れや傷、モジュラーシンセとの相性を考えて黒/灰にしたんですが、
2つ並んだ展示品を見た時に思ったのは白/オレンジの方が圧倒的に高級感があるんですよ。
厳密には白っぽいグレーですけど、つや消しの塗装になっていて今風の落ち着いた印象を受けます。
黒の方はスゲェ安っぽい。volcaよりチープ。並べると同じ製品だとは思えないくらい。
なんで余程のこだわりが無い限り白/オレンジを買うのをお勧めします。

余談ですが、
「天下のヤマハ様なんだし初音ミク音源積んでオレンジの所を「あの青緑」に塗装したら爆売れすんじゃね?」
と投稿したらすげぇバズった事がありました。
権利問題とかでもう出来ないらしいけど、
そんなん出来たら「ザ!日本の電子楽器!」的に誇れるプロダクトだと思いますけどね。

◯コイツの真骨頂は音源なんですよ

Teenage製品にも似たオッシャレ〜なデザイン、スマホやタブレットとシームレスに連携する操作など
良い所は色々とありますが、一番なのはコイツが「PCMシンセ」なことだと思います。まぁFMもあるけど。
PCMグルボと行ったらKORGの初代エレクトライブEM-1以来。
アナログやVA、FMなど他メーカーの主流を突っぱねてPCM積んだ事がYAMAHAの個性であり英断だと思います。
要はピアノやギター、ストリングスなど他じゃ出来ない音がテンコ盛りって事ですよね。
アタシ自身も民族音楽系の音が欲しくてコレ買ったようなもんです。

◯テクノの枠に収まりたくない人に

つまり、グルーヴボックスでありながらテクノ以外が出来る。
なのになんでマイクヴァンダイクなんて90年代テクノ大好きおじさんの神様なんぞを採用しちまったのか。
ここだけはYAMAHAセンスねぇなぁと思ってます。
あんなのにオファーすんならYOASOBIの片割れとか米津なんとかさんとか
ボカロ系出身の日本人ミュージシャンに頼むべきだったんじゃないかい?
最近好きだよ?あの界隈の人達。よく聴いてるもん。

デザイン的にもパヒュームやボカロ系のテクノポップがよく似合うグルボだと思いますよね。
あとはゲームミュージック出身の人達にも触ってもらいたいかも。
MacbookやiPadと連携してライブする、なんて使い方も容易に想定できます。
たぶんハウスも出来る、ヒップホップなんかも似合わないけど出来る。
逆にガチテクノがお好みなおじさん達は素直にELEKTRONかKORG買いましょう。
天下のヤマハ様とは言えグルボシーンではポっと出の新興メーカーでしかありません。昔はともかく。

ま、アタシは「別にボカロとかやんねぇしさ、これならレゲエ出来るぞ?」
とか思ってたりしてますんで大概ですけどね。

◯実際安っぽいプロダクトではある

塗装に高級感のある白/オレンジを買わずに黒/灰を買ったもんだから尚更チープに感じます。
本体自体も凄く軽く各ボタンの押し心地も悪くはないけどチト安っぽい。
この質感は所有欲を全く満たしてくれません。volcaの方が高級感あるかも。
まぁ今の時代に55000円で出すプロダクトとしては許せる範囲でしょうか。
でも他メーカーのライバル機と比べるとダントツで安いです。質感がw
往年のヤマハグルボやシーケンサーよりもアレです。
普段から質実剛健(そうな)モジュラーシンセを触っているから余計に感じます。

この辺こだわる方は実機を触って判断して下さい。まじビビるから。

◯アプリ連携は便利だけど

自分の場合はじめBluetooth接続が出来ません(ver1.10)。iPadもiPhoneもMacもダメ。
仕方ないのでiPadと有線接続で使うとバッテリーの減り具合がエグいです。
これは使い物になりません。

もう一度iPadの再起動からやり直して

1.SEQTRAKアプリを立ち上げ
2.SEQTRAK本体のALLノブとSWINGボタンを同時押し
3.アプリ側に「SEQTRAK_xxxxxxx」という表示が出るのでそこをタップ

これで無線接続が出来ました。
上手く繋がらない方はSEQTRAKとスマホ/タブレットの再起動からやり直してみましょう。

「プロジェクト/サウンドマネージャー」はBluetoothではなくWiFi接続が必要になります。
こりゃ面倒臭い。しかも厄介な事に音色の試聴はSEQTRAK本体ではなくiPad側から出ちゃう。
じゃあワイヤレスイヤホンを用意して、と。。。ああ!面倒だ!
これはPC/Macで有線接続した方が良いですねぇ。

「ダイナミック・チュートリアル」は凄く有能&便利です。
本体のツマミやボタンを触るとそこにまつわる説明が表示されるんですよ。
まぁマニュアルほど詳しくはないけれど非常に助かる機能です。

