マシンライブのススメ

「マシンライブ」という言葉をクラブでチラホラ聞く事が増えてませんか?
簡単に言えばリズムマシンやサンプラー、シンセサイザーを使ったライブプレイ。
アナログ/CDJからPCDJ時代を通ったDJプレイの延長線上にあり、
またクラブミュージック制作の原点回帰でもあるプレイを指して言います。
ギターやピアノなど普通の楽器に比べれば演奏性は低いけど、
そのぶんDJのように曲間に空白の無い長時間プレイが可能です。

ハウスやテクノの生い立ちを辿ればわかる事ですが、
不人気で安くなった電子楽器を駆使して出来たのが
シカゴハウスだったりデトロイトテクノな訳です。
そしてDJツールがアナログレコードからCDJ、PCDJと進化していった後に
DJ的発想でパフォーマンス出来るDAW[AbeltonLive]の普及、
ソフトウェアシンセの味気無さやタッチパネルデバイスへの倦怠感から
くるハードシンセの復興、
そういった要因を踏まえて、このプレイスタイルが流行する事を切に願っています。

◯マシンライブの定義と最先端DJプレイスタイル

マシンというからにはハードウェアの電子楽器を使っている事が条件でしょうが、
大抵の人はPCと併用して行なっています。
主にAbletonLiveをシーケンサー兼サンプラーとして使っているんでしょうかね。

このAbletonLiveってのが音楽制作における革命的プロダクトなのは間違いなく、
特にクラブシーンに与えた影響はTR808やMPCに並ぶんではないでしょうか。
おれ上手く使えなくて辞めちゃったけどさ〜。

PCDJソフトTRAKTORの方もリミックスデッキやSTEMフォーマットなど、
曲ではなく素材をプレイできる環境を開発しつつまります。

つまりDJプレイの進化の過程の一つに(全部とは言わない)、
「既存曲だけではなく素材を積極的に取り入れる」
「一曲単位ではなく一小節単位でのDJプレイ」
「時間軸のみならず楽器ごとにミックスをする」
こういう考えがDJスキルのムーブメントとして盛り上がってきています。

そして非常に有難い事に、
一昔前ならごく一部の天才にしか思いつかなかったそんなプレイも、
今の時代なら誰でも努力だけで実現が可能な事。
TRAKTORの4デッキプレイを初めてやった時は
「オレもジェフミルズになれるんやで!」と一人で勝手にアガったものですw

もちろん、
こういう電子楽器でのライブプレイは昔からあったのだと思います。
しかしそれはミュージシャンサイドからのテクノであって、
フィールドもクラブではなくライブハウスだったように思えます。
そして今度のはDJサイドからのアプローチ、というのが大きな違いではないでしょうか?
海外ではともかく日本ではDJはDJ、楽器は楽器、オーディオはオーディオと、
支持する層がキッチリ分かれてしまっている為に相互に影響を与えにくいものですが、
IT革命のお陰なのか近年ではその垣根がだんだんと低くなっています。

「オメェが知らねぇだけだろ」なんてツッコミは言わない約束(ハアト)

◯マシンライブとDJの違い

・「ネタ」が違う
傍から聴いてるとDJプレイとの違いが分かりずらいのですが、
DJが既存の完成された曲をメインに使うのに対して、
マシンライブで使うのはサンプリングされた数小節の素材。
あるいはシンセサイザーで即興の音作りをします。

・出音が違う
ミックスダウン済みの完成曲と違って各機材の生々しい音が出力されます。
各楽器のバランスは悪くとも、迫力があり荒々しいトラックを聴かせる事が出来ます。
オーディオ的価値観で言う所の「高音質」とは違う意味での「イイ音」。
音質低下の根源であるはずのノイズもマシンライブでは立派な素材です。

・ライブ性が高い
DJが行えるリアルタイムでの音色操作といえばEQやエフェクト、スクラッチくらいでしょうが、
機材次第では音作りに関わる全てのパラメーターを即興で操作できます。

◯プレイする曲のジャンルは?

広義でのテクノが主流になります。
エレクトロ、ノイズ、ハウスなどなどいわゆる「電子音」がメインです。
一般の音楽とは違いコード進行もなく展開も控えめなミニマルな音がほとんどなので、
曲を楽しむ、というより音を楽しむ、という受け止め方が出来ればすんなりラリれます
プレイヤーの一挙一動を注視、共感してトリップするのが手っ取り早い楽しみ方でしょう。

◯参考動画

ハウス・KiNK

AbeltonLive中心にソフトシンセ(?)手弾き、
リズムはTR-8にタンテまで回ってるもんだから
ナニからどの音が出てるのか全然わかんないですw

ダブテクノ・KiNK

同じくKiNKさんのダブテクノセット。
MFBのリズムマシンとシンセをPAミキサー経由で
RolandのエフェクターRE-201を通してますね。
コッチの方が断然好きです。

レゲエ/ダブ・MAYD HUBB

(多分)フランスのダブ・アーティストMAYD HUBB。
音源は多分MTRとミキサーの上にあるMPC500。
ダブはPAミキサーとエフェクターで演奏する、という捉え方です。

過去記事:クラブ語るなら知っておきたいジャマイカの発明

アシッドハウス/アシッドテクノ・Kick.S

関西圏で活動している方です。
アシッドベースで表現する叙情的な世界観が心地いい。
アシッドベースシンセx0xb0xとリズムマシンACID LAB MIAMIに
KORGの古いエレクトライブがメイン機材。

過去記事:アシッドベースによる脳髄破壊入門

◯どうやって覚えるの?

既存の楽曲やDAWで制作した曲をお手本に、
最初の一台をマニュアル片手にトコトン触りまくるのが一番の近道。
気になる機材はYouTubeでチェック!機材名で検索すると山ほど出てきますよ。
メーカー公式の動画よりユーザーが触っている動画の方が参考にし易いですね。

個人的には最初の一台にはリズムマシンを選ぶのが良いかと思います。
楽器できなくても楽しめるし、操作も分かりやすいかんね。
KORG volca beatsはクラブで鳴らすと10万円クラスの機材を喰える音に化けるし、
Roland TR-8は考えぬかれたUIで非常に使い易く覚えやすいです。

過去記事:「シンセ界のHONDA MONKEY」KORG volca

PCDJの場合TRAKTORならMIDIクロック出力が出来るので、
自身のDJプレイに強烈なリズムを加える事が出来ます。超お手軽に。

◯どこで見られるの?

・RUDELOOPS関連

神田Extraweltではマシンライブ特化イベント[Viel spaß!]がスタート、
西麻布bullet’sで第3日曜にやっている[TumbleFish]もマシンライブアクトを積極的に導入。
もし機材を触ってみたい、或いは練習してみたい、という方は
同じ西麻布bullet’s第1水曜開催の[DTM/DJワークショップ]で歓迎しますよ。

・その他のレーベル

TOKYO ELECTRO BEAT PARK
http://tokyo-electro-beat.net/
先日15周年を迎えた東京の老舗レーベル。
コチラの所属アーティストも色々と活動しています。
恐らくはボクがこんな事言い出す遥か昔からやっている大先輩でしょうね。

◯まとめ

ボク自身まだまだ修行中の身でキチンとデビュー出来ているわけではありませんが、
次世代のDJプレイはここにあると信じています。
再生と演奏と制作の垣根をグンと低くするプレイ。

新しい音楽が生まれないとお嘆きの皆様、
評論家ぶってないで自分達でやっちゃいましょうよ。

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