「GUIエディター」はドラムやシンセ部分の細かい設定を決められるんですけど、
初見だとわかりづらいUIです。慣れるまで苦労しそう。もちろん無いよりずっと良いですけど。

「ビジュアライザー」はビデオシンセ的でVJ的な奴。
プリセットから気に入った絵柄を選んでそれをベースに自分で調整していくタイプです。
これはセンスが問われる、というかiPadあるんならそういう専門のアプリを使った方が良いです。
しかもあくまでもこのアプリが必要でSEQTRAK本体から映像出力できる訳ではありませんよ。
オマケのオモチャ程度と認識しておきましょう。

過去記事:ビデオシンセサイザー
     LUMEN・ビデオシンセ

SEQTRAKアプリは無きゃ困るけど使い勝手としてはイマイチ。
まぁソフトだし今後のアップデートに期待しましょう。

◯さて、本体の操作をすげぇザックリと

左下のサイドボタン、電源を兼ねた奴を押すとスタート/ストップです。
その列にあるソロとミュート、結構つかいづらいっす。

代わりに各トラックのパターンをツマミで変えられるので、
一番アタマのパターンを空にしておけば良いかと思います。
この機能に対応してるのはNovation Circuitシリーズだけだったと思うんだけど、
更にSEQTRAKでは左上のツマミ「ALL」で全部いっぺんにもパターンチェンジ出来るのが良いです。

シンセパートではリアルタイム入力もステップ入力も可能。
スケールも指定出来るのでその辺り弱い方も(俺)安心です。

右側に3つあるタッチパネル部分はエフェクトレベル、ハイパスフィルター、リピーターとなってまして、
触ると全体の音が面白く動くギミックです。飛び道具的に使うやつ。
軽く触った程度だと、一つではなく二本指で複数のパラメーターを動かした方が良い感じの動きしますね。

本体四方にある細かいボタンの押しづらさ(認識しづらさ)を除けば上々の操作性。
ただこれらのボタンを天面に配置してもそれはそれで厄介なので苦肉の策なんでしょう。

◯音質

PCMだからと言ってパンチが無いわけでもなく、現代のダンスミュージックにも十分対応する音質です。
その前に音色の数が多すぎて網羅し切れないんだけどなw

あ、スピーカー?邪魔だよ。んなもんつけんなよ。

◯オーディオI/F機能が凄く便利

これからのグルボにあるべき姿、というか、
iPhone15とSEQTRACKをUSB-Cケーブルで繋ぐだけで演奏動画が撮れちゃいます。
https://twitter.com/i/status/1760984927670292551
これは嬉しい!

◯おれならこう使う

モジュラーシンセの補完用途で考えてまして、
モジュラーでなかなか出てこないPCM、FM、サンプラーが揃っているのでバッチリだと思ってました。
特にPCMシンセで出すシタールやタブラなどの民族音楽系の音色。
これらのカレー臭い音ならモジュラーで出すドローンとも相性バッチリでしょう。
更にはFMシンセ。皆さんFMシンセの印象は様々でしょうが、
アタシの場合はレゲエなんですよ。DX100に代表されるベースが大好きでしてねぇ。
ホント、サイドのボタンさえ無ければモジュラー箱に埋め込みたいくらいです。

 

◯でもこんな人にオススメ

グルボに触った事のないDTMユーザーが一台目に買うには絶好。
PCだけでなくハードでライブをしてみたいなんて方にピッタリです。
テクノポップ〜普通のポップスに最適でしょう。
このあたりNovation Circuitシリーズと迷うかと思いますが、
こちらの方がよりポップス寄りだと思います。アッチは若干テクノ寄り。

iPad版ボーカロイドアプリ(触った事は勿論無いけど)とSEQTRAKで
ボカロ曲ライブとかウケそうじゃないですかね。

◯逆にこういう人達は辞めとけ

マイク・ヴァン・ダイクに憧れていたようなテクノおじさん。
アンタ達は辞めときな。すぐ飽きるよ。
プロダクトとしての底が浅い、悪い意味でナンパなグルーヴボックスだわ。
DX200やRM1xに夢を見ていた方であれば絶望する事間違いなし。
これ買うならmodel:cyclesの方が断然いい。あるいはKORG gadgetと比べるといいかも。

過去記事:model:cyclesレビュー

◯まとめ

結構ネガティブな話が多いんですけど、概ね満足してます。
ただ使い道や得意分野と、メーカーの売りたい相手がズレてるんじゃねぇの?と思ってしまいます。
もちろんソフトウェア方面でのブラッシュアップを継続してくれれば更に化けるポテンシャルは持ってます。

 

 

 

 

 

 

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